なかなか席を立たない常連客も一発で帰る…銀座ママが使うとっておきのフレーズ【2021編集部セレクション】
プレジデントオンライン / 2022年4月30日 15時15分
※本稿は、伊藤由美『できる大人は、男も女も断わり上手』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
■義姉から送られてきたおさがりをどう断るか
仕事関係やご近所さん以上に断わり方に悩まされるのが、肉親や親戚など血縁関係にある人からの頼まれごとや誘いの申し出を断わるというケースです。近すぎるがゆえに、もしヒビが入った場合、その後のつき合いはとても重苦しいものになってしまうでしょう。
以前、NHKの情報番組「あさイチ」の「断わり上手」の回に出演させていただいた際、視聴者の方々に書いていただいたアンケートのなかに、「義理の姉から子どもの洋服の“おさがり”が山ほど送られてくる。
しかもちょっと汚れていたり、デザインが古かったりで、着せられないような服ばかり。なのに着せているかどうかを聞かれて、困っている。どう断わったらいいか教えてほしい」という声がありました(放送ではオンエアされなかったのですが)。
義理の姉というのがまた悩ましいところ。とくに嫁の立場にいる人にとって義理の関係は大きなストレスの原因になります。キッパリ断わりたい、でも機嫌を損ねたくない——その心情は本当に深刻なものでしょう。
この質問に対しては、出演者のなかでもいろいろの意見が出ました。さすがに捨てるわけにもいかず(もし見に来られたら言い訳できない)、かといって着られるようなものでもない。侃々諤々(かんかんがくがく)意見を交わして最終的に落ち着いたのは、
と、ていねいにお断わりするのがベストではないかという答えでした。
基本的には、義姉がよかれと思って好意で送ってくれたもの(だと思いましょう)。最初から「着ないから」「趣味が合わないから」と拒絶せず、まずはその好意に感謝をして受け取るのが大人の対応と言えそうです。
■「お気持ちだけいただいておきます」という“神フレーズ”
さらに、送ってもらった服は一回着せて、スマホやケータイで写真を撮ってメールしてあげれば義姉の顔も立つのでは、という意見もありました。そのあとは“ほとぼりが冷めるまで”タンスの肥やしにしておけばいい。
それに「センスが違う」と思っているのは親のほうだけで、もしかしたら子どもはその服を気に入るかもしれません。そして、それ以降も送られ続けて困ったときには「せっかくのご好意なのに申し訳ないのですが」という気持ちを前面に出して、
と頭を下げる。そうすれば「趣味が合わなかったかしら」「たくさんあって持て余しているのかしら」と、こちらの事情を察してもらえるでしょう。
「ありがた迷惑」「ちいさな親切、大きなお世話」という言葉があります。親切心や好意であることはわかるのですが、こちらにしてみれば困ってしまう、もっと言えば「いい迷惑なんだけど」というのは、普段の生活のなかでもままあること。
例に挙げた「子どものお下がり」、鮮度が悪かったり質のよくない生鮮食品のお裾分け(家庭菜園をやっている人にありがちですね)など、おせっかいな人というのはいつの時代にも、どこにでもいるものです。断わりたいけれど、どこか申し訳ない気がする。そんなときに使えるのが、
という“神”フレーズなのです。
■「孫の顔が見たい」と頻繁に自宅を訪ねてくる義理の両親
触らぬ神に祟りなし。君子危うきに近寄らず。もらっても困るもの、どう考えても過分なもらいもの、もらう筋合いのないもの、見返りを期待されているもの、異性からの下心ありげなプレゼント——こうしたいわくつきの贈り物も、もらわないに限ります。
こうしたもらえない贈り物を断わるときに、ただ「いただけません」「お返しします」では、要らぬ軋轢(あつれき)を招くだけ。ここでも「お気持ちだけいただいておきます」は最適。「気持ちだけで結構、物は不要です」という、丁重でありながらも明確な意思表示になります。
いつの時代も結婚には義理の両親とのおつき合いに関する悩みが付き物です。なかでも「孫の顔が見たい」を口実にして、しょっちゅうご主人のご両親が訪ねてくるという悩みを持つお嫁さんは少なくありません。
いくらよくしてくれる義父母でも、そうたびたびの来訪では気が滅入る。遊びに来ていただくのはいいのだけれど、そうそう頻繁にやってこられても気を遣うし、子どもを甘やかしすぎるし、困ってしまう。でも、「そんなに来ないでください」なんて、口が裂けても言えない。
ご主人に相談しても、「孫がかわいくて会いたいんだろうからいいじゃないか」と取り合ってくれない。悩ましいところだと思います。
年配のお客さまで、お孫さんの顔を見るのが何よりの楽しみという方もいらっしゃいます。そうした話を聞いていると、一概に義父母に「来るな」と言うのは気の毒な気もしますが、悩んでいるのは「ものには限度がある」というケースでしょう。
