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「年収1000万円→0円」子育てのため専業主婦になった40歳女性が13年後に直面した"厳しすぎる現実"

プレジデントオンライン / 2022年5月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

子育てに専念するために仕事を辞めると、どんなリスクがあるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「正社員であれ派遣であれパートであれ、どんなかたちでも仕事を続けたほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

長嶺さん(仮名/53歳)のケース
39歳時点:会社員、年収1000万円
53歳現在:専業主婦、年収0万円
池澤さん(仮名/48歳)のケース
41歳時点:漫画家、年収800万円
48歳現在:漫画家、コンビニエンスストアのアルバイト、年収100万円

■年収1000万円を捨て、育児のために退職

高齢出産が増えている昨今。私の周りの働く女性にも、40歳を過ぎてはじめて子供を持った方もいます。晩婚・晩産の方はお子さんへの思いが特に強くなる傾向があるのか、中には「子育てにすべての時間を使いたい」と、仕事を辞めてしまった方もいました。

そこで今回は、仕事を辞めて子育てに専念してきた女性たちを悩ませる「復職問題」についてお伝えします。

大手広告代理店で働いていた長嶺香織さん(仮名/53歳)は、39歳のときに出産。長い不妊治療を経て授かった待望の赤ちゃんだったそうで、思い入れもひとしおだったのでしょう。産休・育休後は復職予定でしたが、「一緒にいられる時間は今しかない!」と、お子さんと過ごす時間を一番にすることを決め、40歳で退職しました。

産休前の年収は1000万に迫るほどの高給取りだった長嶺さん。大手メーカー勤務の夫と都内の高級マンションで暮らす、「東京版SEX AND THE CITY」とでも名付けたくなるようなライフスタイルを送っていました。

■夫も高級取りのため、金銭面の不安はなかった

お子さんを持つまでは有休もろくに取らず仕事に邁進していた彼女でしたが、産後は仕事に傾けていた情熱のすべてがお子さんに注がれるように。あれほど好きだった広告の仕事にも未練がなく、何度も前の職場から「フリーランスとして手伝ってほしい」とSOSを受け取っていましたが、完全な専業主婦としてお子さんとの時間を過ごしていました。

それが可能だったのは、彼女の夫も年収1200万円の高給取りだったからです。長嶺さん自身もそれまでバリバリ働いていたので貯金も2000万円ほどあり、金銭面に不安はありませんでした。

そんな彼女と先日、10年ぶりに再会。手塩にかけて育てたお子さんは見事に大学附属の難関校に合格。中学生になった今、子育ては終わりに近づいているようでした。しかし、長嶺さんの顔は晴れません。聞いてみれば、「仕事がない」とポツリ。子育てに区切りがついた彼女は、13年ぶりに仕事を再開しようとしていたのです。

■たった10年ほどでも、業界は様変わりしていた

現在、53歳になった長嶺さん。一流大学を卒業後、大手広告代理店でキャリアを重ねた素晴らしい履歴書があります。……が、その輝かしいキャリアも今や「化石」扱いで、立派ではあれど、即戦力としては使いものにならないというのです。

長嶺さんが辣腕を奮っていた広告業界はこの10年でビジネスモデルが激変。Webの知識が欠かせなくなっていました。たった10年とはいえ、コロナ禍もあり、業務のオンライン化も飛躍的に進んでいます。しかし長嶺さんは子育て中にパソコンに触れることはほとんどなく、Twitterのアカウントも持っていませんでした。

ラップトップに入力する女性の手
写真=iStock.com/Inside Creative House
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Inside Creative House

実は長嶺さん、ある80年代のアイドルに憧れがありました。大ヒットを飛ばした後、出産を機に引退したそのアイドルは、子供たちを一流校に送り出した後、40代で鮮やかに復活を遂げていました。長嶺さんはどうやら自分も“その線”で行こうとしていたようで、さすがに彼女も、「自分は一般人だったわー」と苦笑いしていました。

