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「休まず働く」は日本人の悪癖…日米合同演習で自衛隊は疲労困憊でも米軍がずっと元気なワケ

プレジデントオンライン / 2022年5月20日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/guvendemir

仕事のパフォーマンスを上げるにはどうすればいいのか。元陸上自衛官のぱやぱやくんは「日米合同演習で、自衛隊と比べて休憩や睡眠を取っている米軍は元気な状態が続くということがあった。日本ならではの『寝ずに頑張るのが偉い』という風潮を変え、しっかり睡眠を取ることが重要だ」という――。

※本稿は、ぱやぱやくん『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』(育鵬社)の一部を再編集したものです。

■自衛官でも疲労と空腹と寝不足にはかなわない

陸上自衛隊の訓練では、「辛いときには本心が見える」とよく言われていました。普段は思いやりの気持ちを持って、仲間にやさしくできても、辛い状況になればなるほど、人は身勝手になります。

たとえば、重い器材の運搬を誰かに押しつけたり、勝手に休んでしまったりと、普段では考えられないような行動に走ってしまうのです。辛い状況では性悪説で考えたほうが人の行動を理解しやすくなるので、覚えておいてください。

陸上自衛隊の演習でも、辛い状況が続くと、どんなに人柄がいい人でも、どんなに温厚な人でも、つまらないことで怒り出したり、気配り上手な人が自己中心的になることもありました。

特に疲労と空腹と寝不足には要注意です。私が陸上自衛隊の訓練でもっとも辛かった状況は、「寒くて、お腹がへって、眠れず、雨に濡れている」ときでした。

■辛いときは暖かくしてお腹いっぱい食べて寝る

私の仕えていた隊長で、食事と睡眠を特に大事にする人がいました。その隊長は、

「いいか! 訓練はあくまで訓練なんだ! 睡眠時間と食事を削って完璧な訓練をすることに意味はない。本当に大切なのは、有事の際におまえらが健康で万全の体勢でいることだ」

と言っていました。有事に備えるためには、たしかにこうした考え方も非常に大切です。

これらは自衛隊の話ですが、一般の人たちも日常生活から「しっかりとご飯を食べる」、そして「よく寝る」ことが大切だと思います。睡眠と食欲の時間は、気持ちよく仕事をするためにも、他人にやさしくするためにも必要なのです。だから、もし精神的に辛くなったら、暖かいところで、お腹いっぱい食べて、いっぱい寝よう、そして晴れた日に散歩しましょう。

そうすればきっと元気が出ますよ。

■100キロ行軍中の自衛官を襲う支離滅裂な思考

陸上自衛隊の訓練で、「100キロ行軍」というものがあります。隊員たちは小銃、鉄帽(ヘルメット)、半長靴といった装備で、水、食料、着替えなどの荷物を持ち、100キロ歩いて移動するというものです。荷物の重さは通常隊員で20kg、レンジャーなら40kg程度で結構重いです。さらに小隊には、機関銃と対戦車兵器(地雷、無反動砲)などが与えられます。

100キロ行軍の最後のほうでは、疲労と眠気で自分自身の思考がよくわからないことになり、

「……中学生のときに大阪に住んでみたいと思ってた……そうだ、たこやき屋をやろう……朝から焼酎呑めるたこやき屋をやろう……」

といった支離滅裂な思考に襲われます。疲労と睡眠不足は人の能力を著しく低下させます。たしかに過酷な状況で踏ん張ることも時には必要ですが、最低限の休憩を取ったほうが自分の能力を十分発揮することができます。

■米軍はリラックス法やすぐに眠れる技術を研究している

私は陸上自衛隊幹部候補生学校の教官に、

「どんなに最悪な状況だと思っても、仮眠の計画だけは最初に作れ。最悪な状況は、最悪への導入にすぎないからだ」

と教わったことがありますが、まさにそのとおりだと思います。

特に地震での災害派遣では、徹夜で活動して一息つこうと思った瞬間に本震がやってくることがあります。個人はもちろんのこと、組織も短期決戦ばかりを想定してはいけないのです。しかし、陸上自衛隊は短期決戦型の演習が多かった印象があります。

その一方で、米軍は数年間戦えるような演習計画をします。米軍は、

「戦争は決して3日では終わらない」

と考えているので、できる限り休憩を取りながら進めていくようです。

実戦経験の多い米軍では、自衛隊よりも「睡眠・休養」を重視しているように思えます。そのため、リラックスできる方法やすぐに眠れる技術なども研究しています。米軍は、睡眠不足はパフォーマンスを下げるということを実戦経験から知っているので、緊急時でもできる限り、休息や睡眠の時間を確保します。

■日本全体に浸透する「寝ずに頑張るのが偉い」

日米合同演習をすると、日米の特徴が顕著に現れます。米軍側はシフト制で休憩・睡眠を取るので、演習の最後でも比較的元気ですが、陸自側は寝不足で疲労困憊(こんぱい)ということもあります。

ただ、これらは陸自だけの問題ではなく、日本全体として「寝ずに頑張るのが偉い」という風潮があるのが原因かと思います。「寝ずに頑張るのが偉い」というのは、「緊急性が高くて、代替要員がいない」というときにしか当てはまりません。

ただし、陸自としても米軍とは使えるリソースや戦術、それに加えて「十分な演習場がない」という環境的な制限もあるので、陸自がすべて悪いという問題ではないことは補足しておきます。

結局のところ、眠りこそが、長期的なストレスに対処できる手段なのです。ストレスと闘うためにも、「休まず働くのは偉い」という価値観はなくなってほしいものですね。

眠っている少女
写真=iStock.com/Image Source
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Image Source

■米軍が取り入れている3つの睡眠導入方法

すぐに寝ようと思っても、興奮して眠れないことはありませんか。ここでは眠れる方法などをいくつか紹介したいと思います。

まず、「認知シャッフル睡眠法」を紹介します。これは脈絡ないことをひたすらイメージしていく方法です。

「サバ、ねじ、ペンギン、門松……」

とランダムに想像すると、「脈絡ないし、もう寝てもいいか……」と脳が睡眠モードになるようです。「あいうえお」の順番で、「会津藩、アイス、あかずきん」などと考えていってもいいでしょう。

布団に入っても考えすぎてしまう人は試してみてください。

ぱやぱやくん『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』(育鵬社)
ぱやぱやくん『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』(育鵬社)

米軍は睡眠導入の方法として、

「呼吸は6秒吐いて、3秒吸う」
「全身に力を入れて脱力する」
「海の上に漂うことを想像する」

ということを取り入れているようです。睡眠時間だけではなく、睡眠導入についてもぜひ意識してみてください。

また、寝るときに「あ〜、腹が立つ!」とイライラしたまま寝る「ふて寝」は、深層心理にいや〜な記憶が残るのでよくないそうです。寝る前の10分は、できるだけ1日の良いことを考えるようにしましょう。そして、起きるときは、「今日も最高の1日だ」と思ってみてください。就寝前や起床時に、深層心理にアプローチできると思います。ぜひ深層心理にあるネガティブな気持ちをやっつけてください。

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ぱやぱやくん 元陸上自衛官
防衛大学校を卒業し、陸上自衛隊にて幹部自衛官として勤務をしていたが、退職後にのら犬になった男。文章を書く事が好き。「意識低い系」で、自分が主役になるのが嫌い。ミリタリーよりもかわいいものが好き。名前の由来は、幹部候補生学校で教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。

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(元陸上自衛官 ぱやぱやくん)

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