辞めたらカードは作れない…これから会社を辞める人が絶対にやっておくべき5つの鉄則
プレジデントオンライン / 2022年4月29日 9時15分
※本稿は、荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■起業で成功したいなら絶対にやめたほうがいいこと
もう他人に使われるのは嫌だと、「転職」ではなく「起業」する人もいます。起業で成功しようと思ったら、守らなくてはいけないことがあります。
それは、起業する時に、自分のお金を使わないこと。
起業には、それなりの資金が必要となるケースが多いので、今までの貯金を取り崩したり、会社を辞めた時にもらった退職金を使おうとする人が多いです。中には、親からお金を借りたり、妻のへそくりを使わせてもらうという人もいます。
けれど、起業で成功したいと思ったら、それはやめたほうがいい。
なぜなら、自分のお金や身内のお金だと、管理が甘くなり、失敗しやすく、引き返せなくなったら大きな禍根(かこん)を残すことになりかねないからです。
大切なのは、起業するなら自分のお金や身内のお金を使うのではなく、金融機関からお金を借りるということです。
■融資の相談なら「日本政策金融公庫」を検討
なぜ、身内のお金ではなく金融機関からお金を借りなくてはいけないかといえば、身内は、内容がよくわからなくても情でお金を貸してくれますが、金融機関は、成功する見込みがない事業には、お金を貸しません。
裏を返せば、金融機関がお金を貸してくれるような事業なら、成功する確率も高いということです。
ただ、いきなり銀行に「事業計画書」を持って行って融資してほしいと言っても、充分な担保があれば別ですが、十中八九は、断られます。出した事業計画書は、「社内で検討します」と預かってはくれるでしょうが、放置されるのがオチ。
ですから、相談するなら、地域での創業支援の融資を積極的に行なっている政府系の金融機関の「日本政策金融公庫」や地域の信用金庫などに行きましょう。
日本政策金融公庫には「創業支援」のメニューがあり、相談にも対応しています。
ただ、「創業支援メニュー」があるからといって、事業計画書を持っていけばお金を貸してもらえると思ったら大間違い。最初は、99.99%は借りられないと思ったほうがいいでしょう。
そこで、もし「この事業計画では難しい」と言われたら、そこからが大切です。
何がダメでこの事業計画書が通らないのかを、しっかりと聞きましょう。相手は起業のプロですから、どこに問題点があるのかを見抜いているはずです。
それを指摘してもらったら、重点的に改善し、事業計画書を書き直して再び持参しましょう。そこで、さらなる問題点が指摘されたら、また見直して持っていく。
そうやって計画の見直しを何度も繰り返していけば、自分の中でも成功のビジョンが固まるし、事業の欠点も改善されますから、成功率は上がっていくはずです。
■思いばかりが先走った自己流で失敗が拡大する
前述したような作業は、会社を辞める前にやっておきましょう。そして、融資も受けられて計画にも自信が持てるようになったら、それから会社を辞めても遅くない。
起業への意欲がある人は、往々にして本人の思い入れが強く、思いばかりが先走って自己流になりがち。それが、失敗の拡大にもつながります。
しかも、それが自己資金や身内のお金だと、そのまま突っ走り、うまくいかないと何とかしようと熱くなり、新たに借り入れをして雪だるま式に借金が増え、身動きが取れなくなるまで損を拡大させていく可能性があります。
けれど、金融機関から借りたお金なら、担保さえ最小限にしておけば、ダメだったら会社を倒産させればそこで終わります。親類縁者にも迷惑をかけることがありませんから、失敗を糧(かて)に、再度奮起して立ち上がろうとする時に、応援してもらうことだって可能かもしれません。
■会社を辞める前にやっておきたい5つの鉄則
「起業」などで会社を辞めると決めても、実際に辞める前にやっておきたい5つのことがあります。
②「有給休暇」をフルに使う
③健康診断で、悪いところがあったら治しておく
④クレジットカードをつくっておく
⑤賃貸物件を借りておく
この5項目をクリアしておかないと、退職後にアセることになりかねません。
①収入の1年ぶんの蓄えを用意する
会社を辞める前に、子供がいたら年収の1年ぶん、独身者なら年収の半年ぶんの貯金をしておきましょう。
働いていた年数にもよりますが、たとえば45歳以上で20年勤めていた場合、会社都合の退職だと、最大で約11カ月ぶんの失業保険が給付されます。この失業保険と年収1年ぶんがあれば、2年くらいは食いつなぐことができるでしょう。
それだけの期間があれば、望む仕事を探したり、起業することもできるはず。
辞めてもすぐに就職しなくては食っていけない状況だと、やりたくない仕事でもやらなくてはならなくなりますから、それこそ大変なことになるかも。
■会社の「健康保険」は手厚い補償が得られる
②「有給休暇」をフルに使う
「有給休暇」は、会社に勤めて半年以上たてば10日もらえ、6年半以上勤めていれば、年間に20日使えます。お給料が出る休暇なので、次の仕事探しなどにフルに使いましょう。会社が、独自に上乗せしている「法定外休暇」もチェックします。
ちなみに、給料が出る休みとしては、介護が必要な時に取れる「介護休業」や子育てで取れる「育児休業」などもあります。
③健康診断で、悪いところがあったら治しておく
会社を辞める前に、しっかり健康チェックをしておきましょう。
会社の「健康保険」は、会社が保険料を半分負担してくれるぶん「国民健康保険」よりも保険料が安くなるケースが多く、しかも病気が発見されて治療する時に、傷病手当金が使えるなど、国民健康保険よりも手厚い保障が得られます。
会社を辞めても退職の翌日から20日以内に手続きすれば、「任意継続被保険者制度」といって2年間は会社の健康保険と同じ保障が受けられる制度もありますが、ただしこの制度では、保険料の会社負担ぶんがないので、保険料が高くなります。
■家の賃貸・購入は計画的に
④クレジットカードをつくっておく
会社を辞めて無職になると、クレジットカードをつくったり、各種ローンを借りるというのが、人によってはできないケースも出てきます。
ふだんクレジットカードを使わない人でも、海外に行く時などは必需品になりますから、できれば年会費無料のものなどを何枚かつくっておくといいでしょう。
⑤賃貸物件を借りておく
会社の社宅に住んでいると、会社を辞めたら出ていかなくてはなりません。
そうでなくても、賃貸物件を借りる時に、無職で無収入だと、収入のある保証人を要求されるケースもあります。
もちろん、UR賃貸住宅(都市機構)なら、礼金なし、仲介手数料なし、更新料なし、保証人なしでも入れます。ただ、物件にもよりますが、少し割高になります。
家を買いたいという人は、会社を辞めると住宅ローンが組みにくいので、辞める前に買っておく。ただし、あとのことも考え、くれぐれも無謀なローンは組まないこと。
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経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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