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大家族はおろか「夫婦と子」世帯すら消滅の危機…全国各地で単身世帯が爆増している日本の行く末

プレジデントオンライン / 2022年5月27日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liderina

■一人暮らし世帯は40%に到達しつつある

「家族」が消えつつあります。

「夫婦と子ども2人」からなる核家族のことをかつては標準世帯といいました。世帯の中心は、この「夫婦と子」世帯であり、その構成比は、1970年代まで全世帯の45%以上を占めていました。世帯の半分近くがこの「夫婦と子」世帯だったわけです。しかし、先ごろ公表された2020年の国勢調査においては、25%にまで激減しています。

※一般的に、家族はそれ以外の「夫婦のみ世帯」や「3世代世帯」「一人親世帯」など複数で構成される世帯も含みますが、本稿では、この標準と呼ばれた「夫婦と子」世帯を家族と便宜上定義することとします。

激減した「夫婦と子」世帯の代わりに、大幅に増えているのが一人暮らしの単身世帯(ソロ世帯)です。単身世帯の構成比は、2020年には38%にまで増えていますが、ここが天井ではなく、今後ますます加速していくでしょう。

国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、2040年には39%が単身世帯となると推計されていましたが、すでにそのレベルに到達しており、もはや2040年を待たずして、40%を超えるかもしれません。反対に、同推計では「夫婦と子」世帯は23%にまで下がるとされていましたが、こちらも最悪20%を切ることもあり得ます。

■家族が激減しているのは意外にも大都市ではなく…

国勢調査における世帯類型が新区分となった1995年から2020年までの25年間の「夫婦と子」世帯数の増減数を総世帯数で割った「夫婦と子」世帯増減率をマップ上に落とし込んでみると、「消えゆく家族」の全貌が浮かび上がってきます。

世帯類型別構成比長期推移

この25年間で「夫婦と子」世帯の数が増えているのは、滋賀や北陸3県などわずか9都県にすぎず、残りはすべて減少しています。「夫婦と子」世帯率が2020年でトップなのは滋賀県で、29%と高い値をキープしており、子育て世帯の集積に成功していると言えます。意外にも、大都市でありながら東京や愛知なども増えている側に位置します。コロナ禍で東京から人口流出などと騒がれていますが、25年間の大きなスパンで見れば、東京は地方に比べれば家族が増えているということになります。

逆に、東京や大都市圏から離れれば離れるほど家族の減少が著しい。特に、九州、四国、近畿の太平洋側と北海道、東北が顕著です。もっとも減少したのは鹿児島県です。

1995➡2020年「夫婦と子」世帯増減率

家族が減るのとは対照的に、単身世帯は爆発的に増え続けています。「夫婦と子」世帯と単身世帯との構成比差分を比較して、「夫婦と子」世帯のほうが上回る県は、2015年時点では、埼玉・奈良・岐阜・滋賀・群馬・富山の6県ありましたが、2020年にはゼロになりました。全都道府県において、単身世帯が「夫婦と子」世帯を上回ったことになります。

ソロ社会化というと、どうしても大都市だけの話だと勘違いしている方も多いのですが、実は地方も含めて全国的な傾向なのです。

■「夫婦と子」の家族形態は将来消滅する?

これは当然の帰結で、「夫婦と子」世帯はやがて子が独立し、「夫婦のみ」世帯となり、やがて夫婦のどちらか一方で先に亡くなれば「ソロ」世帯へと変わります。ソロ世帯とは、未婚の若者とかつて家族だった高齢者によって作られていきます。

こうした状況は、確実に市場経済に大きな影響を与えます。かつて市場を支えてきたのは、まぎれもなく家族であり、主婦でした。食品も家電も日用品も主婦の支持が得られなければ商売にはなりませんでした。ところが、今までご説明してきたように、もはや家族からソロへと人口ボリュームは完全に移行します。今後は、ソロたちの支持がなければ立ちいかなくなることは明白でしょう。

ファミリーレスランも4人席を少なくし、一人専用席やカウンター席の充実化を図っています。かつて2人以上でなければ申し込めなかったパック旅行も「ソロ旅プラン」が増えています。コンビニの冷凍食品はほぼ一人用で占められています。クリスマスケーキでさえ一人用が人気です。近年、ソロ需要に対応する商品やサービスが急増しているのはそのためです。

では、このままいくと、昭和時代に中心を占めていた「夫婦と子」からなる家族という形態は、消滅してしまうのでしょうか?