■「それまで楽しみにしていてください」と伝えてソフトに断る
あるとき新米ママ(お母さんのほうのママ、です)の知り合いが、同じママ友に教えてもらったという、「度重なる義父母の来訪」に対処するとき有効だったひと言を教えていただきました。それが、
というもの。ポイントは「それまで楽しみにしていて」のひと言にあります。それまで楽しみにしていてくれということは、「それまでは遠慮していただけますか」の裏返し。「顔を見ない時間があるほうが、会ったときにはよりうれしさも増しますよ」というソフトな提案をしているわけです。
ご両親の誕生日でも、何かの記念日でも、いつでも構いません。「次はこちらから訪ねていく」と宣言する。すべてのケースに通用するかどうかはわかりませんが、あまりカドも立たず、直接的に迷惑だとも言わず、間を置いてくれという要望を伝えるには使えそうな表現ですね。ぜひ参考にしてみてください。
■どうやって「早く帰ってください」と伝えるか
友だちが家に遊びに来てひとしきり盛り上がり、さてそろそろという折り合いになっても、マッタリモードになってしまい、誰も腰を上げようとしない。「近くまで来たついでに寄ってみた」という知人の突然の来訪につき合って家に上げたはいいけれど、いつまでたっても席を立とうとしない。
「そろそろお開きにしたい」「いつになったら帰るんだろう」「そろそろ帰ってほしいな」と心がざわめきだす——でもさすがに「もう帰って」とは言えない。さあ、困りました。
京都の人がはっきりと本音を言わないことの例えのひとつに、「ぶぶ漬けはいかがどすか?」という表現があります。ご存じの方も多いかと思いますが、ぶぶ漬けとはお茶漬けのこと。お茶漬けは、お酒を飲んだとき最後の締めに食べるもの、それが転じて、「もう締めにしましょうか=だから早く帰ってください」という意味になります。
この京都独特の表現の意味を理解せず、「ではお言葉に甘えて遠慮なくいただきます」などと言おうものなら、「なんて常識がない人なんだ」ということになってしまうといわれています。
また、「逆(さか)さ箒(ほうき)」といって、玄関や出入り口に上下逆さまにした箒を立てると長居している客が帰るという迷信的なおまじないもあります。これには、箒だけに「家から客を掃き出す」という意味合いがあるのだそうです。
ぶぶ漬けも逆さ箒も、「もうそろそろ」のニュアンスを伝えることで、相手が自主的に腰を上げるのを促す、という方法です。いずれにしても、ながっちりの来客に「早く帰ってほしい」とはなかなか言いにくいものなのですね。飲食店でも同じようなことが言えます。
■閉店時間後も居座る客に使う“定番フレーズ”
何度か「もう閉店の時間なので——」とお声をかけているのに、なかなか席を立たれようとしないお客さまへの対処には気をつかうという声をよく耳にします。「クラブ由美」にしてもそう。お店の閉店時間は夜の12時なのですが、時間を過ぎてもまだお開きになる気配なしというときの定番フレーズは、
「閉店なのでお帰りください」などと直接的なことを言わずに、婉曲的にお帰りを促すにはもってこいの表現です。そしてもうひとつの「促しフレーズ」は、これです。
そう言ってテーブルの上を少しずつ、でもテキパキと片付け始めるんですね。するとそこに無言の“ソワソワ感”が広がって、ほとんどのお客さまが「ああ、もうこんな時間か」と気づいてくださいます。こうしたソワソワ感を演出するのは、家の来客に対しても効果があると思います。
みんながマッタリしているなかで、急にソワソワと動き始めることで、「そろそろおいとまします」という気持ちになる可能性は高いでしょう。ただし店でも家でも大事なのは、「笑顔でソワソワする」ということです。
「帰ってほしいから」と急に不機嫌になったり、しらけたり、冷たくなったりと、態度を豹変(ひょうへん)させるのはNG。それこそ無粋で大人気ない振る舞いに見えてしまいます。
それでも相手が鈍感で気づかない場合は、
と、こちらのほうから家の外に出るように持ちかけるのも賢い方法でしょう。
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銀座「クラブ由美」オーナー
東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来、“銀座の超一流クラブ”として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。本業の傍ら、「公益社団法人動物環境・福祉協会Eva」の理事として動物愛護活動を続ける。
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(銀座「クラブ由美」オーナー 伊藤 由美)
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