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「お礼メール」を見れば一発で分かる…「仕事ができる人」と「できない人」の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2022年4月29日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

「説得力のある文章」を書くにはどうすればいいのか。ライター・作家の奥野宣之さんは「婉曲は読み手に負担をかけてしまうので避けたほうがいい。抽象的な言葉ではなく、『見たまま』『聞いたまま』『感じたまま』を書くことが大切だ」という――。

※本稿は、奥野宣之『心をつかむ文章術 無敵の法則』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■断定を避けたがる、“オトナな文章”は読みにくい

「ビジネス用のスーツは紺色がいちばんだと思います」という書き出しで文章を始めると、次のような声があるかもしれません。

・いやいや、グレーのほうがいいと思う
・色より素材のほうが重要でしょ
・紺イコール無難、という考え方は古くさい
・おまえは葬式も紺色で行くのか?

そこで、先に反論を封じておきましょう。すると、こんな文章になりました。

グレーのほうが好きだという人もいるだろうし、色より素材という考え方もある。また、いかにも無難なものを選ぶ古くさい考え方だと思われるかもしれないけれど、ビジネス用スーツは紺色がいちばんだと思っている。もっとも、葬式など特別なケースを除いての話だが。

はい、「何が言いたいんだ? コラ!」という文章ができあがりましたね。

奥野宣之『心をつかむ文章術 無敵の法則』(アスコム)
奥野宣之『心をつかむ文章術 無敵の法則』(アスコム)

「自慢じゃないが」「私だけの話と思われるかもしれないけれど」といった短いものから、「○○という人のために説明しておくと……」という長い一節もあります。

こういった“先まわり”の言い回しを、軽はずみに使ってはいけません。必然性のないところで使うと、たいてい言い訳じみた自信のない文章になります。

ただし、すべての“先まわり”が悪いわけではありません。文章を作っていて、「ほとんどの人はこのへんに引っかかりを感じるだろうな……」と思ったときは、「ここで、『それって○○なのでは?』という声に答えておこう」と、きっちり説明しておくべきでしょう。

違和感を抱えたまま「いつ答えてくれるんだろう?」と気にしながら読み続けていると、読み手は疲れてしまうからです。

■「予防線」を張った文章はNG

読み手に優しい、適切な“先まわり”ならば、むしろやったほうがよい。

では、「ビジネス用のスーツは紺色がいちばん」にあれこれ書き加えた文章の“先まわり”はどうでしょう? こちらは親切心からの“先まわり”ではありませんね。

自分が反論されたくないから、あらかじめさまざまな「声」が飛んでくる可能性を潰しておくための“先まわり”。いわば「予防線」と呼ぶべきものです。

長ったらしいスーツの文章が無様なのは、動機が間違っているからです。

「読者の疑問に答えよう」というサービス心ではなく、「自分が批判されたくない」という保身のために書いている。そんな心根は読み手にすぐ見透かされます。

ビジネスに限らず、大人の文章は、こういった「予防線」のオンパレードです。次のような言い回しを書類で見たことはないでしょうか。

「まだ精査が必要ですが、○○という傾向が見受けられます」
「△△との見方もあるものの、全体としては□□という説がまだ根強いと言えます」
「○○であるかもしれません。ただ少なくとも△△であるとは言えそうです」

会話で婉曲的にものを言うのは、社会人としての暗黙のルールかもしれません。この種の「いかにもオトナ的」な言い方を好む人が多いのも事実でしょう。

しかし、「誰からも読まれる文章」「影響力のある文章」を書きたければ、予防線はダメです。必然性のない婉曲は、わかりにくい。スッキリしない。食い足りなさやモヤモヤが残る。読み手に負担をかけてしまう。

むしろ、予防線をまったく張らないことを、強くおすすめします。

反論や異論だけでなく、的外れなツッコミがくるかもしれないとしても、あえて受け入れましょう。そんなことより、文章の明朗さのほうが大切です。

パソコンを使用する男性
写真=iStock.com/ijeab
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ijeab

■お礼メールを読めば一発で分かる…仕事のできる人の共通点

ビジネスで書く文章は、その目的の多くが「説得」です。相手に理解してもらうための「説得力」を生むためには、何が必要でしょうか。

基本は、根拠となる統計や調査データを示すことです。最近では、作り手のストーリーが買い手の心を動かすのだ、なんてこともよく言われています。商品開発の苦労話や「私がこのレタスを作りました」という写真をサイトで紹介しましょう、と。

ただ、こういった「説得力」の工夫は、ちょっと高度ですね。誰にもすぐにできるものではありません。

ポイントは「とにかく具体的に書く」ことです。

たとえば、取材させてもらった人へのお礼メールは、普通こんなふうに書きます。「今日は貴重なお話をありがとうございました。中でもアメリカ留学でのエピソードが印象に残っています。私も何か新しいことにチャレンジしたいと思いました」

しかし、説得力を持たせたいならば、「アメリカ留学中に訪れたアラスカのエピソードで『体験しないと知識はつかない』とおっしゃっていたことが、印象に残っています。私も昔から関心を持っている幼児教育を学ぶため、まず地域のボランティアからはじめてみようと思いました」と、いちいち具体的に書く。

