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ネット検索より速くて正確…初めての街で「安くてうまくて雰囲気のいい店」を見つける"ある方法"

プレジデントオンライン / 2022年4月14日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/aon168

初めての街でネット検索に頼らずに「いい店」を見つけるにはどうすればいいか。『人は見た目が9割』の著者で非言語コミュニケーションに詳しい竹内一郎さんは「私の親友に店探しの天才がいる。彼は『鳥の目』で観察することで、瞬時にいい店を探し当ててしまう」という――。

※本稿は、竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■30年間コスパがよくて雰囲気がいい店を案内してくれる親友

私の親友・Kは、コストパフォーマンスのよい飲み屋を探す天才である。Kは演出家で30年来の付き合いだ。Kと友人たちとで、芝居がはねた後、劇場近くで一杯やろうということになる。

竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)
竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)

そして、初めて行った場所でも、Kが見つけた店は、コスパがよくて雰囲気がいい。決して外さない。それが30年も続いているのである。

Kは私の一つ年上で、もちろん「ぐるなび」などは見ない。若い俳優は、Kが全く知らない街で、いい飲み屋を見つけるのが、不思議で仕方がないようだ。

芝居がはねた後に飲む時は、お金の持ち合わせのある人もいれば、ない人もいる。だから、客単価3000円弱の店が丁度いい。

駅前の大通りには、チェーン店が並んでいる。「鳥貴族」「金の蔵」「磯丸水産」などに入れば、値段的には手頃である。しかし、学生や若者の宴会とぶつかると、うるさくて会話どころではない。

また、チェーン店なので味はそれなりではあるが、それ以上でもない。初めて行った街なら、多くの人は無難にチェーン店を選ぶことが多いだろう。

ぐるなびなどの検索サイトを利用する人もいる。だが、ぐるなびの“推薦店”もやはり、それなりなのである。予想以上ということはまずない。それが、誰もがタッチできる情報の宿命だ。

Kは、駅前大通りから暗い脇道にすっと入っていく。そして右に、左に折れて、細い道にある、地元のリピーターが来るような、居酒屋やイタ飯屋を探し出す。

そこに入ると、うるさい若者はいないし、ほどほどの込み具合だし、料理も抜群というほどではないが、うまいものが出る。30年前は、私もKの動きが不思議で仕方なかった。初めて行った街で、なぜ街路灯も少ない暗い路地を、くねくねと入っていくのか――。

■駅前のビル群を見渡し、「鳥の目」で地図を再現する

家の近くに行きつけの呑み屋がある人ならわかるが、リピーターを相手にしている店は、道幅の狭い裏通りに面していることが多い。大通りからは見えにくいので、「一見(いちげん)さん」は相手にしないという商売である。

そういう場所に店をつくろうという店主は、家賃が安いという条件を第一にする。店主が名人級の板前なら、家賃の高い駅前にも店を出せるだろう。

しかし、腕が“並”だと、コスパと店の雰囲気が勝負の分れ目になる。アットホームでくつろげ、地元の人がリピーターになる店は、オーナーの手料理が出て、値段も手頃で、うるさい客も来ない。

Kは、そんな店を探し出していたのである。そういう店は、ぐるなびにはあまり載っていない。

なぜ、Kはそんな店を探せるようになったのか。以下は、私の推測である。

Kは理系脳の持ち主である。駅前のビル群を見渡し、「鳥の目」となって、地図を脳の中で再現するのである。道幅の細い道には、大きなビルは建っていない。脳の中の地図に沿って、2~3階建ての建物が並んでいる、にぎやかでない場所へ向かう。

もちろん、さびれている場所にある店が必ずいい店とは限らない。だが、常連が居ついている店は「見た目」でわかるものだ。センスはいいが嫌な商売っ気がない。

Kは建物群の「見た目」から、地図を再現し、地元のリピーターを相手に商(あきな)っている店を割り出しているのである。

かくして、駅前のチェーン店に入らないから、うるさい若者のバカ騒ぎに巻き込まれることはない。ぐるなびの情報を信じて「やっぱりこんな感じだったのね。なんだかなあ」という思いをすることもない。

