一言添えるだけでも効果絶大…仕事相手の反応が劇的に変わる「5種類の枕詞」
プレジデントオンライン / 2022年4月6日 9時15分
■会話に添えるだけで、相手との関係が円滑になる
とある営業チームにおける「上司と部下の会話」を、ストーリー形式で書いています。
登場人物:新人営業マンのマサルと中堅リーダーのノリコ、二人を導く敏腕マネジャーのカピバラ部長
【マサル】「僕は質問するとき、こんな基本的なことを聞いてもいいのかな、と不安になって、質問するタイミングを逃してしまうのが悩みです」
【カピバラ部長】「相手に質問しようとしても、つい気後れしてうまく聞けないことがあるよね。そんなときに有効なのが一言添えるだけの枕詞だ。
例えば、基本的なことを聞くのが申し訳ないと思ったら『基本的なことで恐縮ですが……』と添えてから聞く。そうすれば、こちらも基本的な質問だと心得た上で聞いている、ということがお客様に伝わるね」
【ノリコ】「先日、チーム内でお客様の担当変更をしたんです。引き継いだ後任の営業メンバーが、前任者がすでに質問していそうなことを聞くと、重複感がマイナス印象になってしまうのではと心配していました。枕詞はそんなときにも使えますね」
【カピバラ部長】「うん。そのときは『すでに前任からお伺いしているかもしれませんが、大事なことなので、改めてお聞きしたく……』とひと言伝えるのがいいね。そう伝えれば、そこまで気分を害されることはない。
また、ガードが固いお客様の場合、枕詞をうまく使えば、あらかじめ想定されるブロックを未然に防ぐ、というメリットもあるんだ。枕詞には主に5種類ある。では、これらを一つずつ解説していこう」
①きっかけをつくる枕詞
②予防線を張る枕詞
③切り込む枕詞
④踏み込む枕詞
⑤考えを促す枕詞
■質問に入るための「きっかけ」をつくる
【カピバラ部長】「まず、きっかけづくりの『枕詞』だ。いくつか言い回しを紹介するね」
・ベストなご提案をしたいのでお伺いしたいのですが
・正確なお見積もりをつくるためにお伺いしたいのですが
・御社のビジョン実現のためにお伺いしたいのですが
・御社の課題解決のためにお伺いしたいのですが
・いただいたお時間を無駄にしないためにお聞きしたいのですが
・一方的にお話ししすぎてはいけないのでお聞きしますが
【ノリコ】「メンバーにはいつも、商談で一方的に話しすぎないよう指導しているんですが、この枕詞があれば、きっかけをつかんでヒアリングモードに入れそうです」
【カピバラ部長】「話が本筋からそれたときに、話を戻すきっかけをつくる枕詞もある。お客様の雑談が長引いて、なかなか本題に切り込めず困る場面があるよね。
具体例を出すと、『集客の課題』をヒアリングしているのに、お客様が『上司に振り回されて業務が忙しい』ということで、上司への愚痴が続くようなケースだ。
こんなとき、提案のためにどこかで話を戻したいが、なかなか割って入りづらい。そこで有効なのが、お客様の発言を捉えて介入する方法だ。
『○○様の忙しさが解消されるようお手伝いしたいので、一つ伺ってもよろしいですか』
こうして、自分が話したい本題の方に、再び会話を展開することができる。枕詞をうまく使えば、会話の流れをハンドリングしやすくなるんだ」
■聞きにくいことが質問しやすくなるフレーズ
【カピバラ部長】「枕詞のメリットとして、『聞きにくいことが質問しやすくなる』もあるんだ。商談で『こんなこと聞いていいのだろうか』と思うこと、ないかい?」
【マサル】「僕のようなレベルだと、『こんな初歩的なことを聞いてもいいのかな』がよく頭に浮かびます」
【カピバラ部長】「そういうときは、気分を害されないように次の言葉を添えるといいね」
・基本的なことで恐縮ですが
・間違いがあってはいけないのでお聞きしますが
・大事なところかと思うのであえてお伺いするのですが
・もしかしたら以前にもお伺いしたかもしれませんが
【カピバラ部長】「いわば『予防線を張る枕詞』だ。『こんなことを聞いていいのかな?』という不安から聞く質問でも、かえってお客様には『丁寧に確認しようとする姿勢』が伝わる。
また、少し応用的な話になるが、次のような切り口もあるよ」
・先日○○○とおっしゃっていた点が気になっておりまして
【カピバラ部長】「『なんでいきなりこんなことを聞くのか』と唐突に思われないよう、過去の文脈を捉えた枕詞にするというわけだ。お客様が以前におっしゃっていたことだから、きちんとそれを受け止めて話を進めたいという意図が伝わるね。
こんなことを聞いていいのかなと思っても、予防線を張りながら聞いていけばいい」
■『一つだけ』を添えれば、NOとは言われない
【カピバラ部長】「枕詞には『こちらから切り込むための布石』というのもある。例えば、お忙しくて時間がないお客様や、気が短いお客様に質問するときに有効だ。忙しいお客様には、次のように、『一つだけ』と添えれば、だいたいNOとは言われない」
