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「キリのいいところまで」はNG…東大生が学習を日常に変えるために意識している"勉強の終え方のコツ"

プレジデントオンライン / 2022年6月3日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

東京大学に合格する受験生は、どのように勉強をルーティン化しているのか。東大生集団「カルペ・ディエム」は「『やり始め』のハードルを下げるために、あえて前日の勉強を中途半端なところで終わらせるといい。そうすれば、翌日の勉強がスムーズに始められる」という――。

※本稿は、東大カルペ・ディエム『東大大全』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■東大入試は好奇心がないと突破不可能

みなさんは日常生活で「なぜ?」と疑問を感じる頻度は高いでしょうか?

実は、東大の入試問題はある程度の基礎学力を前提としていますが、「たくさん物事を覚えているかどうか」を問う問題をほとんど出しません。多くの教科で出題されるのは「なぜ?」という疑問についての問いです。

・なぜシャッター商店街が増えているのか?
・なぜ世界大戦は甚大な被害が発生したのか?
・なぜ長野県と茨城県はレタスが多く獲れるのか? その違いは何なのか?

これはすべて実際に出題された東大の入試問題です。

こうした、勉強だけでなく日常生活で見かけるニュースや新聞に書いてあることに対して、「なぜ?」「どうして?」という疑問や理由を問う問題が多く出題されているのです。

「なぜ?」と問い、その問題に学生はいかに答えを出すのか。そこで東大に求められる能力は「自ら問いを作り、その答えを探す能力」です。5W1Hのなかでも「WHY」を思考する能力が必要とされるわけです。

つまり、東大は好奇心がないと突破不可能な試験だといえます。

個人的に共通テストもこの考え方を問う問題形式が増えているように思います。これからはさらに「世の中がなぜこんな仕組みになっているのか」を考えたことがあるかどうかが問われる試験になるのではないでしょうか。

■東大生は日常生活の疑問を放置せずに調べて解決している

東大生同士で集まって話していると、かなりの確率で「なぜ?」の会話が生まれます。

街を歩いていても「なぜこんなところに駐車場があるんだろう?」「なぜこのお店は、この時期に期間限定商品を出すんだろう?」と、疑問に立脚した問いをテーマに会話をすることが非常に多くあります。

そしてそれらの問いに対して彼らは「どうでもいいか」「分からない」など思考をやめることなく、仮説を立てたり、時間があれば調べたりして、疑問を解決しているのです。

ここで重要なのは、東大生の多くは遊びの最中だろうが関係なく「なぜ?」を問うのですが、その好奇心と必ずセットで「答えを考える」という姿勢を持っているということです。「なぜ?」と思ったときに、スマホで答えを調べたり人に聞いたりして、答えを知ろうとする習慣を心がけているのです。

・どうして空は青いのか?
・日常生活で何気なく使うこのカタカナ英語の本当の意味は何なのか?
・なぜファストフード店は多店舗展開をしているのか?

そんな、普段は当たり前すぎて疑問にすら思わないようなことすらも、疑問のままで放っておかず、答えを考えて調べる習慣が東大生を作り出しているのです。

■ケンタッキーの創業者の本名は「カーネルさん」ではない

このように日常生活に疑問を持って答えを探していると、自分の知識の勘違いに気がつくことがあります。「なぜ?」を追いかけるうちに本当の知識を知ることができるのも、「WHY思考」の面白いところなのです。

例えば、ファストフード店の「ケンタッキーフライドチキン」の創業者として知られる「カーネル・サンダース」は、「ハーランド・デーヴィッド・サンダース」という本名なのを知っていましたか?

ケンタッキーフライドチキンの看板
写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

実はこの「カーネル」は彼のファーストネームではなく、ケンタッキー州の名誉称号(名誉大佐)で、ケンタッキー州に貢献した人に与えられる称号なのです。つまり、普段何気なく呼んでいる「カーネル・サンダース」とは「サンダース名誉大佐」という意味なのです。

これも「ケンタッキーの白いスーツのおじさんって、誰なんだろう?」という疑問から、「カーネル(“colonel”)」=「大佐」という英単語1個と、友人に話せそうな豆知識を学べた立派な勉強と言えます。

