「10年後何をしたいですか?」そう聞かれて自分の目標を掘り下げる人が絶対に採用されない理由
プレジデントオンライン / 2022年5月2日 12時15分
※本稿は、トイアンナ『改訂版 確実内定 就職活動が面白いほどうまくいく』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■企業は「カネを稼げる人かどうか」にしか関心がない
就活のアドバイスを見ていると「自分が何をしたいか考えなさい」という指導が散見されます。しかし究極的に申し上げれば、企業はあなたが何をやりたいかについて、一切興味はありません。
企業が関心を持っているのは、あなたが会社でカネを稼げるかどうかの1点のみです。この点を踏まえず、率直に問いへ答えると、内定はおろかエントリーシートで選考落ちとなります。以下に代表的な質問と、企業が質問する意図を書きましたので、「企業側の考え方」をざっとインプットしてみてください。
■知りたいのは志望動機ではなく「営業ができるかどうか」
〈代表的な選考時の質問と採用担当者の目的〉
・会社を志望する動機
採用担当者が質問する目的:自分を商品にたとえて「私はカネを御社へもたらす人材ですから、雇う価値があります」と営業行為ができるかを見ている。決してあなたが本当に志望している理由を知りたいのではない。ここで「給与がいいからです」と率直に答えてしまう人材は、雇ってもプレゼンや営業の場で本音と建前を使い分けられない人間なので敬遠される。
・挫折経験
採用担当者が質問する目的:会社でストレスを受けても乗り越えられるかどうかを見ている。したがって、企業でも実際に発生しそうな「チームワーク上のストレスをはねのけ成長した経験」が求められる。乗り越えられなかった挫折体験や、個人的すぎる体験(例、肉親の死)を書いても通過率は低い。
・学生時代に力を入れたこと
採用担当者が質問する目的:企業で自主的に仕事を作り、追加の売上/利益をもたらす人間かを見ている。授業など与えられたものをこなすだけではなく、自分で仕事を増やせる人間が望ましいため、サークル活動や留学、アルバイト経験が好まれやすい。資格の勉強は後述する「企業が求めるエピソードの3要素」に当てはまりにくいため注意。起業経験は実際の仕事に近いので好まれる反面、「すぐに離職して独立してしまうのでは」と危機感を抱かせるため、説明時に「会社を裏切らなそう」な理由付けも必要。
■まっさきに分析するべきは採用側の真の意図
このように、設問の意図はすべて「会社でやっていけそうな人間か」をチェックするために存在しています。たとえば「10年後何をしたいですか」といった設問が出たとき「私は将来何がしたい人間なんだろう」と自己分析に時間を割いてもムダです。それよりも「この企業は何を10年後にやりたいこととして提案したら、私が辞めなそうだと判断するだろうか。嘘をつかない範囲で答えを想像して書こう」と考えましょう。もちろん、本当にやりたいことがハッキリしている方は、それを書くべきでしょう。また、10年後の夢に合わせた業界を選んで就活されたほうがよいと思います。
しかし私も含め、99%の就活生は10年後をハッキリと想像する前の段階で就活と対峙(たいじ)するかと思います。ましてや働いたこともないのに、社内でどういう職務を負いたいかなど述べるすべもありません。そういった大多数の方はひとまず、採用側の立場を考え、協調性ある回答を想定していただくだけでも100点です。
■やりたいことではなく、得意なことを探す
では、自己分析はやらないほうがいいのでしょうか? それも答えはNOです。人には特技と苦手分野があります。苦手な業務を40年繰り返す職種へ就くよりも、得意な業務で常に評価されたほうが働いていてやりがいを感じられることでしょう。
したがって「やりたいこと」ではなく「得意なこと」を自己分析し、得意なことで評価してもらえる企業を探すことをオススメします。次の項目からは、具体的に自分の強みと企業が求める人材像を合致させていく方法をご案内します。
![就活生](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/0/1200wm/img_808dd0017240d617681cb4163f538125407149.jpg)
■どんな選考でも同じ“3つの要素”が問われている
どのような企業でもこれから述べる3つの要素がある人間は重宝されます。これからエントリーシートや面接、グループワークと多種多様な選考が課されますが、問われているのは主に以下の3点だと肝に銘じましょう。
![トイアンナ『改訂版 確実内定 就職活動が面白いほどうまくいく』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/1200wm/img_3056015242137ad35250887b5c84a1f4161386.jpg)
・自主的に動ける人間
