「高速が大渋滞だから下道へ」は完全にアウト…貴重な休日を無駄にしない"7つの渋滞回避術"
プレジデントオンライン / 2022年4月25日 13時15分
■唯一絶対の渋滞回避術は「時間帯をずらす」
今年のGW、高速道路には例年に近い渋滞が戻ってきそうだ。昨年と一昨年は、新型コロナウイルスの影響で渋滞がほとんど消滅したが、今年はきっちりカムバックしそうなので、首都圏、関西圏在住のドライバーは、それなりの覚悟が必要だ。
ところで、GW中にドライブに出かける場合、渋滞を回避する方法はないのか?
ないことはない。以下、7つの回避術について具体的に説明する。
<回避術その1:時間帯をずらす>
今年は3年ぶりに、NEXCO各社がGWの渋滞予測を発表した。この渋滞予測、おおむね8割の確率で的中している。かなり信用できるので、その予測を見て、渋滞しない時間に走ればいい。これは最もシンプルかつ確実な方法で、「唯一絶対の渋滞回避術」と言ってもいい。
ただ、実行するのは意外と難しい。
渋滞を避けるためには、渋滞が始まる前か、渋滞が収束してから走ることになるが、今年のGWの渋滞ピーク時、5月3日の東名高速下り(大和トンネル付近)を例に取ると、渋滞が始まるのは4時、収束するのは16時と予想されている。
4時からの渋滞にはまらないためには、3時くらい(出発地によって異なる)に出発する必要があるし、16時以降に遅らせれば、その日はほぼ遊べない。
家族全員で午前3時に出発するのはなかなか大変だが、とにかく早く出発して渋滞ポイントを超えてしまえば、もうひどい渋滞はないはずだ。都心部から100キロ以上離れればおおむね問題ないので、その先のSA・PAで、そろって車内で仮眠を取るという方法もある。
■高速の渋滞時は並行する一般道も渋滞している
<渋滞回避術その2:一般道を走る>
誰もが一度は考える渋滞回避術だが、高速道路よりも早く到着する可能性は極めて低い。高速道路が渋滞している時は、並行する一般道も渋滞する。しかもその平均速度は、高速道路よりも遅いことがほとんどだ。
高速道路の自然渋滞は、平均して時速25キロ程度で流れる。それに対して、たとえば都内幹線道路の平均速度は時速20キロ程度。高速道路の渋滞時にはもっと低下する。つまり、ほぼ勝ち目はない。
絶対に避けたいのは、「渋滞しているから降りちゃえ!」と、衝動的に一般道へ逃げることだ。計画性のない行動がうまくいくことはまずない。
■グーグルマップは「神様」だが信じすぎてもいけない
<渋滞回避術その3:グーグルマップの指示に従う>
グーグルマップ等のスマホナビは、車載ナビとは比べ物にならないほど、綿密な所要時間予測を実行し、最適なルートを案内してくれる。目的地を設定しておけば、最速ルートを常に更新し続けてくれるのだから、まるで神様だ。基本的には、神様は最も正しい(断言)。
スマホナビと車載ナビとは、ルートの所要時間の計算法が根本的に異なる。車載ナビは、基本的には自分だけで考えるのに対して、スマホナビは、位置情報をONにしているすべてのスマホのデータから、渋滞状況を的確に捉え、ホストコンピューターが最速ルートを弾き出す。
ただ、神様も無謬ではない。現実世界には神様も予想外の事態が起きるし、人間が神様の言う通りにできないこともある。特にグーグルマップの場合、一般道ではものすごく狭い路地に導かれることがあり、頭から信用してかかると危険だ。
また、時間短縮効果がほんのわずかでも、そちらを優先して案内するので、高速道路をいったん降りてまた乗るなど、頑張った割にあまり報われないケースもある。そのあたりの見極めは、ドライバーの経験値が必要になる。
結局、最寄りのインターまでは高速道路を淡々と走るのが無難で、神様を最大限活用するのは、インター入口までと、インターを降りてからの一般道に限ると考えたほうがいいだろう。
■東関東道方面や中京・関西圏なら大渋滞を避けられる
<渋滞回避術その4:混んでいない方面を選ぶ>
すでに宿を予約していたら、いまさら行き先を変えることはできないが、日帰りなら、なるべく混んでいない方面を選ぶことは可能だ。