そんなことはありません。未婚化が進んでも、夫婦になる人がいなくなるわけではないし、少子化といっても家族が産む子どもの数の比率は変わっていません。家族は消滅するのではなく、コミュニティの機能としての家族のありようが変わるのだと思います。

■「共住を前提としない」家族の概念が変わってきている

そもそも「家族」とはなんでしょうか?

アメリカの社会学者タルコット・パーソンズは、「家族は子どもの養育とメンバーの精神的安定という2つを本質的機能とする親族集団であり、必ずしも共住を前提としない」と言っています。さしずめ、現代においては、子を持たない夫婦もいるし、必ずしも「子どもの養育」が必須条件とはならないし、血縁関係に限定されるものでもないかもしれません。

となると、「家族とは、構成するメンバーの経済的生活の成立と精神的安定を機能とする契約に基づいた集団であり、必ずしも共住を前提としない」という定義もできます。

共住を前提としない……つまり、同居することだけが家族ではないのです。ここにこそ、家族を消滅させないひとつのヒントが隠されています。

最近では、コレクティブハウスのような機能を持つ住居に、年齢や家族形態がバラバラな住人が共同生活をするパターンも見られ、それを「血縁によらない新しい家族の形」とする向きもあります。が、それは、新しいというより、ある意味「所属するコミュニティ」への原点回帰と言えます。

江戸時代の裏長屋や農村地方の村社会もそうでしたが、寝食を共にする居場所をベースとして、その場所に集う人間を擬似家族としてコミュニティを形成するというのは、実はもっとも原始的なコミュニティスタイルです。

週末に自宅で朝食を楽しむ3人の中国人女性グループ
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

■必要に応じて助け合う「接続するコミュニティ」

それ自体は否定しませんが、共住を前提とした縛りがあることがかえって、ストレスを生むこともあります。所属することで得られる安心というのは、それと引き換えに、空気を読んだり、不本意ながら同調したりするという我慢も伴います。所属とは、みんなと一緒なら安心だ、という共同幻想を信じることだからです。そしてその共同幻想が、同調しない者を敵視し、残酷に排除してしまう行動に向かうことも歴史が証明しています。

今後大切になるのは、血縁や共住などのひとつの枠組みだけに縛られず、「所属するだけではないもうひとつの安心の形」を作り上げることではないでしょうか。いつも一緒に同じメンバーで同じ場所にいるのではなく、必要に応じて、集まったり助け合ったりする関係性。場所としての家が家族なのではなく、何かをするために考え方や価値観を同じくする者同士が巡り合えるネットワークも家族のカタチなのです。私は、それを「接続するコミュニティ」と表現しています。

■「家族以外は頼れない」という考えに囚われるのは危うい

一緒に暮らす家族を大事に思うことはもちろん素晴らしいことですが、「家族だけしか信じられない」「家族以外は頼れない」という考えに囚われすぎてはいけないと思います。家事も育児も「家族なんだからやって当然」と固執すると、夫婦が互いに相手の義務不履行をなじりあうという状況を生みます。

親の介護についても「家族が親の面倒を見て当然」という意識は、離職してまで介護を優先するという方向に向かわせ、結果本人の経済的破綻による悲劇的な親子共倒れを招きます。

かつて安心な囲いだった家族が、今や家族のみんなを縛り付ける鎖になっている。「家族を頼る」ことと「頼れるのは家族しかいない」というのはまったく違います。

血がつながっていなくても、同じ屋根の下に住んでいなくても、いつも一緒にいなくてもいい。必要に応じて、場面に応じてつながり、自分のできる範囲で、助け合える。そんな「接続する家族」の視点が、今後は必要ではないでしょうか。

これからの新しい家族のカタチ、みなさんはどうお考えになりますか?

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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