「結局、何をやればいいんですか?」頭の悪い人ほど堂々とそんな質問をしてしまう根本原因
プレジデントオンライン / 2022年5月2日 8時15分
■「質問スキル」はプレゼンスキルよりも大事
「キミ、私が今言ったこと、ホントに分かってる?」
「今それ聞いて何になるの?」
自分なりに質問してみたものの、相手からすると的外れな質問になってしまったという経験はないでしょうか。
その一方で、
「キミ、いい質問だね」
「その質問、鋭い!」
そのようなリアクションを得られる人もいます。
たった1つの質問で、相手からの評価が分かれてしまうことはよくあることです。仕事などで上司や先輩の指示を仰ぐ際に、適切な質問ができるかどうかは、仕事の成果そのものに大きな影響を与えるのはもちろんのこと、相手からの評価を大きく左右します。
特に、新入社員もしくは中途採用として入社したばかりの人、あるいは若手社員のような、その業務における現場経験が少ない人にとってはプレゼンスキルよりも、むしろ、「質問スキル」のほうが重要だと私は考えています。
なぜなら、彼ら彼女らは周囲の人と比べてもっている情報や知識に大きなギャップがあり、それを埋めないことには会社組織やチームとしての生産性は向上しないからです。
■地頭の良さそうな質問は誰にでもできる
その一方で、質問の仕方というのは、なかなか教わる機会はありません。近年、学校教育ではプレゼンや議論で意見を伝えるスキル向上の機会は増えていますが、「相手に適切な質問をするスキル」はすっぽり抜け落ちているように感じます。
質問をするたびに自分のした質問の良しあしを、相手が直接判断してくれたらまだマシなのですが、なかなか指摘してもらえないのではないでしょうか。相手は「それさっき話したことなんだけどな」「それ、今、重要?」と心の中で思っても、話が脇道にそれてしまう可能性もありますし、「質問の仕方」について適切なフィードバックを与えるのが難しいのだと思います。
私自身、これまで予備校講師時代に1万回を超える質問を生徒から受けてきました。その中で、伸びがすごく期待できる質問をしてくる子と、伸びに時間がかかってしまいそうな子の質問が明らかに異なることに気づきました。
特に、伸びに時間がかかってしまいそうな子の質問、つまり、筋があまり良くない質問には2つのパターンがあることが分かったのです。
質問はセンスのように思われることもあるのですが、実は頭の使い方ひとつで、適切で地頭の良さそうな筋の良い質問をすることは可能です。実際、筋の良くない質問をしてくる子に「適切な尋ね方」を指導したところ、みるみる筋の良い質問ができるようになっていきました。
それでは、筋の悪い質問には、どのようなパターンがあるのでしょうか。
■上司に「早急に詰めといて」と頼まれたときのダメ質問
筋の悪い質問をする人というのは、知識がない人というわけではありません。知識がなくても筋の良い質問をすることは十分可能です。むしろ、頭のいい人ほど自身の知識が足りていないことを自覚的で、かつ、その不足を補完しようと思うからこそ筋の良い質問ができるのです。
つまり、筋の良い質問ができるかどうかは、知識の有無ではなく、自身の知識の不足に自覚的であるかどうかによるのです。
そして、筋の悪い質問とは、大きくは以下2つのパターンのいずれかに当てはまります。
パターン① 相手の発信した情報に対して的を外した質問
パターン② ぼんやりした抽象的な質問
例えば、会社の上司に、急な仕事を頼まれた状況を想定します。上司から、「ここは、今回のプロジェクトの核になるから、早急にしっかり詰めておくように」と説明された際、「分かりました。ちなみに、核ってどういうことですか?」と質問しようものなら、おそらく上司には、「そこは今、重要じゃないんだよね……」「私の言いたいこと、分かってないでしょ」と言われたり、思われたりするでしょう。これは、パターン①の的を外した質問の結果です。
また、依頼内容に関する上司の説明に対して、「△△課長、それってどういうことですか?」と質問しても、上司からすると、「何が?」となってしまうでしょう。つまり、これはパターン②の質問をしたときの典型で、結局、抽象的な質問をすると相手は答えにくく、もしくは抽象的な回答しか返ってこないのです。
■具体的な質問は相手の評価を得やすい
それでは、上司の説明に対して、筋の良い質問はどのようなものがあるのでしょうか?
例えば、「“早急”とは、具体的にいつまでのことを指すのでしょうか?」、あるいは「どの程度の完成度であればリスクは回避できそうですか?」。このような質問であれば、上司も「そうそう、それも説明しなきゃと思ってたから、質問してくれて助かったよ」となるでしょう。
このような筋の良い質問ができることで、「こいつ、できるな!」、「センス良いな」と相手からの期待や高評価につながります。
それでは、筋の悪い質問を避け、筋の良い質問ができるようになるためにはどうすればいいのでしょうか? 実は、その方法はいたってシンプルです。筋の悪い質問を生む根本原因を叩けばいいのです。
■どの情報が自分に不足しているか分かっていない
筋の悪い質問を生んでしまう根本原因とは、一言でいうならば、「相手からの情報でどこが自分にとって不足しているのか気付けていない状態で質問をしてしまうこと」です。これが原因で、的外れだったり、抽象的な質問になってしまったりするのです。
そして、情報の不足に対して気付けるかどうは、自分が相手の情報を正確に理解できているかどうかに関わってきます。つまり、相手の説明をしっかり分かっているかどうかです。それでは、相手の説明を正しく理解しているかどうかを判断するにはどうしたらいいのでしょうか?
