ひろゆきはなぜYouTubeで成功できたのか…小学生もハマる「切り抜き動画」儲けのカラクリ
プレジデントオンライン / 2022年4月23日 11時15分
■切り抜き動画は、ひろゆきだから成功した?
(第2回から続く)
——ひろゆきさんのYouTubeはチャンネル登録者数が150万人と、すごい人気ですね。
【けんすう】ここまで盛り上がると最初から思っていたんですか?
【ひろゆき】あれは正確には、切り抜き動画ビジネスがハマったんだと思っています。
ユーチューブはアルゴリズム上、1回クリックすると、そのチャンネルの動画がたくさん表示されるようになっているんです。人は見続けたものは好きになる法則があるので、切り抜き動画を大量に増やすと、結果として元のチャンネルの再生数と登録者数も増えるという仕組みがあって。それを誰もやっていなかったから、僕がやってみて証明しただけなんです。
【けんすう】じゃあ、ひろゆきさんでなくても成功できると。
【ひろゆき】僕の後に岡田斗司夫さんが切り抜き動画を始めて、それまで岡田さんのチャンネル登録者数は15、16万人くらいだったと思うんですが、今は70万人超えていますからね。青汁王子も10万人くらいから切り抜き動画を始めて、80万人近くまで伸びています。だから、コンテンツがひろゆきかどうかは、それほど関係ないと思っています。
【けんすう】なぜ最初は、誰もやらなかったんですかね?
【ひろゆき】やりたいと思っても、切り抜きを自動的に収益化する仕組みを使えるのが、日本だとYouTubeと契約している数社しかないんです。だから、その権限を持っているUUUMさんや僕の会社は、自動的に収益を得られるから「皆さんどんどんやってください」とできるわけです。
【けんすう】YouTubeとちゃんと契約している会社は、数社しかないんですね。
■勝手に切り抜いてくれる人がいないと広がらない
【ひろゆき】レコード会社にはレコード会社用のツールがあるんですが、そのツールを使える会社は多くないんです。そういう仕組みがあるので、たとえば武井壮さんも切り抜きはやっているんですが、武井さんが許諾している人にお願いしてやっているだけだから、広がらないんですよね。
【けんすう】勝手にやれないと広がらないですもんね。
【ひろゆき】仕組みの問題なので、僕がどうこうという話ではないんです。「切り抜き動画という仕組みの問題ですよ」と説明してるんですが、なぜかみんな信じてくれない。
【けんすう】トークが面白いからだと思っていました。
——ひろゆき人気を実感したのは、うちの子供の小学校でも、「それってあなたの感想ですよね?」が流行っているそうです。
【ひろゆき】なんか、すみません。
【けんすう】これは、確かに謝ったほうがいいですね。
【ひろゆき】ふだん日本にいないので、あまり実感がなくて。
■ミクシィを潰そうと思ったことは一度もない
【ひろゆき】ネットサービスの話に戻ると、IT系って似たようなサービスをやっていても、あまりお互いをライバル視しないよね。ふつうビジネスだと、売上を上げるために他社に対して敵対行動をとったりするのに。
【けんすう】それぞれの役割(ロール)の問題もありますよね。お互いの役割の関係で、ケンカはするけど、別に仲が悪いわけではないパターンとか。
【ひろゆき】僕らが2ちゃんねるをやっていて、けんすうがミルクカフェをやっていて、本来は掲示板業界のライバルなわけだけど、一回もライバルだと思ったことはない。
【けんすう】こちらを下に見てるからじゃないんですか?
【ひろゆき】でも、他のコミュニティサービスに対しても思ったことがないんだよね。
【けんすう】インターネット系は、何かを奪い合ったりしないからですかね?
【ひろゆき】たとえば、楽天とアマゾンは明らかに敵対していて、お互いに潰れてしまえと思っている気がするんです(笑)。でも、2ちゃんねるをやっていた時に、ミクシィとか他のコミュニティサービスが出てきても、面白いなと思って、「潰そう」「倒そう」と思ったことは一度もない。
【けんすう】なるほど。
【ひろゆき】ニコニコ動画をやっていた時も、YouTubeに寄生するところから始まっているので、「YouTubeさん流石だなー」って思っていました。
■無能な経営者は人を動かすのがうまい⁉
【けんすう】ひろゆきさんの最新刊『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』でも書かれていましたが、人を動かす系の問題解決法は昔からうまいですよね。そのあたりは、やはり優秀な人は上手ですよね。
【ひろゆき】社員に「自分が動かなきゃマズい」と思わせるのは、会社でもうまくいくパターンだよね。「この会社、俺がいないと回らない」とか。
【けんすう】そうですよね。10年くらい前に、ひろゆきさんや堀江(貴文)さん、家入(一真)さんたちが共著で『就職しない生き方』という本を出しましたよね。編集者がインタビューをして原稿を作っていたのですが、まったく言っていないことを原稿にしてしまうトリッキーな方だったんです。それで、ひろゆきさんですら、「こんなことは言ってません」「これはこういう意味です」って言い出して。最終的に、普段なら自分で原稿を書かないような人たちが自分で文章を書くことになって、その結果、面白い本になったという稀有な例がありましたよね。
【ひろゆき】ああ、そんなことあったね。
【けんすう】あれは僕の仕事観を変えましたね。めちゃくちゃ仕事ができない感を出すと、周りの優秀な人がヤバいと思って頑張るんだ、というのは勉強になりました。
【ひろゆき】確かに、それはあるよね。ある程度、愛されている人じゃないと許されないけど。
【けんすう】「これ、このまま本になったらヤバいぞ」と思ったのか、ひろゆきさんもちゃんとメールを返していましたからね。
——ひろゆきさんにそこまでさせるっていうのは、相当ですね。
【ひろゆき】けんすうさんは自分の会社では、「俺のおかげで会社が回ってるぞ」という感じにしているんですか?
