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キャリアのある人ほど危ない…新しい職場でいきなり「微妙な人」に認定されてしまう3つの落とし穴

プレジデントオンライン / 2022年4月12日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

新しい職場にいち早くなじむためには、どうすればいいのか。人材コンサルタントの井上和幸さんは「前職での実績やキャリアを前面に出すと失敗する。功を焦らず、まずは職場で良好な人間関係を築くことから始めるべきだ」という――。

■新職場で好スタートを決めるために気をつけるべきこと

4月から新しい職場で働き始めたという方は多いでしょう。そこで好発進をするためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

私は現在、幹部クラス(役員、部課長)に特化した転職とキャリア形成を支援しています。そのなかで、新しい職場でのスタートダッシュに失敗する人たちを数多く見てきました。実例をもとに、私が見てきた「3つの落とし穴」を紹介しましょう。

■落とし穴①「いきなりマウントを取ってしまう」

新しい職場に移った人は、着任後、「まずは力量を見せねば」と気合が入るものです。

ここでやってはいけないのは、意気揚々と、いきなり改革案を提示したりすることです。

外資IT企業から日系大手消費財メーカーに転職したAさん(45歳)は、DXを推進したい同社にスカウトされて入社しました。

その期待値を十分に感じていたAさんは、着任早々メンバーたちに「次回、プロジェクトキックオフ会議を開催したいと思います」と周知します。

寝る間も惜しんでプランを作成し、当日の会議の段取りもあれこれ思案したそうです。

「まず、これを話して、そこで皆に感想を聞き、その上でこの計画をお披露目する。よし、これで完璧だ。皆、俺を見る目が変わるに違いない」とその時は笑みがこぼれたと言います。

当日、自信満々の新規プロジェクトプランを流れに沿ってプレゼンしていきますが、ふと、Aさんは気がつきます。

「あれ、皆、なんか食いつきが悪いな……」

途中、質問や感想を投げかけてみても、返答は返ってきません。参加者たちの顔を見ていくと、誰もが微妙な表情でした。

結局、キックオフ会議は事前のイメージとは裏腹に、重い沈黙のまま終了。次回に向けてのステップも見えなくなってしまいました。いったい、Aさんの何がまずかったのでしょうか?

■職場の本当のコミュニケーションを見ていない

Aさんが考えるべきは、「あなたにとって」ではなく、「メンバーたちから見て」どうだったのかです。

これは「賢い」とされるリーダータイプの方が陥りがちな罠です。

転職先の職場・チームの状況をしっかりとつかまずに理想的提案を始めても、彼らからすれば「現場からズレている」と思われるだけなのです。

「ちゃんと組織のことや事業のことも聞き、理解した上でやりましたよ」

そうおっしゃる方も多くいらっしゃいます。ですが、彼らは職場の本当のコミュニケーションを見ていないのです。

表向きの情報のみならず、実際にはどのような稼働なのか。

業務手順通りにことは運んでいるのか。

また、チーム内での本音のコミュニケーションはどうなっているのか。

功を焦って自分の発信から始めるよりも、まずは新たな上司や同僚、部下たちの話を聞き、良好な関係を築くことに時間をかけましょう。

その上でプランを描き、メンバーたちに問いかければ、全く異なる反応・反響が得られるはずです。

オフィスで働くビジネスパーソン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■落とし穴②「前職ではこうだった」という出羽守になる

転職に成功した幹部クラスの方にも、意外な落とし穴があります。

これまでの経験や専門性を買われて入社したわけですから、「自分の専門性やプロフェッショナリティを提供しよう」と頑張ります。それ自体は当然良いことですし、転職先から期待されていることでもあります。

大手住宅メーカーから同業の中堅住宅メーカーへと転じたBさん(52歳)は、着任後、最初のミーティングで同僚や部下たちに、以下のようにあいさつしました。

「私は前職まで戦略策定で実績を残してきました。いろいろと教えてあげるから、なんでも聞いてください」

沈黙の後、メンバーの一人が「ありがとうございます、ぜひお願いします」と言葉を発したそうですが、その後、Bさんに仕事を聞きにくる人は現れなかったそうです。

Bさんに悪意は全くないのです。

「この会社には前職で使っていたあのシステムを入れたほうがよい」「この部署には、前職でうまくいっていたKPI管理を入れよう」

提案は素晴らしいのですが、Bさんはこの会社で新参者であることにまったく気が付いていないのです。

■「教えてあげる」ではなく、「教えてください」

同僚たちからすれば、うちのことをわかってないくせに、いくら同業大手から来たからといって、いきなり勝手流でこれまでの会社のことを持ち込まれても困る、と思っているわけです。

メンバーたちは「教えてあげる」ではないだろう、と内心思っていることにBさんは気がつくべきでした。

郷に入っては郷に従え。まず発信すべきメッセージは「教えてあげる」ではなく、この会社のことを「教えてください」なのです。

■落とし穴③組織に潜む「確証バイアス」に気づかない

AさんやBさんのように、着任後、自分自身の気合と情熱とは異なる方向へと周囲の受け取り方が進んでしまった場合、その人に対する人物評価は「微妙な人」となってしまいます。これは絶対に避けたいところです。

笑って彼らの男性の同僚の背後にある 2 つの若い女性
写真=iStock.com/kzenon
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kzenon

というのも、組織には「確証バイアス」が潜んでいるからです。

確証バイアスとは、その人が抱いたイメージ、仮説や先入観に合致した情報・データだけを求めるような傾向のことです。要は、一度イメージが形成されると、そのイメージを回復することは難しいのです。

「今度来た部長、勝手に進めてばかりで誰も言うこと聞いてないらしいよ」「あの課長の主催するミーティング、微妙だよね。自分がほとんど喋って、結局外れたアイデアばかり進めてる。これじゃ、半年持たないんじゃない」「あの人では、結局決裁取れないから、関連するプロジェクトには巻き込まれないようにしなきゃね」

こうした風評はすぐに社内全体に巡ります。部下からの相談もされなくなるし、案件やプロジェクトも回ってこなくなる。

社長や役員からも「彼は採用失敗だったか……」となってしまったら、取り返しがつきません。

■一度ついてしまったレッテルをはがすには…

解決策は、ここで踏ん張り、新たな確証バイアスを周囲につけるしかありません。

まずは「社内のことを教えてください」とあなたから積極的に聞いて回り、理解に務める。その上で、「ということは、これはこんな風にやれるとよいですよね」と提案・相談する。

周囲の同僚や部下たちは、こうした姿をちゃんと見ているものです。時間はかかりますが、確証バイアスは徐々に変わってゆくでしょう。

周囲の状況把握、そのための主要なメンバーと密なコミュニケーション。当たりどころが分かったら、積極的に改善案などを提案する。

この着任初期の鉄則PDCAをしっかり回すことができていれば、新天地での今後の展望は明るいものとなること間違いありません。

■転職の成功を決める着任後のスタート

転職が成功か失敗か、決めるのは前職での経験やキャリアではありません。むしろそれらがあればあるほど、落とし穴にはまってしまうのです。

大事なのはひとえに着任後のコミュニケーションの仕方です。

最高のスタートダッシュを決めている人は、上記した3つの心掛けを守っています。

今回ご紹介した実例を参考にして、転職者の皆さんには落とし穴にはまることなく、新しい職場での好発進をしていただければと思っております。

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井上 和幸(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP、人材コンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。著書は『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など。

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(株式会社 経営者JP、人材コンサルタント 井上 和幸)

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