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勝間和代「善意の"洗脳"ほど恐ろしいものはない」"親の呪い"から逃れるたった1つの方法

プレジデントオンライン / 2022年5月27日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

私たちをさまざまな形で制約する「ブレインロック(社会的洗脳)」の中でも、最も強固で、解除が難しいのは「善意の親」からのロックだ、と経済評論家の勝間和代さんは指摘する。新著『できないのはあなたのせいじゃない』より、深く刷り込まれた親からのブレインロックを解除するための唯一の“武器”を紹介する──。(第2回/全5回)

※本稿は、勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「昭和世代の理想」に基づいた“呪縛”

まず知ってほしいことは、私たちのブレインロックの“呪い”は生まれたときから始まる、ということです。

私の会社の共同経営者である男性は、今でこそ様々な会社を経営したり、YouTuberとして自身のチャンネルで活発に情報を発信したりと、自由闊達(かったつ)に活躍されています。

ところが、若いころは今とはまったく異なる人生を歩んでいました。社会人第一歩は大手銀行に就職し、20代で結婚して戸建てを購入するなど、まさしく、昭和世代の親が理想とする非常にコンサバな人生を着々と歩んでいたそうです。

当時を振り返り、「長男として強く刻み込まれた親からのブレインロックの影響はあまりに大きいものがありました。それを自力で外すのに、10年以上かかりました」と語っています。

■長男長女ほど、より強いブレインロックがかかる

同じように、無意識のうちに親の価値観や考え方に強く影響を受け、縛られ、あるとき突然その事実に気が付いて呆然とする方は少なくありません。

勝間塾で「ブレインロック解消セミナー」を開催したときも、参加したたくさんの方が自らの内に潜むその存在に驚いたものでした。幼いころから当たり前だと思っていた常識や、自分を操ってきた価値観がいかにおかしなものであったか、まったく気が付いていなかったからです。

両親から与えられる代表的なブレインロックには、次のようなものがあります。

「いい大学に入って大企業に就職するのが一番」
「結婚してマイホームを持ってやっと一人前」
「男の子は男らしく、女の子は女らしく」
「嫌なことも我慢してやらないと、わがままな大人になる」

■親と子は互いに束縛し合う関係

両親からの刷り込みの被害を特に強く受けるのが、長男長女たちです。

親になって子育てをすると分かりますが、初めての子どもである長男長女に対しては、どうしても気持ちが入り過ぎ、厳しくしつけてしまいがちになるのです。

弟や妹が生まれれば、それだけ家庭内に多様性が生まれる余地ができますが、一人っ子の場合は両親との密室状態になってしまうため、さらに過度な刷り込みが起こってしまうことも。

また、第二子、第三子が生まれれば、親も子どもたちの個性を目の当たりにするとか、子どもたちを通じて関わる保護者や保育者、教師といった他者との接点が増えてくることで、子どもはすべて同一でないことや、いろんな価値観があることを学びます。しかし、一人っ子だと、どうしてもそうした機会は少なくなってしまいます。

子どもにとって、親は生活のすべてを左右する生命維持装置ですから、お互いに束縛し合う関係に陥りやすくなるのです。

■最大の問題点「価値観が古くなる」

親から与えられたブレインロックの最大の問題点は、価値観が古くなってしまうことです。親たちが受験や就職活動をしたのは、子どもよりも20~30年前ですから、うっかりしていると1世代前の常識を注ぎ込まれてしまいます。

「自分が受験生のときは、単語帳を使って英単語を記憶してうまくいった」とか、「大手の銀行に就職するのが一番の勝ち組」などというのが、その代表例です。

当然ながら、古い常識のままアップデートされていない親からブレインロックをかけられた子どもは、テクノロジーや経済状況が刻々と変化している現代社会の中で、1世代前の考え方で戦う羽目になります。

これは、子どもにとって致命的です。

■人類は新しい世代ほど賢くなるもの

一方、人類は新しい世代ほど賢くなっている──と指摘する研究者がいます。

オタゴ大学のジェームズ・フリン教授が、過去100年にわたってIQが確実に上昇している事実を明らかにしたことから、この現象は「フリン効果」として広く知られています。

教授はさらに、前の世代と比べると、現代人は学習や余暇を通してより複雑な情報にたくさん触れるようになったこと、そして、科学的に分析したり、論理的、抽象的に思考したりする必要がある仕事が増えたことなどで、脳が鍛えられ、IQが急激に向上したといいます。また知的能力の向上は、2世代、3世代という短いスパンでも見られるそうです。

つまり、フリン効果から考えると、生まれたときからより先進的な技術が周囲にあふれている世界で成長した子ども世代は、親世代よりも優秀な知能を備えうると考えられるのです。

■学校教育もアップデートされている

さらに、40~60代が受けてきた学校教育と、10~20代が現在受けているそれとでは、授業内容は大きく変わり、レベルも大きく向上しています。教え方も、相当程度アップデートされています。

勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)
勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)

公立の学校であっても、小学校からネイティブの教師が英会話を教え、授業もパソコンでパワーポイントや動画を使って、より効率的に学んでいます。

小学校から英語やプログラミング教育が必修になったことも、大きな変化です。2022年度から、高等学校ではネットワークデザインやプログラミング、データベースの基礎を学ぶ「情報Ⅰ」という科目が必修として加わりました。

この先、こうした新しい教育を受けたデジタルネイティブ世代が、前の世代とは大きく異なる知的能力を発揮するようになるかもしれません。

にもかかわらず、親たちが「自分が若いころは……」と古い常識や価値観を押し付けてしまうことで、どれだけ我が子を不利にしてしまうか、想像に難くありません。

■愛情深い親ほど、強い洗脳をかけてくる

やっかいなのは、親たちは子どもを大切に思い、「よかれ」と思って自分の価値観や考えを子どもへ注ぎ込んでいる点。親に悪意があれば、子どもは反抗し、はねつけることもできます。そんな親を反面教師にすることもできるでしょう。

ところが、善意からの言動は、はねつけるのが難しくなるものです。そのため、親が善良であればあるほど、子どもたちの無意識の深いところに強固なブレインロックがかけられてしまう傾向があります。

また、直接言葉で伝えていなくても、その家の生活習慣や親の行動から、無意識のうちに子どもにブレインロックをかけてしまうこともあります。

■父親と母親の関係性が子供にすり込まれる

たとえば、実家の父親と母親の関係性です。

主に父親である家長が、ほかの家族を支配・統率する家族の形態を「家父長制」といいます。ありがちな例としては、幼いころから父親が家事を手伝わず、新聞を読みながら座卓の前に座り、「おい、お茶」と母親に命じる姿を自然なこととして受け入れてきた息子や娘は、それが「当たり前の夫婦の姿」だと刷り込まれます。

現代の常識と照らし合わせるとおかしいことだと分かっていても、無意識にその状態を「心地よい」と感じるようになってしまうのです。

結果、そうした環境で育った男性は、結婚しても家事や育児に対してお手伝い感覚のままでいて、一方女性の側も、その主導権を握ることで満足感を得てしまったりします。

家庭内における次世代への刷り込みは、生まれたときから何年も、何十年にもわたって継続するため、そこから抜け出すことは非常に困難です。

■外の世界の情報にたくさん触れよう

親の洗脳から抜け出すための第一歩は、家庭内の洗脳によって自分の行動が左右されていると気付くこと。そして、何か大きな選択をするときに、両親からの情報だけに頼らず、それ以外からの情報をできるだけたくさん集めることです。

友人や学校の先生、会社の同僚やSNS、書籍など、何でもいいので関連情報を可能な限り集めます。

両親から得た情報を1としたとき、そのほかの情報が2、4、6と増えるに従って、徐々にブレインロックにひびが入っていきます。そして、ある時点で、これまで当たり前だと思っていた認識や価値観の逆転が起こるのです。

それに対し、恐怖心や不安感を持つこともあるかもしれません。それでも情報を集め、浴びているうちに、どこかでスイッチが入って思考がひっくり返り、ブレインロックが外れるのです。

■情報は「量よりも質」

情報は、質よりも量です。「情報においては、量が質を凌駕(りょうが)する」というのは、私の座右(ざゆう)の銘(めい)ですが、それは、自分のブレインロックを外すためです。

たとえば、悪質な新興宗教が信者を得ようとするときは、家族や社会から隔離して施設に閉じ込めます。外界から完全に遮断して、教義をひたすら注ぎ込むのです。それは、多種多様な情報と触れることを防ぎ、強固な洗脳をかけるためにほかなりません。

逆にいえば、洗脳を解いてくれるのは、いつでも情報だということです。

■「洗脳親」は忌避せず、静かに距離をとる

ちなみに、ブレインロックをかけてくる両親に対しては、反発したり、関係を遮断したりする必要はありません。言われたことをうのみにせず、ただ「そういう意見もあるんだな」と受け止めるに留めればよいのです。100、200ある情報のうちの1つとして、心の中にファイルしておきます。

先物
写真=iStock.com/Instants
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Instants

それでもこちらの言動を支配しようとしてきたり、理解がなかったりする場合には、物理的に距離をとることが必要になるでしょう。人は自分の価値観が壊されそうになると、本能から恐怖心を抱くことがあります。そのため、怒鳴ったり、暴力を振るってくるケースも珍しくありません。

同様のケースの渦中にある方から、「どれぐらい距離をとればいいですか」という相談をよく受けます。私は、「あなたが耐えられる程度」とお答えすることにしています。

これまでひと月に一度、会う機会があったなら、それを3カ月に一度、半年に一度といった形で減らすのがよいでしょう。

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勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。

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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)

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