一攫千金を十分狙える…シリコンバレー在住14年の実業家が教える「いま転職を狙うべき3つの候補先」
プレジデントオンライン / 2022年5月24日 9時15分
※本稿は、鳩山玲人『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■ネットフリックスで働き給料の9割をストックオプションにした男
シリコンバレーでは年収1億円ほど稼ぐ人はまったくめずらしくありません。なぜ、そのように稼げるのかといえば、ストックオプションで企業の成長の果実を得る人が多いことが大きな理由です。
ストックオプションとは「従業員や取締役が、あらかじめ定められた価格で自社株を取得できる権利」です。将来、株価が上昇したときにストックオプションを行使すると、「あらかじめ定められた価格」と「そのときの株価」の差の分を利益として得られる仕組みです。
つまり、会社の業績が伸びて株価が上昇すればするほど、ストックオプションを持つ人の利益が増大するわけです。
私の友人に、かつてネットフリックスで働いていたデイビットという男性がいます。彼とは、ハーバード時代にアカペラグループで一緒に活動していました。
ネットフリックスには給料をストックオプションに自由に割り振れる制度があり、彼は2007年にネットフリックスに入ってから、ずっと給料の9割をストックオプションにしていました。
当時のネットフリックスの株価は3ドルほどでしたが、2022年1月時点で株価は550ドルを超えています。ざっと180倍です。
仮に2007年大学院修了当時の年収が1500万円だとして、そのうち9割にあたる1350万円をストックオプションで受け取って今でも保有していたとすると、入社1年目のストックオプション分だけでも現在の価格は25億円近い計算になります。
もちろん、もしネットフリックスが潰れていれば、ストックオプションは無価値になります。ですから、彼は相応のリスクを負って、このような選択をしたわけです。
しかしシリコンバレーで働く人は、割合はさておき、ストックオプションを選択するケースが多いのではないかと思います。「自社の成長に賭けられないなら、そもそもその会社で働く意味がない」ということなのでしょう。
彼はその後、ネットフリックスを辞め、ロサンゼルスに大きな家を建てました。
現在は、空調や配管などの工事を担う施工業者向けの事業管理システムを提供するサービスタイタンというスタートアップでCFOを務めています。ニッチなビジネスですが、今後の成長が非常に期待されている企業です。
ネットフリックスでの成功を経ても満足することなく、次のビジネスにチャレンジしている様子も、シリコンバレーの人らしい生き方だと感じます。
■30~40代はスタートアップに移って株を持つ
ネットフリックスで働いていた私の友人のケースは特殊なものではなく、シリコンバレーでは「給料よりも株式」という考えが根づいています。
だからこそ、シリコンバレーの人たちは大きく稼いでいるのです。
失敗してもキャリアの形成にプラスにすることができ、次のチャンスもあるという背景もあってか、よくも悪くも「一攫千金」の発想を持って、リスクを取りながら大きなリターンを狙うのがシリコンバレー流であるともいえます。
私は、このようなシステムは、日本でもどんどん採用されるべきだと思っています。
大きく稼げる可能性がないまま、成長が鈍化した企業にしがみつくしか方法がない状況では、「勉強しよう」と奮起しようにも、モチベーションが上がりにくいのではないかと思いますし、そのような環境では働く人の成長が促されず、もったいないと思うからです。
ですから、私が30代後半から40代くらいまでのビジネスパーソンに伝えたいのは、スタートアップに移って、ストックオプションをもらうべきだということです。
有望なスタートアップは日本でも続々登場していますから、はっきりとストックオプションを要求して転職するのがおすすめです。あるいは日本に進出するシリコンバレー発のスタートアップへの転職を考えてもいいでしょう。
日本でも、株式を持つことで「努力が報われる」ということを体感できる機会が増えてほしいと思っています。
■外に出たほうが価値を認められるケースは多々ある
「シリコンバレー発のスタートアップへの転職を」と聞いても、「現実味がない」と感じる人が多いかもしれません。しかし、それは転職市場の実情を知らないからではないかと思います。
海外の企業が日本に進出する際、日本ならではの知見や業界のネットワークを持つ人材を採用しようとするケースはたくさんあります。ところが、なかなか採用がうまくいかないのです。
原因は、日本における人材の流動性の低さにあります。終身雇用が長く続いた弊害か「大企業にしがみついているほうが安心だ」と考える人が多いのかもしれませんし、今の会社にいるよりも外に出たほうが価値を認められるケースが多々あることに気づいていないのかもしれません。
