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屋内の運動にもリスクあり…「最悪の場合は死に至る」熱中症から命を守るために知っておくべきこと

プレジデントオンライン / 2022年5月17日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kaorinne

夏に増える「熱中症」から身を守るにはどうすればいいのか。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは「めまいや手足のしびれ、頭痛が起きたら要注意。急いで体温を下げるには『手のひらを水で冷やす』と良い。首や脇を冷却するよりも効果が高い」という――。

※本稿は、中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■めまいや手足のしびれ、頭痛が起きたら要注意

「屋内で行う部活動も熱中症対策は必要?」
A.もちろん必要。冬だって熱中症のリスクはある
B.対策が必要なのは強い日差しの中で行う部活動のみ
→屋外の運動じゃなくても熱中症のリスクはあります(正解はA)

熱中症とは、体内の水分や電解質の減少、血流が滞るなどして、体温調節が上手くいかず、高体温となって重要な臓器にトラブルが起こり発症する健康障害の総称です。

熱中症は、熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病の4つに分類されています。人間の体は体温が上がると放熱のために皮膚の血管を拡張して、皮膚への血流量を増やします。このことによって血圧が低下し、脳への血流が減少することで発生するのが熱失神です。熱失神の症状には、めまいや立ちくらみ、顔の異常なほてり、顔面蒼白(そうはく)などがあり、場合によっては気を失ってしまうこともあります。

発汗量が急激に増えると、体内の水分と電解質が一気に失われます。このとき、水分ばかりを補給していると、血液中のナトリウム濃度が低下し、筋肉の痙攣、手足のしびれなどを起こします。これが熱痙攣です。

発汗による脱水と、皮膚血管の拡張による循環不全が起こっている状態が熱疲労。脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気といった症状がみられます。

■中枢機能に異常をきたす熱射病は死の危険性もある

熱疲労の状態が進行し、過度に体温が上昇し、中枢機能に異常をきたした状態が熱射病。呼びかけや刺激への反応が鈍い、言葉が不明瞭といった症状があらわれ、さらに進行すると昏睡(こんすい)状態に陥ることがあり、死の危険性もある緊急事態です。

少しでも熱中症の症状が出たら、速やかに涼しい場所に移動、衣類を緩める、十分な水分と電解質の補給、氷や冷水を使って体を冷やすといった処置をしてください。呼びかけへの応答がないときは、すぐに救急車を呼びましょう。

人間の体には、体温が上がっても発汗や皮膚温度の上昇によって熱を逃がすという機能が備わっています。暑さによって、その機能が上手く働かなくなると熱中症を引き起こすのですが、環境、体のコンディション、行動に気を配ることで、熱中症のリスクを小さくすることが可能です。練習や試合をする日が熱中症のリスクが高い日かどうかを知ることも、熱中症対策として重要でしょう。

■気温31~35℃では激しい運動や持久走はNG

環境省の「熱中症予防情報サイト」には、熱中症予防運動指針というものが掲載されています。それによると、気温35℃以上・WBGT(暑さ指数)31以上は、運動は原則中止。気温31~35℃・WBGT28~31は厳重警戒。熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。

気温28~31℃・WBGT25~28は警戒。熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。気温24~28℃・WBGT21~25は注意。熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する、とあります。ぜひ、参考にしましょう。

熱中症予防の温度指標には、暑さ指数とも呼ばれるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)が用いられることがあるのですが、WBGTとは、気温、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)(グラウンドからの日差しの照り返しなど)熱の3つを計測して算出されるものです。このWBGTについては、環境省の「熱中症予防情報サイト」で各地の数値(春~秋にかけて)がチェックできるので参考にしましょう。WBGT計測機は市販されてもいます。

男性と太陽
写真=iStock.com/PraewBlackWhile
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PraewBlackWhile

■初夏と梅雨の前後は熱中症のリスクが高まる

もちろん、屋内スポーツも熱中症と無縁ではありません。日差しはないものの、屋内は熱がこもりやすいので、エアコンが利用できるなら利用する、窓や扉を開けて風通しを良くするといった工夫が大切です。

空調や風が競技に影響するバドミントンなど、体育館を閉め切って行わなければならないスポーツはかなりの注意が必要でしょう。

体調への配慮も重要です。寝不足、疲労、肥満、過度な減量は熱中症のリスクを高めるとされています。もちろん発熱や下痢といった症状があるときは、練習を休んで安静にしていなければいけません。無理をしないことが大切です。また、体が暑さに慣れていないと、熱中症のリスクは高くなります。暑くなり始める初夏、湿度が上がる梅雨入りのタイミング、そして一気に気温が高まる梅雨明けといった季節の変わり目は、特に気をつけましょう。

■休憩中は手のひらを水で冷やすのがおすすめ

こまめな水分・電解質の摂取、適度な休憩以外にも部活動中にできる熱中症対策はあります。その一つがウェア選びです。吸汗速乾性に優れた素材のものを選べば、ウェアと体の間に熱がこもるのを防いでくれます。帽子を被って頭部を直射日光から守るのも、有効な対策です。

中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)
中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)

休憩中に水や氷で体を冷やすのも良いでしょう。首や脇などを冷却するのも良いですが、おすすめは手のひらを水で冷やすことです。

手のひらにはAVA(Arteriovenous Anastomoses:動静脈吻合(ふんごう))と呼ばれる血管が通っています。AVAは、体温調節を仕事としている血管で、動脈と静脈をバイパスのように結んでいます。体温が上がってくると、このバイパスが拡張し、熱が逃げやすい末端に血液を運びます。反対に体温が下がってくると、AVAは収縮し、末梢への血流を減らし、そこから熱が逃げるのを防ぎます。体の中心部の体温、中核温を維持するために、AVAが閉じられるということです。

外気温が高く、体温が上がってくるとAVAは拡張します。このとき、手のひらを冷やすと効率よく熱を逃がして体温を下げられるというわけです。首や脇よりもAVAがある手足を冷やした方が、効率的に体温が下がるという研究報告もあります。

■熱中症リスクを小さくする5つのポイント

手のひらを冷やす際、気をつけるのは冷た過ぎるものを使わないということ。冷刺激が強過ぎると、AVAが収縮してしまうからです。血管収縮を発生させず、効率よく体温低下に結びつく温度帯は12~15℃だとされています。

水を入れたバケツに手を入れる、水を入れて冷やしておいたペットボトルを握るぐらいが適切です。最近はこのAVAに注目して作られた、手のひらを冷やすための蓄冷剤も販売されています。

暑い日は無理をしない。体調が悪いときは練習を休む。こまめに水分と電解質を補給する。帽子や機能的なウェアを活用する。休憩をこまめにして体を冷やす。これらを徹底することで、熱中症のリスクはかなり小さくできるはずです。

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中野 ジェームズ 修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)
フィジカルトレーナー
1971年、長野県生まれ。フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモティブシンドローム・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペアのほか、2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。著書に『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ』シリーズ、『定年後が180度変わる 大人の運動』『医師も薦める 子どもの運動』(すべて徳間書店)など多数。

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(フィジカルトレーナー 中野 ジェームズ 修一)

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