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メールの書き方に悩む人は永遠に幸せにはなれない…ストレス人間に共通する"悪い思考回路"

プレジデントオンライン / 2022年4月17日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

なぜストレスはたまるのか。英ケンブリッジ大学のメンタルヘルス研究者である著者は「完璧を追い求める人は、決断するまでの選択肢が多すぎて疲れきってしまう。何事も『ほどほどでよい』と思うことでストレスの少ない生活を送ることができる」という――。

※本稿は、オリヴィア・リームス『STRESS FREE』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

■「決められない」は人間にとってストレスの種

アムステルダム大学の研究により、決めるべき内容が複雑であるほど、最初の直感に従ったほうがいいことがわかっています。

「どのタオルを買うか」などの、比較的やさしい選択であれば、メリットとデメリットを秤にかければ決められます。一方、「どの家具や車を買うか」のような複雑な判断では、意外にも、無意識の脳に従うほうが良い選択ができるといいます。

直感を信じることで、より良い決断を下せるのです(*1、2)

決められないと、人間はイライラします。そのうえ、日ごろから迷いがちなら、それは大きな足かせとなって、肝心なときにあなたに二の足を踏ませるおそれがあります。

決めるまでに長いあいだ迷う人もいます。最良の製品を見つけようとして、メールの文面を完璧にしようとして、何を注文するか決めようとして、何時間も費やす。そうしてようやく決めても、自分の選択にやっぱり満足できず、「あっちにしておけばよかったかな……」などと考え続ける。

■人間には「追及する人」と「満足する人」がいる

どう決断するかは、その人の生き方に大きな影響を及ぼします。ものごとをやり遂げるか、傍観したままでいるか。与えられたチャンスをつかみに行くか、それとも尻込みするか。そうしたことを決定づけてしまうのです。

心理学者のバリー・シュワルツは、人間は意思決定の仕方によって複数のタイプに分けられることを発見しました。そうしたタイプのうち、ある人々は「追求する人」、別の人々は「満足する人」と呼ばれています(*3)

前者の「追求する人」には、あなたもどこかで会ったことがあると思います。ひょっとしたら、あなた自身がそうかもしれません。

■こだわりが強いために行動が遅れ、疲れきってしまう

「追求する人」は、手に入るすべての情報を集め、そのひとつひとつを残らず吟味したうえで決断を下す人々です。たとえば、コートを新調するとなったら、できるだけ多くのショップに行き、できるだけたくさん試着してから、どれを買うか決断します。「最高のもの」を見つけたいから、そんな行動を取るわけです。コート、パソコン、さらには結婚相手も、(自分にとっての)ベストチョイスであることを望みます。

あなたが「追求する人」で、家の備品が壊れたから修理を頼むことにするとします。けれども、修理先を見つけるのは容易ではないはずです。近所の修理屋を残らず調べ、評価を端々まで読み、ネットを何時間も見て回ったあとで、ようやく「ここにしよう」と決めるのですから。これは時間がかかるし、くたくたにもなります。

「追求する人」は、こだわりが強いうえに細かい点が気になるので、決断を先延ばしにすることが多く、それゆえ行動が遅れてしまうのです。

どうしてそうなるのでしょうか? じつは、何かを選んだりあらゆる可能性を調べたりといった作業は、とてつもなくエネルギーを消費するのです。確かに、徹底したリサーチから、これぞというものが見つかることもあります。が、そのころには、「追求する人」は疲れきっています。気力がないので、見つかったものを喜ぶこともできません。

代わり映えのないあまりにも多くのオプションが目の前に
写真=iStock.com/syolacan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/syolacan

■「ほどほどでよい」という重要なルール

一方、「満足する人」は何かを買うとき、選択肢をいくつか見比べて、ある程度納得できるものがあれば、それを買い求めます。完璧である必要を感じていないので、たいていは「追求する人」よりもストレスの少ない生活を送っています。

そんな「満足する人」は、あるひとつの重要なルールに従っており、そのおかげで優柔不断にならずにすんでいます。

そのルールとは、「ほどほどでよい」と思うこと。完璧であることにこだわっていないから、あとでもっと良いものが出てきても落ち込まないのです。

ところが、「追求する人」は、いったん決めたら変更が利かないとわかっていると、ますます決断が鈍りがちになります。「今の選択肢よりいいものが出てきたらどうしよう?」という具合に、いつでももっと良いものを探し求めています。そして、そのことが「追求する人」を幸せから遠ざけているのです。

