賃貸と持ち家「5年で1200万円」の差…引っ越しが必要になっても"断然持ち家が有利"な理由
プレジデントオンライン / 2022年4月21日 12時15分
■失敗するには「マイホーム購入」は金額が大きすぎる
子供が産まれたら、家を買おうと思っている夫婦は多い。家族の人数で住む家の広さや間取りが変わるからだろう。しかし、その前提となっている家族構成が長期的に変わらないというのは確かとは言い難いかもしれない。思い込みで失敗するにはマイホーム購入は金額が大きすぎる。そこで、マイホームの転ばぬ先の杖を考えておきたい。
マンション価格は高くなった。その始まりはアベノミクスの金融緩和なので2013年に遡る。そこから60%以上値上がりしている。5000万円が8000万円になったのと同じだ。ここまで高くなると、共働き世帯でないと好立地のマンションは買えそうにない。子供がいない場合、DINKSになるが、子供が産まれるとDEWKSになる。ただし保育園に入れなかったりすると、ダブルインカムを諦めることになるかもしれない。そう考えると、マイホームにはいろんなリスクが潜んでいそうだ。
■マンション価格は今後も高くなる
家族構成以外のリスクはほとんどが市場リスクになる。その中でもマンション価格がどうなるかの理解が不可欠だ。先ほど、マンション価格は高くなったと書いたが、今後も高くなることはほぼ決まっている。なぜなら、金融緩和されている間は価格が上がるだけだからだ。この政策は2023年の日銀総裁の任期まで続く。
金融緩和されると不動産を担保にお金を貸すことが増える。このため、不動産価格はこの政策下では常に上がってきた。2023年時点で資金融資された土地はその2年後に新築マンションとして供給される。このため、2025年まで新築マンション価格は上がることが必至だ。今回の金融緩和は異次元と言われるほどの水準で行っているので、手仕舞いはそう簡単ではない。2025年以降も不動産価格の下落はそう簡単には来ないと思ってもらっていい。
もう1つのリスクは、購入したマンション価格が値下がりするリスクだ。買った後に暴落したり、持っているだけで資産の目減りが大きいならば売って引っ越しすることができなくなる。そうなると、子供の学校や親の介護や離婚といった事態に対応するのが難しくなる。マイホームが負債となって人生や生活の足かせになってしまう。
■賃貸と持ち家では「5年で1200万円」の差がつく場合がある
しかし、このマンションの資産性(値下がり率)は既に答えが出ていて、私が主宰する無料会員制サイト「住まいサーフィン」で公開している。非常に簡単に言うと、立地で毎年何%下落するか決まっているということだ。この下落率に相場変動が組み合わさって資産価値が決定される。毎年1%値下がりするが、5年で10%相場が上がれば、5年後に売却する際に、買った時よりも5%高く売れるという具合だ。
この前提に立つと、資産性が高い(値下がりしにくい)ところの物件なら、買っておいた方が賃貸よりも圧倒的に有利になる。例えば、20万円の家賃を5年支払ったら、1200万円を確実に失う。これに対して、20万円の住宅ローンを5年返済しようが、その物件が買った時と同額で売れれば金利だけ支払ったことになる。その上、現在の低金利では住宅ローン控除という減税措置があるため、金利分を回収できるので支払い額がゼロになる。つまり、賃貸と持家では5年で1200万円の差がつく場合が充分にあるのだ。
■戸建ては論外、選択肢はマンションのみ
まずは結婚前の2人を想定しよう。同棲しているくらいなら、結婚して家を買おう。結婚しないとペアローンが組めない。ちなみに、できちゃった婚の割合は25%であり、結婚後1年で子供が産まれる確率は非常に高い。指摘したように、2人でペアローンを組み、住宅ローン控除を2人で受けると、各自のローン残高が4000万円であれば56万円の還付金がもらえる。これは変動金利で借りた金利総額よりも多くなる。このローン控除があるからこそ、住宅ローンは最長期間の35年で借りる方が得で、ローンを65歳の定年までに返済したいなら、30歳で買わないと終了しないので、購入は早いに越したことはない。
次に、引っ越しを前提とするならば購入する物件はマンションしか選択肢がない。戸建ては資産価値の落ち方が早く、売っても住宅ローンの残債を全額返済できなくなる可能性が高い。戸建てを買うなら、一生住む覚悟が必要だ。離婚の際は、不足額を自分で補填するしかないので借金地獄になってしまう。
■最悪でも「環七と荒川の内側」を選びたい
マンションを買う際の立地は、都心に近く、駅から近い物件を選ぼう。単純にホワイトカラーはオフィスに勤務しており、その66%は都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に偏在する。職住近接を望む人が多いので、この立地を守ると資産性が上がる。山手線の内側がベストだが、最悪でも環七と荒川の内側に住んでいることが資産性には必要になる。
引っ越すタイミングは子供が産まれた時と小学校にあがる前だと想定しておこう。そうなると、認可保育園に入りやすい駅を調べた結果がある(住まいサーフィン「認可保育園 入りやすい?入りにくい?駅ランキング」)。駅周辺の0歳児人口と認可保育園の定員で倍率を計算したものだ。行政は待機児童ゼロをうたうが、あれは区内であって最寄り駅のニーズは満たしていない。共働きを続けるためにも保育園は死活問題となる。ペアローンを組んで、会社を辞めてしまっては返済が立ち行かなくなる。
■立地さえ良ければ引っ越しはできる
また、公立小学校も教育水準のレベルが異なる。それは親の年収と相関しており、学区内年収を計算して序列を発表している(住まいサーフィン「年収の高い小学校区・中学校区ランキング」)。中高一貫校に入れるためには友達選びが重要になる。友達が中学受験をするなら、自分も自然と勉強することになる。「勉強しなさい」と言わなくてもいい環境を与えるのが、進学に対して親ができる最大の貢献かもしれないと考えたりする。
そう考えると、家の大きさは「大は小を兼ねる」などと考えない方がいい。今、必要な面積があって、立地さえ良ければ引っ越しはできるのだ。もし返済が苦しくなったら、売ればいいだけだ。それでも賃貸よりもキャッシュアウトが多かったという話にはならない。損しないということだ。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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