たとえば5月3日の下り線。首都圏の高速道路は、すべての方面で渋滞が発生するが、混雑度合には濃淡がある。
最も渋滞が少ないのは東関東道方面で、GWピーク時でも「宮野木JCTを先頭に最大10キロ、渋滞通過所要時間30分」と予想されている。成田や潮来方面へ出かければ、それほどの渋滞に遭わずに済むはずだ。あまり魅力的な観光地がないからこそすいているわけだが、渋滞の少なさで目的地を選ぶという手もある。
同じく5月3日の午前中に中京圏を出発する場合、混雑が激しいのは中央道上り(土岐方面)と名神高速下り線(岐阜方面)で、それ以外の東海北陸道や東名阪道、東名/新東名方面には、大きな渋滞予測はない。
中京圏は、2019年に新名神(四日市JCT―亀山西JCT間)が開通し、並行する東名阪道の渋滞が劇的に緩和された。この効果は大きく、渋滞通過に1時間以上かかる深刻な渋滞は、ほぼ予測されていない。
そして関西圏。かつて関西最大の難所は、中国道上下線の宝塚トンネルだったが、2018年に新名神(高槻JCT―神戸JCT間)が開通し、このポイントの渋滞は大幅に軽くなり、中国道、山陽道、舞鶴若狭道へ向かうのが大変楽になった。京都縦貫道、阪和道方面も、大きな渋滞は予測されていない。
■渋滞のつらさは距離よりも平均速度と通過所要時間
<渋滞回避術その5:混む路線は利用を避ける>
TVや新聞などのメディアが報じるのは、主に渋滞の距離だ。「○○を先頭に渋滞50キロ」と聞けば、地獄絵図が想像される。
しかし現在、自然渋滞の多くは、平均時速25キロ前後で流れる。あまり停止せずにズルズル流れる渋滞なので、精神的ストレスはそれほど大きくない。渋滞50キロなら通過に2時間かかる計算だが、実際に突入してみると、「案外大したことなかったな」と感じるだろう(個人差アリ)。
一方、渋滞距離が10キロでも、平均速度が時速5キロだと、「ほとんど動かない」という感覚になる。通過時間は同じ2時間でも、ストレスは段違いに大きい。渋滞のつらさは距離ではなく、平均速度と通過所要時間で見るべきだ。
今年のGW、渋滞通過所要時間のワースト上位予測を並べてみよう。ここで紹介する渋滞ポイントは、お盆やGW以外の連休でも渋滞する傾向がある。
1位 5月3日 アクアライン下り 最大3時間25分(渋滞18キロ)
2位 4月29日 アクアライン下り 最大3時間10分(渋滞17キロ)
3位 5月4日 アクアライン下り 最大2時間45分(渋滞15キロ)
4位 4月30日 アクアライン下り 最大2時間5分(渋滞14キロ)
5位 5月1日 中央道上り(小仏トンネル付近) 最大2時間(渋滞30キロ)
5位 5月3日 中央道下り(相模湖IC付近) 最大2時間(渋滞40キロ)
5位 5月5日 中央道上り(小仏トンネル付近) 最大2時間(渋滞30キロ)
■アクアライン下りがワースト上位を占める理由
このように、ベスト4までをアクアライン下りが占め、中央道がそれに続いている。
アクアライン下りがこれほどひどい渋滞になる理由は、路線の構造にある。
まず、アクアトンネル内のサグ効果(※)で自然渋滞が発生。それが浮島JCTまでつながると、悲劇が始まる。
(※)下り坂から上り坂に変わる凹部分で、勾配に気づかず走行する車の速度が自然と低下すること。
浮島JCTでは、首都高の湾岸線西行き、同東行き、川崎線の3方面からクルマが合流する。この3方面合流にすさまじく時間がかかるため、平均時速5キロ前後という、ほとんど動かない渋滞になってしまうのだ。
ふだんの週末はこれほどひどくないが、例年、GWは極端に悪化する。湾岸線葛西付近からアクアライン海ほたるPAまで、6時間以上かかったという記録もある。あまり知られていないが、GWの最重篤渋滞ポイントだ。
■首都圏の高速道路で唯一、片側2車線しかない中央道
アクアラインを渡った対岸の木更津にはアウトレットがあり、館山道を下れば内房・外房の観光地へとつながる。首都圏のドライバーにとっては、最も手軽な日帰りドライブコースだが、GW中、アクアライン方面へ向かうのは、くれぐれも慎重であるべきだ。
