週休2日で月収300万円…目立たないけれど安定着実に高収入な「スモールビジネス」の9業態
プレジデントオンライン / 2022年4月11日 12時15分
※本稿は、武田所長『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)の一部を抜粋・再編集したものです。
■目立たないがストレスのない日々を送り安定・着実に稼ぐ人々
私は新卒で外資系コンサルティングファームに入社し、独立後、様々な立場で多様なビジネスに取り組んできた。テクノロジーを武器としたリスクの高いベンチャービジネス、多くの社員を雇用し組織の能力で勝負するビジネス、比較的大きなアセットを活用する不動産運用に近いビジネスなど多岐に渡る。
その中で意図しなかったタイプのビジネスとの出会いがあった。それがスモールビジネスである。
独立当初は多くの起業初心者と同じく、野心的な気持ちで大きな会社・大きな売上を目指した。数年の期間を経てようやく事業は軌道に乗り、安定した利益を生み出せるようになったが、その分、マネジメントや金融機関・株主との付き合いで相応の苦労があった。
一方、適当な気持ちで週末の時間だけで始めた、社員も雇用していないようなビジネスがいとも簡単に年間数千万円の利益を生み出していった。このビジネスは一過性で終わるどころか顧客からの強いニーズを受け、安定的に利益を拡大させ続けている。
徐々に属人性も低下し、自分が費やす時間も減り続けている。これが素晴らしいスモールビジネスとの出会いであった。
こうしてスモールビジネスの可能性に気付いてから複数のスモールビジネスに取組み始めた。それらも容易に利益を生み出していった。自らの経験のみならず、決して目立たないが、非常に多くの人がスモールビジネスで成功を収め、ストレスのない日々を送っていることも知った。
ビジネスの世界で目立つのは大企業とベンチャービジネスであり、小規模ながら安定・着実な経営を実現しているスモールビジネスが表舞台に出ることはほとんどない。
しかし、そこには素晴らしい世界が広がっていることをスモールビジネスに自分で参入し、初めて知ったのだ。
本書はこのようなスモールビジネスをどのようにして生み出すかという具体的な方針を解説した本である。
■ビジネスに正解はないが正攻法はある
現在世にあるビジネス本というのは主に2種類である。ビジネススクールで生み出された大企業経営向けか、ベンチャービジネスの大成功者が書いた自叙伝に近いものである。
私はスモールビジネスを実践するにあたり、これをスモールビジネス向けに再度解釈する必要があった。
実践の過程ではさらに、多くの新しい考えを必要とした。そしてかなり苦労しながらであるが、実践を通じて成功率が高い方法論を学んできた。これらの経験を通じ、スモールビジネス向けた実践的な指針を、初心者でも取り組みやすいようにまとめたものが本書である。
スモールビジネスはベンチャービジネスとは目的が異なる。そのため、ベンチャー起業向けのビジネス本に書かれている内容とは異なる知識、メソッドが必要となる。例えば善とされるイノベーションはスモールビジネスにとって必要ではない。
社会や産業構造の変革を目指す必要もない。イノベーションが全てを救ってくれる、全員が目指すべきなどと考えてしまうのは極端な考えであり、安定着実なスモールビジネスにとっては害ですらある。
起業を考えるとついつい発信力が強いベンチャービジネスの考えに大きな影響を受けてしまいがちであるが、それは数としてはマイノリティでありハイリスクを許容し短期間で成長を目指すメソッドであると認識して欲しい。スモールビジネスにおいてそのメソッドは、決して確実な勝利を目指す方法ではない。
ビジネスには正解はないなどと言われることはあるが、正攻法はある。
幸運なことに、私は様々なビジネスの失敗と成功を見届ける立場にあったが、多くのビジネスが失敗するのは正攻法違反をしているからであると知った。私が過去失敗した事例を振り返っても、それはやはり焦りや人間関係の都合から正攻法をおろそかにしてしまったときであった。
