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「ゴミ屋敷のタンスに尿臭下着が詰め詰め」68歳認知症の義母による嫁いびり倒しの生々しい実態

プレジデントオンライン / 2022年4月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

自称公務員の男性と6年の交際期間を経て結婚し、31歳で出産した女性。ワンオペ育児に追われるだけでなく、同居する65歳の義父からはモラハラを受け、義母からいびられた。そんな中、68歳の義母の行動に異変が。タンスの中には、尿を漏らした下着やズボンが入れられていた――(前編/全2回)。
この連載では、「ダブルケア」の事例を紹介していく。「ダブルケア」とは、子育てと介護が同時期に発生する状態をいう。子育てはその両親、介護はその親族が行うのが一般的だが、両方の負担がたった1人に集中していることが少なくない。そのたった1人の生活は、肉体的にも精神的にも過酷だ。しかもそれは、誰にでも起こり得ることである。取材事例を通じて、ダブルケアに備える方法や、乗り越えるヒントを探っていきたい。

今回は、6年の交際期間を経て結婚した相手はモラハラ夫だったという、30代女性の事例。夫が希望し、義両親も家事育児をサポートしてくれるとのことで2世帯同居を承諾したが、義父は酒乱、義母からは嫁いびりに遭い、家政婦扱い。やがて義母が認知症になると、ダブルケア状態に陥っていく。女性はどんな思いで介護に関わったのか――。

■夫と義両親に違和感

関東地方在住の七瀬希子さん(仮名・30代・既婚)は、2歳下の弟とともに、運送業に従事する父親の男手ひとつで育てられた。両親は七瀬さんが物心付く前に離婚。父親は母親の話をすることはなく、成長過程で会うこともなかったため、七瀬さんに母親の記憶はまったくないという。

大学卒業後、金融系の企業に就職した七瀬さんは、23歳のときに友人から、公務員をしているという31歳の男性を紹介される。男性は包容力があり、七瀬さんの話によく耳を傾けてくれた。やがて男性からの告白により、2人は交際をスタート。お酒が好きな男性とのデートは、もっぱらお酒がおいしい飲食店巡りだった。

しばらくして男性の両親と会うことになったが、初顔合わせの食事会をした際、男性の両親は箸置きなど店のものを無断でポケットに入れて持ち帰っていたことが判明。帰宅後、男性が気づき、慌てて店に戻しに行ったが、七瀬さんは、「こんなことをする人がいるなんて……」と愕然とした。それが七瀬さんにとって、行くか戻るかを決める運命の分かれ道だったことは、このときは知る由もなかった。

2人は6年の交際を経て、七瀬さん29歳、夫37歳で結婚。

ところが結婚後、夫と2人でアパート暮らしを始めたが、なかなか子どもが授からない。実は七瀬さんは、結婚前から多嚢胞性卵巣症候群と診断されていた。多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞の成⻑が途中で止まり、たくさんの⼩さな卵胞が、卵巣内にとどまってしまう病気だ。

そのため七瀬さんは、不妊治療を始めた。頻繁に通院しなければならないことや、仕事で受けるストレスなども妊娠の妨げになる可能性があることから、結婚して半年後、七瀬さんは治療に専念するため、仕事を辞めた。

それから約半年後に男の子を妊娠し、2017年9月に出産。七瀬さん31歳、夫39歳になっていた。夫は出産に立ち会い、第1子の誕生をとても喜んだ。

当時65歳の義父と68歳の義母は、七瀬さん夫婦の新居から車で10分ほどのところに住んでおり、七瀬さん夫婦が結婚してからというもの、毎週末アパートに遊びに来ていた。

驚くことに、どうやら夫は、平日も週に2回は仕事帰りに義実家へ寄っているらしく、帰宅が遅いことが頻繁にあった。義両親が来るときは、いつも食材やお菓子などを持って来てくれて助かっていたが、七瀬さんは、1日おきくらいに会っているにもかかわらず、お互いに近況報告をし合い、いちいち体調を心配し合う夫と義母の関係が気になっていた。

