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「職場の5人で歓迎会」はやってもいいのか、ダメなのか…経営コンサルタントがたどり着いた"大人の結論"

プレジデントオンライン / 2022年4月4日 10時15分

まん延防止等重点措置が解除されて初の日曜日となった2022年3月27日、東京・千鳥ケ淵の桜が見頃を迎え多くの人が訪れていた=東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

歓送迎会のシーズンが到来した。全国でまん延防止等重点措置は解除されたが、日本人の経済活動は元に戻るのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「東京都民が職場の5人で歓迎会をすることは可能なのかを考えることがヒントになる」という――。

■「職場の5人で歓迎会」はやってもいいのか

3月21日で全国一斉に「まん延防止等重点措置が解除」になりました。そこで次のクイズから話を始めさせてください。

Q:東京都民が4月1日に配属された新人を歓迎するために職場の5人で歓迎会をする場合、どうするのが正しいと東京都は決めているでしょうか?

1 まだ歓迎会は全面禁止
2 ひとり外して4人にするならOKだが5人以上は全面禁止
3 全員がPCR検査を受けて陰性証明書を提出すれば5人でもOK

コロナ禍のそれぞれの時期でルールがいろいろと変わってきましたから「今はどうなの?」というと自信をもって答えられる方は少ないかもしれませんね。小池百合子都知事の顔を思い浮かべながら解答してみてください。

このクイズ、実は答えが3段階あるのですが、第1段階での正解は3です。東京都はまん防解除後も4月24日までの約1カ月は「リバウンド警戒期間」と設定していて各種規制を続けています。東京都から「感染防止徹底点検済証」を交付されている居酒屋などの飲食店の場合、4人以内で2時間以内というのが入店の基本ルールです。

しかし例外規定があって、陰性証明書等を活用して全員の陰性をお店が確認した場合は5人以上の宴会がOKになります。

■「みんなでPRC検査を受ければOK」だが…

それで幹事さんがおそらく疑問に思うのが「陰性証明書ってどうすれば手にはいるのか?」ということでしょう。東京都は「飲食、イベント、旅行・帰省等の活動に際して、陰性の検査結果を確認する必要がある無症状の方」を対象にPCR等検査無料化事業を実施しています。5人で歓迎会を開く場合、職場のみんなで都の登録を受けた民間の検査場に行くことになります。

「つまり大人数で新人歓迎会をしようとしたら参加者全員が3日前にPCR検査を受けに行けばいいということか!」

というのが第1段階の正解ですが、これは実は「大人力」に欠けた正解です。深読みが足りない。言い換えると小池百合子知事の表情が読めていない。

できるビジネスパーソンはこのルールをどう読むか? もう一段深読みした、

「東京都は『やるな!』と言っている」

という答えが第2段階の正解です。

よい日本人ビジネスパーソンになるためには本音と建前の察知が重要です。わざわざ全員がPCR検査を受けにいって証明書を取得しなければ開催できないように公式ルールが厳しくなっているということは、「やるな」と言っているのと同じだという空気を読むべきです。大人の流儀では決して「いいじゃないか。代わりばんこに職場を抜け出せば、検査料も税金払いだし問題ないよ」などとルール通りに解釈してはいけないのです。

■この2カ月間で感染者数は激増している

さて、ここからがこの記事の本題である、第3段階の話です。オミクロン株による第6波は1月末から2月頭にかけてピークアウトしたはずなのにもかかわらず、ゆっくりとしか減少していません。そして直近では、またじわじわと感染者数が増加に転じています。

感染者数を数えてみると驚くべきことがわかります。2年前にコロナが出現してから2022年の1月末までの累計感染者数は約270万人だったのに、それから2カ月たった3月末の累計感染者は約640万人です。

つまりそれまでの2年間よりも、このわずか最近の2カ月でかかってしまった人数の方がずっと多いのです。状況的には決して安心できる環境ではなく、むしろいつコロナにかかるかわからないと考えるべきです。

「でもオミクロン株は重症化しにくいからいいんじゃないの?」

という空気があるのは知っていますが、2月3月の死亡者数のグラフを見るとグラフの山がこれまでのどの波よりも大きいのをご存知でしょうか? この2カ月でのコロナでの死亡者は約9000人。2年2カ月にわたるコロナ禍全体の死亡者のうち、約3分の1がこの2カ月に亡くなっていることからわかる通り、やはり第6波の被害は大きいのです。

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写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■「もはや正しい答えなどない」が政府の結論

実はコロナ被害は直近が一番大きい。しかも一旦減り始めた感染者数も増加に転じ始めている。なのに国はまん延防止を解除した。いったいどうしたいと思っているのでしょうか。

そこで第3段階の答えです。政府が暗に言いたいことは、

「もうここから先は賛成意見も反対意見も含め、これを日常に戻していこう」

ということではないのか? これが、まん防解除を発表した岸田総理の顔色を伺ったうえでの私の理解です。言い換えると、第3段階まで行くと「この問題には、もはや正しい答えなどない」ということなのでしょう。

コロナ禍以前はインフルエンザでの死者数が年間1万人規模だったと推定されています。この推定は「超過死亡」という考え方で推測されます。統計から推測される通常の死者数よりも多かった分をインフルエンザによって引き起こされた死だと推定しようということです。

ところがコロナ禍ではインフルエンザが激減しました。一方でそれと同規模でコロナでの死者が出現しています。結局のところ死者数が問題になっているのではなく、医療崩壊が起きるかどうかがこれまでの最大の問題だったわけです。

■新型コロナはワクチンと治療薬のある病気になった

それでは、1年前と今とで何が違うのか。この1年でワクチンの接種が進み8割の国民が2回以上のワクチン接種を受けたということと、塩野義製薬の新薬を含めて複数の治療薬が出現したという状況変化が起きています。

予防接種
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

足元では感染者数も死者数も実は増加している。しかし新型コロナはワクチンと治療薬のある病気へと状況が変わった。医療崩壊を起こすのはコロナではなくコロナ治療への厳しい規制だという状況に変わりつつある。そして経済をまわしていかないと日本はどんどん疲弊していく。前提がここ数カ月で変わり始めています。

欧米ではコロナと共生していくという考え方でさまざまな規制が解除される方向にあるのですが、どうも日本はここのところが決められない。法律を決めるひとたちが、新型コロナをインフルエンザと同じ5類に引き下げる判断ができない。しかし停滞する経済に対してこれ以上の補助金を提供する余力もない。

■「空気で決めていくのが一番いい」となりつつある

それで「結局どうしたらいいのか?」なのですが、日本の場合は「あいまいにしておいて空気で決めていくのが一番いい」という話になりつつあるというのが私の社会観察結果です。

国民の間の同調圧力を使ってこの時期のリバウンドを抑えつつ、そんな空気などものともしない人たちの手で少しずつ経済を回し始めていきたいというのが国からのメッセージではないでしょうか。

「せっかくまん延防止解除になったのに、飲み会もやりづらいし、旅行にも出かけづらい」

とお感じの方は、それはそれで、正しい感覚なのです。

小市民としてはやりづらいことなのですが、外食も旅行も自分が受け入れられる範囲内で行動する。それでも周囲からある程度とやかく言われるのは仕方がない。そんな状況が続きそうで、リベンジ消費には程遠く、本音を言うとこの春の日本経済はまだまだ不安です。

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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』など。

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(経営コンサルタント 鈴木 貴博)

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