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「これを選べば間違いない」経営コンサルタントが成城石井で買う"3種の商品"と経営学的理由

プレジデントオンライン / 2022年5月11日 10時15分

スーパーマーケット成城石井=2021年2月19日、東京 - 写真=アフロ

成城石井が上場を目指しているという日本経済新聞の報道が話題になった。そもそも成城石井の強みは何なのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「成城石井は経営学的には“差異化戦略”をとっている。この戦略を理解すれば本当に買うべき商品がわかる」という――。

■株主が何度変わっても、クオリティが下がらなかった

人気のスーパーマーケットの成城石井が2023年度までの上場を目指しているという報道が話題を呼んでいます。成城石井は東京の高級住宅街である成城の食品店が1976年にスーパーに業態転換して始まりました。私の学生時代のテニスサークルの集合場所が成城石井の前で、それでちょくちょく利用したのが私の場合の最初の思い出です。1988年に第2号店が青葉台に開店し、そこから多店舗展開が始まり、直近で東北、関東、甲信越、北陸、東海、関西、中国地方で約200店舗を展開するところまで大きくなりました。

成城石井の興味深い点は2004年以降、株主が外食産業、投資ファンド、そして2014年にはローソンと目まぐるしく変わっていったにもかかわらず、クオリティが下がらなかった。いやむしろ上がっていることです。相当に現場の社員力が高く、かつ株主もその強みを損なってしまったら金の卵を産む鶏を殺してしまうことを理解していたからだと思われますが、これは株主に翻弄(ほんろう)される日本型資本主義の興味深い例外事例に思えます。

さて、成城石井は業態的には高価格帯スーパーです。コンビニよりもやや大きい、しかし大手のスーパーマーケットと比較すればかなりコンパクトな店舗の中にこだわりの商品が並びます。高価格帯スーパーは富裕層をターゲットにするお店が多いのですが、成城石井には庶民が普通に買い物を楽しんでいるという特徴があります。しかし高価格帯スーパーを庶民が使う場合、なんでもかんでも成城石井で買っていたらお財布が心配です。

そこで今回の記事では「経営コンサルタントの視点で見た成城石井で買うべきお得な商品」を3つの切り口で紹介したいと思います。

■近所のスーパーとの価格差は「コンビニと同じ」

私も成城石井は好きでよく買い物に出掛けます。ただ経営コンサルタントの性というか、買わない商品は買わない。その買わない典型的な商品について、成城石井の価格を見ることから始めてみます。

近所の成城石井のお店では、私が他店でよく購入するキリンの「アルカリイオンの水」は140円(税込、以下同じ)。ちなみに他店だと103円です。1リットルサイズの牛乳で一番お手軽なものが静岡産の牛乳で259円。私はだいたい193円ぐらいで他店の牛乳を買います。計算してみると、近所のスーパーやドラッグストアと比較すれば成城石井はざっくりと言えば1.35倍ぐらいお高い感覚です。

そしてここが私は面白いところだと思うのですが、この1.35倍という数字、実は一般のスーパーとコンビニで全く同じ商品を購入した場合の価格差とほぼほぼ同じ数字になります。価格が割高なのにコンビニで買い物をする人が多いのはかつては「便利だから」と言われていました。ところが最近はこの風向きが変わっています。

■セブンで舌が肥えた庶民が成城石井に目覚めた

セブン‐イレブンをよく利用する人に、高いけれどもセブンを利用する理由を聞くと「独自商品が好きだから」「セブン‐イレブンの食材のほうがおいしいから」と言います。セブンプレミアムを中心に独自のこだわりの商品が増えた結果です。

ちなみに親会社のローソンには悪いのですが、顧客目線で言うとセブン‐イレブンとローソン、ファミマは同じコンビニカテゴリでありながら徐々に違う業態になりつつあります。ローソン、ファミマが従来通りのコンビニ業から脱却できていない一方で、セブンは「手の届く贅沢」を提供できる「こだわり商品のお店」へと業態転換が進んでいます。

そしてセブンのおかげで舌が肥えた庶民が目をつけたのが同じ手に届く贅沢を提供してくれる成城石井だという流れができ始めた。これが私の認識です。セブンプレミアムもおいしいけれど、成城石井のこだわり商品はさらにワンランク上の「手の届く贅沢だ」と考える庶民が、高価格帯スーパーであるにもかかわらず成城石井のファンになる構造ができているのです。

コンビニで買い物をする女性
写真=iStock.com/AH86
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

■「セブンよりおいしい理由があるか」をチェック

では成城石井ではどのような商品を購入するのが良いのでしょうか。何を買ってもおいしいといえばおいしいのですが、それだとお財布が心配だというのがこの記事の前提です。経営コンサルタントとしてストレートに言えば「セブン‐イレブンよりもおいしい理由があるかどうか」をチェックポイントとするのがいいでしょう。経営学的に言えば差異化というのですが、成城石井がセブンとの差異を生んでいるメカニズムに注目するのです。具体的には3つの視点があります。

第一の視点は成城石井のそもそもの強みの原点に着眼することです。成城石井はもともとは成城学園近辺の富裕層を相手にした食品店として始まりました。果物、缶詰、菓子といった取扱品が原点だそうですが、最初のこだわり商品はワインだったようです。1970年代といえば日本人でワインを飲むのはグルメか富裕層だけだった時代でした。

そういった富裕層の顧客が同じ銘柄のワインでもフランスで飲むほうが日本よりもおいしいと指摘したことから成城石井のこだわりが始まるようです。これは今となってはあたりまえなのですが、ボトルワインはフランスからインド洋を経て日本に来る間に高い外気温で品質が変わってしまう。それで昭和の時代にワインの定温輸送を手掛けたというのが成城石井の差異化戦略の原点だったといいます。

