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子供が円形脱毛症や胃潰瘍に…中学受験にハマった親の"言葉の暴力"本当の恐ろしさ

プレジデントオンライン / 2022年4月13日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

リモートワークの普及により、子供の受験勉強を近くで見られる親が増えた。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「親子が一緒にいる時間が長くなることで、良くない方向へ進むことがある。教育虐待につながらないように注意してほしい」という――。

■親のリモートワークが子供にとって逆効果になっている

コロナ禍3年目の春を迎え、今ではすっかりリモートワークが定着したという人は多いだろう。コロナ前の共働き家庭は、日中家にいる時間が少なく、子供の受験サポートが十分にできないことが気がかりだったに違いない。それがリモートになったことで、家で子供の勉強を見てあげられるようになった。これを良しと捉える親は多い。しかし、私は、残念な方向へと加速しているように感じる。

まず、親と子が一緒にいる時間が長くなると、親は子供のダメなところばかりに目がいくようになる。なかなか勉強を始めないと「早く勉強をしなさい!」と急かし、ダラダラと勉強をしていると、「そんなんじゃクラスアップできないわよ!」と発破をかけ、問題が解けなければ「なんでこんな問題を間違えるのよ!」と責める。親としては、「今私がここで言ってあげないと、この子はダメになってしまうかもしれない」という親心で言っているつもりなのだろう。だが、それを毎日言われ続ける子供は、たまったもんじゃない。

■中学受験で多いのは「言葉の暴力」による教育虐待

以前、体験授業で訪れたことのある家庭の話をしよう。その家では、母親が子供の受験に過度に熱心で、毎日のように「○○をしなさい!」「△△をしなければ合格はできないわよ!」と子供に圧力をかけていた。低学年の頃は従順だった子供も、日に日にストレスがたまり、高学年になった頃には母親に反抗するようになった。一度、「家出をしてやる!」と大騒ぎになり、警察沙汰になったこともある。

だが、この子の場合は、ちゃんと自分の気持ちを外に吐き出しているので救いがある。子供によってはストレスを抱え込み、「どうせ僕なんて……」と無気力になってしまうこともある。それがさらにひどくなると、円形脱毛症や胃潰瘍といった身体に不調が表れてしまうケースもある。ここまで来ると、教育虐待と言っても過言ではない。

いずれにしろ、そこまで子供を追い詰めるのは、親に原因がある。しかも、家庭という閉ざされた空間で行われているので、まわりは気づきにくい。また、小学生の子供は、まだ精神的に幼いため、善悪の区別がつかず、親の言うことがすべてと思い込んでしまうところがある。親自身も、わが子のために良かれと思って言っているので、相手を追い込んでいる自覚はまったくない。

虐待というと、手をあげるといった暴力を連想しがちだが、中学受験で陥りやすい教育虐待は、圧倒的に言葉による暴力が多い。また、親がいつもイライラしていたり、ため息をついていたりという表情や態度も、子供を無意識に傷つけている。

■「将来のため」と言うものの、子供の気持ちがすっぽり抜けている

では、なぜ親はそこまでムキになってしまうのか?

一番は子供に対する期待値が高いからだ。「これからは個性が大事」と言われてはいるが、いまだに「高学歴であることが人生を幸せにする」と思い込んでいる親は少なくない。中学受験をさせるのは、「良い学校」に入れるため。この場合の「良い学校」とは、偏差値の高い進学校を指すことが多い。

子供がそれに見合った学力を持っていて、かつその学校の校風を気に入っているのならいいだろう。だが、実際は偏差値が15以上もかけ離れているのに、無理に目指させようとする親がいる。すると、子供の気力や体力を無視して、大量学習をさせてしまうことになる。そして、できない子供を責め、追い込むのだ。

親の暴走は、そのまた親からのプレッシャーから来ることもある。例えば、代々医者の家庭の場合、「医学部に入れるのは当然のこと。医学部を目指すためには、中学受験ではこのレベルの学校に合格していなければいけない」と、祖父母が親にプレッシャーをかけていることもある。どちらも「わが子(孫)の将来のため」と思って言っているのかもしれないが、問題はそこに「子供の気持ち」がすっぽり抜けていることだ。

医師
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokoroyuki

■責めるのではなく、どうしたら良くなるかを考えてほしい

子供に勉強を頑張ってもらいたいのなら、親は子供が気持ちよく勉強ができるように考えるべきだ。

なかなか勉強が始められないのはどうしてなのだろうか?

成績がなかなか上がらない原因は何なのだろうか?

勉強のやり方に問題があるのだろうか?

できないことを責めるのではなく、どうしたら良くなるかを考えてみてほしい。例えば、朝に計算ドリルをやらせたいと思っているのなら、夜は遅くまで勉強をさせず、早めに寝かす。朝が弱い子なら、前の晩に机にドリルを開いた状態で置いておくと、手を動かしやすくなる。そして、ちゃんとやったら、しっかり褒めてあげること。そうやって、まずはすぐに実行できそうなことから始め、きちんとできたらその努力を認めてあげてほしい。

■「塾に行くのは当たり前」「宿題はやるのが当たり前」ではない

受験生なのだから「塾に行くのは当たり前」「出された宿題はやるのが当たり前」と思ってはいけない。小学生の子供の生活は、本来であれば遊びが中心のはずだ。思い出してみてほしい。自分が小学生だった頃、ここまでたくさん勉強をしていただろうか。中学受験を経験している親なら、今の中学入試の中身を見てほしい。自分が受験生だった頃、ここまで難しい問題を解いていただろうか。

今の中学受験の問題は、本当に難しい。また、身につけなければいけない知識が膨大にある。遊びたいのを我慢して、高い目標に向かって取り組んでいること自体が、すごいことなのだ。だから、できるだけ子供のいいところに目を向けてあげてほしい。「ご飯前にちゃんと宿題が終わったね。頑張ったね! おつかれさま」「前回のテストでは計算ミスがあったけど、今回は1つもなかったね。すごいね!」。ほめる内容は何だっていい。子供が頑張ったこと、前よりも良くなったことを見つけて、言葉にしてあげる。それが、モチベーションアップにつながるはずだ。

花畑で深呼吸をしている少女
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■自ら進んで楽しく勉強できる環境をつくる

「受験生なのだから勉強をするのが当たり前」ではなく、小学生の子供にはちゃんと遊ぶ時間やぼーっとする時間を確保してあげること。その時間がないと、子供は勉強に集中することができない。メリハリは不可欠だ。

また、子供に自由裁量権を渡すことも大切だ。子供の学習スケジュールを親ががっちり決めている家庭は多いが、「今日は何の勉強をするか」「どこまでやるか」といった学習スケジュールは、できるだけ子供に決めさせるようにしよう。そうすると、「自分で決めたことだから」と頑張るようになる。子供だけで決められない場合は、親がいくつか案を出して、子供に選択させるというのもいいだろう。

大事なのは、無理やり勉強をさせることではなく、自ら進んで楽しく勉強ができるようにすることだ。「うちの子はまだ幼いから、私が管理しないとダメ」と決めつけず、わが子の力を信じて見守る。そして、少しでも成長を感じたら、大いにほめる。子供を監視するのではなく、子供を観察し、良いところを見つけることができれば、リモート生活はメリットが大きい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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