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健康診断で「異常なし」でも要注意…40代から一気に進む「男性更年期障害」の重大リスク

プレジデントオンライン / 2022年5月3日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

健康診断では「異常なし」とされているのに、心身の不調に悩む中高年男性は「男性更年期障害」の恐れがある。医師の平澤精一さんは「不眠やうつ傾向などを訴える人が増えている。『精神的なもの』として見逃されがちだが、男性更年期障害の可能性がある」という――。

※本稿は、平澤精一『60代からの最高の体調』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■見逃されがちな男性の更年期障害

最近、このような症状に悩まれていませんか?

強い倦怠(けんたい)感
意欲低下
汗をかきやすい
男性機能の低下
睡眠障害
集中力、記憶力の低下
疲れやすい
頻尿
うつっぽい
イライラ

こうした症状は、男性更年期障害の代表的な例です。

男性更年期障害とは、多くは男性が加齢とともにテストステロン(男性ホルモン)が低下することによって、身体的、精神的な症状があらわれる疾患です。

テストステロンは、一生のうちで分泌量が変化し、年齢を重ねれば重ねるほど分泌量が減っていきます。一般的に、第二次性徴期にテストステロンの分泌量が増え、10代後半から20代前半にピークを迎えますが、その後、加齢とともに緩やかに減少していきます。

また、テストステロンの分泌量は食生活や生活環境などにも左右されます。

テストステロンが増えないような生活をしていると、早ければ40代でテストステロンが激減することもあります。

健康に自信があり、健康診断で特に異常は認められなかったとしても、テストステロンの値が低下しているケースは多くあります。

そして、男性更年期障害の症状のひとつである「意欲や体力が低下する」といった症状のせいで、「自分の不調の原因を調べる」「病院に行く」などの行動を起こせないことが多く、ますます症状が悪化するという負の循環に陥ってしまうこともあります。

■「自分が男性更年期障害かも」と思ったら…

このチェックリストは、男性更年期障害の問診に使う「AMS(Aging Male's Symptoms)スコア」をわかりやすく加工したものです。

まずは、こちらのチェックリストで自分の健康状態を把握しましょう。

【図表1】男性更年期障害のチェックリスト
出典=『60代からの最高の体調』

男性更年期障害は、自分自身でも気がつきにくいものです。

意欲や冒険心、行動力、判断力、記憶力、そして筋力や体力、運動機能などの低下、原因不明の心身の不調などがあっても、年齢を重ねれば自然に起こると思われがちであり、最初のうちは「体の調子がおかしいな」「心の状態が良くないな」と感じながらも「歳だから仕方がない」「大丈夫だろう」と見過ごしてしまう人が少なくありません。

しかし、実は男性更年期障害であることが多く、これらのサインを「加齢のせいだから仕方がない」と放っておくと、やがてメタボリックシンドローム、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、認知症、老人性うつ、心筋梗塞、脳梗塞といった重大な疾患をもたらす可能性があり、いずれフレイルや要介護状態になってしまうおそれもあります。

しかも、それらは日常生活の中でゆっくりと進行するため、本人も周囲も気づきにくいという特徴を持っています。

■初期のサインを見逃してはいけない

早い段階であれば、簡単な治療や食生活の見直し、運動などによって症状を改善できますが、本人も周囲も初期のサインを見逃し、深刻化させてしまいやすいのです。

ですから、定期的な血液検査と合わせて、ぜひこのチェックリストで、心身の不調に気づき、男性更年期障害の疑いがありそうだと思ったら、まずは受診をお勧めします。

受診の際は、以下の認定専門医を受診するといいでしょう。

・テストステロン治療認定医(日本メンズヘルス学会)
・泌尿器科専門医(日本泌尿器科学会)

いずれもHPで医師の名前が確認できます。

私が資格を有する「テストステロン治療認定医(日本メンズヘルス学会)」のHPですと、名前だけでなく、病院名、都道府県も記載されていますので、お近くの病院を受診してみてください。

■テストステロン不足が動脈硬化やうつを招く

テストステロン不足によって引き起こされるのは、男性更年期障害だけではありません。深刻な症状としては、「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」、「骨粗しょう症」などが挙げられます。

サルコペニアとは「加齢に伴い、筋力や身体機能が低下している状態」のこと、ロコモティブシンドロームは2007年、日本整形外科学会によって新たに提唱された概念で、「運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態」のことです。

筋肉を丈夫にする役割を持つテストステロンが不足すると、これらの状態に陥りやすくなるといえます。

さらに、テストステロンの分泌量の低下は、認知症や老人性うつなど、脳、そして心の病気にもつながります。

頬杖をついて窓際に座っている中年の男性
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NicolasMcComber

たとえば、みなさんは、「若いころ、バリバリ働いていた男性が、定年退職したのを機に認知症になってしまった」、あるいは「うつ状態になってしまった」というケースを見聞きしたことはありませんか?

テストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれ、大きな判断を任されるようなポジションにいたり、競争などにさらされていたりすると、分泌量はどんどん増えていきます。

■意欲や行動力が低下し、不健康の悪循環が生まれる

そして、テストステロンが増えれば、その分活発に行動するようになり、成果が上がることで、さらにテストステロンが増すといった良い循環が生まれます。

ところが、仕事一筋で生きてきた人が退職すると、テストステロンの分泌量が急激に減少することがあります。

加齢によるテストステロン不足に加え、それまでテストステロンの分泌を促していた「仕事」という生きがいや「会社」という居場所、周りからの承認を失ってしまうからです。

テストステロンの分泌量が低下すると、今度は、意欲や行動力が低下し、次第に体を動かしたり外出したりすることが少なくなり、さらにテストステロンの分泌量が低下するという悪循環が生まれます。

この悪循環にはまり、「朝から夜まで家でテレビなどを眺めながら、一日中ぼんやりと過ごす」といった生活を送るようになってしまうと大変です。筋肉と同様、脳も使わなければどんどん退化しますから、認知症を発症しやすくなってしまうのです。

■男性ホルモン補充は安価で痛みが少なく効果も高い

男性更年期障害だけでなく、長い人生を楽しみ、いつまでも元気に自分らしく過ごすには、テストステロンが必要不可欠だということは、おそらくおわかりいただけたのではないかと思います。

平澤精一『60代からの最高の体調』(アスコム)
平澤精一『60代からの最高の体調』(アスコム)

しかし、すでにお伝えしたように、何もせずに放っておいたら、テストステロンの分泌量は年齢を重ねるたびに、どんどん減っていきます。そこで、みなさんにおすすめしたいのが、薬によってテストステロンを補充するという方法です。

中でも、保険が適用され、効果が高い一方で副作用が少ないのは、筋肉注射による補充です。

「ホルモンを注射で補充する」というと、「体に害があるんじゃないか」「痛いんじゃないか」と不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、テストステロンはもともと体内で分泌されているものです。

加齢やストレスなどにより減りすぎてしまったのを、体が正常に機能するのに必要な分だけ補充するわけですから、ほとんど問題はないと言っていいでしょう。なお、注射は左右の腕や臀部(でんぶ)に打ち、痛みはほとんどありません。

注射の成分はテストステロンそのものではなく、同じ組成の分子構造で化学的に作られたものですが、ホルモンは脂溶性で、打った瞬間に体内で拡散することがないため、水溶性のインフルエンザワクチンなどと違って痛みが少ないのです。

注射の頻度は2~4週間に一度、期間はだいたい半年以上で、数年かかることもあります。保険が適用されるため、注射自体の料金は一回当たり750円程度です。

もし家族やパートナーが「笑顔が減ったな」、「イライラすることが増えたな」などと感じたら、泌尿器科を訪れるよう促してあげてください。

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平澤 精一(ひらさわ・せいいち)
医師 テストステロン治療認定医
日本医科大学卒業。日本医科大学大学院医学研究科にて、医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院などの勤務を経て、1992年に「マイシティクリニック」を開業。現在では新宿区医師会会長をつとめ、東京都医師会、新宿区医歯薬会、新宿医療行政関連の委員、役員を兼任。所属学会・医学会は日本泌尿器科学会、日本メンズヘルス医学会等多数。健康寿命に深くかかわる「テストステロン」の研究者として、「男性更年期障害」の治療、高齢者の健康を守る取り組みを数多く実践。著書に『60代からの最高の体調 ミネラル・ホルモンで「老いない体」を手に入れる』がある。

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(医師 テストステロン治療認定医 平澤 精一)

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