さらに不可解なことに、結婚後、七瀬さんが親戚の集まりに出るようになると、義親族たちが夫に、「○○(社名)は最近どうなんだ?」と話を振る。

「私にとってはそもそも、夫は公務員だと聞いていて、夫がその会社の社員だったなんて寝耳に水でした……。あとで夫に聞いてもはぐらかされて、あまり問い詰めるとキレるので、いまだに夫がどこの会社でどんな仕事をしているかわからないのです」

やがて、息子が1歳になるかならないかくらいの頃、夫が言った。

「俺の両親と同居しないか?」

聞けば義両親は、七瀬さん夫婦と同居するために、新居としてマンションを購入する予定だと言う。さらに夫は、「おふくろに家事や育児を手伝ってもらえるから、希子にとってもいい話だろ?」と推してくる。

昭和の価値観を引きずる義父からは、「年下だから」「女性だから」「嫁だから」と会うたびに見下されているような感覚があったが、これまで義母には優しく接してもらってきた七瀬さんは、「それなら……」と、OK。このとき地獄への第一歩を踏み出してしまったとは、当時の七瀬さんには知り得るはずもなかった。

■正体を現した夫と義両親

同居に向けた準備期間中、七瀬さんは1歳になったばかりの息子を抱えていたため、同居や引っ越しの準備は夫や義両親に任せきり。しかし、このことが後戻りできない最悪の事態を招いた。

「同居のことは結婚前からちょこちょこ言われていて、同居するマンションは、義両親が同居のために買った新しいマンションだと夫から聞いていたのですが、これも嘘でした……」

一度だけ同居するマンションを見に行ったことがあるが、夜で暗く、息子を連れていたため短時間でよく見えず、すでに義両親が住んでいた部屋はゴミ屋敷状態だった。帰宅後、「話が違うよ!」と七瀬さんが夫に抗議すると、「両親がボケてるんだよ」「俺らの部屋はきれいに片付けるから」と苦しすぎる言い訳をするばかり。

2018年4月。結局、予定通り引っ越すことに。移った先は、築20年以上経っているであろうマンション。義両親は新しいマンションなど購入しておらず、義両親が住んでいたマンションに、七瀬さん一家が移り住んだだけだったのだ。

もちろん2世帯仕様ではなく、玄関もキッチンも風呂もトイレも共同の完全同居。最初は68歳の義母も家事をしていたが、1週間もしないうちに義母の不器用さが目に余るように。

洗濯物の干し方ひとつとっても、義母は洗濯物をしっかり開かず、洗濯もの同士の間隔を空けずに干すため、生乾きになって雑菌などが繁殖しやすく、臭いも気になる。そこで七瀬さんが、「こうすると早く乾きますよ」とアドバイスしたところ、「私はこのやり方で何十年もやってきたんだから、口出さないで!」と反発。これには夫も、「希子の言うように干したほうがいい」と言ってくれたが、その度に義母は反発する。

掃除に関しても、義両親の部屋はゴミ屋敷状態。にもかかわらず、七瀬さんがリビングを掃除したあと、これみよがしに床をなで回してゴミを集め、勝ち誇った顔で「まだ汚い」アピール。

料理では、七瀬さんが作ったものに手を付けず、買ってきたどら焼きなどの甘いお菓子を食べたり、七瀬さんが作っておいた料理を捨ててしまったりすることもあった。

どら焼き
写真=iStock.com/deeepblue
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deeepblue

七瀬さんと義母は、事あるごとに衝突するようになり、半年も経たないうちに家事全般が七瀬さんの仕事になっていた。

七瀬さんが「見下されている」と感じていた65歳の義父は、定年後再雇用され、平日は仕事に行っているが、週末は必ず家で酒を飲んでは泥酔する。酔っ払うと義父は、しばしば手がつけられない状態になった。

同居からしばらく経ったある夜、酒を飲みながら夕食を食べ、食卓でくだを巻く義父に対し、七瀬さんが「もう食べないなら片付けますね」と言って、冷めきった料理や空いた食器を下げようとしたところ、突然怒鳴りながら壁を叩き、胸ぐらをつかんで殴りかかってきたことも。七瀬さんがとっさに、「どうぞ殴ってください! 警察呼びますから!」と言うと、義父はしぶしぶ握った拳を降ろしながらも、執拗(しつよう)ににらんできた。

