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「何でもいいから朝食は食べたほうがいい」産業医が伝授する"いい眠り"を手に入れる毎日のルーティーン

プレジデントオンライン / 2022年4月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masa44

春になると「仕事中に眠くなる」「よく眠れない」という悩みを抱える人がいる。対策はあるのか。産業医の池井佑丞さんは「季節の変わり目による環境変化に、身体が追いついていない場合が多い。自律神経を整えることが改善につながる」という――。

■春は眠りにまつわる問題を抱える人が多い

4月も半ばとなり季節はすっかり春になりましたね。とはいえ、まだ肌寒い日があったり、昼夜の寒暖差が大きな日があったりと、季節の変わり目特有の過ごしにくさを感じている方も多いかと思います。

「春眠暁を覚えず」という言葉がありますが、春は眠りにまつわる問題を抱える方が増える季節です。読者の中にも、朝起きられない、日中眠くなるなど実感されている方がいらっしゃるかもしれません。夜寝つけないという声も聞かれ、倦怠(けんたい)感・集中力の低下や気分の落ち込み・イライラするなどの不調がある場合には、十分な睡眠がとれていないことに起因している可能性もあります。

春先に睡眠の問題が生じる原因としては、急激な環境変化に身体が追いつけていない場合も多いです。今回は睡眠を中心に春先に注意したい不調の原因と対策についてお話ししたいと思います。

■春先の睡眠不足の原因の一つは「日の出が早くなること」

はじめに、人の睡眠時間の長さが季節によって変化することはご存じでしょうか。一般的に睡眠時間は、冬は長く、夏は短くなる傾向があります。季節ごとの平均睡眠時間を調査した結果、夏と冬とでは30分の差があったそうです。また、太陽が出ている時間の長さに反比例して睡眠時間は短くなるそうで、睡眠時間と日照時間とには相関があることが示唆されています。(白川修一郎ほか「日本人の季節による気分および行動の変化」『精神保健研究』39; 81-93 1993年)

さらに、日照時間は睡眠と関係の深いホルモン(メラトニン・セロトニン)の分泌にも関連します。このメラトニンとセロトニンの関係について簡単にご説明します。メラトニンは眠気を引き起こすホルモンで、夜間に分泌量が増えます。セロトニンは日中の太陽光を浴びることで生成され、外界が暗くなるとこのセロトニンを原料にメラトニンの合成が行われます。

こうして作られるメラトニンですが、強い光や明るい光を受けることで分泌が低下することがわかっています。春先に睡眠不足になりやすい要因のひとつとして、日の出が早くなることに付随してメラトニンの分泌量が減少することが考えられます。

■春先は自律神経の調整が追いつかず、心身のバランスを崩しやすい

この時期に陥りやすい不調の一因としては、自律神経の乱れも無視できません。自律神経は神経系のひとつです。神経系は動物の器官で、外界からの情報の伝達と処理を担っており、体内の各組織や器官が安定した状態を保てるように調節をする役目があります。神経系は多数の神経細胞から成り、それぞれ担当する機能が異なるのですが、その中でも自律神経は呼吸器や循環器、消化器など、意思とは無関係に働く器官の調節を担当しています。

自律神経は、体を緊張させる交感神経とリラックスさせる副交感神経に分かれます。24時間休むことなく働き続けていますが、交感神経は活動時や日中に、副交感神経は安静時や夜間に活発になりやすいです。私たちの身体は日々さまざまな外界の環境変化にさらされていますが、正反対の機能を持つ交感神経と副交感神経とが拮抗(きっこう)的に作用し合って心身のバランスを保っています。

春先は身体や睡眠を冬モードから季節の変化に順応させる移行期間です。そのため気候や日照時間など環境の変化に、自律神経による調節が追いつかず心身のバランスを崩しやすいというわけです。

たんぽぽ
写真=iStock.com/kazoka30
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazoka30

■「起きられない」は副交感神経、「眠れない」は交感神経が優位

(1)著しい眠気により朝起きられない・日中眠くなるケース

朝起きられない・日中眠くなるなどの症状が出る場合は、副交感神経が優位な状態であることが考えられます。自律神経はさまざまな環境変化から心身のバランスを保つ役目を担うことはご説明したとおりです。

気温が高い場合には心拍や呼吸を落ちつかせて体温を低下させるために副交感神経が働きます。逆に気温が低い場合は熱を逃さぬよう血流を低下させるために交感神経が優位になります。気温が上がり日照時間が増える春は、本来ならば交感神経が働き活動的になるはずの日中などにも副交感神経が優位になりやすく、眠気が生じてしまうと考えられます。