仕事を自ら作る人間は、会社へさらなる利益をもたらします。したがって、採用においては「与えられた課題ではなく、自分で課題を発見し、解決できる人間」は好まれます。たとえばアルバイト1つ取っても、シフト通り出勤しただけの方よりも業務改善を積極的に行った方が好まれます。
・他人と協働できる人間
ほとんどの仕事はチームワークによって成り立っています。そのため、内定したければチームでどのような役割を果たせるかを示す必要があります。チームワークには「リーダーとしてチームを率いる」以外にも「大きなトラブルを未然に防ぐ」「落ちこぼれた人を助ける」「目上の方を説得する」など、さまざまなスタイルがありますので引っ込み思案な方も安心してください。
・数的成果を出す人間
企業が存在する目的はカネを稼ぐことです。したがって数字で見える成果、もっとストレートに申し上げるとカネを稼げる人間が採用の場においても重宝されます。
典型的な例は「アルバイトで売上を○%向上させた」など実際に稼いだ成果です。もしくは損失を減らす・防ぐ経験も好まれます。たとえば「アルバイト先の離職率を下げて採用コストを削減した」「趣味を黒字化した」「文化祭で売る食料の廃棄率削減」などが該当します。
■「ボランティアをして喜んでもらった」だけでは評価されない
逆に、学生目線では就活で評価されそうに見えるエピソードでも、採用担当者から見ると「この学生が弊社でカネを稼いでくれそうか資料として不十分」なため落ちやすくなるものがあります。これまでの相談例から、典型的な「実は落ちやすいエピソード」をご紹介します。
・自転車旅行/バックパック経験
体力を示すことはできますが、上記3要素のうち「自主的に動ける人間」であることしか示すことができていません。たとえば同じ自転車日本一周でも、「5人でチームを組んで脱落しそうな仲間を支え完走し、それを動画配信して収益化した」なら、3要素すべてを満たすため通過率はぐっと上がるでしょう。
・資格試験や勉強で頑張った経験
勉学へ励んだ努力は素晴らしいのですが、こちらも「自主的に動ける人間」である点しか示すことができません。受ける企業で必須となる資格であれば有利に働きますが、それ以外の分野ではよい反応を得られないでしょう。最悪「その資格じゃ就職できなくて仕方なくウチを受けているのかな?」と邪推される恐れすらあります。
同じエピソードでもたとえば「10人で勉強会を開催し全員合格できた。さらにそのときの勉強ノートをPDF化して1000円でオンライン販売し安定収入を得ている」なら、3要素をすべて満たすことができます。
・趣味/ボランティア経験
熱中することがあるのは素晴らしいのですが、趣味をどんなに頑張っても企業の利益にはつながりません。特に「人から喜んでいただけた」などの質的成果は採用担当者から見ると「よかったね、それで君は弊社でいくらカネを稼げるの?」とツッコミたくなる余地を作ってしまいます。趣味やボランティア経験について語るときは、事業として黒字化へ励んだ経験や働かないメンバーにやる気を出させた経験など、企業の収益化へつながりそうなエピソードにすれば、通過率を飛躍的に上げられます。
■大切なのは「地道にカネを稼げる人」と認識されるかどうか
ここまでご覧になって「自分にはとてもそんな経験はない」と萎縮された方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、企業は偉大な数的成果を求めているわけではありません。たとえば「アルバイト先で当日が消費期限のパンを割引販売するよう提案し、売り場の利益率を5%改善した」というエピソードは偉大な成果ではありませんが、着実に内定へ近づく3要素を満たしています。
そして逆に1つ、学生が書かない割には面接官から「カネを稼げそうな人」と認識されやすい話題をお伝えします。それは「年上から気に入られる」エピソードです。
あなたがこれから入社して、自分の意見や企画を通すために説得するのは年上の先輩方です。先輩方から気に入られる能力は、立派な「企画を通し、カネを作る」能力として売り込めます。その際も必ず3要素に当てはめて「アルバイト/サークル/部活などで、目上の方へ根回しをしてやりたいことを実現し、数字で見える成果を出した」と説明しましょう。
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就活・恋愛ライター
1987年生まれ。慶応義塾大学卒業後、P&GジャパンおよびLVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパンでマーケティング職として約6年間勤務。その後フリーライターに転身し、就活媒体支援、大手企業の採用ページ執筆などを行う。主な担当は就活対策のほか、婚活、マーケティング。著書に『改訂版 確実内定』(KADOKAWA)、『モテたいわけではないのだが』(イースト・プレス)など。
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(就活・恋愛ライター トイアンナ)
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