■生ハムやチーズは何を買ってもお買い得

ですから最初の着眼点は成城石井の強みの原点であるワインに注目することです。とは言っても、実は「ワイン周り」と言った方が正確です。なぜなら、ワインは70年代と違い、2020年代の今では他のお店でも輸送品質が上がってきたからです。ボトルワインはその後、他の小売店が成城石井の同質化に成功してきた。そこで経営コンサルタントとして注目するのはむしろワインのおともである生ハムやチーズといった商品です。ここはある意味、何を買ってもお買い得です。

成城石井のチーズのラインナップは見ていてとても楽しい。1パック300円ぐらいから600円ぐらいの価格帯のナチュラルチーズやプロセスチーズで、選び方がわからない人はヨーロッパ産の商品でPOPが黄色の商品を手にするとまず間違いがないと思います。成城石井のPOPはおすすめが黄色なのですが、正直な社風なのでそのおすすめに乗ればいいのです。

同じく生ハムもヨーロッパ産のお買い得な商品がおすすめかと思います。今回私はイタリアの生ハム・プロシュートのいわゆる切り落とし部分を1177円で購入しました。この生ハムとナチュラルチーズとコーヒーで朝食をとるのが実は私の日課です。

筆者が購入した生ハム
写真=筆者撮影
筆者が購入した生ハム - 写真=筆者撮影

■惣菜とスイーツはいろいろ試したほうがいい

さてお買い得な商品を見分ける第二の視点は、成城石井の差異化戦略として成城石井オリジナル商品に注目することです。特に買うべきは惣菜とスイーツです。これは何度もメディアで取り上げられているので有名な話ですが、ほとんどのスーパーのポテトサラダはジャガイモの皮を機械でむくのですが、成城石井のポテトサラダはジャガイモを手でむきます。こだわりの理由が「じゃがいもの一番おいしい部分は皮のすぐ下の部分だから」というもので、言われてみればその通りです。

成城石井自家製の惣菜にはかならずPOPにこだわりの理由が書かれています。たとえば牛タンカレーには淡路島産のフライドオニオンが添えてありますが、淡路島の玉ねぎが甘いことを知っている人にはこのこだわりは大きなプラスポイントです。それでいて1パック539円ですから確かに食指が動きます。

ただ、これはセブンプレミアムでも同じなのですが、こだわりのオリジナル商品にはどうしても当たりはずれがあるものです。ある程度常連になって自分の中で納得がいったものを自分の定番リストに加えていく地道な努力も必要かもしれません。

私のおすすめを挙げると、スイーツでは「バスクチーズケーキ」431円は日本で流行り始めた当時、コンビニや外食各社のものと比較しても成城石井のオリジナル商品がチーズの濃厚さで抜きんでていた記憶があります。定番スイーツの「フォンダンショコラ」388円もフランス製のチョコレートの濃厚さは成城石井オリジナルが群を抜いています。

筆者が購入した「バスクチーズケーキ」(右)と「フォンダンショコラ」(左)
写真=筆者撮影
筆者が購入した「バスクチーズケーキ」(右)と「フォンダンショコラ」(左) - 写真=筆者撮影

■トリュフのドレッシング、カシューナッツ、マカロン…

成城石井で買うべき商品を探す第三の視点は目利き商品です。他で売っていない商品で、成城石井のバイヤーが「よく見つけてきたな」と思うような商品は多少お高くてもはずれがないものが多いと思います。たとえばハマる人はハマる例として「トリュフのドレッシング&ソース」453円があります。これを自宅のサラダにかけると一気に食卓がフランス料理店になってしまう一品です。

私はナッツが大好きなのですが、成城石井の店頭で「こだわり」と大きく書かれた黄色いPOPとともに売られていたのが皮付きカシューナッツのローストです。私はナッツ類は渋皮がついていたほうがおいしいと思うたちなので、これを見つけたときは飛びついてしまいました。

筆者が購入した、皮付きカシューナッツのロースト
写真=筆者撮影
筆者が購入した、皮付きカシューナッツのロースト - 写真=筆者撮影

フランスのお菓子マカロンは一般的に見た目よりも価格が高いうえに、実は結構品質差があるお菓子です。成城石井ではフランスから輸入したマカロンが12個入り1070円で売られていましたが、これもおすすめでした。原材料のフランスの発酵バターは日本と違って実にさまざまな風味のものが売られているのですが、それをふんだんに使用しているとのことで、まさにお値段以上の味わいを感じました。

■「フランス産以外で1500円以下のワインを探すと面白い」

さて、繰り返しになりますが経営学の観点で今回の記事をまとめさせていただきます。成城石井の経営戦略は経営学的に言うと差異化戦略です。他よりも1.35倍高いにもかかわらず、他とは違うことを強みに消費者に支持される。言い換えれば、買うべき商品はその差異化の理由が納得できるものを選ぶべきなのです。

最後に成城石井の原点であるワインについても触れさせていただきます。先ほど「ワインは他の小売店も目利き力が上がってきたから」ということで3つのリストから除外しましたが、知人のフレンチのシェフに聞いたところ「成城石井のワインはどれもおいしいよ」とのことです。でもその中でどれを買うのか尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

あくまでワインマニアとしての話ですが「ボトルワインは価格が安い割にめちゃくちゃおいしいものを見つけるのが隠れた楽しみ。その観点で言えばフランス産以外で1500円以下のワインを探すと面白いよ」ということです。チーズや生ハム、スモークサーモンにナッツを取りそろえた方は、せっかくですからこだわりのワインを一本選んでみてはどうでしょう。

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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』など。

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(経営コンサルタント 鈴木 貴博)

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