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「真面目にコツコツ頑張る人は年齢とともに厳しくなる」40代役職無しの人が持っておくべき"代替プラン"

プレジデントオンライン / 2022年6月4日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sesame

「真面目に働けば評価される」という考え方は、正しいようで、必ずしもその通りにならない現実がある。「ビジネスは環境とタイミングが9割。そのことを理解して行動することが大切です」と指摘するのは、経済評論家の勝間和代さんだ。新著『できないのはあなたのせいじゃない』より、「チャンスを引き寄せる人」になるコツを紹介する──。(第5回/全5回)

※本稿は、勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■真面目に働いても評価されない現実…

誰よりも長時間労働をしたり、皆が嫌がる仕事も率先して引き受けたり……誠実かつ真面目に働いていれば、必ず誰よりも早く出世できるかというと、残念ながらそうとはいい切れないのが現実社会です。

「公正世界仮説」という認知バイアスがあります。

「世の中のすべてはフェアである」と信じる心の癖のことですが、残念ながら、現実世界においては公正でないことは多々あります。正しいことをしていれば最後は必ずむくわれる、悪いことをしたら最後は必ずむくいを受ける、というのは、“ほぼファンタジー”なのです。

企業内の評価においても同じことがいえます。つまり、「誰よりも真面目に働いていれば評価される」という考えは必ずしも正解ではありません。

■企業の都合と自分のあり方を重ね合わせる

企業は企業の都合で動いているので、その利害と一致したときに、初めて雇用者を評価します。企業の利益に「雇用者が真面目」という要素が含まれていない場合、もしくはそれ以外の要素の比重が大きい場合には、評価されにくくなります。

ほとんどの民間企業は営利目的ですから、多くの場合、「真面目」の要素はさほど評価に影響しない傾向があるのです。

長時間労働、無遅刻無欠勤で売上100万円の社員と、時間外労働一切なしで時々遅刻や欠勤をする売上200万円の社員がいたら、企業はほとんどの場合で後者を高く評価します。

■組織の評価基準を見極める

一方、真面目に働きながら成果もしっかり出しているのに、適切な評価を受けていないケースもあります。

その場合は、「真面目」「実際に出した成果」とは別の強い評価基準がその組織に存在している可能性があります。その組織で重用されている派閥や縁故などの人脈、性別だったりするかもしれません。

いずれにしても、その非合理性から雇用者の不満の種となりやすい要素です。

こうした事態を避けるために私たち個人にできることは、その企業がどういった評価規準で人事を行っているのかを見極め、納得のできる勤務先を選ぶことです。

公平な評価をしている企業を選ぶポイントは、評価に「客観性」と「外部評価」があるかどうかです。

■数字の評価は公平

たとえば、客観性のある評価として分かりやすいのが、数字を基準にしているケースです。「営業成績」「研究論文の数とその論文がリファレンスされた数」などといった明確な指標があると、公平な評価がされやすいといえます。

特に、売り上げた数字に対する評価は、社内だけではなく、社外のクライアントの反応がそのまま指標になります。社内の派閥の影響を受けることも、男性か女性かといった性別も関係ありません。クライアントが気にするのは、自分が払ったお金に対するパフォーマンスが高いかどうかだけです。

対して、総務や人事、経理などのバックオフィスで仕事をすると、こうした外部評価を得られず、透明性のある公平な評価を受けにくくなることがありえます。

よくあるのが、評価を下す立場の人の「評価バイアス」がかかってしまうケースです。「背が高い」「美人もしくは美男」「評価者と同じ地方もしくは大学の出身」といった、仕事の成果とは関係のない要素で評価が左右されてしまうのです。

■やはり容姿のよい男女はトクをする…

実際、成蹊大学社会調査研究所が行った研究によると、容姿のよい男女は出世しやすく、所得も平均より高くなることが分かっています。

また、上司からの飲みの誘いを断らないとか、サービス残業もいとわない……といったことも、よくある評価バイアスでしょう。

こうした評価のゆがみを避けるため、私は「活躍したい」という女性たちにはバックオフィスの勤務はお勧めしません。女性は競争を嫌う性質を持つ方が多いので、バックオフィスの勤務を好むのですが、社内評価が「女性だから」と低くされる企業の場合はかえって割をくってしまうことがあるからです。

女性の場合、実は、外部評価を受けながら競争にさらされる職種のほうが、公正な評価を受けて出世しやすくなります

■働き方の代替案を複数持つ

真面目に働いて数字もしっかり出しているのに、40代になっても役職が付かない場合には、そろそろ働き方の代替案を用意しておく覚悟が必要でしょう。

勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)
勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)

もしくは、管理職だけれどもそれがストレスで働くのがつらい、という場合も同じです。

代替案というのは、独立して起業をする、評価基準に透明性のある企業に転職するといったことです。自分の中のセーフティネットとして、1つや2つではなく、10ぐらいはプランを用意しておくとよいでしょう。

ちなみに、転職にはリスクがありますが、転職活動にはリスクはありません。

今すぐ転職をする予定がなくても、チャンスがあれば、自分の市場価値を知る機会として転職エージェントに登録するなどの行動をとることをお勧めします。

■真面目にコツコツ働くだけでは年齢とともに厳しくなる

いずれにしても、ただ真面目にコツコツ働き続けるだけでは、今後リスクがどんどん高くなることは頭に入れておいてください。年齢が上がるほど、労働収入は厳しくなっていくのが通常です。

