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"空に昇った太陽"の絵を見て書くだけ…「わが子の国語の成績が飛躍的に伸びる」作文ドリルのすごい仕掛け

プレジデントオンライン / 2022年4月29日 11時15分

「考学舎」代表・坂本聰さん - 撮影=萩原美寛

子供が作文力をつけるにはどうしたらいいのか。教育関係のルポ作品も多い芥川賞作家の藤原智美さんが、現代の寺子屋「考学舎」代表・坂本聰さんが考案した「絵を見て文を書く、文を読んで絵を描く」ドリルの仕組みを取材した――。

※本稿は、『プレジデントFamily2022年春号』の一部を再編集したものです。

■絵を見て文を書く、文を読んで絵を描く

コロナ禍の影響で、学力の低下が心配されるが、学習の基礎となる読み書きの力はどうなのだろうか。家庭にいる時間が増えたぶんだけ、読書、日記を書くなどして、学力低下を補うことも十分可能なはずだが、現実は難しいようだ。

生活時間の調査では、この2年、家庭でSNSやゲームにさく時間が増えてしまった、という子供たちが目立って増えている。

この厳しい現実に対して、考学舎(東京都渋谷区)を主宰する坂本聰先生の処方箋は、ずばり「読み書きの力をつけるトレーニング」だ。

「家庭でも、親御さんのサポートで、読み書きの力をつけることはできます」という。しかし、私などは「トレーニング」と聞くと、どうしてもスパルタ教育のイメージが先に立つ。実際はどんなものなのだろうか。

まずテキストとして用意するのが『お絵かき作文ドリル』(坂本聰/朝日新聞出版)。問題1を開くと、青空に太陽が昇った構図をシンプルに図形化した絵が出てきた。なるほど、いきなり白紙に文字を書くのではなく、わかりやすい絵が示されると、取り組みのハードルが下がるに違いない。

解答はこの絵の説明文の空欄に単語を入れること。たとえば[空に][赤い][太陽]があります。こんなぐあいに文を完成させながら、文章力をつけていくという仕組みだ(※)

※編集部註:「どこに?」「どんな?」「何が?」という設問に解答する形。

■子供がわからないことを「見える化」する

次の問題はいきなり文章が登場。

考学舎で使われている、絵を文章で説明させる教材。
考学舎で使われている、絵を文章で説明させる教材。(撮影=萩原美寛)

「青い空に太陽と雲が浮かんでいます。太陽は、右上にあり、横に長い雲が左下にあります。」という文を読んで、その通り白紙に絵を描いていく。ここでは、文を絵で正確に表すことが求められる。

このドリルは、絵を見て文を書く、逆に文を読んで絵を描くという双方向のトレーニングを、楽しみながらできる仕組みになっている。

「これを30問ほど解いていくと、今まで読み書きが苦手だった子も、できるようになりますよ」と、先生は自信たっぷりにいう。

たしかに、親しみやすい絵を介することで、作文が苦手な子も取っつきやすくなるだろう。また文を絵にする場合は、描かれた物、色、配置などで、文の読解力が具体的に見えてくる。

この読み書きトレーニングは、実に画期的なアイデアだ。

「今の子はすぐに『うん、わかった』といいます。実はわかっていないのです。ここが大きな問題」

その場を「わかった」という言葉でやりすごし、早く終わりにしたいという意識が働くのかもしれない。

しかし坂本先生は、「そもそも、自分がどこがわからないか理解できない子がいるんです」という。その上で「わからないことに気づくことが何より大切」と強調する。

『プレジデントFamily2022年春号』
『プレジデントFamily2022年春号』

絵を文に、文を絵に「変換」しながら、読み書きでわからない部分を見つける。この方法を先生は「わからないことの見える化」という。

たしかに本人がわからないということに気づかなければ、学力の向上はおぼつかないだろう。

「そうとも限らないから困るんです。器用な子は問題と解答のパターンを覚えたりして、勘で解いていくことができるんです」

しかし、そういう子も記述式解答や長文の読解で、やがてつまずくのだろう。いつまでもごまかしが利くとは限らないのだ。

■画期的ドリルをつくるきっかけになったベルギー留学

驚くことに、実は坂本先生もその「器用な子」だったという。

芥川賞作家の藤原智美さん
芥川賞作家の藤原智美さん(撮影=萩原美寛)

彼は高校時代にベルギーに1年留学した。現地語であるフランス語での授業についていけなかったので、最初はテキストを日本語に翻訳することから始めた。しかし、そこでハタと気がつく。自分が肝心の日本語をわかっていなかった、と思い知ったのだ。

それまで難関校の暁星高校で、国語は平均的な成績をおさめていた。しかし、答えはいつも当てずっぽうで、文の中身を理解していなかった。けれど、そこそこの成績だったからそれでよかった。

自分がわかっていなかったということを、彼はフランス語を翻訳するという学習を通して「発見」したのだ。それからは懸命に翻訳を続けた。帰国して復学すると、なんと国語の成績が急にアップしたという。教師から「むこうではフランス語はそっちのけで、日本の本ばかり読んでいたんだろう」と言われたという。

留学時代の「翻訳」は、今、絵から文、文から絵への「変換」と形を変えて、子供たちがわからないことに具体的に気づく手だてとなっている。

「家庭で親御さんは教師役になるのではなく、自分もいっしょになって楽しむようにやる」のが、この学習法の秘訣だ。そして、わからないところは、紙の辞書を引くことが重要だという。

これは私も大賛成。ネットの検索だと、ピンポイントで意味がわかり、すぐに次の作業に移ることができるが、その分、言葉の定着率が悪い。紙の辞書を引いたら、意味をノートに書き写すのがいいだろう。

考学舎は現代の寺子屋を自認している。児童のなかには、別の入塾テストに落ちて、ここへ駆け込んでくる子もいる。その彼らも、絵から文、文から絵への書(描)き換えで、読み書きの力をつけていく。

この大都会の真ん中の寺子屋教室に、私は大いに期待したい。

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藤原 智美(ふじわら・ともみ)
作家
芥川賞作家。1955年、福岡県生まれ。フリーランスのライターを経て、『王を撃て』でデビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。『日本の隠れた優秀校』など教育に関するルポも多い。近刊に『スマホ断食 コロナ禍のネットの功罪』。

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坂本 聰(さかもと・さとし)
「考学舎」代表
1972年、東京都生まれ。大学や会社員時代に「思考力」「コミュニケーション力」の重要性を痛感。99年、国語指導をベースにした現代の寺子屋「考学舎」を設立。小中高校生の思考力育成コミュニティー 世界が身近になる新聞トレーニング「時事学」を運営。主な著書に、『お絵かき作文ドリル』『国語が得意科目になる「お絵かき」トレーニング』。

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(作家 藤原 智美、「考学舎」代表 坂本 聰)

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