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人間関係はどこまで我慢すべきか…自律神経の名医が教える"絶対に付き合ってはいけない人の条件"

プレジデントオンライン / 2022年5月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/champja

ビジネス上での人間関係はどこまで我慢するべきなのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「その相手はコンディションを崩してまで付き合う価値のある、本当に大事にすべき存在なのか、自問してみるといい。自分にストレスを与えるべきではない」という――。

※本稿は、小林弘幸『気がついたら自律神経が整う「期待しない」健康法』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

■他人へのジャッジは自律神経を乱しコンディションを下げる

上司、同僚、部下といった間柄に関係なく、自律神経を整える上で大切なことが二つあります。

一つは、「他人へのジャッジ(評価)を口にしない」ことです。

「あの人って使えないよなあ」「うちの上司はこういうところがダメなんだよ」と誰かをジャッジする言葉を口にすると、一時的なストレス発散にはなるでしょう。

誰かの悪口を言っている最中にスッキリした気分になれるのは、その間に脳内で快楽物質とも呼ばれるドーパミンが分泌され、交感神経が興奮状態になるからです。

身近な人間関係だけに限った話ではありません。

SNSで目にした事件や炎上案件にわざわざ自分から絡みにいき、「こんなバカいるの?」「不謹慎でありえない」「絶対に許せない」と誰かを叩(たた)き、裁いたつもりになっているときも同じです。交感神経が興奮状態になるため、バランスが著(いちじる)しく乱れ、その結果として自分のコンディションを下げていることに多くの人が気づいていません。

■マウンティングしてくる人は非常に不安定

さらに、「マウンティング」も自律神経を整えるためには避けたい行動の一つです。

自慢や批判、嘲(あざけ)り、侮蔑は、他人をおとしめることで自分が優れていると思い込むための確認作業です。他人にやたらとおせっかいを焼いたり、アドバイスをしたがったりするのも、親切心ではなくマウンティングの一種である場合がほとんどでしょう。

何かとマウントを取りたがる人は、一見すると自信過剰なタイプに見えます。しかし、実際は「認められたいのに、認められない」という承認欲求をこじらせてしまい、不安定ゆえに攻撃的になっている状態にあるのです。

こうしたマウンティング合戦は、流動性が低く、抑圧されたコミュニティでよく見受けられます。

狭いコミュニティの中で少しでも優位に立って安心を得たい、優越感を得ることで不安を打ち消したい……。

自己肯定感が低く、不安な気持ちに駆(か)られている人ほど、マウンティングや攻撃をしたがるものです。

この原則を覚えておくと、マウントを取られるような事態になっても「ああ、この人は不安で仕方ないんだな」と思えるため、さほど悩まずに済むでしょう。

■悪口・愚痴はコスパが悪い

悪口や愚痴、マウンティングには依存性があります。

つまり、言えば言うほど、もっと言いたくなってしまうのです。

悪口を言うという行為は、その相手にとらわれている状態です。そして悪口は感情を言葉に換えて口に出した瞬間から、自律神経を大きく乱してしまいます。

耳打ちする男性
写真=iStock.com/TwilightEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TwilightEye

嫌いな人、苦手な人、「自分より下だ」と思い込んでいる相手のために、人生の貴重な時間と感情を費やし、自律神経を乱している。それが悪口を言っているときの状態です。

また、悪口やマウンティングは一人では成立しません。そこには必ず第三者の「聞き手」がいるはずです。誰かをジャッジしたりマウントを取ったりしているとき、その人の目にあなたはどう映っていると思いますか?

