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「毎日のように自慰をする自分は異常なのか?」79歳の深刻な悩みに、精神科医が出した答え

プレジデントオンライン / 2022年4月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

「80歳の壁」を越えて元気に過ごすにはどうすればいいのか。精神科医の和田秀樹さんは「高齢になったら、食べたいものを食べて、やりたいことをするべきだ。人間の体はよくできているので、体の声に従ったほうが健康的に過ごすことができる」という――。

※本稿は、和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■高齢者は病気の芽を抱えて生きている

80を過ぎた高齢者は、老化に抗うのではなく、老いを受け入れて生きるほうが幸せではないか、と私は考えています。

85歳を過ぎて亡くなった人のご遺体を解剖すると、体のどこかにガンがあり、脳にはアルツハイマー型の病変が見られ、血管には動脈硬化が確認できます。ところが、それに気づかず亡くなる人がまた多くいるのです。

つまり高齢者は「病気の芽」を複数抱えながら生きている、ということです。

病気の芽は、いつ発症するかわかりません。今日は健康でも、明日は不健康になるかもしれません。突然、死んでしまうことだってあり得るわけです。

冷たく聞こえるかもしれませんが、その事実を受け入れたほうがいいと思います。

その上で、明日死んでも後悔しない人生時間ごしをする、というのが私からの提案です。

■食べたいものを食べよう

明日死んでも後悔しない人生の時間の過ごし方――。それは、我慢や無理をやめる、ということです。

食べたいものを我慢している人は多いでしょう。食べる量を減らす、塩辛いものや甘いものを避ける、脂っこいものを控えるなどは、よくあるケースです。

世間の常識では、太っていると健康が損なわれ、「塩分、糖分、脂質」は三大害悪のように言われているからです。

でも、本当にそうなのでしょうか?

「食べたいうのはめている、とも考えられます。高齢者は臓器の働きが落ちるためこれが欲求んでいる可能性があるのです。

醤油味付けチキンとフライドポテト
写真=iStock.com/SUNGSU HAN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SUNGSU HAN

たとえば、塩分がそうです。人間は、ナトリウム(塩)がないと生きていけませんが、高齢者の腎臓は塩分を排出し、血中の塩分不足を起こすことがあるのです。

腎臓にはナトリウムを貯留する働きがあり、足りなければキープしようとします。ところが老化するとキープする能力が落ち、吐き出してしまう。この現象によって、塩分不足になってしまうというわけです。

すると、低ナトリウム血症(血液のナトリウム濃度が不足した状態)が起こりやすくなります。これを防ぐため、体が塩分を欲しがることがあるわけです。

食事の量もそうです。「少し太っている人のほうが長生き」というデータは世界中にあります。つまり、太り気味であるほうが好調だと体のほうが知っていて、脳を通して「食べたい」という信号を伝えているとも考えられるわけです。

■栄養不足は老化を早める

たしかに60代くらいまでは、塩分の摂り過ぎも太り過ぎも、健康を損なう原因になるかもしれません。しかし80歳も目前の高齢者になったのなら、その常識は一度忘れたほうがいいと思います。

「食べたいものを我慢してダイエット」など自ら寿命を縮める行為です。栄養不足は、確実に老化を進めるからです。

もちろん、無理に食べる必要はありませんが「食べたい」と思うなら、我慢せずに食べたらいいのです。

体の声を素直に聞く――。80歳を過ぎた高齢者には、これが一番の健康法です。人間の体は、じつによくできています。それを信じればいいのです。

ちなみに、前述の低ナトリウム血症は、意識障害や痙攣(けいれん)などを引き起こします。

ふだんは逆走や暴走をしない高齢ドライバーによる逆走事故や暴走事故などは、もしかすると低ナトリウム血症が原因で意識が飛んだのではないか。あるいは、血糖値や血圧を下げ過ぎて頭がぼーっとしたのかも……などと、複数の原因が考えられるのです。

■やりたいことはどんどんやるべき

本当はしたいのに「いい年をして」という言葉が頭に浮かび、我慢してしまうことはありませんか?

でもやはり、したいことは我慢せず、やったらいいと思います。

たとえば、性的なこともその一つかもしれません。世間の常識では「年甲斐もなく」と非難されそうなことです。しかし健康面から言えば、積極的になっていいと思います。なぜなら、男性ホルモンが増えるからです。

数年前、歌舞伎町で違法なわいせつDVDを販売して、店員が逮捕される事件がありました。この事件で話題になったのが、常連客に高齢の男性が多かったこと。店には老眼鏡やルーペが常備されており、警察官が踏み込んだ際にも80歳を過ぎた男性客がいたと報道されています。この1月末にも同様の逮捕劇がありました。

「違法なDVD」は推奨できませんが、児童ポルノとは違い、欧米では合法のものです。それ以上にそれを見たいと思うのは健康の証です。また、このような性的映像は男性ホルモンの分泌を高めるので、「元気の源」になっている側面もあると思うのです。

