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元カノ以外は好きになれない…失恋をこじらせた36歳商社マンがハマった"婚活の沼"の意外な出口

プレジデントオンライン / 2022年5月17日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

たくさんの「マッチングアプリ」があるのに、手間も費用もかかる「結婚相談所」はいまだに需要がある。どんな人が利用しているのか。結婚相談所を運営する仲人の高須美谷子さんが、「過去の恋愛をこじらせた36歳商社マン」の事例を紹介する――。

■どんな人が結婚相談所を利用しているのか

私は結婚相談所を運営している。これまでパーティーを主催する中でおよそ1000人以上の婚活者と出会ってきた。

初期費用は計10万円、成婚料金は30万円。プランに応じた月会費がかかる。今では安く手軽に始められるマッチングアプリがあるのに、アナログな結婚相談所にこれだけの金額を払う人がどこにいるのか、と思われるかもしれない。

しかし、結婚相談所を訪れる人は後を絶たない。

私のような仲人に婚活を併走してもらいたいとか、「このお相手で間違いない!」と背中を押してもらいたいという人がたくさんいるからだ。

どのように婚活をしているのか、事例を紹介していきたい。今回は36歳商社マンの男性だ。

■過去を引きずったまま婚活を始めた36歳商社マン

中堅商社の営業マン、敦士さん(仮名、36歳)は、20代で味わった大失恋をずっと引きずってきた。別の女性と付き合っても元カノと比べてしまう。そんな影を背負って結婚相談所を訪れた一人である。

敦士さんは26歳の時に転職した会社で同期の千紗さん(仮名)と交際を始めた。

千紗さんは日本人離れしたスタイルの、華やかな顔立ちの女性だった。茶色く艶やかなロングヘアで颯爽と社内を歩く姿は誰しもの目をひき、ひそかに思いを寄せる男性は敦士さんの周りにも数多くいた。

敦士さんは、転職したてにもかかわらず、営業成績が良く、コロナ前にはしばしば催されていた社内のイベントを率先して担当していたことから、目立つ存在ではあったという。

あるイベントの幹事を2人で担当したことがきっかけで、敦士さんと千紗さんは急接近し、ほどなく恋仲になった。

交際開始の当初は、常に千紗さんとの約束を優先していた敦士さんだったが、次第に仕事優先の日々になっていった。敦士さんは20代半ばで部署内営業成績トップ。そのプレッシャーを抱えていたこともあり、「仕事を頑張るのが2人のためになる」と信じていたからだ。

■職場に残る“元カノ”との思い出…

一方、千紗さんは交際開始当初から「30歳までに結婚をしたい」と口にしていた。

敦士さんはそれまでにプロポーズをしようと考えていたが、彼女が30歳の誕生日を迎える直前に、仙台への転勤要請が下された。

仙台なら東京からもそう遠くないし、週末は会いに帰れるかなと考えた敦士さんは、プロポーズの予定を延期し、単身仙台に行き、転勤後の忙しい日々を過ごしていた。

ところが、2人の関係は終幕を迎えることになった。

半年後、久々に上京して千紗さんと会った敦士さんは、突然別れを告げられた。

敦士さんの転勤後に知り合った別の男性と結婚するというのである。敦士さんにとっては青天の霹靂だったが、正直思い当たる節はあった。「30歳までに結婚」という千紗さんの夢を叶えてあげられなかった。転勤後は新しい職場での仕事に忙しく、連絡も少なくなっていたのだった。

心の距離を埋められないまま、千紗さんは去っていった。

それから7年の歳月が流れ、敦士さんは東京本社に戻った。千紗さんの思い出を、職場のそこかしこに見つけ出しては落ち込む日々が続いた。

男女のシルエット
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chachamal

■7年間で交際6人、3カ月以上は続かず…

もしもあの時、仕事ではなく千紗さんとの交際を優先させていたらと後悔が頭をよぎる。別れてから別の女性と交際したこともあったがどれも長くは続かず、気づけば30代半ばになっていた。

「自分は誰と付き合ってもうまくいかない」「元カノを超える女性とは出会えない」といった絶望感にさいなまれて仕事にも集中できない。そんな様子を見かねた同僚が合コンに誘ってくれたり、行きつけの定食店主がアルバイトの女性を紹介してくれたりした。