さらに、唯一の救いとなるはずだった夫も豹変(ひょうへん)した。

夫は息子の誕生を心から喜んではいたものの、子育てには全く無関心。ほとんど七瀬さんのワンオペ状態だったのだ。そこへ同居が始まると、もともとお酒好きで、月に1〜2回は飲み歩き、帰宅が遅かった夫が、だんだん帰宅が遅い日が増えていく。

家にいる時間は自室に閉じこもり、DVDを見たりゲームをしたり。自ら息子と関わろうとせず、子育ても家事も、七瀬さんが細かい指示を出して5回頼めば、1回は嫌々手伝ってくれる程度だった。

「夫には、『お義母さんからはいびられ、お義父さんからは見下されていて、酔っ払うたびにけんかを売られているんだよ』と話しましたが、真剣に聞いてくれません。そもそも同居してからというもの、ほとんど飲み歩いていて家にいないか、いても自室でDVDやゲームに夢中なので、私がどんな目に遭っているか知らないし、知ろうともしてくれなくなりました」

義母の嫁いびりは地味に続けられた。七瀬さんが義母に贈った誕生日プレゼントを、封も開けずに捨てたり、外出時や帰宅時に、玄関にある七瀬さんの靴を必ずわざと踏み潰し、七瀬さんの靴だけいつもぺちゃんこにされたりしていた。

■義母の異変

同居から3カ月経った2018年7月ごろ。68歳の義母が、好きな音楽や食の好き嫌いの由来、昔住んでいた家の近所の話など、以前聞いた話を初めて話すように語ってくるので、「忘れっぽくなってきているのかな?」と七瀬さんは思い始めていた。

9月ごろ、毎日の日課である散歩からなかなか帰ってこないことが増えたほか、買い物に行ったあと、マンションの郵便受けに買ってきた物を詰め込むようになり、七瀬さんはたびたび「なぜ?」と思うように。

10月、美容院に行くと言って家を出た義母が、10分ほどで帰宅。不思議に思った七瀬さんが「どうしたんですか?」と質問すると、「散歩してきた」と一言。「美容院は?」と聞くと、「今から行くのよ」と再度外出。30分くらいして帰宅した義母を見ると、全く髪型が変わっていないため、「美容院には行ったんですか?」と聞くと、「買い物してきた」と言うが、買い物に行けば必ず大好きなどら焼きなどの甘いものを買ってくる義母だが、その日は手に何も持たず、買い物してきたという感じはなかった。

11月。義母の部屋から悪臭が漂うようになり、夫とともに臭いの元をたどると、どうやら義母のタンスから臭っている。夫がタンスの引き出しを開けると、尿に汚れた下着が見つかった。義母に聞いても、「私じゃない」の一点張り。こうしたことが繰り返されるようになり、この頃から財布や鍵などの貴重品を度々紛失するように。

廊下でうずくまる母親と寄り添ってうつむく少年
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

さすがに「おかしい」と思った七瀬さんは、夫や義父に相談したが、「俺はわからない」と口をそろえる。らちが明かないと判断した七瀬さんは、地元の地域包括支援センターに相談。すぐに担当のケアマネジャーが決まり、義母の認知症検査や、要介護認定調査を行うことになった。

「おそらく義母は、散歩や買い物のときに、トイレを失敗したり漏らしてしまったりした下着やズボンを、タンスに隠していたのだと思われます。財布や鍵を失くしたときは、たいてい私が犯人にされていますが、だいたいタンスや押入れなど、いつも同じ場所に隠すため、すぐに見つかるのでまだ大丈夫でした」

結果、義母は、アルツハイマー型認知症で要介護1。12月からデイサービスを週3回利用することに。最初は「行きたくない」と言っていたが、だんだん楽しそうに通うようになっていった(以下、後編)。

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旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ)
ライター・グラフィックデザイナー
愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、東洋経済オンライン「子育てと介護 ダブルケアの現実」、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」、朝日新聞出版『AERA.』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。

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(ライター・グラフィックデザイナー 旦木 瑞穂)

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