このアクアライン渋滞によって、首都高湾岸線は両方向とも動かなくなるため、羽田空港へのアクセスもほぼ不能になる。羽田へは、京急かモノレールの利用を強く推奨する。
中央道が5位を占めているのは、首都圏の高速道路として唯一、都心寄りの区間でも片側2車線しかなく、交通容量が小さいためだ。
首都圏の渋滞のメッカというと、東名・大和トンネル付近が思い浮かぶが、アクアラインや中央道に比べると、渋滞内の平均速度が高いため、渋滞距離は長くても、ストレスは比較的軽い。関越道や東北道、常磐道も同様だ。
■ワースト渋滞ポイント以外は「意外とラク」
1位 5月3日 第二神明道路下り(名谷IC付近) 最大2時間(渋滞32キロ)
1位 4月29日 第二神明道路下り(名谷IC付近) 最大2時間(渋滞32キロ)
1位 5月1日 名神下り(蝉丸トンネル付近)―名神竜王IC方面 最大2時間(30キロ)
1位 5月1日 名神下り(蝉丸トンネル付近)―新名神信楽IC方面 最大2時間(30キロ)
5位 5月1日 第二神明道路下り(名谷IC付近) 最大1時間50分時間(渋滞29キロ)
関西では、明石海峡大橋方面に向かう第二神明道路下りと、それに続く阪神高速3号線下りの渋滞が最悪だが、平均時速は15キロ前後なので、アクアラインよりははるかにマシだ。
名神高速の京都・滋賀県境付近にある蝉丸トンネルも渋滞の名所で、特に下り線は、草津JCTで名神と新名神が合流するため流れが遅くなるが、こちらも平均速度は時速15キロ前後となっている。
これらワースト渋滞ポイントを除くと、渋滞内の平均速度が大きく落ちる路線はない。つまり、渋滞を覚悟の上で真正面から突入しても、事故による通行止めや車線規制にぶち当たらない限り、「意外とラクだった」で済むケースは少なくない。
■「走行車線と追い越し車線どちらが速い」の答えはない
<渋滞回避術その6:どの車線が速いのか>
渋滞の現場で、ドライバーが頭を悩ませるのがこれだろう。
かつては「渋滞では左車線(走行車線)が速い」と言われていた。混雑が始まると、多くのクルマが少しでも速く進もうと、右車線(追越車線)に集中するためだ。自然渋滞は、必ず追い越し車線から始まる。
私の調査でも、10年前は、渋滞20キロあたり1分ほど左車線が速いケースが多いという結果が出ていた。わずか1分の差だが、これはクルマの台数だと約30台。30台のクルマに抜かれると、「ものすごく負けた」という錯覚にとらわれ、ストレスが増してしまう。
ところが現在は、NEXCOによる「渋滞は追い越し車線から始まります」という啓蒙活動が浸透し、車線による差はほぼ消えている。よって、無駄な車線変更はまさに「無駄」。どの車線にいても、流れの速さはほとんど変わらないので、悩む必要はない。
■家族連れは特にトイレ渋滞対策を万全に
<渋滞回避術その7:トイレ渋滞を避ける>
高速道路の渋滞で最も気を付けるべきは、トイレ渋滞だ。かつてはSA・PAのトイレが大渋滞し、切迫した事態が頻発した。
近年は、GWなど交通集中期には、SA・PAに臨時トイレが大増設されるようになったため、トイレ悲劇は激減したが、SA・PAへの入場渋滞や駐車渋滞は必ず発生する。
GW渋滞で悲劇を演じないために、トイレは渋滞突入前に必ず済ませ、お子さん用には携帯トイレを持参することをおすすめする。
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モータージャーナリスト
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』(三推社)をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか⁉』(三推社)などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動している。
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(モータージャーナリスト 清水 草一)
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