■日常の「なぜ?」を重視した東大の過去問

では試しに、東大地理で過去に出題された問題に挑戦してみましょう。「なぜ?」がいかに重視されているかが分かっていただけると思います。

世界経済の成長とともに、人々の食生活に占める動物性食品の割合が増えつつある。図は1963年から2013年にかけての、各国の経済状況を表す1人あたりGDPの伸びと、国民1人あたりのカロリー摂取量に占める動物性食品の割合の変化を表している。

図の1~6の国では、1963年以降も経済が成長しているにも関わらず、動物性食品の割合はあまり増えないか減少している。その理由を3行以内で述べなさい。

東京大学 地理 令和2年 より一部抜粋

ここでは図を割愛しますが、「1~6の国」はニュージーランド、オーストラリア、イギリス、アメリカ、スウェーデン、フランスの6カ国であることが分かっています。

さて、この6カ国で動物性食品の割合が減少傾向にあるのはなぜでしょうか。少し考えてみてください。

まず、この6カ国の共通点を考えてみましょう。いずれも経済的に成長している「先進国」といえそうです。その先進国に共通する問題は「少子高齢化」ですね。これはその国のことを知らなくても、同じ先進国である日本に置き換えて考えれば簡単に想像できると思います。

では少子高齢化の進む先進国で、ほかにも国民が課題に感じていることは何でしょうか。ヒントは問題文にもある「カロリー」というキーワードです。そう、健康への問題ですね。先進国では成人病や肥満など肉食中心の食事による健康課題を抱えています。

このことから「成人病や肥満を問題視するなど、健康への関心が高まっているのとともに、少子高齢化によって高齢者の人口割合が増えたことで、野菜や魚介類など低カロリーの食品を摂取する割合が増えたから」という答えが導けそうです。

■疑問を持ちながら学ぶことで勉強のモチベーションも上がる

東大の過去問は日頃から身のまわりの「なぜ?」に関心を持ち、答えまでたどり着くための力を問われていると思いませんか。この問題は地理的知識が特になくても答えを思いついた人もいると思います。

疑問を持って学ぶことは、勉強のモチベーションを上げてくれると同時に、学ぶことの面白さが分かることにもつながります。そうして勉強のサイクルを回せるようになるのです。

つまらないと感じながら丸暗記し続けるよりも、丸暗記した知識に「なぜ?」を向けて世界を広げていくことこそが、学問への姿勢といえるのではないでしょうか。

■勉強を最も続けにくい時間は「やり始め」

勉強を始めようと思ったけれど、なかなか集中できなくて途中でやめちゃったり、そもそも勉強ができなかったりしたことはありませんか。

勉強において、一番「続けにくい時間」は間違いなく「やり始め」です。「さて、やるか」と考えて一歩踏み出そうとするタイミングで、一番集中力が途切れやすいのです。

しかし、みなさんもいざやり始めたら、意外と何とか進められることもあるのではないでしょうか。運動会の玉転がしのように、どんなに大きいボールでも転がし始めれば勢いもついて進んでいきますが、転がし始めは「せーの」で全員が一丸となって力を込めなければボールが動かないのと同じ理屈です。

実体験ですが、私も机に向かってはみたものの、全くやる気が起きなくて「今日はもういいや……」という気分になってしまい、勉強時間がゼロという日が結構ありました。

勉強机で助けを求める少年
写真=iStock.com/vejaa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vejaa

ところが、東大に合格した人たちは、全員この最初の一歩を踏み出すのが上手なのです。

陸上競技などのスポーツにおいて、勝負は試合開始前から始まっているとよく言われますよね。「READY……」とスターターが言った瞬間のポーズからすでに試合が始まっているのです。そのポーズは、勝負の結果にも必ず影響するはずです。

受験勉強においてもこれは全く同じで、いわゆる「READY思考」はとても重要なのです。

ここでは、走り出す前の「準備(=READY)」の心構えや、勢いよくスタートダッシュを切るための効果的な方法を紹介します。

■勉強を無意識に始められるように「ルーティン化」する

では、具体的にどうやって「READY」を作っていくかというと、まずオススメなのは「ルーティン化」することです。

そもそもなぜ、「勉強しよう!」と思ってもできないかというと、「よし、勉強しよう!」って思ってしまっていること自体が間違いなのです。日常生活で「よし、お風呂入ろう!」「よし、歯を磨こう!」っていちいち考えるでしょうか。

