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どんな意見を持つ相手でも思い通りに操れる「オブジェクション・ハンドリング」のコツ

プレジデントオンライン / 2022年4月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Worawut Prasuwan

仕事相手から想定外の質問を受けたとき、どうすればいいのか。営業コンサルタントの高橋浩一さんの著書『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)より、「オブジェクション・ハンドリング」のコツを紹介する――。(第3回)

■受注率を左右する「クロージング」の10か条

とある営業チームにおける「上司と部下の会話」を、ストーリー形式で書いています。

登場人物:新人営業マンのマサルと中堅リーダーのノリコ、二人を導く敏腕マネジャーのカピバラ部長

【カピバラ部長】「今回は、勝負所で押さえておくべき10の視点をまとめたよ。クロージングまでに欠かせないポイントを網羅したものだ」

①今ここに時間を使っている理由

お客様は何のために貴重な時間を当社に割いてくれているのか、『そもそもの理由』はいつも把握しておきたい。お客様にとっての目的を外してしまうと、どんな提案も響かないからね。

②提案への感触

当社の提案に対するお客様の感触を『ここまでお話を聞かれてみて、実際、いかがでしたか?』と率直に質問してみるといい。

前向きな感触が得られたなら、次に進もう。逆に、まだ十分に腹落ちされていなかったら、焦ってクロージングするより、丁寧に購買意向を高めていくことが大切だ。

③進め方の意向

例えば、『この後、社内ではどのように進めていかれたいですか?』という質問で、目の前の方が当社の提案をこれからどう検討していきたいか、『進め方の意向』についてお客様の口から聞いておこう。

④BANTCH情報

これはすでに説明した予算(B)、意思決定者(A)、ニーズ(N)、導入時期(T)、競合(C)、検討体制(H)だ。特に、これらを統合した『意思決定ルートの情報』が重要だ。

例をあげると、『300万円以上の稟議は、毎月第4金曜日に開催される役員会議で決められる』といった情報だ。もちろん、会議ではなく、特定の人物へ承認を取りに行かれるケースもある。

⑤お客様社内の予定

意思決定に向けて、お客様の社内で何かしらのアクションがすでに計画されているかどうかを確認することが必要だ。

『X月X日の役員会に向けて、来週の上司との定例会議で方向性を相談する。それまでに資料を作成することになっている』など、できるだけ正確につかんでおこう。

⑥検討上のネックや判断基準

『少し踏み込んだ質問になりますが……』などの枕詞を駆使して、クロージングの妨げになる懸念を確認し、払拭していこう。それによって、意思決定をサポートするためのアクションも明確になる。

■「応えなくても怒られない宿題」の意外な効用

⑦ネクストステップ

これは、『お客様社内の予定』とは異なり、『お客様と当社の共同作業』に関わるタスクの話。お客様と二人三脚で案件を前に進めるために、それぞれの持ち帰りタスクをはっきりさせよう。

⑧当社へのリクエスト

当社がお客様へお役立ちできることの確認だ。相手が『もう購買の意思決定できる』という状態ならよいが、そこまでお客様の温度感が上がりきっていないときもある。その場合、『応えなくても怒られない宿題』に言及しておくことをおすすめする。

『今おっしゃっていた○○○の件、当社内でも探してみて、もし良い情報があれば、ご連絡しますね』というトーンで伝えておくのだ。『応えなくても怒られない宿題』があると、こちらからいつでもお客様に連絡するための口実になる。

■判断を迷っている相手には『熱意』が決め手になる

⑨こちらの熱意

接戦の場合、思った以上に『熱意』が決め手になることが多い。迷ったお客様は、最終的に気持ちで判断することもある。

日頃からの姿勢もさることながら、提案時に『御社のお役に立ちたい』という情熱を伝えていきたいね。

⑩直後のコミュニケーション許可

特に、お客様が複数人数の体制で検討されている場合、商談の終わり際に『この後、○○様あてに少しお電話させていただいてもよろしいですか?』のように、許可をもらっておきたい。

お客様に『検討しますので、お待ちください』と言われて、蚊帳の外で結果を待つことにならないよう、フォローするための機会をあらかじめ確保しておく。

勝負所の10か条
『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』より

■異論・反論への3つの対処法

【マサル】「関係がまだできていないお客様からシビアな反応がきて、頭が真っ白になってしまうことがあります」

【カピバラ部長】「なるほど。想定外の厳しい反応がきたときのセオリーも、焦っていきなり答えないことだ。いったん受け止めて深掘りし、相手の発言の裏にある意図を確認することが大切だよ

