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食事には気をつけているのに…いつまでも痩せない人が無意識にやっている"太る水分の取り方"

プレジデントオンライン / 2022年5月31日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

ダイエットを成功させるには、どこに気をつければいいのか。佐久市立国保浅間総合病院外科部長の尾形哲さんは「体重を落としたければ、食べ物より飲み物に気をつかったほうがいい。スポーツドリンクなどの“砂糖水”はダイエットの天敵だ」という――。

※本稿は、尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■一見健康そうに見えるスムージーや乳酸菌飲料のワナ

私が担当する「スマート外来」には、肥満や脂肪肝、糖尿病からの脱却を目指し、ダイエットに励もうとする患者さんが訪れます。食べすぎ、運動不足、ストレス太り、昔と食べる量が変わっていないのに太った……と、事情はひとそれぞれ。

でも、いくつかのルールを守っていただくことで、3カ月で約5kgの減量を実現しています。その成功率はなんと8割。今回は、お酒は飲まないし、健康に気をつかってきたにもかかわらず脂肪肝となり、ダイエットに励んだAさん(当時42歳)のエピソードを紹介します。

Aさんは13年前に出産してから体重が14kg増加。身長158cmで体重66kg。体脂肪率は34%。BMIは26.44で軽度の肥満という状態でした。家族の健康も気にかけて、朝食は玄米シリアルや、野菜とフルーツのスムージー、腸内環境をよくするという乳酸菌飲料などを摂るのが日課だったそう。そんなAさんに指導したのは、肝臓から脂肪を落とすために、体にいいと謳われるドリンク類をいっさいやめることからでした。

■糖質は増えすぎると中性脂肪という形でため込まれる

ここからはAさんとの診察室でのやりとりを通じ、飲料を正しく選ぶことの大切さをご理解いただければと思います。

【尾形】肝臓にたまる脂肪のうち、食事から摂った脂や肉や魚などの脂が直接影響するのは、わずか14%にすぎません。残りの86%は、体についている皮下脂肪と内臓脂肪が溶け出した脂が60%で、糖質から肝臓で合成される脂肪が26%です。

【Aさん】あの、先生。糖質って体の中でエネルギーになって使われるんではないのですか? 脂肪との関係がよくわかりません。

【尾形】糖質は私たちが活動するために重要なエネルギー源になるものです。でも、体の中で糖質が増えすぎると、肝臓はそれを中性脂肪という形でため込むんです。いざというときのために。

【Aさん】いざというときとは……?

■1日3食の現代人に「飢餓状態」はやってこない

【尾形】飢餓状態になったときです。人間だけでなく生き物は飢餓状態に陥ったときに、いかに生き延びるかという情報が遺伝子に組み込まれています。だから、食料に困ってもすぐ死なないように、今は使わない分の糖質を肝臓に貯蔵しているんです。でも、実際どうですか? 私たちは1日に3食しっかり食べ、飢餓に苦しむ状態になんてなりません。むしろエネルギー源を摂りすぎなんです。でも、肝臓はまじめで、食事から摂ったエネルギー源をムダにしないよう、健気にもため込んでくれているんです。

【Aさん】てっきり脂肪になるのは、肉とかの脂なのかと……。

Aさんは、脂肪になるのは肉の脂や油ものだけだと思っていたようです。

【尾形】そう思うのもムリはありません。学校では、糖はエネルギー源と教わりますから。“糖の摂取が多すぎると脂肪として蓄積されて肥満になる事実”を、そろそろ学校でもきちんと教える時代だと私も思っています。

そして、Aさんは糖質の過剰摂取が肥満の原因になることを理解してくれたのでした。

■野菜やフルーツをわざわざジュースにする必要はない

【Aさん】では先生、私は糖質が多いものを減らせばいいんですね?

【尾形】そういうことです。食事を丸ごと制限するのではなく、肝臓に悪影響を与える食事を減らすことが大事です。

【Aさん】具体的にはどうしたらいいですか?

【尾形】まず飲み物から見直しましょう。“砂糖水”をやめることです。食べ物よりも飲み物のほうが、圧倒的に肝臓へのダメージが大きいのです。空腹時に一気に砂糖入りの甘い飲料を飲んだりすれば、血液中に一瞬で糖が増えます。これが続けば、糖尿病にもなりかねません。実際、脂肪肝の人の約半数に糖尿病や糖尿病予備群があると言われます。Aさんは野菜ジュースをよく飲んでいるとおっしゃっていましたね? 野菜ジュースも、乳酸菌飲料も、エナジードリンクも砂糖水です。

野菜や果物が入ったミキサー
写真=iStock.com/nevarpp
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nevarpp

【Aさん】自家製のフレッシュフルーツのスムージーもだめですか?