是非本書に書かれている内容を実践して頂き、当然のように、再現性高く、楽に成功し安定着実なスモールビジネスを築いて欲しい。
■安定した高収入と追求しがいの感じる仕事を与えてくれる
本書で目指すスモールビジネスとは以下のものと定義する
・事業価値の最大最速成長よりも安定着実を重視し、関係者に対して利益をもたらす
・売上は100億円以下を目安とする
・自由度を重視し、オーナーの生き方を制約しないように、自己資本での運営を基本とする
我々はどう生きるべきか。これは非常に難しい問いであるが平易な表現を敢えて使えば、多くの人が以下については同意するのではないだろうか。
・仕事だけに留まらず充実したプライベートを過ごしたい
・共通の価値観を持ち、時間・精神的に余裕のある友人と過ごしたい
・自分ならではの独自性が欲しい
・追求しがいを感じる目標が欲しい
・気の合わない人間とは付き合いたくない。対人関係のストレスを避けたい
これらは全てスモールビジネスが与えてくれる。
一方で、言うまでもなく、企業の勤め人としてこれらを手に入れるのは難しい傾向にある。時間的な余裕や安定した高収入、そして追求しがいを感じる目標のある状態を、生涯保証してくれる企業が増加していくとは考えられない。
2022年4月現在は新型コロナウイルスの影響もあり、この傾向は更に加速している。
では、ベンチャー起業はどうだろうか。高いリスクを取る分、大きなリターンを期待出来る。資金調達環境や起業に関するノウハウもこの10年程で大幅に改善した。ただしその一方で、強いプレッシャーに晒されながら生活は避けられず、それでいて成功率も決して高くはない。
そう考えると、高いリスクや強いプレッシャーを許容してでも実現したいことがある人には向いているが、万人向けの選択肢ではない。
それではどこに救いがあるのか。そこで推奨したい有力なオプションの1つがスモールビジネスである。
■週休2日で、毎月300万円を自由に使える世界
前項で列挙した項目は全てスモールビジネスが与えてくれると書いた。
こんなうまい話があるか、と言われそうであるがこれは現実にある。そして実現のハードルは決して高くない。
私は様々なスモールビジネスオーナーとの付き合いがあるが、先に挙げた事項を高い水準で満たしている人間は大勢存在する。当然生存者バイアスがかかっており、全員が容易に到達出来ることではないが、非常に難しいことか、特殊な技能が必要かと問われればそんなことはない。
自由に使える金を月300万円以上持ち、週2日は休めて平日の仕事時間も柔軟に調整出来る。ビジネス起点で多くの出会いがあり、自分が面白いと思う仕事を追求している。こんな人間はスモールビジネスの世界には大勢存在する。
まずはビジネス初心者としてこの程度を目指してみるのはどうだろうか。
この地点に到達した後は多くのオプションが存在する。
安定・着実のスモールビジネス経営を続ける経営者も人間もいれば、安定に飽きてリスクを高め、ベンチャービジネスに乗り出す人間もいる。
ベンチャービジネスの成功者の中には、スモールビジネスでの成功を経てベンチャービジネスに乗り出した事例が多く存在する。スモールビジネスを売却してしばらく休憩する人間もいる。
スモールビジネスのひとまずの成功は様々な生き方へのパスポートである。
外部の株主もおらず成長の義務も売却の義務も背負っていない。自分の生き方を高い自由度を持って選ぶことが出来るのだ。
■スモールビジネスに向いていない人
スモールビジネスに向いていない人の特徴を最初に挙げよう。
・自律性がない
・好奇心、学習意欲がない
・リスク選好姓があまりに低い
これを裏返せばそのままスモールビジネスに向いている人の特徴になる。何故これらの要素が重要なのか簡単に説明しよう。
・信頼を大切にしない
技術などで決定的な差別化手段を持たないスモールビジネスにとって、人との繋がりは最重要とも言える差別化要素になる。人との信頼を積み上げる事ができない場合、スモールビジネスの経営は非常に難しいものになる。
・自律性がない
