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これを守ればリバウンドしない…肝臓外科医が教える「1カ月で落としていい体重」の計算方法

プレジデントオンライン / 2022年6月3日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

ダイエットに成功しても、しばらくすると体重が元に戻る「リバウンド」をする人がいる。佐久市立国保浅間総合病院の尾形哲さんは「『1週間で5キロ』などの無謀な目標を設定してはいけない。健康的かつ継続的に行うには『1カ月に自分の体重の3%を減らす』を目安にするといい」という――。

※本稿は、尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■体につく脂肪には3つの種類がある

ダイエットのイメージはさまざまでしょうが、私が担当する「スマート外来」で指導するのは、肝臓をいたわり、肥満や脂肪肝の改善を目指す減量法になります。健康を維持する、科学的根拠に基づいたダイエットであって、これからお伝えする方法はモデルさんのようなスレンダーな体型を目指すものではないことをご承知おきください。

さて、体重はなぜ増えるのでしょうか。それは、“体に「脂肪」が増える”からです。「そんな当たり前のことを!」と思われるでしょうが、脂肪について正しく理解している人は意外と少ないので、ここで整理しておきましょう。

体につく脂肪には種類があります。一般的にイメージしやすい、太ももやお尻まわり、下腹部などについている、触ってわかる指でつまめる部分の脂肪が「皮下脂肪」です。さらに、メタボリックシンドロームの診断基準の1つになっているのが「内臓脂肪」です。内臓脂肪は胃や腸へ流れる血管の入った膜にたまっていく脂肪です。

そして、もう1つ。あまり知られていないのが、肝臓につく「肝臓脂肪」です。内臓脂肪はお腹まわりをびっしり覆うようにつく脂肪ですが、肝臓脂肪はそうではありません。肝臓を構成している細胞の1つひとつにラーメンの背脂のような滴がたまって肝細胞が膨らんでいます。

■脂肪肝は自覚症状のないまま肝臓機能が失われていく

脂肪がたまった肝臓が「脂肪肝」ですが、要はガチョウの肝臓を太らせてできる高級食材の「フォアグラ」だと思っていただければ理解してもらいやすいでしょう。脂肪肝の罹患(りかん)者は国内に2000万人以上いて、このうち1~2割の人に5~10年で肝硬変に至る「脂肪肝炎(非アルコール性脂肪肝炎)」がみられます。

脂肪肝の怖いところは、自覚症状のないまま徐々に肝臓の機能が失われていくことにあります。お酒を飲まないのに健康診断の肝機能の数値がよくない人、40代以上で若い頃よりも体重が大幅に増えたという人は、脂肪肝の疑いが高いと言っていいでしょう。

■脂質よりも糖質の摂りすぎに気を付けるべき

なお、肝臓にたまる脂肪はどこからくるのでしょうか。食事から摂った肉や魚の脂や揚げ物の油と答える人が多いのですが、実は食事で摂った脂質が直接影響するのはわずか14%にすぎません。残りの86%のうち、60%は体についている皮下脂肪と内臓脂肪が溶け出した脂で、糖質から肝臓で合成される脂肪が26%です。

ですから、食事で気をつけるべきは、脂質以上に“糖質の過剰摂取”なのです。特に、米、小麦、砂糖という「精製糖質」が肝臓脂肪を増やすことを覚えておいてください。

おなかの脂肪をつまむ男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

誰でも年を重ねるにつれて痩せにくくなるものですが、「体に脂肪が増えるのは当たり前」と見過ごしてはいけません。体重増加は、脂肪肝や糖尿病のほか、あらゆる生活習慣病の入り口になる大きなリスクなのです。

3種類ある脂肪ですが、ダイエット開始とともに同時に減っていくわけではありません。脂肪が落ちるタイミングには時間差があり、①肝臓脂肪→②内臓脂肪→③皮下脂肪の順で落ちていきます。見た目に表れるのは皮下脂肪が落ちてからになりますが、脂肪肝の改善には、一番落としやすい肝臓脂肪をターゲットにすればいいことになります。

■1カ月で落としていいのは「体重の3%」まで

肝臓から脂肪を減らすには、体重をどれくらい落とせばいいのでしょう。

これについては、明確な基準があります。脂肪肝がある人は、現在の体重やBMIがどれだけあろうと、また男女差も関係なく、5%減量すると体調がよくなります。7%以上減量すると肝細胞の脂肪化や脂肪肝炎が軽減します。10%減量できれば肝臓が硬く変化していく組織の変化、肝線維化も改善することが知られています。

20代の頃は54kgで、40代になって66kgまで体重が増え、脂肪肝で脂肪肝炎を認められた女性患者のケースでお伝えしましょう。体重自体は20年間で12kg増えています。しかし、いきなり12kg減を目指すことはしません。当面の目標は“体重の7%を減らす”ことです。この方の場合、66kg×7%=4.62kgになります。ですから5kg減を実現できれば、肝臓から脂肪が落ちて、肝炎もなくなると考えられます。