■復職したけれど「昔ほど仕事をもらえない」

長嶺さんの場合、復帰の理由は「生きがい」でしたが、多くの場合、経済的な理由で仕事に復帰せざるを得ないのではないでしょうか。漫画家の池澤優さん(仮名/48歳)はまさにそのケースです。

41歳で出産した池澤さんは産後、仕事量をぐっと絞り、子育てに専念してきました。ただ年収600万円で10歳上の夫との今後を考えると片働きを続けさせるわけにもいかず、お子さんが小学生になった今、仕事を広げようとしていました。しかし、昔のような仕事量をもらえず、焦りを感じていると言います。

池澤さんの場合、月数万円程度のカット仕事は細々と続けていました。積み上げてきた仕事の腕は評価されていましたが、どうやら今のトレンドとはマッチしないようで、「アップデートがうまくできないままここまできてしまった」と話していました。

長嶺さんのように家計に余裕がない池澤さんは、子供の教育費のために早く仕事を見つけたいと、近くのコンビニで働くことに。しかし、もともと働いていた外国人や大学生の方が夜勤などの融通がききやすかったことで、シフトにほとんど入れない日々が続いているそうです。

ちなみに、長嶺さんも家の近くのお弁当屋さんに面接に行ったそうですが、コロナ禍もあって人手は足りていると、門前払いにあったそうです……。

結果は厳しいものでしたが、華麗なキャリアを持っているにもかかわらず、そこに固執しない2人の姿勢は素晴らしいと思いました。かつて華々しく活躍した人ほどプライドが高く、仕事をより好みしやすいので……。

■どんなかたちでも仕事は続けたほうがいい

30〜40代の働く女性は子育てや親の介護など、ライフスタイルの変化によってキャリアを考え直すこともあるでしょう。実際、「仕事を辞めようと思うんですけど……」と相談してくださるお客さまが毎月1人はいます。その度に私は、「仕事を続けた場合/辞めた場合」の「数字」をお伝えするようにしています。すると、多くの方は考え直してくれるものです。

車椅子の高齢者と介護者の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

フルタイムの正社員をずっと続けるのは難しいかもしれませんが、時短勤務という方法もありますし、一度退職した後にパートで働くことでも、生涯所得は大きく変わります。ニッセイ基礎研究所のレポート「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計 標準労働者は育休・時短でも2億円超、出産退職は△2億円 働き続けられる環境整備を」によると、子供を2人持つ女性が第一子出産後に退職し、第二子の子育てが落ち着いた後、パートで復帰した場合、生涯所得が約6000万になるそうです。

一方、第一子出産後に退職し、その後復職しなかった場合の生涯所得は約2400万円です。そのため、正社員であれ派遣であれパートであれ、どんなかたちでも仕事を続けていくことをおすすめしています。

■今できることをコツコツと積み重ねてほしい

特に私が大切だと思うのは、ブランクを作らないこと。細々とでも何かしら仕事をつなぎ続ければそこから人脈が生まれ、業界の変化にもついていけるのではないでしょうか。

私は20代後半の頃、前夫のモラハラで自分が希望する働き方ができない時期がありました(「お前は家のことだけやっていればいい」といった女性差別が主でした)。当時は医療事務が注目されていたので資格を取ろうか等、いろんな業界のことを調べて行き着いたのがファイナンシャルプランナーでした。

そういった意味では、外でお金を稼ぐだけが社会との接点ではありません。さまざまな事情から、実際に体を動かして働くのが難しい時期もあるでしょう。そんな時は、SNSでも新聞でも図書館でも放送大学でもいい。子供でなく自分のために、なんらかのかたちで「社会」とつながり続け、来る時に備えればいいと思います。

国も生涯現役を掲げ、長く働き続けられる環境作りを始めています。再就職が難しかった長嶺さんのような50代の人でも、今後はもっと楽にリスタートが切れる可能性は大いにあると思います。その時のためにも、今できることをコツコツと積み重ねていってほしいと思います。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 聞き手・構成=小泉なつみ)

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