■選択肢が多すぎると結果は出ず、満足度も低くなる

あなたが「追求する人」なら、この変化の速い、物質主義の世界に生きるのは大変なことでしょう。

今日、わたしたちはかつてないほどの選択肢を手にしています。スマホをちょっとタップすれば、おびただしい数の食品、テレビ番組、ビデオゲーム、夢の旅行先が目に飛び込んできます。あなたが「追求する人」なら、そんな市場で手に入るものをすべて調べてから商品を買いたいと思うはずです。でも、その選択肢が何十、いや何百もあるときに、いったいどうすればそんなことができるのでしょうか?

ここから重要なポイントが見えてきます。わたしたちは、選択肢が多すぎるとかえって選べなくなるのです。ある実験で、被験者にチョコレートを見せたところ、提示された選択肢が多かったとき(30種類)よりも、選択肢が少なかったとき(6種類)のほうが、実際にチョコレートを買う率は高かったという結果が出ています(*4)。また、選択肢が限られていると、買ったものにより満足できることもわかっています。

文章を書くなどの作業においても、同じ現象は見られます。学生に作文をさせると、少ない選択肢から作文のテーマを選ぶ学生のほうが、多くの選択肢から選べる学生よりも完成度の高い作文を仕上げます(*5)。まさに、「少ないほど良い」というわけです。

■「完璧」というゴールには永遠にたどり着けない

目に入るものや、身のまわりにあるものが少なければ、選択は楽になります。選んだものに満足もできます。この感覚はある意味、断捨離やシンプルライフにも通じるような気がします。必要なものだけを買い、今あるものをもっと大切にすれば、日々の幸福度が上がるという考え方です。

オリヴィア・リームス『STRESS FREE』(ポプラ社)
オリヴィア・リームス『STRESS FREE』(ポプラ社)

オンラインショッピングや、恋人候補の顔写真が底なし沼のように次々と現れるマッチングアプリでも、「ほどほど」のルールに従うほうが満足のいく可能性が高いのは、そのためです(*6)

数カ月ごとに電子機器のサイズが大きくなり、人々がますます頻繁につき合ったり別れたりを繰り返すこのめまぐるしい世界で、「完璧」を求めることは、いわば陽炎のゴールラインに向かって走るようなものです。一歩踏み出すたびにゴールもまた遠ざかり、永遠にたどり着くことができない。同じように、「完璧な」製品や家やキャリアというものも存在しません。なにしろ、より新しくて優れたものがすぐ世に出てくるのですから。

だからこそ、「ほどほどでよい」という心のあり方が、存在すらしないものを執拗(しつよう)に追い求める人生から、わたしたちを救ってくれるのです。

1.Dijksterhuis, A., et al., On making the right choice: the deliberation-without-attention effect. Science, 2006. 311(5763): p. 1005-7.
2.Douglas, K. and D. Jones, Top 10 ways to make better decisions, in New Scientist 2007, "Looking for the echoes of a supernova".
3.Schwartz, B., et al., Maximizing versus satisficing: happiness is a matter of choice. J Pers Soc Psychol, 2002. 83(5): p. 1178-97.
4.Iyengar, S.S. and M.R. Lepper, When choice is demotivating: can one desire too much of a good thing? J Pers Soc Psychol, 2000. 79(6): p. 995-1006.
5.Wilson, T. and D. Gilbert, Affective Forecasting: Knowing What to Want. Curr Dir Psychol Science, 2005. 14(3): p. 131-34.
6.Gilbert, D.T., et al., Immune neglect: a source of durability bias in affective forecasting. J Pers Soc Psychol, 1998. 75(3): p. 617-38.

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オリヴィア・リームス メンタルヘルス研究者
ケンブリッジ大学の研究者。おもな研究テーマは、不安や抑うつをはじめとした、メンタルヘルスにかかわる問題。BBCラジオ・ケンブリッジシャー、BBC4「ウイメンズ・アワー」、米国公共放送NPRなどに出演、英国内外の出版物に記事も寄せている。TEDトークは大きな反響を呼び、現在までに500万回以上視聴された。著書に『STRESS FREE』(ポプラ社、三輪美矢子訳)がある。

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(メンタルヘルス研究者 オリヴィア・リームス)

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