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1つの仕事にこだわると人生がもったいない…シリコンバレーにあって日本に決定的に欠けている"ある視点"

プレジデントオンライン / 2022年5月25日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/georgeclerk

なぜシリコンバレーは多くの起業家や有名企業を輩出してきたのか。実業家で元サンリオ常務の鳩山玲人さんは「シリコンバレーでは1つの仕事、会社に固執することがない。次々に起きるトレンドのシフトに乗ることが、成功の鍵となる」という――。

※本稿は、鳩山玲人『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■シリコンバレー流に生きるための5つのポイント

本稿では、シリコンバレー流に生きるための指針として5つのポイントをお伝えしたいと思います。

①トレンドのシフトに乗れ

鳩山玲人『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』(幻冬舎)
鳩山玲人『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』(幻冬舎)

近年のシリコンバレーでは、トレンドのシフトが次々に起きています。

思い返すと、数年ほど前までのシリコンバレーの投資業界でホットだったのは「ソーシャル」「フィンテック」「ビジネスソフトウェア」などのテーマでした。

しかし、現在では「ソーシャルからモバイルへ」「フィンテックからクリプト(暗号資産)へ」「ビジネスソフトウェアからクラウドへ」とトレンドが移行しています。

そして近年シリコンバレーで資産を築いた人たちの顔ぶれを見ると、新たなトレンドが現れたときに、モバイルやクリプトやクラウドなどのテーマに乗っていった人たちなのです。

こういったトレンドは、数年ごとに変わります。そして、トレンドがシフトし始めたときには、さまざまなチャンスが生まれます。

しかし、シフトが起き始めたとき、残念ながら旧世代の人たちには、その価値がなかなかわからないものです。

そこで大切なのが、「どうせわからないから」とあきらめるのではなく、旧来のものに固執することなく、「わからなくても、とにかく新しいものに乗ってみる」という態度です。

■「目についたものは、とにかくやる」だけでいい

私は、たとえば自動車なら、新たに電気自動車が登場したときに、真っ先に買って乗ってみるべきだと思いますし、自動運転技術が進化したら、積極的に新たな技術を搭載した車種に乗り換えたほうがいいと思っています。

すでに少し古い例になりつつありますが、たとえば決済サービスなら日本でも「LINEペイ」や「ペイペイ」などの決済手段がたくさん利用可能になっています。

「私は現金派」「スマホ決済はトラブルも心配だし……」などと考えて、いまだに使ってみたことさえないという人はいないでしょうか。

振り返ってみてください。LINEが登場したとき、コロナ禍でZoomが注目され出したとき、新しいSNSとしてクラブハウスが話題になったとき、みなさんは「真っ先に乗る人」だったでしょうか。

もしも「わからないから」「今のままで別に困っていないし」などと考えがちで、新しいものから距離を置く傾向があるなら要注意です。

「一体、今から具体的に何をやればよいのか」と戸惑う人には、「目についたものは、とにかくやってみろ」とアドバイスしたいと思います。

自分の周りをよく見てみれば、新しいサービスが次々に生まれていることに気づくはずです。日々使っているLINE一つとっても、たとえばインフルエンサー検索機能を試したことはあるでしょうか。LINE証券のサービスはどうでしょう? PayPay銀行と既存銀行の違いをどこまで知っていますか。

おそらく多くの人は、新しい機能を一つひとつチェックしたりはしていないのではないかと思います。しかし、こういった新しく生まれてくるサービス一つひとつをウォッチし続けることで見えてくる、トレンドシフトのポイントがあるものなのです。

ビジネスパーソンとしてチャンスをつかむためには、トレンドに敏感になり、自分が仕事をしているビジネス領域ではもちろん、それ以外についてもどんどんトレンドに乗っていくという姿勢が必須だと思います。

■時代の変革を迫る事業を連発するイーロン・マスクの凄み

②一つの仕事にこだわるな

日本では終身雇用が崩壊したといわれるものの、「就職したら、できるだけ長く勤め続けるほうがよい」という価値観が根強く残っているように感じます。

何かを成し遂げるためには一つのことに集中すべきだと考え、「兼業」「副業」などに対しても「本業がおろそかになりそう」というネガティブな印象を拭えない人が多いのではないでしょうか。