では、その5kgはどれくらいの期間で落とせばよいのでしょうか。1週間で5kg減など、短期間で急激に体重を落とす目標を立てないでください。短期間で急激に体重を減らすと、体に負担がかかり過ぎて、短期間でリバウンドする可能性が高くなるためです。

通常体重は、朝食直前と、夕食直後を比較すると、体重の2%程度増加しています。1カ月に減らす体重は、1日の体重変化の2倍以内にとどめると、体にかかる負担が少なくてすみます。

そのため、1カ月で減らすのは、“体重の3%にとどめる”ことが大切です。この女性の場合なら、66kg×3%=1.98kg。1カ月で2kg減を目指します。

また、体重は1日で最も体重が少ない朝食前に、できれば毎日同じ時間に測定することをおすすめします。

まとめると、当面の目標は現在の体重の7%を減らすこと。ただし、1カ月で落としていいのは、現在の体重の3%まで。これを基準に3カ月間の減量生活をスタートしてください。それが成功し、それでも標準体重以上の方は、ゆっくり減量生活を続けてほしいと思います。

■ダイエット中の「停滞期」は体の自然なメカニズム

なお、ダイエット成功の秘訣(ひけつ)としてお伝えしたいのが、「マイナス2kgの法則」です。これは「スマート外来」でダイエットを実践してきた人のうち、最初の1カ月で2kg減量ができた人は、ほぼ全員が3カ月で5kg減を達成しているという実績から導き出したものです。ダイエットは最初が肝心ということですね。

目標体重を設定してダイエットを開始し、最初は順調に体重が落ちるけれど、途中で体重の減りがにぶくなるタイミングが訪れます。これが「停滞期」です。これは人体の自然な働きからくるものです。だから、これまでの努力を無にするような自暴自棄にはならないでほしいと思います。

ダイエットに失敗して膝を抱えて落ち込む女性
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tero Vesalainen

「スマート外来」では、1日の摂取糖質量を合計130g(1食あたり40g)に収める「ゆるやかな糖質制限」による減量法を指導していますが、糖質を減らすと同時に体から水分も失われていきます。そのため、最初の1~2カ月は体重の減少が急激に起こります。しかし、この時期が過ぎると体に水分が戻ってきて体重が落ちにくくなります。

停滞期のもう1つの理由としては、少ないエネルギー量に体が慣れてきた可能性があります。私たちの体は、入ってくるエネルギー量が減ってくると、少ないエネルギーで生きることができるよう燃費のよい体に変化していきます。つまり、一定期間体重減少の後に、体重の減少にブレーキがかかるのは、人間の正常な生体反応なのです。だから、ダイエットがうまくいっていないと落ち込む必要はありません。

■ダイエットの最大の敵は油断ではなくストレス

ダイエットは継続することが肝心です。たとえば1食ぐらい食べすぎてしまったからといって、それがすぐに脂肪になるわけではありません。だから、食べてしまった→体重が増える・減らない→自己嫌悪→自分はダメだ→もういいやと投げやりにならないでほしいのです。

尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)
尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)

ダイエットをはじめたものの、減量がうまくいかない人やリバウンドをくり返す人がよく口にする言葉があります。それが「がんばります」という、前向きな言葉。そう言ってがんばろうとする人ほど、すでにがんばっているのです。

仕事や家庭のこと、ダイエットのことなど、一人で抱え込んでしまうと、甘いものやお酒に手を出したり、食欲の暴走を止められなくなったりするものです。でも、それはその人のせいではありません。がんばりすぎているサインです。だから、がんばらなくて済む方法を探してみませんか。

よく「油断大敵」なんて言いますが、ダイエットにおいては「ストレス大敵」です。もし、ダイエットがうまくいかない原因にストレスがあるのなら、食事制限よりも“ストレスを減らすほうが先”です。悩みもストレスも3つ以上になると、たちまちこなせなくなるからです。我慢やストレスを手放すことは、ダイエット継続の重要な条件といえます。

そして、ダイエットに失敗しても“自分のせいにしない”こと。「私はダメだ」と悔やむよりも、焦らずに再びダイエットに向かえる環境を整えてください。ダイエットは、いつからでも、何度でも再スタートできるのです。肝臓はそれに耐える再生力をもっています。

ストレスを上手に減らして、日々の暮らしを楽しみながら、体重を落とす。それが「肝臓をいたわる食べ方」。がんばりすぎずに減量生活が続けられます。

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尾形 哲(おがた・さとし)
佐久市立国保浅間総合病院外科部長
1970年生まれ。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)がある。

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(佐久市立国保浅間総合病院外科部長 尾形 哲)

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