なかには面倒くさがりで「お風呂も歯磨きも気合い入れないとできない」という人もいるかもしれません。確かに、お風呂に入るのもかなり重労働ですが、では頑張ってお風呂場までたどり着いたとしましょう。

そのとき、「まずは何をしようか?」と考えていちいち身体を洗わないですよね。髪を洗ったり体を洗ったり、行動自体はたくさんありますが、ほとんど意識されることなく自然に行っていると思います。それは何度もそういう行動をして身体に染みついているからです。

これと同じように、勉強もルーティン化していくことで無意識にできるようになります。

■勉強をルーティン化するための4つの方法

実際にどうやって「ルーティン化」するのかという問題を話す前に、「学校では勉強できるけれど、家だとなかなかできない」って人はいませんか。

これは「ルーティン化」のことを考えると当然ですが、学校や職場は「勉強や仕事をする場所」だと頭の中で定着しているので、無意識でも勉強や仕事ができます。それに対して、家は「休む場所」だと頭の中で定着しているため、勉強や仕事をやる「ルーティン」が定着しづらいのです。

では、家での勉強を「ルーティン化」するために効果的な4つの方法を紹介します。

●新しい場所での勉強

これはズバリ、自分の部屋ではなくリビングや廊下などで勉強する方法です。

東大生の多くは、リビングで親や兄弟がいてみんなが別のことをしているなかで勉強をしていたパターンが多い印象です。人から見られることで緊張感も生まれますし、そこで勉強する習慣をゼロから作ることで、部屋で勉強することよりも何倍も楽に始められます。

●姿勢を変えて勉強

自分の部屋で椅子に座るとついつい休みがちになっちゃう人は、立って勉強してみましょう。現に、東大生でも立ちながら本を読んだり、論文を書いたりしている人がいますし、何なら私もこの文章を立ちながらスマホで入力して書いています。このように、少しでも捗らないなと思ったらすぐに場所を変えたり姿勢を変えたりする方法はオススメです。

●時間を決めて勉強

「嫌なことをする時間」を強制的に決めておくことで、後回しにせず始めやすくなります。学校のチャイムが鳴ったらある程度強制的に次の行動をしていたように、自分に対してチャイムを鳴らすのです。

例えば、夜8時からは苦手な教科の勉強をしようと決めたら、タイマーやアラームをセットし、必ずそれを守る。それを続けていくうちに、その行動が当たり前になり、嫌いなことも「ルーティン化」できるようになります。

●ちょっと残しの勉強

最後に紹介するのは、「ちょっと残し」というテクニックです。

例えば、あと1ページで終わる参考書や問題をやり切らずに翌日に残しておき、次の日の朝に「とりあえずこれだけやってしまおう」と残しておいた続きから始めるのです。こうすることで、最初の一歩が「とりあえずこれだけ」となることでハードルが下がり、その後も勢いをつけて勉強に臨むことができます。

東大カルペ・ディエム『東大大全』(幻冬舎)
東大カルペ・ディエム『東大大全』(幻冬舎)

逆に、夜寝る前などに「これだけは終わらせておこう」とキリのいいところまでやってしまうと、次の勉強を一から始めることになり、かなりの力が必要だと感じてしまうのです。

オススメな「ちょっと残し」は、問題の丸つけだけ残しておくことです。「昨日の問題って合っていたかな?」と思うと、気になって机に向かうのが億劫(おっくう)ではなくなると思います。

いかがでしたでしょうか。今回は「READY思考」として、勉強を「ルーティン化」するための4つの方法を紹介しました。

「やり始め」は誰でもつらいものですが、勉強をする前にこんな準備をしておくと、スタートダッシュが切りやすくなり、その後の集中力も続きやすいので、ぜひ実践してみてください。

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東大カルペ・ディエム 東大生集団
2020年6月、西岡壱誠が代表として株式会社カルペ・ディエムを設立。西岡を中心に、貧困家庭で週3日バイトしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、日々教育業界の革新のために活動している。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)の編集、TBSドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』の監修などを務めるほか、東大生300人以上を調査し、多くの画期的な勉強法を創出した。そのほか「リアルドラゴン桜プロジェクト」と題した教育プログラムを中心に、全国20校以上でワークショップや講演会を実施。年間1000人以上の学生に勉強法を教えている。

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(東大生集団 東大カルペ・ディエム)

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