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「むしろ日本のほうが危なかった」欧米列強に中国が屈したのに、日本は独立を維持できたワケ

プレジデントオンライン / 2022年5月3日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/clu

幕末、長州藩はイギリス・フランス・オランダ・アメリカの列強4国と戦った後、幕府軍と対決する。この二つの戦いは、世界史においてどういう意味を持つのか。当時の世界情勢の推移を、『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)より紹介する――。(第3回)

■産業革命を起こしたイギリスが中国に対して行ったこと

登場人物紹介
【小太郎】ごくフツーの中学生
【つきじい】偉大な歴史家トゥキディデスの生まれ変わり

【つきじい】フランス革命の時代、イギリスではもう一つの革命――産業革命が始まっていた。小太郎くん、「産業」って何だ?

【小太郎】工場とかで、モノをつくることですよね。

【つきじい】その通り。昔は、着る物は手作業でつくっていた。糸だって、綿のかたまりから1本ずつ引っぱり出して、ねじってつくっていたのじゃ。

【小太郎】気が遠くなりそうです。

【つきじい】ところが18世紀のイギリス人が、糸や布をつくるためのさまざまな機械を発明していった。その結果、一人で同時に何千本もの糸をつくれるようになった。

【小太郎】イギリス人、スゴい!

【つきじい】ところが困ったことが起こった。糸や布など綿製品をつくりすぎて、売れなくなった。小太郎くんは、ズボンを何本持ってるかな?

【小太郎】3本くらいかな?

【つきじい】50本買ってくれと言われたら?

【小太郎】そんなにいりません!

【つきじい】ところが機械でどんどん綿製品をつくっているから、売れ残ってしまう。そこでイギリス人は、外国に売り込もうと考えた。イギリスより何十倍も大きく、人口の多い国にイギリス製品を売り込めば……。

【小太郎】ボロもうけできますね!

■遣隋使の時代と何も変わっていなかった中国

【つきじい】世界で一番人口の多い国は、当時も、今も同じじゃ。

【小太郎】あっ……中国?

【つきじい】うむ。ところが、当時の中国――清という王朝だったが、簡単に貿易をさせてはくれなかった。「貿易したかったら、頭を下げろ」というのじゃ。

【小太郎】は?

【つきじい】「清の皇帝は世界で一番偉い。イギリス王は家来となって、頭を下げろ」というのじゃ。

【小太郎】まーだ、そんなこと言ってたんですかぁ?

【つきじい】そうじゃ。遣隋使の時代と何も変わっていなかった。

【小太郎】「バカにするな!」と頭にきますね、イギリス人。

【つきじい】中国はどうしてバカにしてくるのか? イギリスを小国だと思っているからだ。

【小太郎】確かに、中国から見れば小国だし……。

【つきじい】「戦争を起こしてボコボコにしてしまえ!」となった。

【小太郎】ちょ、ちょっと待って、いきなり戦争ですかぁ?

■戦争を起こすために、イギリスが実行した奇策

【つきじい】戦争に勝てば、開港させてイギリス製品を売り込める。しかし戦争を始めるには、もっともらしい理由が必要じゃ。

【小太郎】「おカネもうけのため」、じゃカッコ悪いですよね。

【つきじい】最初は、「清が、イギリス商品を没収した」と言いがかりをつけた。

【小太郎】綿製品ですか?

【つきじい】アヘンじゃ。麻薬の一種じゃな。イギリス商人は、アヘンを中国に売り込んだ。

【小太郎】ええ~っ、麻薬を売ったらダメでしょう!

【つきじい】だから清の政府はアヘンを没収した。そしたら「うちの商品を没収したな!」といってイギリスが攻めてきた。イギリス軍は産業革命で発明された蒸気船の軍艦を送り込み、清の帆船を次々に粉砕した。これがアヘン戦争じゃ。

【小太郎】ぼく、イギリスが嫌いになりました。

■「このままでは日本もやられる…」という危機感

【つきじい】アヘン戦争の約10年後、ペリーが率いるアメリカ艦隊が江戸湾(東京湾)に迫り、江戸幕府を脅かして開国を要求した。

【小太郎】ヤバいです!

【つきじい】幕府はビビって開国した。日本国内では幕府の弱腰に対する怒りが渦巻いた。江戸で学んでいた軍学者の吉田松陰はペリー艦隊に衝撃を受け、地元長州(山口)の松下村塾で教え始めた。

【小太郎】どんなこと教えたんですか?