(2)眠れないケース

夜寝つけない場合は、夜間に交感神経が優位な状態となっていることが考えられます。眠りにつくためには、交感神経優位の状態(興奮した状態)から副交感神経優位の状態(リラックスした状態)への切り替えが必要になります。私たちの身体は心身のストレスを感じると、交感神経が優位に働きます。

現代社会はストレスが多いと言われますが、春は季節の変わり目であることや、新年度を迎えることによる環境の変化等、この時期特有のストレスを感じる方が多い季節でもあります。過度なストレスにより自律神経に乱れが生じることで、副交感神経への切り替えがうまく行えなくなり、夜になっても交感神経優位の興奮状態が維持され、結果として寝付けない可能性が考えられます。

■自律神経の切り替えがうまく働くようにする必要がある

以上、春先の気候変化や夏に向け日照時間が延びることへの対応が自律神経へ影響すること、その結果睡眠に関する問題(眠気・眠れない)が起こる仕組みについてご説明しました。このような不調の緩和のためには生活リズムを整えることが効果的です。そのポイントをご紹介します。

まずは、私たちの身体が心身を整える仕組みを知ることが大切です。といっても、大まかな1日の流れを覚えていただければよいと思います。1日(地球の自転による昼夜変化のリズム)は24時間ですが、ヒトの体内時計は実は24時間よりも少し長いです。朝太陽光を浴び、日中動き、夜は暗い中で過ごすといった規則的な生活をすることでそのずれを日々修正しています。

カーテンを開ける女性
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

自律神経の面では、活動をする日中は交感神経が優位に働き、夜間には副交感神経優位となるのが正しい反応です。そのためには朝は副交感神経→交感神経へ、夜は交感神経→副交感神経へと、自律神経の切り替えがうまくなされる必要があることを覚えておいてください。以上をふまえ、理想的な生活リズムを保つために心がけていきたい習慣を挙げていきます。以下、時間帯ごとに見ていきましょう。

■朝食は必ず食べ、午前中は積極的に日光を浴びる

・朝

朝の起床時にはまずカーテンを開け外光を取り入れます。体内時計と実際の生活時間との間に生じたズレをリセットし、交感神経への切り替えを促します。朝食は必ずとり、脳や胃腸を目覚めさせましょう。決まった時間に朝食を食べるようにすれば、おのずと生活リズムが整いやすくなるのでおすすめです。バランスのとれた朝食を摂取できるに越したことはありませんが、まずは必ず朝食をとることに重きを置いて実施したいところです。

・日中

午前中の光は積極的に浴びるとよいです。前述した通り、この時間帯の光を浴びることで体は活動的になる一方、夜間に眠りを誘う作用のあるメラトニンが分泌されるためです。平日の日中はオフィスで過ごすことがほとんどという方も多いと思いますが、朝の通勤時など電車に乗る場合は窓に近い場所を選んだり、休憩時間は外に出たりして意識的に光を浴びる工夫をできるとよいです。

■照明は暖色系に、寝る直前のスマホはNG

・夜

夜間は、交感神経を刺激する作用のある青白い光は避け、暖色系の明るさを抑えた照明にするのがよいでしょう。副交感神経優位の状態への切り替えを促し、自然と睡眠へ移行することが期待できます。パソコンやスマートフォンの画面から発せられるブルーライトも覚醒を促すので、できれば寝る前には使用しないほうがよいです。頻繁に画面を見る方はブルーライトカットの眼鏡を取り入れてみるのもよいと思います。

また、就寝直前に夕食をとることはおすすめしません。就寝中に消化器官が活動するので睡眠の質低下に繋がります。スムーズに入眠できる環境作りの一環として、夕食は就寝時刻の3時間前には済ませるのがよいでしょう。

以上、私たちが本来持つ体の仕組みを理解し、日常生活でちょっとした意識をすることが、心身のバランスを整えることに繋がります。ご紹介したように光をうまく活用して体内時計を正常に保つことも併せて行うとさらに効果的です。

現在睡眠にお悩みの方はもちろんですが、お悩みのない方にもできることから取り入れていただくことをおすすめします。春先だけに限らず、季節の変わり目は同様のリスクが生じます。意識的に実践を続けることで生活リズムが整い、不調を予防する効果も期待できると思います。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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