本当に筋肉を増やしたいなら腹筋は100回より10回のほうがいい…科学的に正しい筋トレの3大原則
プレジデントオンライン / 2022年5月16日 15時15分
※本稿は、中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
■無理なく100回繰り返せる筋トレでは負荷が足りない
A.低負荷で100回行う
B.高負荷で10回行う
→筋力アップに適しているのは高負荷の筋トレ(正解はB)
腕立て伏せや腹筋運動、ダンベルやバーベルを使った筋トレが部活動のメニューに盛り込まれていたり、そうでなくても自主的に取り組んだりしている学生もいるでしょう。なるべくたくさん回数をこなした方が、強くなれる気がしている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
効率よく筋力アップを目指すなら8〜12回の回数を行うのが限界な高負荷のものを、休憩を挟みながら3セット程度。頻度としては週2〜3回行うのが理想です。無理なく100回も繰り返せてしまう運動は、筋力アップという面では負荷が足りず、効果的ではありません。
■成長期にとって高負荷の筋トレはリスクが大きい
筋力アップにダンベルやバーベルなどを使った高負荷の筋トレはとても有効ではあるのですが、取り組み方にはかなり注意が必要です。
まず、骨が成長段階にある中学生年代は高負荷の筋トレは避けるべきでしょう。成長している間は、骨がまだ柔らかく、過度な負荷をかけると変形してしまう可能性があります。骨の成長には個人差があり、高校生年代になったとしても身長が伸びているようなら、まだまだ成長段階。大きな負荷をかけるのはリスクがあります。
パーソナルトレーニングを受けたことがある人ならイメージできると思うのですが、自分に適した負荷を設定し、ケガのリスクの少ない正しいフォームで十分な回数を行うのは、なかなか難しい作業です。だからこそ専門家がいて、プロアスリートにも専属のトレーナーがついているのです。トレーナーの指導が受けられる環境でなければ、無理に高負荷の筋トレにチャレンジせず、ケガのリスクの小さい範囲でトレーニングをしてもらえたらと思います。
ある程度の筋肉はケガの予防に欠かせないものではありますし、体の成長が落ち着いたから筋トレに励みたいという人もいるかもしれません。筋肉量を増やすために重要な、3つの筋トレの原則を紹介しておきましょう。
■筋トレの3原則は「過負荷」「漸進性」「継続性」
①過負荷の原則
過負荷の原則は、普段体に与えている刺激よりも強い刺激を与えなければ、筋力が向上したり、筋肉量が増えることはないという原則です。
簡単に言えば、毎日2キロの鞄を持って通学している学生が、500グラムのペットボトルを持っても筋トレにはならないということです。競技の練習でジャンプやスプリントを繰り返し、ときには補強トレーニングで階段の上り下りをしている。このような学生が、ダンベルやバーベルを使わないスクワットを10~20回やったとしても、効果は見込めません。
日常生活や普段の競技の練習では与えていない強い刺激を与えるのは、それだけつらいということになります。楽なことをしても筋肉は強くなってくれないのです。
②漸進性の原則
筋肉を増やしたり、筋力をアップするためには、同じ負荷でずっとやり続けるのではなく、徐々に負荷を上げていく必要があります。これを漸進性の原則と言います。
しっかりと過負荷にするために、定期的に負荷を見直しましょう。“徐々に”というのがポイントで、急激に負荷を上げてトレーニングに挑戦するとケガのリスクが高くなってしまいます。はじめのうちは過負荷の原則に当てはまらなくてもいいので、強度が低めのものから始めてください。しばらくは筋トレのフォームを作ること、筋トレに慣れることを目的にし、フォームが安定したところで徐々に負荷を上げていきましょう。
③継続性の原則
トレーニングの効果が現れるまでには、ある程度の期間、継続することが必要という原則です。1週間や2週間、筋トレをやったところで、大きな効果は得られません。筋トレの効果を感じたいのであれば、最低でも3カ月は取り組みましょう。3カ月継続して効果がなければ、負荷や頻度不足、タンパク質などの栄養不足が考えられます。
まずはこの3つのポイントを押さえて、筋トレに取り組んでみてください。
■筋肉痛が起きなくても筋力アップや筋肥大は起きる
A.筋肉痛と筋トレの効果は関係ない
B.筋肉痛が起きていなければ負荷を見直すべき
→筋肉痛が起きなければ筋トレの効果がないわけではありません(正解はA)
筋肉痛はどうして起こるのか。実は、筋肉痛のメカニズムはまだすべてが解明されていません。近年、有力視されているのが、体を動かすことでできる筋線維の傷が原因だという説です。筋線維に傷ができるほど筋肉を使ったわけですから、しっかりと追い込めた一つの証拠にはなるわけですが、筋肉痛が起きなければ追い込めていないかというと、そんなことはありません。筋トレ後に筋肉痛が全くないという人でも、筋力アップや筋肥大は起こります。
それなら筋肉痛なんてなければいいのに、なんて思うかもしれませんが、筋肉痛は筋トレフォームの改善や、負荷の目安に活用することができます。
たとえば、ベンチプレスや腕立て伏せで大胸筋をメインに鍛えたとしましょう。もし、片側の胸にだけ筋肉痛が出たり、胸ではなく肩や腰に筋肉痛が出たりしたのなら、それは誤ったフォームが原因かもしれません。ベンチプレスならバーを握る位置や、ベンチに寝ている姿勢、腕立て伏せなら手を置く位置などを見直してみましょう。
■「年をとると筋肉痛が出にくい」は都市伝説
筋トレの後、1週間も筋肉痛が抜けないなどという場合は、負荷が大き過ぎる可能性があります。いつも必ず筋肉痛が起きていたのに、しばらく筋肉痛にならないという場合は、負荷を上げてみてもいいかもしれません。
部活の話からはそれてしまいますが「年をとると筋肉痛が出るのが遅くなる」というのは、都市伝説のようなもので、全く根拠がありません。若い人はすぐに筋肉痛が起きて、高齢になると筋肉痛のタイミングが遅れてくるというのは事実無根なのです。
しかし、高齢になると疲労からの回復、筋肉痛からの回復が遅くなるということはあります。
筋肉痛が起きたら運動をしてはいけない、ということはありませんが、パフォーマンスの低下に繋がってしまうので、試合前に筋肉痛が起こるまで体を追い込むのは避けるべきでしょう。
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フィジカルトレーナー
1971年、長野県生まれ。フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモティブシンドローム・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペアのほか、2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。著書に『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ』シリーズ、『定年後が180度変わる 大人の運動』『医師も薦める 子どもの運動』(すべて徳間書店)など多数。
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(フィジカルトレーナー 中野 ジェームズ 修一)
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