コスパがよく雰囲気がいい店に行きつく情報は、誰にも平等に示されている。しかし、さらに建物群を見て、駅前地図を頭の中で再現しようとする意志・能力は誰にでもあるわけではない。これは自分で意識して育てなければ獲得できないのだ。

■うまくないラーメン屋にも行列ができている理由

うまいラーメン屋とまずくなるラーメン屋を見抜く方法もある。

東京では有名ラーメン店の行列は、おなじみの風景の一つである。昔はうまかったのかもしれないが、それほどうまくない店にも行列はできている。例えば、東京・池袋にある超有名店などは、近年「うまい」という人に出会ったことがない。

東京のラーメン店
写真=iStock.com/RichLegg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichLegg

同店の店頭には、主人の写真はないが、多くの同系統の店の店頭には、店主が笑顔で写っている写真が飾ってある。そして、そのほとんどの店は、有名になった頃には味は落ちている。理由ははっきりしている。

まず、ラーメンを商(あきな)おうという人は、どんな人か。ラーメンが大好きで、本当にうまいラーメンをお客に届けることが喜びで店を開いたという人は、一握りである。というのも、ラーメン店は短い修業期間で手っ取り早く独立・開業できる業種だからだ。

すし職人やフランス料理のシェフになろうと思えば、最低でも10年の修行が必要である。そこまで面倒なことはしたくない人がラーメンを選ぶ。

加えて、ラーメンをおいしく作ろうと思えば、出汁(だし)をとるのにいい材料を使わなくてはならないし、麺も製麺所に「高い粉を使って、指定の手順通りに、丁寧に練り上げてほしい」と注文を出さなくてはならないので、麺の仕入れ値も張る。商品の値段は競合店とそれほど変えられないので、利益率は当然下がる。

■店主の本音は「大概の客には味がわからない」

それでも、最初はお客が来ることが嬉しい。やがて、グルメ本に掲載され、テレビに取材されるようになる。お客はどんどん増える。その頃には、店頭に店主の写真が鎮座することになる。

やがて「大概の客には味はわからない」とばかりに、原価率を抑えて、だんだんまずくなる店が出てくる。「大概の客には味がわからない」というのが店主の本音である。

舌の肥えている人はほんの一握りで、ほとんどの客は、なんとなく有名だからという理由で来ている。店主は「どうせ味はわからないのだから」と、どんどん手を抜いてしまう(実はわずかだが、味のわかる客も来ているのだが……)。

まずくなるパターンにはもう一つある。のれん分けや支店をたくさん出しているうちに、“ラーメン店の親父”から実業家になっていくのである。

もちろん、その過程でテレビには何度も出ている。店主の顔は、店頭だけでなく、料理雑誌の広告などにも進出してくる。「おいしいものをお客に食べてもらいたい」より「利潤追求、コスト・カット」が大事な目標になってくる。

加えて“社長”の気持ちとは裏腹に、支店の店長は「安い給料で、人より頑張ることはない」という気持ちになり、材料にも調理にも手を抜き始める。味は必然的に落ちる。

おいしいラーメンを作るのは、社長が見回りに来る日だけになってしまう。

うまいラーメンを、こつこつと作り続けているラーメン店は本当にわずかだ。そういう店主は、自分を売ろうという気持ちは少ない。だから、あまり店頭に自分の写真は置かないものだ。

また、マスコミに取り上げられて、チャラい客が押し寄せても困るので、基本的に取材は受けない(マスコミに出なくても、常連客がたくさんついているから困らない)。

日本のラーメン店のオーナー
写真=iStock.com/RichLegg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichLegg

私の郷里・久留米市(福岡)は豚骨ラーメン発祥の地だが、そこで一番の人気店の店主は、毎朝4時台に起きて、5時から仕込みを行っている。主人は、仕事のできる締まった顔をしている。

厨房に朝4時台に電気が点いているのも、主人の面構えも、ちゃんと「見た目情報」として発信されている。

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竹内 一郎(たけうち・いちろう)
劇作家、演出家
1956(昭和31)年福岡県久留米市生まれ。横浜国大卒。さいふうめい名義で漫画『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案を担当。演劇集団ワンダーランド代表。著書に『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(サントリー学芸賞)、『人は見た目が9割』など。撮影=山岸伸

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(劇作家、演出家 竹内 一郎)

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