もちろん婚活アプリにも登録したが、元カノと比べる癖が抜けなかった。

仙台勤務の期間に、十数人の女性とデートをした。交際した女性は6名。付き合う度に愛せないことを実感して、3カ月以上の交際が続かなかった。最短で3回しかデートしないで別れてしまった人もいた。半月と持たずに自然消滅する形もあった。

理由はシンプルだ。敦士さんは「次も会いたい」と思えなかった。元カノと外見的特徴が近い人と付き合っても、内面が同じわけではないのだから。

相手の自分勝手な行動が見えてくると敦士さんは面倒くさくなり、別れを意識し始めるのだった。外見から探し出すことでかえって理想に近づけなかったのだ。長続きしない相手と付き合っては別れるを繰り返して元カノを神聖化してしまう負のループから抜け出せずにいた。

千紗さんとの思い出がある東京本社に戻って初めて、敦士さんの中にこの状況から脱したいという気持ちが芽生えたという。東京に戻ってから結婚相談所での活動を決めた。決め手は仲人がアドバイスするシステムだった。以前成婚した親戚からの紹介で敦士さんは入会面談にやってきた。

今まで千紗さんのことが頭の片隅にあって、付き合う人は元カノに似たような人ばかり。華やかな顔立ちで、ロングヘアの女性を選んできたそうだ。

まずは元カノの外見イメージを捨て去ることが婚活の必須条件だった。

海辺の女性
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yue_

■「神聖化した元カノ」を断ち切ったシンプルな方法

敦士さん自身が一番そのことを理解していた。だが、一人では沼にハマってしまうのが婚活の難しさでもある。仲人はそんな人たちにも粘り強く併走する。

私は、敦士さんに元カノの内面的特徴をいくつか挙げてもらうことにした。千紗さんのどこに惹かれたのか、2人でいて何が楽しいと感じたのか。対話を通して、一つひとつ元カノに抱いたポジティブな感情を浮かび上がらせていった。これは「神聖化した元カノ」の負のループを断ち切るには効果的だ。

姉御肌で面倒見が良い(家族意識・思いやり・共進力)、新しい情報に敏感(私は「アンテナ力」と呼んでいる)、彼氏には弱みもみせる(素直さ・かわいげ)……。敦士さんはいくつもの特徴を挙げていった。

そしてお相手候補のプロフィール写真から、アンテナ力が高い方を選出するためにお顔だけの情報ではなく、着こなしにも着目してもらい気になる人を探してもらった。初めは苦戦していた敦士さんだったが、続けるうちに好意を抱く女性にはある共通点があることに気づいたようだ。

それは、写真の笑顔が自然体で洋服の着こなしと合っていること。仕事の内容や身長の高低や顔の造形など他の条件には敦士さんはこだわりがなかった。敦士さん自身、7年にわたる間で元カノの残像を追いかけ続けてきたが、ここでようやく気が付いたのだろう。決して元カノの外見が好きだったのではなく、個性そのものを愛していたことを。

小さなことに思われるかもしれない。一人ではなかなか気づけない。言葉にする機会もないだろう。これを拾い上げ、受け止めるのも仲人の大事な仕事なのだ。

過去の悪い記憶を思い出すのではなく、元カノのどこが好きだったのかをいま一度分析し、自分が本当に結婚相手に何を求めているのかを理解していく。整理することで美化されすぎた残像が徐々に現実を帯びていく。敦士さんの心が再び動き始めるまで時間はかからなかった。

■個性を愛することにようやく気づいた

こうして、タイプの異なる10名ほどの女性が候補者として挙がった。その中で私は敦士さんに久乃さん(仮名、37歳)と会うことを勧めた。芸能関係の仕事に就いている女性だ。なじみのない業界だけに一瞬たじろいだ敦士さんだったが、印象が良かったのでお見合いにつながった。

久乃さんには、元カノに通ずるいくつかの共通点があった。元カノは3人きょうだいの長女で、面倒見の良さを敦士さんは特に評価していたが、久乃さんも同じく長女。家族や友人との時間を大切にする本人のコメントや、面倒見が良いと書かれた別の仲人のコメントには期待が持てた。