レバレッジをかけずに生きていくには、現代はあまりにも未来が不透明過ぎるのです。5年後、10年後にはどんな職種がなくなっていて、どんな職種が新しく生まれているのか、誰も予測ができなくなっています。

1つの職業、1つの企業に留まることを最上とする働き方は、非常に危険です。有事の際には、すぐにプランB、プランCへと移行できるように「準備」をしておくことをお勧めします。

特に、定期的に自分の市場価値を知る機会を作り、いざというときは船を乗り換えても活躍できるように、自分の専門性を磨いておくことは必須です。長時間真面目に働くことより、そのほうがずっと未来は安定するはずです。

■成功において、本人の能力が占めるのは「1、2割」

日本には「努力至上主義」ともいえるイデオロギーが根深く残っています。私は、この考え方が逆に、企業の成長や人の能力発揮の足を引っ張っていると常々感じています。

残念ながら、仕事の成功は「環境」と「タイミング」でほぼ決まります。本人の能力が影響するのは、せいぜい1割、よくて2割ほどでしょう。

たとえば、平均的な能力を持つ人に最高のスペックを持つパソコンを渡した場合と、優秀な能力を持つ人に10年前のスペックのパソコンを渡した場合、どちらが仕事の成果を出しやすいかといえば、当然ながら前者であることは明白です。

事業にしても、たとえば日本の飲食店の質の高さは世界的に有名ですが、これは参入規制が比較的厳しくなく、多様な人がチャレンジする土壌があるためです。逆に、通信事業や電力事業に関しては厳しい規制があるため、巨大資本を持つソフトバンクグループや楽天グループでさえ、新規参入時にたいへんな苦労をしています。

■「半歩先がベストタイミング」

また、あらゆるニーズの高まりには山があり、求められ始めてぐんぐん伸びる時期と、徐々に下降する時期がやってきます。

よくいわれるのは「半歩先がベストタイミング」というもので、早過ぎては理解されなくてダメ、遅過ぎてもすでに行き渡っているからダメ。誰もがイメージしやすく、供給よりも需要が多い時期、つまり「人よりちょっと先がいい」という意味です。

たとえば、私は3年前にYouTubeを始めました。1年ほどは撮影方法や動画時間、取り上げる内容について試行錯誤をしていました。徐々にベストな方法が分かってきて、チャンネル登録者数がどんどん増え始めたころに、やってきたのがコロナ禍(か)でした。

その影響で、芸能人や有識者たちが一斉に参入してきたので、もし私が今始めていたら、新規参入の大波の中に埋もれてしまっていたかもしれません。意図せず、まさしく半歩先にスタートすることができたわけです。

■自分の周りにいる5人の平均値が自分の実力

同じように、コロナ禍における巣ごもり需要で急激に業績を伸ばしたEC事業や動画配信のサブスクリプションサービス事業などは、環境とタイミングの波に乗って大成功を収めた好例だといえるでしょう。

環境とタイミングがピタリとハマれば、最小の労力で最大の効果を出すことは可能です。しかも、驚くほど簡単に。

自己啓発をしたり、意志力を高めたりといった「自分磨き」も決して無駄なものではありませんが、それより重要なのは、環境整備とタイミングの見極めなのです。

社内でも、どんなに頑張って努力をしても、ほかのメンバーが努力嫌いで怠けていたら業績を伸ばすことは不可能でしょう。

「自分の周りにいる5人の平均値が自分になる」ともよくいわれます。どこでどんな人に囲まれて仕事をするかに強く影響を受けるということは、知っておくべきでしょう。

■環境とタイミングが9割

環境が整っていないところで自己啓発したり、意志力を発揮しようと頑張ったりしても、疲弊するばかりです。それであれば、わざわざ自分磨きをしなくても能力を発揮できる環境を選び、整えることが、確実に成功に近づくコツといえます。

幸いなことに、環境もタイミングも、ある程度自分でコントロールすることが可能です。仕事の成功において、自分の能力や意志力はほんのちょっぴりしか役に立たない。環境とタイミングが9割、ということを肝に銘じ、環境整備とタイミングをつかむことを最優先にしていきましょう。

また、マネジメントの立場にある場合、その部署や部下の成果がいまひとつであるときには、労働環境の見直しから図ることをお勧めします。

企業の場合は設備にこだわるのは難しく、いちいち申請して設備や端末の使用許可を求めるのが面倒だったりするケースが多いとは思います。しかし道具が悪いと、あらゆる仕事の能率を大きく下げます。特に現代においては、使う端末の性能が、そのまま成果に反映されるといってもいい過ぎではありません。

■最もチームを成長させる要因は「多様性」

また、チームを構成する人材についても、成長に最も有効なのは「多様性」です。

円状の形で互いの手首を握っているビジネスマンのグループ
写真=iStock.com/jeffbergen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jeffbergen

先日、外資系企業出身の経営者に聞いて面白かった話に、「人材採用のときには、一定基準を上回っていれば、最上位の成績の人ではなく、今、組織にない才能を持っている人を採る」というものがありました。

多くの場合、日本の企業は凹凸のある人を敬遠し、組織に同調しやすい人を選びがちですが、その会社は「社内にない個性」を優先的に選ぶというのです。真逆の発想に、とても感心しました。

これなどは、マネジメント層だからこそできる、「会社を伸ばすための環境整備」といえるでしょう。社員の努力、社員の頑張りに頼るよりも、目的達成により近づくための方策としてぜひトライしてみてください。

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勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。

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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)

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