・最初に(もしくは最後に)一つだけよろしいですか
・お忙しいと思いますので一つだけよろしいですか
【カピバラ部長】「忙しくて気が短いお客様には、誰しも苦手意識を感じるだろう。相手がせっかちでも、萎縮する必要はない。堂々と質問するために、枕詞で配慮を示すようにしよう。
大事なのは、『お客様の忙しさを理解している』と言葉で示すことなんだ。忙しい人は、基本的に、自分の忙しさが周囲に理解されていないことにストレスを抱えている。
特に経営者は、常に重要な判断を迫られる中で、部下が思うように動いてくれないもどかしさを抱えている。それを理解した上で質問できれば、営業に対する評価は上がるよ」
■発言のハードルを下げて「踏み込む」
【カピバラ部長】「慎重派で本音が見えないお客様に、発言のハードルを下げて、実際の内情を聞く枕詞としては次のような言い回しが有効だ」
・個人的なご意見で構いませんので
・可能な範囲で構いませんので
【カピバラ部長】「特に、現場の担当者は『自分の発する一言が会社の公式見解と受け取られることを懸念して、話したがらない』ケースがあるので、そんなときにこんな枕詞が使える。
例をあげると、競合のサービスを利用しているお客様へ課題をヒアリングするときに『今お使いのサービスについて、使い心地の個人的な感想としてはいかがですか?』と聞いてみると、一つの意見という形で話してくれることがあるよ」
![ハードルを飛び越えるビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/670/img_f99c481b5b4ab1823a23260879173639988139.jpg)
■ぽろっと内情を引き出す魔法のワード
【ノリコ】「特にコンペになると、当社がどのぐらいの順位につけているかを聞こうとしても、公平性の観点から情報を伝えられないと言われることがあります」
【カピバラ部長】「そういうときは、こんな言い回しを試してみよう。一言添えるだけで、ぽろっと内情を教えていただける可能性が高くなる」
・公平性に支障が出ない範囲で構いませんので
・御社のルールに抵触しない範囲で構いませんので
・現在の暫定順位で構いませんので
【カピバラ部長】「『検討状況を答えられない=絶対に教えられない』というわけじゃない。
建前を理解した上で配慮ある質問なら、お客様も安心して話しやすくなることは覚えておこう。
■制約を外すことで、相手の考えを促す質問の仕方
「枕詞には、『特殊な前提をつけて相手の発想を刺激する』ものもある」
・もし仮に、○○○という点がクリアされたら
・もし仮に、わがままを全部言えるとしたら
【カピバラ部長】「典型的なのは、コストに厳しいお客様に『もし仮に、予算の問題を考えなくてよいとしたら』と聞くケース。
![高橋浩一『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/0/200/img_50ed5776c2af4d129d89e544087d1b0f333425.jpg)
価格の制約を外すことで、相手の考えを促すことができる。
また、担当者は賛同されているものの、社内に反対者がいるときはこんな枕詞がある。
『もし仮に、その方が賛同してくださっているとしたら、他に懸念点はありますか?』
これで隠れた懸念をあぶり出し、もう他にないことを確認したら、反対者の方にどう納得してもらうのかを、カウンターパートとしっかり詰めていくというわけだ。
他にも、すでに他社サービスを利用中のお客様に『もし仮に、他社様のサービスをご利用でなかったら』と質問することで、当社提案に対する感触を聞くことができる。
こんなふうに、質問の仕方を工夫するだけで、お客様の反応がだいぶ変わってくはずだ」
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TORiX株式会社 代表取締役CEO
東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(現ブーズ・アンド・カンパニー)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)、『なぜか声がかかる人の習慣』『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
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(TORiX株式会社 代表取締役CEO 高橋 浩一)
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