そのような日本の感覚からすると、テスラ創業者のイーロン・マスクは、理解を超えた人物ということになるかもしれません。

テスラを上場させ、株価の上昇により個人で30兆円を超える資産を保有するまでになっただけでなく、宇宙開発企業のスペースXのCEOでもあり、ほかにもテスラ子会社のソーラーパネル会社ソーラーシティ、アメリカの都市をトンネルで結ぶ計画を打ち出すボーリング・カンパニーを手掛けるなど彼の事業領域は広く、その一つひとつが時代の変革を迫るような事業なのです。

米実業家イーロン・マスク氏=2022年4月10日、アメリカ・ワシントン
写真=AFP/時事通信フォト
米実業家イーロン・マスク氏=2022年4月10日、アメリカ・ワシントン - 写真=AFP/時事通信フォト

ツイッター創業者のジャック・ドーシーも、ツイッターだけでなくモバイル決済事業会社スクエアを上場させて、一時は両社のCEOを務めていました。

このように、一つの会社に固執することなく何度も起業し、上場させ、当たり前のように複数の企業を経営している起業家たちの姿を間近に見るにつけ、これはやはりアメリカならではのダイナミズムだと感じますし、私自身、日本にいてはなかなか得られない刺激をもらっていると思います。

■小さい領域だけで活動するのは、人生がもったいない

一方、ビル・ゲイツとジェフ・ベゾスについて感心するのは、自分が作り上げた会社をあっさりと引退して、次の道に進んでいることです。

もともとビル・ゲイツは、一人のソフトウェアエンジニアにすぎませんでした。それがマイクロソフトを創業し、巨万の富を得たわけです。

これだけでもすごい話ですが、その富や地位にしがみつくことなく早々に引退し、築いた富を環境やバイオテクノロジーにどんどん投資して、世の中の変化を加速させようとしているのですから、社会全体を見る視野の広さには感服するしかありません。

ビル・ゲイツの生き方を見ていると、自分がちっぽけな存在に思える一方、「小さなことに悩まず、もっと視野を広くしていこう」という気概が生まれ、力を得た気持ちになります。

ジェフ・ベゾスも、アマゾンをあっさり辞めてしまいました。私だったら「ここまで成長させたのだから、もっと自分で経営したい」と考えてしまいそうですが、彼は宇宙開発に向かい、宇宙旅行を成功させています。

シリコンバレーにいると彼らの活動をより身近に感じられ、「小さい領域だけで活動するのは、人生がもったいないな」という気持ちにさせられます。

振り返ると、私はサンリオでハローキティの海外展開というテーマに集中していたわけですが、もしあのままそれだけに人生をかけていたらビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、ジャック・ドーシーのようなダイナミックな人生のシフトに目が向くことはなかったかもしれないとも思います。

シリコンバレーで視野が開かれたことによって、私は今、一つの会社に縛られることなく多くの会社に関わる道を選び、そのダイナミズムを楽しんでいます。

「一つの仕事にこだわることは、もったいないかもしれない」ということを、みなさんにもぜひ一度考えてみていただければと思います。

■スタンフォードのAI研究者が「災害の被害予測」で起業した理由

③信念を貫け

みなさんは、何のために今の仕事をしているのでしょうか?

「もちろん生活費を稼ぐためだ」という人も多いかもしれません。

それは現実として必要なことではあるのですが、たとえばこれから転職を考えるなら、「自分はどういうことに信念を持って働いているのか」をきちんと考え、その信念を貫くことを大切にしてほしいと思います。それは、信念に基づいた仕事には強靭さがあるからです。

かつてスタンフォード大学でAI研究をしていたアマッド・ワニは、インドの自宅に帰省したときに大洪水に見舞われ、崩壊した自宅で1週間にわたり生死の境をさまようという体験をしました。

彼はその強烈な体験から、自然災害の壊滅的な被害を軽減することの重要性を認識し、「予測できない惨事」を予測しようと考えました。そしてスタンフォードに戻った彼がAI研究者と一緒に立ち上げたのが、ワン・コンサーンという会社です。

スタンフォード大学
写真=iStock.com/DenisTangneyJr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DenisTangneyJr

ワン・コンサーンは私も支援しているのですが、私がアマッド・ワニの創業ストーリーを聞いて驚いたのが、その信念の強さです。

スタンフォードのAI研究者ですから、望む会社に高額な給与で入れる立場なのですが、それには見向きもせずに、さほど儲かりそうもない災害の被害予測という課題に取り組もうとしていること、それ自体が驚くべきことだといえるでしょう。