スモールビジネスオーナーは自らタスクを考え、こなしていく必要がある。それが出来なくても叱ってくれる人はいない。発注がなくなるだけである。タスクがないと昼まで寝てしまうような人はあまり向いているとは言えないだろう。
・好奇心、学習意欲がない
永続的なビジネスは存在しない。1つのビジネスが成功したとしてもスモールビジネスの寿命は数年である。常に新たな機会を探索し取り組む必要がある。そのために好奇心、学習意欲は必須なのだ。
・リスク選好姓があまりに低い
ベンチャービジネスのように大きなリスクは取らずとも、安定したスモールビジネスは絶え間ない投資活動により実現する。動いていないから安定するのではなく、細かい投資を繰り返すことで安定するのだ。この状態を目指すにあたり、数十万円の投資も許容出来ない程リスク選好姓が低いことは致命的である。
■「少数の人しか持っていないだろうが強いニーズ」を見つける
さて、最初にスモールビジネス適しているビジネスの基本条件から考えてみよう。自分が考えているアイデアがこの条件に適合しない場合、黄色信号だと思って欲しい。
基本条件1.課題自体に多くの人が気付きづらい
ビジネスが生み出される基本フローは
課題に気づく
解決策を考える
実行する
である。
「実行する」をしてしまう人数が競合の人数になる。競合の数は必ずしも市場規模とは比例しない。何故ならビジネスに取り組む人は全員が全員、冷静に取り組んだ際の旨味を計算し参入するわけではないからだ。殆どの参入者は流行やその場の雰囲気で参入を意思決定する。
そのため、多くの人の目に触れるような気付かれやすい課題は、必然的に参入者が過剰になる。勿論「多くの人が課題を感じる=大きな市場が期待出来る」ということであるが、少ない投資で勝利まで駆け抜け、かつ安定的に稼ぐにことは、非常に難しい市場と言える。
スモールビジネスにおいては、そもそも課題が存在することすら一般人には知られていない課題に取り組むことを推奨する
こう考えると、自分が一般的な消費者として感じた課題を解決するというアプローチはその時点で筋が悪い。多くの飲食、小売店が苦しんでいるのは常に過剰な参入者に晒されているからと考えることも出来る。
自分が普通に生活しながら発見した課題については、最初から警戒すべきである。逆に、仕事を通じて「少数の人しか持っていないと思われる強いニーズ」を発見したなら、それは宝の可能性がある。常にそのようなニーズを血眼で探すとよいだろう。
誰かが不満を述べている、一般的には見られない特殊な行動を取っている(不愉快だがそうせざるを得ない)という事象には常に注目し、何故その事象が発生しているかの背景を考えるべきである。
■属人性はスモールビジネスの味方
基本条件2.自分の趣味、経験があるからこそ出来ること
「目立たないが深刻である課題」を発見出来たとしよう。同じ課題に取り組む競合と比較し、何故限定的な量しか投資出来ないスモールビジネスオーナーである自分の提案が選ばれるのか。その優位性を担保するのは、特にスモールビジネスの場合は自分の能力である。
自分の能力とは今までの趣味もしくは仕事を通じて身についていることが多いだろう。自分だけにしか出来ないことなどと大げさに捉える必要はないが、一般人よりは自分が上手く出来そうな内容に絞り込んだほうがよい。
一方「好きなことを仕事にしなさい」と安易に言っているのではない。この考えを文字通り受け取ってしまうと失敗へと一直線となる。趣味から考えるビジネスの危険性については本書の別の項目で詳しく解説する。
基本条件3.属人性がある
一般にはスケール(拡大)しづらいという観点でビジネスの敵とされる属人性であるが、スモールビジネスにとっては味方である。そもそもスケールすることを目指していないからである。属人性が強いビジネスであることは素晴らしい。
属人性があるからこそ、大企業やベンチャーはスケール出来ず参入しづらいのだ。ただ、スモールビジネスが全く拡大しないかというとそんなことはなく、自分1人で売上を十分に立てることが出来るようになれば、属人性を低下させるために投資を行い、自分の業務量を徐々に減らすことも出来る。