そもそもユニコーン企業は、10年前には世界で見ても30社ほどしかありませんでしたが、現在は800社を超えています。それだけ、世界中で有望なスタートアップが増えているわけです。
背景にあるのは、やはりDX(デジタルトランスフォーメーション)でしょう。特にコロナ禍以降はデジタルシフトが進み、新たなサービスを提供する企業の中から急成長するところが続々と誕生しています。そういった世界の流れに、まず目を向けるべきです。
■日本に進出する海外ベンチャーを狙え
デジタルシフトというのはその言葉のとおり、もともとあった製品やサービスがデジタルに「シフト」していくということです。
そこにはテクノロジーが必要であり、旧来の仕組みに縛られずにやることが重要な場面もありますが、一方で旧来の産業の中で培われてきたオペレーションなどのノウハウがあることが前提となる場合も多いわけです。
そこに「昔ながらのノウハウ」を持っている人材が活躍できる余地があるのです。
特に今、衰退しつつある産業では今後のDX化が見込まれるでしょうし、これまでのノウハウをデジタル化する必要がある場面では、旧来型の仕事をしてきた人たちのノウハウへのニーズも高まると考えられます。
シリコンバレー発の会社でなくても、ここ5年ほどの間で日本の状況も大きく変わって、スタートアップが生まれやすい環境が整ってきていますから、同様の動きが活発化することは間違いありません。
実は今、世の中にはこれまでのキャリアを活かして「一攫千金」も狙える、ワクワクするようなチャンスがたくさんあるのです。
もちろん、そのチャンスをつかんで環境を変えれば、新たなエクスペリエンスとラーニングがみなさんを成長させ、今後の転職市場での価値を高めることにもなるでしょう。
新たな環境での学びには努力が必要であり、当然、苦労することもあると思いますが、それでもチャレンジする価値は高いと思います。
■転職が少ない業界の人ほど転職すべし
私は日本に帰って人と話す機会があると、よく「転職が少ない業界ほど、今転職したほうがいい」と言っています。
たとえば、自動車業界です。
ガソリン車から電気自動車へと根本的な機構が変わりつつある中、自動車産業の心臓部であった内燃機関が不要になる時代も迫っています。
かつて自動車というのは技術力のある大手自動車メーカーしか作り得ないものでしたが、電気自動車の普及によって、そのような構図は大きく変わると考えられます。
一方で、自動運転のテクノロジーは着実に進化を遂げており、自動車産業の軸足はハードウェアからソフトウェアへと急速に移ってきているわけです。
このような背景から、アメリカでは自動車業界からソフトウェア業界に転職する人が増えています。ソフトウェア業界からすれば、自動車業界のニーズを把握して開発を進めていくとなれば、自動車メーカーなどで働いてきた人に入ってもらうのが手っ取り早いでしょう。
また、自動車業界は大手自動車メーカーを頂点とした閉鎖的なネットワークの中に、限られたプレイヤーしかいなかった状況です。ソフトウェア業界の人たちがそういったネットワークに入っていこうとするとき、これまでそのネットワークの中で仕事をしてきて業界内のルールや事情をよく知っている人は、心強い先導役になり得ます。
もちろん、このような状況が永遠に続くわけではありません。
今はまだソフトウェア業界に自動車業界のノウハウが持ち込まれていないため、持ち込んでくれる人材に高い価値が認められます。しかし今後、新たなノウハウが確立されるに従って、旧自動車業界の人材へのニーズは減少していくでしょう。
変革が起き始めたときに、それを察知し、リスクを取って周囲に先んじて動く人でなければ、メリットは享受できないのです。
物流業界も要チェックです。
物流はエンドユーザーに物を届ける際の最後の接点となる「ラストワンマイル」の課題解決や、eコマースへの急速なシフトによる物流への負荷を、テクノロジーによってどう改善するかといった点で注目が高まっています。
物流業界は今、さまざまなスタートアップが生まれるデジタル化の最前線ともいうべき世界になっているのです。
その一方、ものを運ぶには人の手が必要であり、デジタル化がなかなか進みにくい業界であるともいえます。
これからデジタルシフトしていくとき、アナログで物流を回してきた人材の知見は重宝されることになるでしょう。日本の大手物流業界で経験を積んだ人材は、海外のスタートアップでニーズが高まると思います。
もう一つ注目したいのは金融業界です。窓口業務のオンライン化や電子決済の普及など、急速にデジタル化が進む業界ですが、規制業界であるため、デジタル化を推進する場合には旧来型の業務の知見が必要になる場面が多いといえます。
これはアメリカでも日本でも同様の動きがあるといえますし、海外から日本に進出しようとするスタートアップについていえば、日本独自の規制について深く理解している人材は喉から手が出るほどほしいでしょう。
その観点でいえば、従来は花形とはみなされていなかったようなオペレーションを担う人材に大きなチャンスがあるのではないかと思います。
