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TバックのGジャンが1000万円超…90年代に日本人が買い占めたヴィンテージデニムが急騰中のワケ

プレジデントオンライン / 2022年4月13日 10時15分

藤原氏が名付けた“Tバック”。Gジャンの46インチ以上のサイズからTバック仕様が見られる - 写真提供=KADOKAWA

数十年前に発売されたジーンズのパンツやジャケットといった「ヴィンテージデニム」の取引価格が、この数年、急激に上昇している。原宿の古着店ベルベルジンの藤原裕さんは「人気の高まりで、世界中で在庫が枯渇している。本来は米国製なのだが、90年代までに日本人が買い占めてしまったので、アメリカのバイヤーが日本へ買い付けに来る“逆輸出現象”が起きている」という——。

※本稿は、藤原裕『教養としてのデニム 日本人が見出したヴィンテージの価値』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■1000万円超の「プレ値」で取引されるGジャンも

ファッションの世界には、「ロレックス」の腕時計や「ナイキ」の限定スニーカー、「ルイ・ヴィトン」と「シュプリーム」といった人気ブランドのコラボアイテムなど、トレンドの動きと付加価値が付くことにより、時を経てさらに高額になるアイテム、俗に言う“プレ値”現象が存在します。

近年、ヴィンテージデニムではこのプレ値現象が起きており、ベルベルジンでも、5年で価値が5倍に跳ね上がった「リーバイス®」の“501® XX(ダブルエックス)”や、手前味噌ながら私が名付けた“Tバック(オーバーサイズのGジャンにある背面のディテール)”には1千万円を超えるものが出てまいりました。

■「サイズが合わなくても買う」その理由は…

ひと昔前まで、高額なヴィンテージデニムは一部のマニアが購入するジャンルでしたが、最近では、そこまで興味がなさそうな方が試着もせずに購入するケースが増えています。

藤原裕『教養としてのデニム  日本人が見出したヴィンテージの価値』(KADOKAWA)
藤原裕『教養としてのデニム 日本人が見出したヴィンテージの価値』(KADOKAWA)

明らかにサイズが合わないにもかかわらず、数十万円もするデニムを平然と買っていかれるので、お話を聞くと、投資目的であることが多数です。腕時計や楽器のように細かなメンテナンスを必要とせず、スニーカーのように著しく劣化しないヴィンテージデニムは、投資対象として魅力があるという考えは私も理解できます。

私は現在44歳で、人生の大半をヴィンテージデニムにささげていますが、この世界に興味を持ち始めた10代の頃から価格はなだらかに上昇していました。それでも現在のように、ここまで短期間で急騰することはありませんでした。

1995~97年頃のヴィンテージブームは日本国内に限られていたことでしたが、2010年以降はSNSが世の中に浸透したことで、タイやマレーシアなど東南アジア諸国の富裕層を皮切りに世界中に広まり、①ヴィンテージデニムの相場が世界市場で共通になったこと、さらに②多国間でのインターネット通販や個人間取引が一般化したこと、③投資目的の方が参入してきたことが大きな要因になっていると考えています。

「リーバイス®」501® XXの価格推移
画像提供=KADOKAWA

■掘り出し物のためなら…紛争地域に行く猛者も

あまり知られていない事実ですが、デニムを含むアメリカのヴィンテージ衣類にはじめて付加価値を付けたのは日本人です。1970年代、日本の貿易会社や商社のバイヤーたちは頻繁に渡米し、アメリカ全土のデニム店のストックルームから、日本人のサイズに合うものを根こそぎ買い漁って持ち帰ったのです。これが後に社会現象となった“アメカジブーム”を生み出すきっかけのひとつです。

1970年代より始まった日本のアメカジブーム以降、日本人バイヤーたちがアメリカ全土で根こそぎ買い漁り、90年代中盤頃になると、アメリカ国内はすでに品薄状態。スリフトショップ(寄付された古着や家具などを販売する店)や昔の倉庫、老舗の洋品店に至るまで、ありとあらゆるヴィンテージデニムを掘り尽くしてしまったのです。

ちょうどその頃、ヴィンテージブームはヨーロッパやアジア諸国にも波及し始めていたこともあり、当時のバイヤーの中には、アメリカ以外の国へ行って買い付けをする人も出てきました。昔から紛争の激しい中東諸国には、アメリカなどから救援物資が届き、その中にヴィンテージアイテムが眠っていると言われていたこともあり、パキスタンやアフガニスタンなどを回って買い付けを行っていた猛者もいました。

世界屈指の危険地帯で襲撃に遭い、崖の上から車を落とされた、地元のギャング集団に拳銃を突き付けられたなど、過激な体験談も耳にしますので、保険加入と防犯対策は必須です。

■米国のバイヤーが買い付けに来る“逆輸出現象”

このように、世界中でヴィンテージデニムが枯渇する中、質と量の両方において、日本は群を抜いて充実しています。海外の“デニムLOVER”から言わせると、日本ではお宝級のヴィンテージデニムがサイズや色落ちごとに整頓して陳列されており、しかも長時間の移動をしなくても古着ショップがエリアごとに密集していて、買い付けには最適なのだそうです。

私がディレクターを務めるベルベルジンにも、ラルフ ローレンのデザインチーム、ディオール メン ディレクターのキム・ジョーンズ、イェ(カニエ・ウェスト)やデイヴィッド・ベッカムなど目の肥えた玄人たちがこぞって買いに来ています。ここ数年は、アメリカのバイヤーが、日本へヴィンテージデニムを買い付けに来るという“逆輸出現象”が起きていますが、この流れはしばらく続くと思います。

お宝級のヴィンテージデニム分布図
画像提供=KADOKAWA

ゴールドラッシュの金鉱労働者の作業着として生まれたデニムが、長い年月を経た21世紀の日本で別の価値を生む。“21世紀のゴールドラッシュ”は、間違いなくここ日本で起きているのです。

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藤原 裕(ふじはら・ゆたか)
原宿の老舗古着店「BerBerJin」ディレクター
1977年、高知県生まれ。別の名を“デニムに人生を捧げる男”。店頭に立ちながらも、ヴィンテージデニムアドバイザーとして人気ブランドの商品プロデュースやセレブリティのスタイリング、YouTube配信やメディアでの連載など、多岐にわたりデニム産業全般に携わる。マニアからの信頼も厚い、近年ヴィンテージブームの立役者。BerBerJin オフィシャルページ

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(原宿の老舗古着店「BerBerJin」ディレクター 藤原 裕)

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