【尾形】果物はジュースにしないで食べ物として、食後のデザートに楽しんでください。そうすれば、果物に含まれる食物繊維を一緒に摂取できます。食物繊維は果物に含まれる糖の吸収を遅らせてくれるので、わざわざ取り除いたり、細かくしたりしてはいけません。

Aさんは野菜不足の解消のために、わざわざジュースにして飲んでいたようでした。

【尾形】野菜もそのまままるごとがいいですよ。旬の野菜をスープにしたり、蒸して食べてもいいですね。

■最も安全な飲み物はお茶と水

続けてAさんに伝えたのが、シンガポールで行われている甘味飲料の栄養成分表示義務付けについてです。

尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)
尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)

【尾形】シンガポールでは、肥満・糖尿病対策の一環として、2019年から100mlあたり10g以上の砂糖を含む清涼飲料水や果汁100%ジュース、砂糖・ミルク入り飲料などの広告を全面禁止にしています。2021年からは糖分を多く含む甘味飲料は、栄養成分のラベル表示を義務付けるようにもなりました。

【尾形】さらに、シンガポールでは飲料を糖分含有量に応じて4段階のグレードに分けていて、最も安全なグレードにあるのが水と無糖茶です。スマート外来で飲んでいいものに挙げている、水、お茶と一致します。健康リスクのレベルをきちんと表示させることで、国民の健康を守ろうとするすばらしい取り組みです。

■飲み物を変えるだけで肝臓の調子は良くなる

【Aさん】先生、カロリーゼロ飲料も飲まないほうがいいですか?

【尾形】砂糖は入っていなくても、カロリーゼロを謳っているドリンクには甘味を出すために人工甘味料が使われています。人工甘味料そのものでは太りませんし、人工甘味料が有害だという明確なエビデンスもありません。でも、甘い飲み物はカロリーゼロでも食欲増進作用があるんです。

【尾形】一方で、水かお茶、ブラックコーヒーを飲んでいれば、知らず知らずのうちに、食事の摂取全体を減らすことができるのです。もう1つ、甘い飲み物をやめる理由があります。砂糖は、果糖とブドウ糖からできているのですが、このうち、果糖には直接肝臓の細胞を傷害する作用があるのです。果糖は、食物繊維と一緒にゆっくりと吸収されれば、小腸の酵素でブドウ糖に変わります。しかし、飲み物で果糖を摂ってしまうと、酵素の働きが間に合わなくて、果糖のまま肝臓に向かってしまうのですよ。体の55~60%は水分です。だから、飲み物を変えるだけでも肝臓は喜びますね。

■熱中症対策にはスポーツドリンクよりも水と漬け物

Aさんは翌日から野菜やフルーツのスムージーをやめ、朝食は野菜スープに変更。乳酸菌飲料もハーブティに変えてダイエットに取り組み、主食を半分にして糖質をゆるやかに抑えながら最初の1カ月で無理なく2kg減量できました。そして、3カ月で6kg減を見事成功させたのです。

これからの季節、湿度や気温が高くなって熱中症の危険性が高まります。スポーツドリンクを熱中症予防に役立てようとする人もいますが、これももちろん肥満のもと。某スポーツドリンク500mlには、シュガースティック(1本で3g)で換算すると10本分の砂糖が含まれています。

1日に500mlのペットボトルを2本飲めば、シュガースティック20本分にもなります。熱中症予防であっても、水かお茶で十分です。もし、大量に汗をかくような日は、漬け物を少量加えればいいだけです。

スポーツドリンク500mlには塩分が0.6g程度含まれていますが、この量の塩分は「たくわん2枚分」に相当します。熱中症予防のためにスポーツドリンクを飲んで、余計な糖質を摂ることはありません。

さまざまな日本の漬物
写真=iStock.com/Yuuji
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji

飲み物は、水、お茶、ブラックコーヒーにしましょう。お酒も減量中は控えるのがベスト。アルコールは「肝臓で脂肪を糖に変える働き」と「脂肪からエネルギーを作る働き」を抑えて、中性脂肪を増やしてしまうためです。

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尾形 哲(おがた・さとし)
佐久市立国保浅間総合病院外科部長
1970年生まれ。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)がある。

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(佐久市立国保浅間総合病院外科部長 尾形 哲)

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