長い目で見れば、悪口を撒(ま)き散らしている人のほうがより多くのストレスを抱え、人生に不満を抱いています。

私は人間関係のストレスを減らすための有効な手段として、「他人の評価を口にしない」ことを大切にしています。

誰かの能力や容姿、性格のよし悪し、バックグラウンドを安易にジャッジしない。

そうした話題で同意を求められても、「へえ、そうなんですか」「私はよくわかりませんが」というスタンスを貫く。これは自律神経を整えていく上で、最高の対応法の一つです。

もちろん、心から素晴らしいと思った対応を褒めることや、理不尽な対応に毅然(きぜん)とした態度で怒りを表明すべき場面もあります。それは悪口やマウンティングとはまったくの別物です。

SNSの炎上騒動にしょっちゅう首を突っ込んでは、悪口や愚痴をだらだらと述べ立てる。こうした目先のストレス解消のための悪口は、長い目で見ると人生を損なっていると心得ておきましょう。

■嫉妬とうまく付き合うシンプルな方法

嫉妬もまた、自律神経を乱すネガティブな感情の代表格です。

「同僚が自分より先に昇進できた」「自分よりも部下のほうが上司に認められている」「あいつよりも自分のほうが優秀なのに」など、ビジネスシーンにおいてもさまざまな場面で嫉妬の感情が顔を出してきます。

私自身も、経験則として「男の嫉妬ほど怖いものはない」と痛感しています。

嫉妬とは、つまるところ「小さなプライド」です。

他人と自分とを比較して、優越感に浸(ひた)ったり、妬(ねた)んだりしながら、自分の小さなプライドを必死に守ろうとしている状態。これが嫉妬の正体です。

組織に属している限り、比較や競争からは逃れられません。同僚と自分が同じタイミングで昇進することはありえないですし、後輩に追い抜かれることもあります。年功序列から能力主義へとシフトしつつある今の時代においては、それはもはや普通のことです。

では、どうすれば嫉妬とうまく付き合っていけるのでしょう。

簡単です。嫉妬している相手を褒めればいいのです。

ジェラシーにとらわれて目を曇(くも)らせるのではなく、「すごいね。どうしたらそんな風にできる?」「どんな工夫をしている?」と素直に相手に聞いてみてください。それがあなたの得意分野であればなおさらです。

嫉妬を削(そ)ぎ落として、探究心や向学心を高めます。「羨ましい相手は、素直に褒める」と自分の中で決めておく。このルールを守るだけで、嫉妬に苦しむ感情は消えていくでしょう。

他人と自分を比較することは、ほとんどの場合デメリットしかありません。

「あの人がいなければ自分が選ばれたはずなのに」という考え方にとらわれて嫉妬心を押し隠そうとすると、ネガティブな感情がドロドロと渦巻き、自律神経の乱れから不眠や体調不良を招(まね)いてしまいます。

どんな分野においても、優秀な人ほど謙虚(けんきょ)です。その人たちは自分が選んだ分野において、上には上がいることをよく知っているからです。

他人の悪口を言ってばかりの人、嫉妬にとらわれてパフォーマンスを落としている人は、「自分との戦い」から逃げているだけともいえるでしょう。他人を責めているうちは自律神経は乱れる一方です。

■不調なときほど深く呼吸する

妬みやひがみなどのネガティブな感情との付き合い方は、ゴルフにたとえるとわかりやすくなります。

ゴルフのプレーは4人1組でコースを回るのが原則です。ところが4人で回っていると、毎回必ず誰か1人は調子が悪い人が出てきます。すると、その人の顔からは笑顔が消え、どんどん口数が減っていきます。

ゴルフはスコア(得点)順に打つ順番が回ってくる競技ですから、調子が悪い人が最後に打つことになります。すると、他の3人がどんどん前へ行くのに自分だけ置いていかれるような気分になってしまいます。

