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70歳まで働く…中高年男性「学歴と幸福度」の重大な因果関係

プレジデントオンライン / 2022年5月26日 11時15分

出典=『中高年男性の働き方の未来』

「働かないおじさん」と若い世代から揶揄され、リストラのターゲットとなることも多い中高年男性社員。彼らの本音はどんなものなのか。日本総合研究所の小島明子さんが同社の調査に基づき、出身大学の偏差値と幸福度について分析した――。

※小島明子『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)の一部を再編集したものです。

■70歳まで働く人が増加、中高年男性の心の内・腹の内

最近、都市部の大企業に勤める中高年男性の働き方に対する社会からの関心が高まっていると感じます。

2021年4月には改正高年齢者雇用安定法が施行されたことによって、企業に対する70歳までの雇用確保措置が努力義務となりましたが、特にバブル期に入社している男性は数も多く、管理職層の多くも中高年男性です。

就業継続を希望する中高年男性については、役職定年などを機会に意欲が低下するケースは少なくなく、今後の活躍の在り方が問われています。拙著『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)では、日本総合研究所が実施した高学歴中高年男性に関する調査を踏まえて、個人、企業、社会全体に対して、中高年男性の今後の活躍の施策を提言した。

本稿では、本書のなかのコラム「中高年男性の学歴と幸福度」及び「高学歴中高年男性のホンネ」を中心に抜粋し、紹介してみたい。

■1.高学歴中高年男性の実態

日本総合研究所では、民間企業かつ東京都内のオフィスに勤務し、東京圏に所在する4年制の大学あるいは大学院を卒業した中高年男性45~64歳に焦点を当て、2019年に意識と生活実態に関するアンケート調査を実施しました(以下、「日本総合研究所の調査」)。

※GMOリサーチの調査パネル2000人から回答を受領し、レポート集計対象は、出身大学の回答があった1794人。内訳は、45~49歳(432人)、50~54歳(447人)、55~59歳(454人)、60~64歳(461人)である。

調査では、大卒以上の男性を高学歴と定義し、大学難易度区分は全回答者の卒業大学の大学入試偏差値の四分位数を計算し、

学歴区分A=最小値~第1四分位数に該当するサンプル
学歴区分B=第1四分位数~第2四分位数(中央値)
学歴区分C=第2四分位数(中央値)~第3四分位数
学歴区分D=第3四分位数~最大値

とそれぞれ表記しています。大学難易度が最も高いグループはDであるため大学の難易度は、D(大学難易度が最も高いグループ)>C>B>Aの順になっています。

調査の中では、大学難易度が高いグループほど従業員規模1000人以上の企業に勤めており、中小企業に勤務をしている男性は少ないという結果が得られています。学歴区分A~Cにおいては、従業員規模1000人以上に勤める男性は、約3~4割の間にとどまっていますが、学歴区分D(最も高学歴)になると、その割合が約6割に達しています。

男性の既婚率においては、学歴区分A~Cまでは約7割程度であるが、大学難易度区分が最も高いグループのD区分となると、約8割にまで増え、他のグループより突出して高くなっています。バブル時代には、女性が結婚する相手として望まれる条件としては、「高学歴、高収入、高身長」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。学歴区分Dは、大企業勤めも多く、高収入になる可能性が高い。高学歴、高収入という条件があてはまりやすい学歴区分Dの男性の既婚率が非常に高いのは、結婚相手として、女性に人気があったことの表れなのかもしれません。

【図表2】既婚率(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』

■大学偏差値が最も高い層は「東京23区内」居住者が多い

配偶者の職業別に見ると、学歴区分を問わず、正規雇用は過半数程度であり、ほとんど変わりませんが、学歴区分Dに関しては、専業主婦の比率が多く、非正規雇用の比率が少ないことが特徴として挙げられます。

【図表3】配偶者の雇用形態(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』

世帯の家計負担割合を見ると、学歴区分問わず、男性が世帯全体の80%以上の家計を担っており、学歴区分を問わずほとんどの男性が世帯主であることが指摘できます。

【図表4】生活費を負担している比率(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』

過去に、日本総合研究所が実施した高学歴女性の調査では、大学難易度区分の高い女性グループでも、妻が世帯年収の60%以上を占める世帯は全体の7.7%に過ぎません。女性の場合、大学難易度区分が上がっても、妻が占める年収として、世帯年収の60%以上を占める世帯の割合にほとんど変化が見られません。高学歴な女性ほど共働きの傾向は高まるものの、女性が世帯主になる傾向はグループ間で差がなく、高学歴な女性は、年収の高い男性と結婚している可能性が高いのです。

