ミスをやたらと攻撃する相手を、和やかな雰囲気に誘導できる伝え方テクニック3つ
プレジデントオンライン / 2022年5月11日 8時15分
■スポーツ指導の現場はどんどん進化している
「監督が怒ってはいけない」というルールを設けたバレーボール大会『益子直美カップ』を始めて8年、2021年は一般社団法人を立ち上げ、代表理事として活動しています。
私の現役時代は、監督に怒鳴られ、たたかれるのがあたり前。怒られたくない一心で自分の思うようなプレーができず、最終的にバレーボールを嫌いになってしまった過去がありました。でも今、スポーツ界は変革のさなかにあって、“昭和の根性論”から“令和の技術論”へ。ただ世界レベルで見ると、日本はまだまだ勝利至上主義で、スポーツがライフワークとなる土壌が整っていません。私だからこそできる活動で、スポーツ界、バレーボール界に恩返しをしたいと奮闘しているところです。
私の活動は、いまだ怒ってしまう指導者の方々に「そのやり方ではもう通用しないから、今の時代にあった活動をしましょう」と「伝える」こと。でもそれは、彼ら彼女らの成功体験を覆すことでもあり、どう伝えれば受け入れてもらえるのか、いつも考えています。
とにかくモットーにしているのは「笑顔でいること」。怒っている監督に「怒っちゃダメ!」などと否定するのはもちろん逆効果。「違うアプローチがありますよ」というアドバイスに耳を傾けてもらうには、“言語コミュニケーション”よりさらに手前の、表情、しぐさ、声のトーンなどの“ノンバーバル(非言語)コミュニケーション”が重要です。まず体全体で「あなたを受け入れている」と表現するようにしているのです。
■伝えたいからこそ聞く。傾聴力をさらに磨きたい
さらに大切にしているのが「現状把握」です。私は伝えたいことがあるとき「最近どうですか?」「調子上がってきたね」などの世間話から始めます。その反応で、相手がどれだけこちらのアドバイスを受け入れる余地があるのかを判断するのです。昔はとにかく一方通行で、怒られはしても「なぜ失敗したのか」を聞かれることはありませんでした。でもミスには必ず原因があり、それをお互いに探っていかないと改善にはつながりません。
これまで私は、コミュニケーションとは「上手に伝えること」だと思っていました。でもスポーツメンタルコーチングを学んだ今、「相手の言いたいことを引き出す傾聴力」こそ真骨頂であり、最重要なのだと理解を深めています。
そうやって、安心安全な場所だと認識してもらい、話し合いに進んでいったとき、もうひとつ使うあるテクニックがあります。それが「効果的に合いの手を入れること」。具体例を促す「たとえば?」、バリエーションを広げる「ほかには?」、真の感情を探る「とはいえ?」などなど。話の流れに沿ってスッと差し込むことで、話の内容が驚くほど広がっていきます。すると相手がより深く考えられるようになり、自然と答えが出て、最終的にこちらの意図がスムーズに伝わっていたりするのです。
私自身「耐えなきゃ、がまんしなきゃ」という昭和の呪縛にとらわれていた弱い人間だからこそ、今の活動に打ち込めていると思っています。スポーツを愛する人々の未来を明るく照らすべく、「伝える」技術をさらに磨いて、尽力していきます。
伝え方賢者の愛用品
左/50歳で心臓の病気が見つかって以来、脈拍や心拍数が測れるスマートウオッチをアプリと連携させて活用。右/軽くて持ち歩きができ、保存もできるメモタブレット。思いついたことはすぐに書き込む。
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スポーツキャスター
1966年生まれ。高校3年時にバレーボール全日本代表に選ばれ、世界選手権やW杯ほか国際大会で活躍。92年現役を引退。現在はスポーツキャスター、タレントとして活動。「一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会」の代表理事を務める。
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(スポーツキャスター 益子 直美 構成=本庄真穂 撮影=望月みちか)
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