焦ると呼吸が浅くなり、交感神経が過剰に高まるため、血管が収縮して血流も悪くなります。当然、思うようなパフォーマンスもできません。

結果として、イライラする、焦る、プレーで失敗する、失敗が続くことでまたイライラする……という悪循環から抜け出せなくなってしまいます。

しかしプロですら好不調の波があるのですから、誰しも「調子が悪いとき」があるのは当然です。

このような場面でこそ、ゆったりと行動し、いつものように声を出していくことが大切になります。焦りやイライラは、自分への期待値を上げすぎているから生まれるのです。

「今日は自分の好調日じゃないんだ」と考え直し、深い呼吸を心がけながら、淡々と打ち続けていく。

不調なときに欲を出して一発逆転を狙うと、99パーセントは失敗に終わります。100回やってうまくいくのはせいぜい1回でしょう。

なぜなら「一発逆転できるはずだ」と自分に期待するほど、肩に力が入って自律神経が乱れてしまうからです。

■どうしても嫌な相手には「三猿」対応

日光東照宮の神厩舎(しんきゅうしゃ)に「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿が彫られていることは、皆さんご存じでしょう。人間関係のストレスを減らす上で、この三猿の姿には現代人が大いに学ぶべきところがあります。

どうしても苦手な人や相性が悪い人を前にしたときには、「見ざる・聞かざる・言わざる」対応に徹することをおすすめします。

三猿
写真=iStock.com/Spiderstock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Spiderstock

すなわち、余計なものは見ない、余計なものは聞かない、余計なことは言わない。必要最低限のやり取り以外では、この三猿のスタンスを徹底していくこと。これを意識するだけで自律神経は圧倒的に整い、ストレスの半分以上が軽減されます。

人間関係のストレスは相手があってのことです。しかし、他人をコントロールする術はありません。それならば、自分がアクションを変えることによって、自分の身を守るしかありません。

嫌いな相手に何を言われようが、何が起きていようが、余計なことは見ないし聞かない。もちろん、何も言わないし反応しない。

そうすることによって、自分と相手との間にはっきりした線引きができ、心の平穏を守ることができます。

■その相手はコンディションを崩してまで付き合う価値があるか

「そうはいっても仕事上の取引を考えると付き合いを切ることはできない」という相手もいるでしょう。ビジネスには確かに人脈が重要です。また、親族との付き合いなどのように簡単には切れない関係性は確かに存在します。

しかし、「だから仕方ないのだ」と思考停止してしまっては、いつまで経ってもストレスは減りません。

そんなときは、ぜひとも次のように自問してみてください。

「その相手はあなたがコンディションを崩してまで付き合う価値のある、本当に大事にすべき存在ですか?」
「今のような我慢を重ねて関係性をつなぎ止めることで、あなたの人生はよりよいものになりますか?」

もしも答えがノーならば、相手との間に距離を置くべきでしょう。

さまざまな事情があって「それでも付き合い続けなければならない」というのであれば、「三猿」対応に徹して、せめて自分の意識の上で相手との間にしっかりと線を引きましょう。

カチンとくることを言われても淡々と聞き流し、相手にしない。

自分から相手の機嫌を取りに行くようなことはしない。

無理なことは安請け合いせず、無理だときっぱり伝える。

この三つを心がけるだけでも相手と同じ土俵に上がらず、平常心でやり過ごせるようになります。もちろん、ストレスも格段に減らせるはずです。

小林弘幸『気がついたら自律神経が整う「期待しない」健康法』(祥伝社)
小林弘幸『気がついたら自律神経が整う「期待しない」健康法』(祥伝社)

私は職業柄、余命宣告をされている患者さんと接することも多くあります。

そんな人たちを見て感じるのは、「我慢をしたまま人生を終えるのは悔いが残る」という事実です。余命わずかとなった人たちの多くは、人生を振り返って「もっと自由に生きればよかった」という後悔を口にします。

周囲の顔色をうかがい、空気を読み、我慢を積み重ねた先に残るのが、後悔だけだとしたら? そのまま一生を終えてしまうのは、あまりにもつらすぎます。

人生は、我慢をし続けることが当たり前ではありません。自分にストレスを与えている原因との付き合い方について、もう一度考えてみてください。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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