本当に感動したなら、自分が注目した出来事や言葉、そのとき感じた自分の思いなどを具体的に書くのは、簡単なはずです。具体化すれば説得力が出る――。考えてみれば、当たり前の話ですね。

■会話をメモで残しておくといい

逆に言えば、「抽象的に書くと伝わらない」ということです。

「世界の見方が変わる本」とか「ちょっと贅沢で特別な雰囲気のある店」とか、こんな標語みたいな抽象的な言葉には、人を説得する力がまるでありません。

「平日イオンモールにいる主婦がついレジに持っていってしまうような本」「20代のサラリーマンが彼女の誕生祝いに使うような店」のほうが、はるかにいい。「平和を守れ」のような、抽象概念だけの言葉がいちばんダメです。

具体的に書くのは、難しいことではありません。うまく整理しようとせず、「見たまま」「聞いたまま」「感じたまま」を自然に、正確に書けばいいのです。

お礼は「何がどう嬉しかったのか」、企画の提案は「どこがどのようにおもしろいと思ったのか」を書く。「君を愛してる」より「君の声が聞きたい」のほうがいいですね。

「抽象的でダメな書き方」と「具体的でよい書き方」をまとめると

×一般的な名前(パン)→○固有名・限定的な名前(バゲット・明太子フランス)
×大まかな日時(先日)→○正確な日時(3日前)
×類型化した描写(上品なネコ)→○見たまま感じたままの描写(柔らかそうな毛並みのネコ)
×発言の要旨(夢の大切さ)→○発言の正確な引用(「自分の夢を紙に書け」)

「正確に書く」というのは単純ですが、慣れが要ります。日ごろから、読んだ本・会った人・食べたものなどを「抽象的な言葉を使わずに、どう描写するか」と考えて、話したりメモを残したりしておくのが訓練になります。

笑顔でメモを取る女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

■「頭がいい」と思わせる、わかりやすい自己PR文

わかりやすい文章は、就職・転職などの自己PRにも役立ちます。

企業の採用担当者は、仰々しい志望動機やゴテゴテと飾った自己PR文を読み飽きて、ウンザリしています。そんなとき、もし大量の応募書類の中に、とても読みやすく、スキッと筋の通った自己PR文を見つけたら、どうでしょうか。この応募者は頭がいいぞと思い、名前を覚える。たぶん書類審査をパスできるでしょう。

まずは、テクニックを身につけていない人の自己PR文から。

2年4カ月の間、社会人として働いた結果、仕事の厳しさと楽しさを知ることができました。接客・販売職もとてもやりがいの多い仕事でしたが、今は、現場をバックアップするサービス業の後方部門の仕事が私の適職だと考えています。

接客・販売職で経験を積んだからこそ、次に歩むべき道を見つけることができたと思います。「明るさ」と「積極性」をいつも意識して、新しい仕事で必要な知識やスキルは、自己研鑽とともに現場で働きながら学ぶよう努め、短期間で戦力として役に立てるようになりたいと考えています。

こういう文体こそ自己PR文の「お約束」なのだ、といえばそれまでですけれど、私ならもっとやわらかく書きます。

■「やさしい文章」を書けるのは、頭のいい人である証拠だ

読み手に負荷をかけない「やさしい文章」が書けるということは、頭のよさの証拠。また、大量の書類に目を通す採用担当者への思いやりでもある。

必ず好印象に結びつくはずです。テクニックがあればこうなります。

前職で2年4カ月働いてわかったことは、仕事の楽しさと厳しさです。

接客や販売など、さまざまな仕事をやってきて思ったのは「後方支援こそ、私が力を発揮できる分野だ」ということでした。サービス業の後方部門で現場をバックアップすること。これこそが私の適職だと思います。

お客さんとのやりとりで学んだことを、この仕事に活かすつもりです。また次の職場でも、明るい気持ちでどんどん人と関わっていこうと心に決めています。

必要な知識やスキルは、現場でできるだけ早く覚えて、「即戦力になる」と評価してもらえる社員を目指します。

読みやすいだけでなく、就職活動にありがちな「建て前をずらずら並べた感じ」も薄めることができました。

実際に、履歴書を読む担当者がどんな人かはわからないので、「これで確実にパスできる」なんてことは言えません。

それでも、10社のうち6社くらいは、「読みやすい文章が書ける=能力が高い」と評価してくれるでしょう。「読ませる力」があると、大事な局面でも少し優位に立てるのです。

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奥野 宣之(おくの・のぶゆき)
作家・ライター
1981(昭和56)年、大阪府生まれ。同志社大学でジャーナリズムを専攻後、出版社、新聞社勤務を経て作家・ライターとして活動。読書や情報整理などを主なテーマとして、執筆、講演活動などを行っている。著書に『情報は1 冊のノートにまとめなさい[ 完全版]』『読書は1 冊のノートにまとめなさい[完全版]』(以上、ダイヤモンド社)、『学問のすすめ』『論語と算盤(上)自己修養篇』『論語と算盤(下)人生活学篇』(以上、致知出版社「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ」現代語訳)などがある。

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(作家・ライター 奥野 宣之)

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