同調査では、中高年男性の配偶者の学歴までは確認をしていないものの、学区歴区分Dの男性が、A~Cの学歴区分の男性に比べて、家計負担の割合を高く担っている背景には、先に述べた専業主婦比率が相対的に多いことや、年収の高さ、配偶者の学歴の高さ、なども影響している可能性があると推察します。

経済的に恵まれていれば、住まいの選択肢も広がりますが、大学難易度区分が高くなるにしたがって、東京都23区に住む男性が増え、過半数近くが23区内に住んでいることが分かっています(学歴区分A30.6 %、B38.3%、C38.5%、D47.5%)。

【図表5】住まい(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』
 

一方、東京都(23区以外)や、千葉県、埼玉県に住む男性は、大学難易度区分C、B、Aには比較的多いものの、難易度区分が最も高いDなので相対的に最も少ない結果となっています。また、難易度区分Aは東京23区以外にも、神奈川県に住むケースが多いようです。

なぜ、神奈川県に住む決断をしたのでしょうか。大学難易度区分が最も高いDの男性のなかには、「東京23区内に比べて不動産の価格が低い」といった経済的な理由に加えて、「あえて東京から離れて週末の生活を楽しみたい」「子育てをしやすい自然環境が豊かな場所で住みたい」といった志向などから、神奈川県を選んでいる人が一定数いるということなのかもしれません。

■2.学歴と幸福度との関連性

職業生活について、高学歴中高年男性全体に対して尋ねたところ、

「これまでの出世・昇進の状況に満足している」(※、以下同)
「報酬水準(給与の他、諸手当、福利厚生全て含む)に満足している」

は約3割にとどまっている。

※「そう思う」、「強くそう思う」

「仕事を通じて自分の能力やスキルが活かせている」

に関しても約4割と半数に達していません。

【図表9】職業生活全般への満足(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』

日本総合研究所の調査では、高学歴中高年男性の自己成長や仕事へのやりがいを求める意欲は高いことが明らかになっており、職場ではその意欲が十分いかされていない可能性があると考えます。副業・兼業やフリーランスをはじめ、活躍の在り方を検討していくことが必要です。

一方、職業生活全般への満足と、私生活全般への満足の結果を大学難易度区分で分析を行うと、A→Dへ高学歴になるに従って幸福度が高くなる傾向がみられています。高学歴な男性ほど、大企業勤めで高い給料をもらい、結婚して充実した私生活を送っている男性や、今までの職業生活においては、出世・昇進や報酬などにおいても、自分の望んだ通りになっている男性が多いのだと推察します。

【図表9】私生活全般への満足(大学難易度区分別)
出典=『中高年男性の働き方の未来』

ただし、今は相対的に幸福感を感じている超高学歴な男性(区分D)であっても、定年後に士気減退したり、地域デビューや居場所づくりの難しさなどの問題に直面したりする人が少なくなく、学歴を問わず、活躍に向けた有効な施策が必要だと考えます。

■3.高学歴中高年男性のホンネ

では実際、高学歴中高年男性は働き方に対してどのような気持ちを具体的に持っているのでしょうか。日本総合研究所の調査では、彼らに対して、働き方に対する自由意見も募集しました。

特徴的だったのは、データ上では、働き方改革に対する賛成派が多かったものの、自由意見となると、働き方改革に対する反対の意見が非常に多かったことが指摘できます。

小島明子『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)
小島明子『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)

一例を挙げると、

「働き方は人それぞれである。働き方改革などといって、上から押し付けられるようなやり方はうまくいかない」
「個人の裁量を重視するべき。大会社から中小企業まで同じ枠を当てはめないでほしい」
「国が強制することではない」

一方で、多様な働き方の推進に関する意見は、自由意見のなかでは最も多く寄せられていたという点も特徴的です。

「多様な働き方が受け入れられる環境をつくってほしい」
「週休3日制度やフレックス勤務などを柔軟に選択できる社会になるといい」
「自由裁量が望ましい」

高学歴中高年男性は、働き方改革といった形で強いられることに対しては、非常に抵抗感があることが見てとれます。そのため、多様な働き方を個人の希望に基づき、自発的におこなえる社会や企業の風土の醸成がより重要なのだと感じます。

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小島 明子(こじま・あきこ)
日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト
女性の活躍推進に関する調査研究及び環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。主な著書に『女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる』(経営書院)、『「わたし」のための金融リテラシー』(きんざい、共著)などがある。

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(日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島 明子)

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