シリコンバレーのスタートアップというと、最先端の華やかなビジネス、新しいサービスを好む先端的なユーザー像などをイメージする人が多いのではないかと思います。シリコンバレーに対して、ガツガツした起業家が集まるところだという印象を持つ人もいるでしょう。

それもシリコンバレーの一面ではありますが、一方でアマッド・ワニのように、「世の中をよくしたい」ということだけを考え続けているような強い信念を持つ起業家もいるのです。

私が彼を支援しているのは、その姿勢に感銘を受けたからであり、もちろん彼の周りには私だけでなく、多くの支援者が集まっています。

■逆風下でもビジネスをすかさず変化させる

④何があっても、あきらめるな

コロナ禍でデジタルシフトが加速したことは間違いなく、シリコンバレーには株価が大きく上昇した企業もありました。

しかし、シリコンバレーの企業がみなコロナ禍の悪影響を免れたのかといえば、もちろんそんなことはありません。

たとえばインスタワークという会社は、レストランなどのホスピタリティ業界に人材を派遣する事業を営んでいました。

シリコンバレーで順調に成長していたスタートアップだったのですが、コロナ禍によりアメリカでは1年以上もレストランが閉まり、インスタワークは大打撃を受けることになったのです

インスタワークの創業者のサミア・メガーニと私はハーバードの同級生で、苦境に陥る様子も知っていたのですが、心から「すごいな」と思ったのは、これほどの逆風下でも、しっかりビジネスモデルを作り変えて対応していったことです。

インスタワークが目をつけたのは、物流業界でした。実店舗に行けなくなった人たちがeコマースに流れた結果、配送網は逼迫して物流コストが上昇することになりました。

そこで、インスタワークは、すかさず物流業界への人材派遣業にシフトし、コロナ禍を生き抜いたのです。さらに経済がリオープンし始めると、ニーズが高まるパートタイム労働者の派遣を手掛け始め、業績を伸ばしています。

どんなビジネスであっても常に順風満帆ということはなく、コロナ禍のように避けようのない環境変化に見舞われることもあり得ます。そのような場面でも、粘り強くあきらめずに手を打ち続けることが大切なのです。

■自分の周りの人たちをどう成功をさせるか

⑤自分の周りの人を成功させろ

先に、シリコンバレーのようなネットワークが大切にされる社会では、周囲の人に対して「成功してほしい」「出世してほしい」という気持ちを抱き、協力的になりやすくなるというお話をしました。

私はこれをさらに一歩進め、「自分の成功以上に、周りの人の成功が重要だ」と考えています。

振り返れば、現在の私につながる人々は三菱商事の同期であったりハーバード・ビジネス・スクールで一緒に学んだ人であったりします。

飛ぶ鳥を落とす勢いの次世代ベンチャーキャピタルであるトライブ・キャピタル創設者のアージン・セティや、大型ベンチャーファンドであるセコイア・キャピタルのジェフ・ウオン、投資業界最注目のヘッジファンドであるコーチューのトーマス・ラフォントとは親しく付き合っていますが、彼らも出会った頃はベンチャーキャピタリストとしてそれほど知られた存在ではありませんでした。

その彼らがのちに大きく成功していった結果、私はさまざまな機会を得ることになったわけです。

ですから私には、「周囲の人たちの成功のおかげで、自分がより興味深い世界に足を踏み入れていっている」という感覚があります。

みなさんもぜひ、「自分の周りの人たちをどう成功をさせるか」を考え、実際に周囲の人が成功できるよう手助けしていってください。

人の成功を妬んだり羨んだりしても、そこからは何も生まれません。

周囲の人の成功を願い、積極的に手助けすることが、結果的に自分の成功につながっていくはずです。

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鳩山 玲人(はとやま・れひと)
鳩山総合研究所 代表取締役
1974年生まれ。元サンリオ常務取締役。青山学院大学を卒業後、三菱商事に入社。エイベックスやローソンでエンターテインメント事業に従事。2008年にハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社。サンリオで海外事業を拡大し、サンリオ メディア&ピクチャーズ・エンターテインメントのCEOとして映画事業にも従事し、2016年6月に退社。現在、ピジョン、トランスコスモス、Zホールディングスの社外取締役を務めるほか、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるSozoベンチャーズのベンチャーパートナーや、YouTuberを束ねるUUUMのアドバイザー、「HUMAN MADE」ブランドを展開するオツモのCSOも務めている。

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(鳩山総合研究所 代表取締役 鳩山 玲人)

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