■内部監査は好条件で転職のチャンスが多い
これは日本国内の企業の事情ですが、職種でいえば内部監査の経験者には転職のチャンスが多そうです。
かつて内部監査は「新聞を読んでいるだけのオジサンが集まっている部署」「左遷先の部署」といったネガティブなイメージもあったかもしれません。また、その業務について「ただハンコを押せばいい仕事」と考えられていた時代もありました。
しかし、ガバナンス強化の流れの中では、その重要性が高まっており、もはや傍流とはいえない業務になっています。
実際、上場企業などでも内部監査を担う組織を強化し、人員を増やしているケースはめずらしくありません。
ニーズが増えている割に経験者が少ないため、内部監査の経験がある人は好条件で転職できる可能性が高いです。実は、私も日本の会社から内部監査の経験者を採用したいという相談を受けたことがあります。
保守的な考えの方が多くなかなか転職に踏み切る人が少ない印象でしたが、今がチャンスだということは、もっと知られてよいように思います。
監査の業務については、上場に向けた監査などの経験を積むと、より転職市場での価値が高まるでしょう。上場を目指すベンチャーが増える中、ニーズが増えていくことは間違いなさそうです。
できれば1社だけでなく複数の会社で経験を積むと、より汎用性の高い知見を蓄積できます。
■コロナ禍を機に仕事のやり方が変わった業界が有望
もう一つ、私が注目しているのは、コロナ禍を経て仕事のやり方が根本から変わることを迫られている業界です。
たとえばヘルスケア業界は、デジタル化がこれから急速に進むでしょう。
ウェアラブルのデジタル機器を活用し、オンラインサービスを通じた健康管理やダイエットのサポートなどが充実していくことが予想され、これまで対面でヘルスケアサービスを提供していた人たちの働き方も大きく変わっていくことになると考えられます。
アパレルなどのショップ販売員の仕事も、従来は対面でなければできないものと考えられていたと思いますが、コロナ禍で対面販売が難しい状況の中で、オンラインによる販売がメジャーになりつつあります。
「ジャパネットたかた」のようにテレビで商品の魅力をアピールして通信販売するというビジネスは、以前は限られた企業しか手掛けていませんでしたが、中国やアメリカではインターネットのプラットフォームを使い「ジャパネットたかた」のような方式で販売員がものを売るビジネスがどんどん登場しているのです。
このような売り方がより存在感を高めることになれば、ショップの店頭に立っていた販売員の人たちの働き方も変化していくでしょう。
これからは、オンラインでいかに商品の魅力を伝えられるかが問われるようになるのです。
■常に変化する世の中のトレンドにいかに乗っていくか
世の中は常に変化し続けており、たとえば金融機関はフィンテックの登場で窓口業務がアプリに取って代わられつつありますし、コンテンツ業界に目を向ければ、若者がテレビを見なくなりユーチューブなど動画サイトの存在感が圧倒的に高まっています。
マーケティングも、テレビCMのようなマス広告から、ターゲティング広告やSNS型、インフルエンサー型へと主戦場が変わりつつあります。
シリコンバレーでいえば、「ドットコムブーム」「ウェブ2.0」などという言葉が流行った時代もありましたが、現在はブロックチェーンやVRの技術といった「ウェブ3.0」が新たなトレンドを生み出しているわけです。
これから転職を考えるみなさんには、こういったトレンドにいかに乗っていくか、トレンドが変わっていく節目に自分自身がどう行動するかという視点を持つことが大切ではないかと思います。
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鳩山総合研究所 代表取締役
1974年生まれ。元サンリオ常務取締役。青山学院大学を卒業後、三菱商事に入社。エイベックスやローソンでエンターテインメント事業に従事。2008年にハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社。サンリオで海外事業を拡大し、サンリオ メディア&ピクチャーズ・エンターテインメントのCEOとして映画事業にも従事し、2016年6月に退社。現在、ピジョン、トランスコスモス、Zホールディングスの社外取締役を務めるほか、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるSozoベンチャーズのベンチャーパートナーや、YouTuberを束ねるUUUMのアドバイザー、「HUMAN MADE」ブランドを展開するオツモのCSOも務めている。
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(鳩山総合研究所 代表取締役 鳩山 玲人)
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