もちろん「したいこと」は、エロティックなものだけではありませんし、男性に限った話でもありません。

「楽しいな」とか「面白そうだな」と思うなら、自分にブレーキをかけず、どんどんやってみたらいいのです。

■男性ホルモンは元気の源

何かに興味を持つということは、脳が若い証拠です。実際、それを実行することで、脳は活性化し、体も元気になります。

トレッキング上級カップル
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

それは男性ホルモンから見ても明らかです。年を取ると、体内の男性ホルモン量は自然に低下していきますが、多い人のほうが元気なことは、医学的にも証明されています。

男性ホルモンは、タンパク質の多い食事や運動習慣によっても、ある程度保つことができます。たとえば肉には、男性ホルモンの材料になるコレステロールが含まれており、肉をしっかり食べる人のほうが元気を維持できます。コレステロール値を下げる薬を飲み続けるとED(勃起障害)になりやすいのは、このためです。

80歳にしてエベレスト登山を成功させた三浦雄一郎さんは、まさに「元気」の代名詞のような方ですが、男性ホルモンの一種であるテストステロンを注入していることは有名な話です。

三浦さんは76歳のときにスキーで転倒し、大腿骨と骨盤を骨折する大ケガをします。入院で筋力も低下し、トレーニングの気力も削がれたそうですが、その状態から回復できたのは、男性ホルモンの注入やED治療薬「シアリス」を服用したことも大きかったと語っておられます。シアリスやバイアグラのようなPDE5阻害剤は、動脈硬化を和らげる作用があることが知られています。

もちろん、トレーニング(運動)を継続していたことや、エベレスト登頂の目標を見失わなかったことも、三浦さんの元気の秘訣だったことは間違いありません。

■やりたいことをすると脳が活性化する

年を取ると、筋力や臓器だけでなく、脳も老化します。認知症はそうした老化現象の一つです。なかでも一番多いのはアルツハイマー型で、「脳が縮む」と言われているタイプです。

実際に脳を解剖すると、海馬や前頭葉に萎縮が見られます。海馬は記憶を司(つかさど)る部分、前頭葉は思考や感情、行動や判断を司る部分です。人間が人間らしく生きるために、最も必要な部分が前頭葉なのです。

和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)
和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)

前頭葉の働きが衰えると、日常生活では次のような変化が生じてきます。

たとえば、考えることが面倒になる、感情をうまくコントロールできなくなる、喜怒哀楽が激しくなる、意欲が衰える、集中できなくなる、などです。

人間の体はよくできており、使わない機能は退化していきますが(廃用性萎縮と言います)、使えば活性化していきます。とくに脳はその傾向が顕著です。

つまり、衰えるに任せておけばどんどん衰退しますが、奮起して使えば活性化させることができるわけです。

そして、最も効果があるのが「したいことをする」ということです。前頭葉にとって、それはとても刺激的なことで、脳が活性化するのです。

楽しいこと、面白そうだと思うことほど、脳にとっては刺激的です。反対に、つまらないことや、我慢を強いると、脳の働きは鈍ります。

我慢をして毎日をつまらなく生き、脳を萎(しぼ)ませていくか、したいことをして毎日を元気ハツラツと生き、脳を活性化させていくか――。

したいことをすることは、脳の老化を防ぐためにも必要なのです。

■性欲があることは恥ずかしいことではない

性欲についても再度話しておきましょう。日本人はタブー視しがちですが、本来、性欲は自然な欲求であり、とても大切なことです。

公園で微笑んで幸せな老夫婦
写真=iStock.com/SPmemory
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SPmemory

残念ながら、性欲は年齢と共に落ちていきます。とくに男性は、男性ホルモンが減るため如実に低下します。女性は、年を取ると男性ホルモンが増えるため、性欲が多少上がる人もいます。

性欲があることは、恥ずかしいことではありません。男性も女性も可能なら、積極的に性の営みをしたらいいと思っています。

少し前に新聞の「悩み相談」に、79歳の男性の投稿がありました。「毎日のように自慰をする自分は異常なのか?」という悩みでした。

回答者のコメントは忘れてしまいましたが、私が答えるならこうです。

「異常ではありません。素晴らしいことだと思います。男性ホルモンが十分分泌されている証拠です。恥ずかしがるより、楽しみましょう。いつまで続けられるかはわかりません。でも、いつ終わるかわからないことを楽しむのも、この年代ならではの楽しみ方ではないでしょうか。楽しめるうちに楽しんでおかなければ、損だと思います。しかも男性ホルモンが多いことは、判断力や筋力も高めるので若さを保つことにつながりますよ」

女性も同じです。「不謹慎だ」などと考える必要はありません。ある人も、まったくない人もいますが、それは個人差です。新たなパートナーを求めたり、年下を相手にしたりすることにも躊躇する必要はないと思います。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院・浴風会病院の精神科医師を経て、現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

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(精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授 和田 秀樹)

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