■説明を正しく理解する「単語」「論理」「文脈」
これは、以下の3つの視点で自分の理解不足の有無を捉えることで、迅速な判断ができます。頭のいい人の筋の良い質問は、この3つの視点を意識しながら、「自分の理解不足が何かを正確に把握した上で、それを的確に補うための情報を得られる質問」と言えます。
視点① 単語(ワード)
視点② 論理(ロジック)
視点③ 文脈(コンテクスト)
ここからは、具体的な筋の悪い質問と筋の良い質問の具体例と合わせて、これらの視点を一つずつみていきます。
まず、視点①「単語(ワード)」ですが、これは、専門用語や業界用語、略語などを指します。相手の説明の中に、自分が知らない単語があった場合は、そこを質問します。
「この●●って、何ですか?」
このように漠然とした質問は筋の悪い質問です。得られる回答の精度や解像度を上げるために、以下のように質問します。
具体的な質問例としては、以下のようなものがあります。
「この●●って、なんの略ですか?」
「それは、具体的にどんなことを指しているものですか?」
「その●●という用語の定義だけ、念のため今擦り合わせてもよろしいでしょうか?」
![会社の廊下を歩き仕事の話をする社員](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/7/1200wm/img_27c1203b85d8a5ffd67cfa894e127679322175.jpg)
■分からない単語はできるだけ潰しておく
もちろん、後から調べて分かることであればそれでもいいのですが、自社内の特有の用語やクライアント先にしか通用しない造語などはインターネットで調べても出てこない可能性があり、その単語だけを別の機会で質問するのもはばかられるでしょう。また、その単語が分からなかったり誤認していたりした場合、その後の説明内容がほとんど理解できなくなる可能性も出てきます。
そのため、分からない単語がでてきた際に、「その●●とは、一般用語ですか?」や「簡単にでも教えてもらえませんか」のように質問することで、自身の単語に対する理解不足を解消することができます。相手がクライアントや偉い人であれば、枕詞に「勉強不足で大変恐縮なのですが」とつけることで、単語に対する質問がしやすくなるでしょう。
続いて、視点②「論理(ロジック)」について説明していきます。
■説明の中にある「原因と結果」を把握する
「論理(ロジック)」とは、一言でいうならば、「文と文の関係性」です。つまり、論理(ロジック)を理解できるというのは、相手の説明中の文と文の間にどのような関係性があるかを捉えられるということです。
その視点からすると、以下のような質問だと「論理(ロジック)」を把握できない可能性があります。
「意味を教えてもらえませんか?」
「それって、理解できないのですが?」
このような質問では、説明中のどことどこの関係性が知りたいのか、相手には伝わりにくいのです。そのため、「論理(ロジック)」を正確に捉えるためには、「●●と▲▲って、どのような関係なのですか?」このように質問してしまうのが最もシンプルでしょう。もう少し具体的にいうと、ビジネスシーンでよく出てくる関係性として、「具体と抽象」や「原因と結果」があるので、その観点から、
「その●●の意味を、もう少し具体的に教えていただけませんか?」(具体化)
「つまり、まとめるとどうなるのですか?」(抽象化)
「そもそも、原因は何だったのですか?」(原因の特定)
このような質問をしていくことで、「論理(ロジック)」を正確に理解できるようになります。
それでは、最後の視点③「文脈(コンテクスト)」について説明していきましょう。
■結論を急ぐ人は的外れな質問をしてしまいがち
「文脈(コンテクスト)」とは、ざっくりいうと、「今現在、相手が伝えている情報以外の前提となる情報や背景知識」です。この文脈(コンテクスト)に則った情報を把握しないままに質問した場合、例えば、
「結局、何をやればいいんですか?」
「それって、相手側に問題があるってことですよね?」
このように、事の経緯を理解しないで結論や結果に飛びついたり、極端な理解を正当化したりした状況を取り違えた筋の悪い質問が生まれてしまいます。このような文脈(コンテクスト)を無視した質問を避けるためには、
「前提となっている条件を教えていただけませんか?」
「この背景から教えていただけませんか?」
「ことの経緯は何だったんですか?」
「どのようなプロセスをたどってその結果になったのですか?」
これらのような質問をして、まずは文脈(コンテクスト)を正確に捉えていくことが重要になってくるのです。
このように、視点①~③を意識しながら自分の不足している情報や知識を相手に質問していくことで、相手に質問の意図が伝わり、適切な回答を引き出すことができます。これが筋の良い質問となるのです。
最後に、筋の良い質問がすぐにできるコツを1つお伝えします。
■「聞きたいことは1回に1つまで」を守る
そのコツとは、「1つの質問に聞きたいことは1つしか入れない」というものです。1つの質問の中に、例えば、5W3H(Why,What,Who,When,Where,How,How long,How much)が複数個入っていると、答える側の回答の精度が下がってしまいます。
そのため、1つの質問の中に、知りたいことは1つに絞ります。先程の上司の説明「ここは、今回のプロジェクトの核になるから、早急にしっかり詰めておくように」に対して、
例1「具体的なデッドラインはいつ頃を想定していますか?」
例2「今回のプロジェクトのマネジャーはどなたになりますか?」
このように質問していきます。
![事業計画会議](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/1200wm/img_1694520ebcc1f22d8cf0be742dcd134f363775.jpg)
例1は〆切が最優先であると見越して「When」を質問、そして、例2はプロジェクトを円滑に進める上での責任者(中心人物)を確認する「Who」を質問することで、相手は的確な回答をすることができます。
慣れないうちは、上手く質問できなくても大丈夫です。筋の良い質問は、これまでお伝えしたことを意識的に行っていけば、確実にできるようになります。ぜひ試してみてください。
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教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。
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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)
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