属人性があるビジネスのため、当然、一定規模以上にスケールさせようとすると苦労するだろう。しかし、スモールビジネスを目標地点としているのならこれでよいのだ。
■褒められたい欲求を排除し、大企業のゴミ拾いをする
基本条件4.称賛されない
取り組んでいること自体を称賛されるビジネスはその時点でかなり危うい。まず称賛されるビジネスは、市場機会に対し過剰な参入を招く。更に言えば困難な課題に挑むことが称賛される場合が多く、これは成立しづらいビジネスであることを意味する。
ビジネス全般に共通であるが、「褒められたい」というビジネス自体に不要な欲求を経営者自身が排除することにより、成功率を高めることが出来る。褒められた所で全く儲からない。不必要な感情からは自由になり、素直に利益のみを追求しよう。
基本条件5.既に類似サービスに金を払っている市場が存在する
「既に市場が存在する」ということは、あなたが提供しようとしている商品・サービスには競合が存在し、金が支払われていることを意味する。
これは非常に重要なポイントであるが、見落とされる傾向が強い。ビジネスというと課題解決が最重視されるが、課題を解決した結果、どの程度儲かるのかは常に事業検討の最終段階に設けられる。
とにかくまずは、類似サービスにどの程度金が流れ込んでいるかを知ろう。全く新しいものに金を払えというのは非常にハードルが高く、投資家のピーター・ティールが提唱したように、スイッチングを引き起こすには従来手法よりも10倍良いものである必要がある。新しいものは従来のものよりも画期的である必要があるのだ。
スモールビジネスではそんなことを追求しない。既に金が払われており、サービス提供者も儲かっている状態の市場に参入し、その金を少しかすめ取る方法を必死に考えて実行するのがスモールビジネスである。大企業は大量の機会損失を出している。そのおこぼれを貰うだけで数億円の売上は立つのだ。エクセレントカンパニーのゴミ拾いをしよう。
■鉄板のスモールビジネスの9業態
儲かっているスモールビジネスオーナーのビジネスモデルは似ていることが多い。前項で説明した基本条件の1〜5全て満たすビジネスが少数ということだろう。
私の周囲の儲かっているスモールビジネスオーナーは、以下のビジネスを行っていることが多い。
・広告運用(D2Cを含む場合もある)
・人材派遣・SES(広義の人材派遣を指す。常駐型コンサルティングを含む)
・コンサルティング
・システム開発
・不動産運用
・営業代行
・教室
・フリーランスマッチング
本書で紹介する領域選定と組み合わせれば、これらのビジネスは上で挙げた条件を満たすことが比較的少ない資本で、前述した基本条件1〜5を満たすことが可能である。他にもスモールビジネスに適しているビジネスがあると思うが、まず上のモデルを検討してみてはいかがだろうか。
とにかく、小規模ながら安定・着実に稼いでいるスモールビジネスを発見したら、マイナーチェンジコピー品を作れないだろうか? と考えて欲しい。
このとき、ビジネスモデルに差別化を求めるのではなく
・仕入先
・そこに関連するコンテンツ
こそが差別化を生むと考えよう。
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経営者
大学卒業後、戦略系コンサルティングファームに入社。退職後20以上のスモールビジネスを展開し、それぞれ売上年間数百万円〜10億円。トレンディ・ハイリスクなベンチャービジネスではなく「安定・着実」に売上100億円程度を目指すスモールビジネスを推奨する。スモールビジネスの事例や手法を解説・紹介し強い個人が活躍する時代を作るという狙いのもとに初の著書『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)を執筆。
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(経営者 武田所長)
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