【けんすう】「この人(けんすう)をちゃんとコントロールしないとヤバい」と思ってくれているメンバーが多いような気がしますね。優秀な人が社長になってうまくいくパターンと、全然優秀じゃない人が社長になるから周りが頑張るパターンがあって、後者の気がします。優秀なんだけど打ち合わせに来なかったりする社長だと、周りが「来なくても大丈夫にしよう」となるのは、会社としては良い気がしますね。
【ひろゆき】優秀だけど、そうじゃない部分との落差がある人は、周りが「助けなきゃ」ってなるよね。その点、けんすうは、大抵のことはうまくこなすもんね。
■けんすうが明かす、ひろゆきの弱点
——けんすうさんが知っている、ひろゆきさんの弱点はありますか?
【けんすう】ひろゆきさんが苦手なのかなと思うのは、未来予測系ですかね。他のサービスだと高い精度で将来性を予想できるのに、自分のサービスに対しては低く見積もりますよね。
2001年頃のインタビューで、「2ちゃんねるなんて、あと2、3年で人気がなくなりますよ」と言っていたり。ニコニコ動画の有料化の時も、「こんなものに500円払う人はいない」と言っていましたよね。
他のサービスに比べて、自分のことに関しては低く見積もっていると思ったんですが、どうですか?
【ひろゆき】自分のサービスだと、想定するユーザー層を、僕を基準にして考えてしまうんですよね。僕が面白いと思ったものを基準にするんですけど、そうすると「自分なら、これにお金は絶対払わないよな」となる。たとえば、動画配信サービスとかでも、「友達のアカウントを使えばタダで見られるよね」と思ってしまうので。払わなくていいモノにお金を払うことは、自分基準だと「ないな」となるんです。
■5秒にお金を払うだけの価値はあるのか
【けんすう】それは、「月1000円がもったいないから」なんですか?
【ひろゆき】だって、お金を払わなくても見れるからね。4人ぐらいまで見られるようになっているんだから。あれはシェアするためでしょ?
【けんすう】ある程度よしとしているとは聞きますね。
【ひろゆき】一人も友達がいない人がお金を払ってるんだろうな、と(笑)。
たとえば、YouTubeプレミアムは、お金を払うと広告が出なくなるだけでしょ。だったら数秒、我慢すればいいだけですからね。数秒にそれだけの価値のある人が、どれだけいるのかと。
【けんすう】言い方はすごいですけど、なるほど。
【ひろゆき】5秒待つ間に他のことをやればいいだけなので、5秒にお金を払う感覚がわからなくて。
【けんすう】自販機でジュースを買ったことが、今までに10回くらいしかないとも言っていましたよね?
【ひろゆき】コンビニに行けばもっと量が多い飲み物が売っているし、家に帰ればもっと安く済むからね。
【けんすう】会社とかに無料の自販機あると、めちゃくちゃ飲むんですよね、ひろゆきさん。しかも、一番高そうなイチゴミルクとかを。
【ひろゆき】グーグルに行った時は10本くらい飲んで、驚かれました。
■ひろゆきが面白いと思うものは売れない説
【けんすう】あと、たばこも自分で買わないですよね。
【ひろゆき】ずっと、けんすうさんに貰っていました。正確に言うと、借りているだけなんですけどね。灰にして返しているので。
【けんすう】そこまで徹底できている人もいませんよね。
【ひろゆき】だから、自分を基準にすると間違えるのかもしれません。他社のサービスだと、ユーザー特性を僕基準ではなくて、数字を見て判断できるので、そのほうが予測精度が高いのはわかる気がします。
【けんすう】自分が基準になると主観が入ってしまうってことですね。面白い。
【ひろゆき】たとえばTikTokって僕は使わないので、だから伸びている。逆に僕がすごく好きなサービスは当たらなかったりします。マンガや映画でも、僕がすごく面白いと思うものはマニアックなので、一般受けはしないんですよね。
【けんすう】これ売れるという予測で当たった例はありますか?
【ひろゆき】本だと、『サードドア』は英語版で読んで、すごく面白いと思って。日本語版もそこそこ売れていましたよね。
【けんすう】日本語版が出る前から言っていましたね。
【ひろゆき】「この本、面白い」って方々で言って、YouTubeを見た出版社の人に頼まれて、書評を書きました。著者のアレックス・バナヤンと対談したりして、ちゃんと売上にも貢献したと思います。
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2ちゃんねる創設者
本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都北区赤羽で育つ。1999年にインターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年に株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。自身のYouTubeチャンネルの登録者数は140万人、Twitterのフォロワー数は144万人を突破。
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アル社長、連続起業家
本名は古川健介。1981年生まれ。クリエイター向けのサービスを手掛ける「アル」代表取締役。2006年、早稲田大学政治経済学部卒業。浪人時代に受験情報掲示板「ミルクカフェ」を開設したのち、早稲田大学在学中には現「したらば掲示板」を運営していた株式会社メディアクリップの代表取締役となる。2007年、株式会社リクルート在職中(2009年退社)に「nanapi」運営元会社を起業。その後も数々のサービスを立ち上げる起業家。noteのフォロワー数は日本一。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき、アル社長、連続起業家 けんすう)
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