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「すべてを満たす提案がほしい」大事な客から無理難題を吹っかけられたプロ営業マンの答え

プレジデントオンライン / 2022年4月11日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

もし大事な取引先から「すべの条件を満たす提案がほしい」と無理難題を吹っかけられたら、どう答えればいいのだろうか。営業コンサルタントの高橋浩一さんの著書『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)より、「要件整理」に効果的なフレーズを紹介する――。(第2回)

■要件整理は『具体化』『網羅感』『優先順位』で考える

とある営業チームにおける「上司と部下の会話」を、ストーリー形式で書いています。

登場人物:新人営業マンのマサルと中堅リーダーのノリコ、二人を導く敏腕マネジャーのカピバラ部長

【マサル】「先日お客様から、新規の集客が増える提案をしてくれと言われました。ですが、ターゲット顧客へのリーチ、リーズナブルに試せることや柔軟な設定ができることなど、相手にとって重要なのか……。ニーズや課題要素がいっぱい出てしまって、どう提案しまとめればいいのか、頭の中がこんがらがってしまいます」

【カピバラ部長】「ふむ、相手から情報が多く引き出せたというわけか。そんなときは『要件整理』だね。

要件整理とは、やりたいことや要望、課題、お悩み、判断基準についてお客様から出てくるキーワードをズレがないよう提案前に確認することだ。要件整理では『具体化』『網羅感』『優先順位』の3つのポイントを押さえていこう」

■何がマストで何を求めているか、正しく把握する

【カピバラ部長】「具体化は、洗い出したいくつかのキーワード(図表1の、今回の要件)に対して、それぞれがどんな内容なのか、当社がどのように応えられるのか、具体性を明らかにすること。それによってお客様は、提案の価値を理解できるようになる。

『問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』
『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』より

図表1の左から右に行くに従って、キーワードに対する課題解決がどう実現するかが示されている。これが具体化のプロセスだ。

網羅感は、キーワードを漏れなく捉えられているかという視点だ。図でいうと①~⑤の項目で、お客様が求めていることをひと通り押さえているとわかれば安心できる。くまなく洗い出されていることが大切だ。

優先順位は、いくつか並んだキーワードを、重要な順番に並べることだ。

図の中では①→②→③→……と、意味のある順番となるよう並べている。

そして、数ある要望の中でも、何がMustで何がWantなのか、正しく把握することによって、有効な提案ができるね。

お客様と話していて、曖昧なことや不明点が出てきたとき、お客様と一緒に考えを整理するためにも『具体化』『網羅感』『優先順位』の3つの視点は役に立つ。これから、3つのポイントを解説していこう」

■トヨタ式「なぜなぜ5回」で課題を因数分解

【カピバラ部長】「まず、お客様から出てきたキーワードが、そのままではまだ具体的でないときがある。

もし、お客様が『リピート率が下がって困っている』とおっしゃったときには、まだ漠然としていれば、『もう少し詳しく教えていただけますか?』と聞くのが基本だ。

そうすると、『昔ながらのお客様はサービスを使ってくれているが、最近新しくユーザーになったお客様はすぐ離れてしまう』といった情報が出てくる。あるいは『最近行ったキャンペーンや販促のやり方がうまくいっていない』のような話を聞けるかもしれない」

【マサル】「やっぱり、要件整理でも深掘りは大切ですね。具体化するためにどのぐらい質問を投げるべきかの目安はありますか?」

【カピバラ部長】「最低限の目安としては、『お悩みのキーワードを聞いたら、必ず1回は深掘りの問いを投げてみる』というのがおすすめ。

トヨタの共通言語として、有名な『なぜなぜ5回』がある。5回聞くかどうかは置いておいて、『1回聞いただけで終わらせない』ということは意識しておくとよいだろう。

■相手が求めている基準は明確にしておく

【カピバラ部長】「また、別の観点もある。仮に、課題の具体化をして『当社はこのように解決できます』と提示したとき、お客様が提案をGoodかBadか判断できるようにすることだ。

例えば、『リピート率を上げる提案』をするとしよう。このとき、お客様は『リピート率を60%から80%に上げたい』と思っているのに、こちらの提案が『せいぜい70%までしか上がらない施策』だったら、お客様の求めている基準は満たせないよね。

この場合『リピート率は、現状の60%から80%へと、20%上げる必要がある』という基準を聞き出しておく必要がある。解決のイメージが湧くまで、色々な角度から具体化のための問いを投げてみよう」

生産性はアプローチに手を差し伸ける
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

■漏れを防ぐために、事前に相手の課題を想定しておく

【マサル】 「具体化についてはわかりました。ただ、一つのキーワードを具体化できても、他にも何かあるのでは? と不安になりそうです」

【カピバラ部長】「そんなときは『他にはありませんか?』という深掘り質問を使って、漏れがないかどうかを確認していこう。漏れがないか確認したとき、すぐに返事がくることもあるが、お客様がまだそこまで考えきれていないこともある。

その場合、選択肢付きクローズドクエスチョンを使って、『例えば、他のお客様からは〈業務効率化〉や〈組織の巻き込み〉のようなことも出てくるのですが……』というふうに、いくつか具体例を出してもいいね。網羅的に押さえるポイントは、商談の前に、ありそうな課題の仮説を立ててから臨むことだ」

【ノリコ】「私は新人時代、商談の事前準備をするとき、『お客様から出てきそうな課題やお悩みは何か』を考えて、ノートに書き出していました」

【マサル】「さすがノリコさんですね! 僕も見習います」

■優先順位をはっきりさせるための効果的な質問の仕方

【カピバラ部長】「網羅的に課題を洗い出せたとして、お客様の中には『あれも大事』『これも大事』ということで、『全て満たす提案をください』と言われるケースがある。

高橋浩一『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)
高橋浩一『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)

もちろん全部を解決できたら理想的だが、予算やリソースには限度があるから、どこかで優先順位をつけなければいけないね」

【ノリコ】「これはいつも悩ましく思っています。優先順位をはっきりさせるため、どんな角度から聞いていったらいいですか?」

【カピバラ部長】「一番スタンダードなのは、『今あがった三つのキーワードの中で、最も大事なものはどれですか?』のような聞き方だね。お客様から『一番大事なのは〈組織の巻き込み〉です』のように、答えがスッと返ってくれば問題ない。

しかし、難しいのは『どれも大事です』や『自分には判断がつきません』のように、その場で明確な回答が得られないときだ。

そしたら、もう少し突っ込んで聞いてみよう。『もし、同じくらいの価格の提案が2つきたとしたら、次はどこを見て判断しますか?』と聞くのも一つのやり方だ。『価格が同じなら、次に納期の安定性を見て判断します』という答えが返ってきたら、お客様の判断軸を詳しくつかめるね。

あるいは、この三つの中で絶対に妥協できないものはありますか?

もしくは、AとBどちらを選びますか?

このように比較で聞くのもアリだ。必ず優先順位を明確にしてから、提案をぶつけるようにしたいね」

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高橋 浩一(たかはし・こういち)
TORiX株式会社 代表取締役CEO
東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(現ブーズ・アンド・カンパニー)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)、『なぜか声がかかる人の習慣』『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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(TORiX株式会社 代表取締役CEO 高橋 浩一)

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