いまだかつてないお相手選びの仕方に抵抗を感じていた敦士さんだったが、趣味の欄に自分が大好きなサッカー観戦とあるのを見つけて自信がわいたのか、お見合いに前向きな気持ちになったようだ。

初回のお見合いは銀座にあるホテルのラウンジで行われた。ベリーショートに特徴的な大きな瞳、ビビッドなグリーンのワンピースを上手に着こなす久乃さんに敦士さんは好印象を持ったそうだ。

個性的な外見の印象とは裏腹に内面には女性らしいところも見え隠れする。そのギャップに最初は戸惑った敦士さんだったが、開始30分もすると彼女のペースに飲み込まれていったという。

1時間半が経過したころ、会計を済ませた敦士さんに、久乃さんは「ごちそうさまでした」とお礼を言い深々と頭を下げ、「握手、次にまた会いたいから」と手を差し出した。敦士さんはその手を握り返した。

敦士さんはグリーンのワンピースが人混みに消えていくのを眺めながら、元カノを思い出していたという。いつも別れ際に握手してハグをした、そんな過去の記憶だ。久乃さんの手は元カノとは全く違う。しかし、小さいながらもぬくもりのある手だった。

敦士さんは別れたばかりの久乃さんと「またすぐに会いたいな」と思えたという。

■背中を押されて結ばれる良縁がある

久乃さんの趣味がウインドーショッピングだったため、デートは街歩きとなった。敦士さんは買い物に興味がなく、最初は気が進まない様子だった。しかし次第に2人でぶらぶらと街を歩くことが楽しくなっていったようだった。

出会いから2カ月を過ぎたころには手をつないでショップ巡りをしたり、久乃さんに似合う服を敦士さんが見繕ったりする関係に発展していた。

久乃さんとの幾度かのデートの報告を受けるうちに仲人の直感が働いた。機は熟しているので仮交際期限の3カ月を待たずして、プロポーズをしたほうが良さそうだ、と。

敦士さんにそれを告げるとバツの悪そうな表情をのぞかせた。

元カノで失敗した記憶がよぎったようである。

「プロポーズのタイミングを間違えたら嫌われてしまうかもしれない」
「プロポーズしても断られるかもしれない」

敦士さんの自信のなさや不安感は手に取るように理解できた。

こういう時に仲人の連携プレーは役立つ。まずは久乃さんの仲人から現在のお気持ちを聞き出す。お相手仲人からは「久乃さんも敦士さんとの結婚の意志が固まっている」ということだった。

お互いの意志が確認できたところで、すかさず敦士さんとプロポーズの段取りを相談する。相談所では男性からプロポーズをするという昔ながらのならわしがある。

敦士さんは銀座のフレンチレストランを予約して、久乃さんにプロポーズをした。緊張している敦士さんの言葉に久乃さんは耳を傾けながら、そっと手を握っていてくれたという。

冬の公園で手をつなぐカップル
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■自分で結婚相手を決められない人は多い

敦士さんが7年間の婚活で悩み続けた「元カノ現象」はたったの1、2カ月で解消してしまった。しかも即座に見つかったお相手と5カ月の交際期間で成婚したのである。

こういったケースは結婚相談所ではまれなことではなく、むしろ頻繁にある話である。

昔から結婚はタイミングと勢いだと言われる。結婚したいと思った時が婚期であり、その時に誰がそばにいるかで決まってくる。ただし、これは自分で「この人と結婚したい」と自分で決断できる人に限られるのが現実なのだ。

アプリで気軽に出会える時代になっても、人間の方はなかなか変わらない。技術が進んで選択肢が増えたことで婚活の悩みは逆に深まっているように思う。だから結婚相談所や仲人というアナログな存在が必要とされるのだろう。

自分で決められない人は多いが、少し背中を押すことで縁談は一気に進み出す。

うまくいかなかった恋愛の先にも可能性が息を潜めているのだ。

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高須 美谷子(たかす・みやこ)
仲人・結婚相談所ガーデンマリッジ代表
結婚相談所での活動を経て、36歳で結婚。2児の母。2015年に「恋する婚活」にこだわった結婚相談所ガーデンマリッジを設立。著書に『カップリング率80%超の仲人が教える 恋愛マッチング方程式』(大和出版)がある。

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(仲人・結婚相談所ガーデンマリッジ代表 高須 美谷子)

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