【つきじい】外国語、世界の地理、国際関係、軍事を教えた。身分に関係なく誰でも学ぶことができた。松下村塾で学んだ高杉晋作は、世界を見てみようと旅立った上海で、植民地のようになった清国を見た。「このままボーっとしていたら、日本もやられる……」

■高杉晋作「長州男士30万が受けて立つ…」

【開戦】下関戦争/倒幕運動

イギリス・フランス連合軍が北京に攻め込み、北京条約で清国の11の港が開かれた。西洋人は中国人を見くだし、わがもの顔でふるまった。日本でも西洋人への反感が高まり、長州藩は外国船を砲撃した。すでに開国していた幕府は激怒し、長州藩を攻撃した。

シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
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シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト

■伊藤博文「功山寺挙兵の時が明治維新の始まりだった」

シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
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シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト

■幕末の日本に生まれた「ナショナリズム」

【小太郎】高杉晋作、カッコよすぎます! でも功山寺に誰も集まらなかったら……。

【つきじい】晋作は一人で藩に訴え、受け入れられなければ切腹するつもりだった。カネや命はどうでもいい。仲間たちを、長州を、日本を守ろうとした。そういう覚悟があったから、仲間たちの心を動かし、決起は成功した。

【小太郎】先生。フランス革命のときの義勇兵を思い出しちゃいました。

【つきじい】小太郎くん、まさにその通りなのだ。身分や出身地を超えたナショナリズム――「フランス国民」という仲間意識がフランス革命で生まれた。その70年後、幕末の日本で「日本国民」意識が生まれ、明治維新につながった。

■明治維新の本当の目的

【小太郎】明治維新って、革命だったんですか?

【つきじい】幕府を倒したという意味では革命に似ているな。しかし、幕府を倒すのが目的でなく、外国の侵略から日本を守るのが明治維新の目的じゃった。

【つきじい】そのためには、日本人が団結しなければならない。しかし長州藩は、地方政府に過ぎない。そこで、天皇を新しい国の中心にした。だから革命というより復古じゃな――「元に戻す」、という意味じゃ。

【小太郎】天皇って、昔の天皇とつながっているんですか?

【つきじい】天皇家はつながっている。平安時代には藤原氏に政治権力を奪われ、鎌倉時代からは幕府に政治をまかせた。天皇は、宗教儀式だけを行うようになっていた。

【小太郎】なるほど。

【つきじい】フランス革命では国王を処刑してしまった。この結果、国がまとまらず、混乱が続いた結果、ナポレオンが皇帝になることでやっと落ち着いた。

【小太郎】そうか、日本には天皇がいたから、めちゃくちゃにならなかったのか。

■日本と中国の決定的な違い

【つきじい】ところが清国ではうまくいかなかった。

【小太郎】清国には皇帝がいたのに、どうしてですか?

【つきじい】清国の皇帝は、中国人ではない。

【小太郎】ええっ?

茂木誠、大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)
茂木誠、大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)

【つきじい】あれは満州人といってな。モンゴルの東の森林地帯に住んでいた狩猟民族じゃ。昔の金王朝を建てた女真族の子孫じゃ。

【つきじい】外国人の皇帝のために、一致団結して戦おうという気になれるだろうか?

【小太郎】それは……無理だと思います。

【つきじい】だから中国では「国民意識」が生まれにくかった。国がデカすぎるし、方言が多く言葉が通じない。

【小太郎】それは困った……。

【つきじい】だから清国は戦争のとき、中国人の傭兵を集めて戦った。給料払うから戦ってくれ、というわけじゃ。ナポレオン戦争の時のプロイセン軍と同じじゃ。

【小太郎】思い出した! 傭兵は、国民軍に勝てない!

【つきじい】その通り。清国の傭兵と日本の国民軍が戦ったら?

【小太郎】日本が勝ちます!

【つきじい】それが、日清戦争じゃ。

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茂木 誠(もぎ・まこと)
駿台予備校/N予備校世界史科講師
ノンフィクション作家、予備校講師、歴史系YouTuber。学習参考書のほか、一般向けの著書に『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社)、『超日本史』(KADOKAWA)、『「戦争と平和」の世界史』(TAC出版)、『「米中激突」の地政学』(ワック)、『政治思想マトリックス』(PHP)、『「保守」って何?』(祥伝社)、『グローバリストの近現代史』(ビジネス社)など。YouTubeもぎせかチャンネルで発信中。

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(駿台予備校/N予備校世界史科講師 茂木 誠)

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