①その場で答えられないツッコミや質問がきた

感嘆符の付いた若い男
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

お客様から鋭い質問が来て、答えるための知識が足りていないときは『今のご質問は重要だと思うので、よろしければその背景をお伺いしてもよろしいでしょうか?』と、いったん深掘りしよう。

その場で答えられなくても、質問を大切に扱い、背景まで聞ききった上で、持ち帰って責任ある対応をすればよい。

■相手の質問の背景や意図を知るために必要な質問

②費用対効果について懐疑的な反応があった

『費用対効果について、具体的な根拠をいただけませんか』という依頼がきた場合、口頭でロジカルに説明をしても、すぐにご納得いただけないケースがある。

そんなときは、『買いたい気持ちがどのぐらいあるか』のニュアンスを確認しよう。

例えば『承知しました、では社内の該当資料を探してお持ちします。ちなみに、○○様としては、当社のサービスに対して、個人的にはどう思われますか?』と先に感触を聞いてしまうのだ。そうすると相手の質問の背景や意図がわかる。

『買いたい前提だが、他の人に説明しないといけない』場合は、どなたにどう説明するかの場面をヒアリングして、お客様と一緒に説得のロジックを考えよう。

『買う気はないが、とりあえず聞いてみた』という場合は、費用対効果を細かく計算するより、まずは購買意向を引き上げる関係構築エンジンを回すことが必要だね。

③実績や事例に関する挑戦的な質問をされた

事例資料を出したとき、『それは他社さんだからうまくいったんですよね』『当社は特殊ですから』という、挑戦的な反応をされることもある。そこで、すぐムキになって説得や反論にかかってはならない。

『お気になさっているのは、具体的にどんなところでしょうか?』『御社の特殊な事情とおっしゃいますと?』というふうに、相手の反論の裏側にある考えをしっかりつかんで答えていくことが大事だね。

品定め気味の反応を通して、お客様は、営業の受け答えから価値のポテンシャルを見極めようとしている。だから、想定外の反応がきたときほど落ち着いて、まずは深掘りということを忘れないようにしよう。そこから、落ち着いて関係構築エンジンを回せばいい。

ではオブジェクション・ハンドリングについて、ちょっとロールプレイをやってみよう」

■深堀り質問で相手の本音を知る

【ロールプレイ】オブジェクション・ハンドリング(良い例)

【営業役】「ご提案を聞かれてみて、いかがですか?」

【お客様役】「私としては導入したいとは思っているのですが、使いこなせるかが不安です」

高橋浩一『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)
高橋浩一『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA)

【営業役】「ご不安に思われているところ、もう少しお伺いできますか?」

【お客様役】「当社の社員はそれほどレベルが高くないので、難しさを感じるかもしれません」

【営業役】「社員の方のレベル、ということですね。なぜそのようにおっしゃるのか、詳しくお聞きしてもよいですか?」

【お客様役】「過去に、似たような別のサービスを導入したんですが、うまく使いこなせなかったんです。やはり、当社にとっては時期尚早だったのかなと」

【営業役】「それは大変でしたね……。差し支えなければ、具体的にどういうことが起こったのか教えていただけませんか?」

【お客様役】「『このツールを導入すれば解決する』と当時のベンダーさんに言われて、現場のメンバーを集めて操作説明会をしていただいたんですが、結局、ツールは使われずに、投資が無駄になってしまったんです」

【営業役】「なるほど、そのようなことが過去におありだったんですね。それはたしかに、慎重になるのも無理はないと思います。ちなみに、そのツールが使われなかったのは、本当に社員の方のレベルが問題だったのか、気になりますね……」

【お客様役】「う~ん、よく考えてみると、社員のレベルというより、現場向けのコミュニケーションを丁寧に行わなかったことが問題だったと思います」

【営業役】「意外に思われるかもしれませんが、実は定着化と社員のスキルレベルは必ずしも相関しません。まさにおっしゃるように、どのぐらい導入時の社内コミュニケーションを丁寧に行うかの方が大切です。当社が社内向けの情報共有をどう支援させていただくか、資料をお見せしますね」

【マサル】「かなり深掘りをしてから、お客様の気づきを促すんですね」

【カピバラ部長】「そう。そして、思い込みに気づいていただいてから、落ち着いてオブジェクション・ハンドリングに入るんだ。これは、異論や反論のパターンごとにみっちり練習した方がいい。部内でも、朝会の場を使ってロールプレイをやっていこう」

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高橋 浩一(たかはし・こういち)
TORiX株式会社 代表取締役CEO
東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(現ブーズ・アンド・カンパニー)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)、『なぜか声がかかる人の習慣』『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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(TORiX株式会社 代表取締役CEO 高橋 浩一)

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