ピーナッツでは全然ダメ…驚くべき抗がん作用・死亡リスク低減効果があるよく似た"おつまみ"
プレジデントオンライン / 2022年5月31日 11時15分
※本稿は、スティーブン・R・ガンドリー『死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、川岸史訳)の一部を再編集したものです。
■がん対策に最適な食品とは何か
空腹を感じずにがん細胞を抑えるには何を食べればいいのか? がんと闘う特異な性質を持つ食品がある。それは以下のようなものだ。
●外因性ケトン体
インスリン値が低く、糖質・タンパク質の摂取量が少ないと、体内に蓄積された脂肪がケトン体(※)に変換されることはご存じだと思うが、すでに作られたケトジェニック(糖質制限)食品を摂取してもよい。
※空腹時や睡眠時などに脂肪酸が燃焼する時、肝臓で作られる物質
いくつかの植物性脂肪には、ケトン体を作ってエネルギー源とする脂肪が含まれている。たとえば、中鎖脂肪酸(MCTオイルに含まれる)は、ほぼ完全にケトン体に変換することができ、ミトコンドリアの理想的な燃料源となる。
固形のココナッツオイル(セ氏21度以下だと固形となる)には、中鎖脂肪酸が約65%も含まれている。また、ビタミンEのトコフェロールとトコトリエノールを豊富に含み、MCTを約50%も含むレッドパームオイルも、ケトン体の生成に適したオイルだ。パームオイルはレッドパームオイルとは異なる上、パームオイルの生産は森林破壊と関連しているので間違えないように。
酪酸は、腸内環境を整えると腸内細菌の酪酸菌が作り出す短鎖脂肪酸で、バターにも少量含まれており、ケトン体を作る材料となる。しかし、市販の乳製品にはカゼインA1が多く含まれているため、通常の牛乳バターやグラスフェッドの生乳バターよりも、ヤギや水牛のバター、ギー(タンパク質を含まない澄ましバター)の方が、ケトン体前駆体の摂取に適している。だが、バターには酪酸があまり含まれていないことは覚えておこう。
だが、ケトン体濃度を上昇させる脂質源をどれだけ摂取しても、糖質、タンパク質、脂質の多い食事(欧米型の食事)から長寿パラドックスプログラム(死ぬまで若々しく健康に長生きするためのプログラム)に移行する際には、エネルギー源として外因性ケトン体を使うのが最適となる。
つまりハンバーガーやベーグルを食べて、脂肪の形でケトン体をたくさん摂取してもあまり意味がないというわけだ。私たちは、いつもインスリン値が高く、「ラブハンドル」(腰回りについた脂肪のこと)をケトン体に変換する能力を阻害している。
こうした食事におけるケトン体濃度を上昇させる脂質源は、移行期の失敗を防いでくれるが、長期的には必要なくなる。
■ピーナッツではなく、ナッツがいい
●ナッツ類
ナッツ類(とくに木の実)には驚くべき抗がん作用がある。ある研究では、イェール大学の研究者がステージ3の結腸がん患者の死亡率とがん再発率を調べた。1人前の量のナッツを週に2回以上食べていた患者は、がんの再発率が42%、死亡率が57%減少していた(注1)。そう、週に2回以上ナッツを食べていたがん患者は、死亡リスクが半減したのだ。これは、一般的な化学療法によるがん治療よりも効果的といえよう。
注目すべきは、ピーナッツを食べた患者では、がんの再発や死亡の減少が見られなかったことだろう。なぜなら、ピーナッツはレクチンを多く含むマメ科の植物であり、ナッツではないからだ。ちなみに動物実験では、ピーナッツのレクチンは結腸がんを促進するという結果が出ている(注2)。
別の研究では、クルミを食べさせたマウスの結腸にできた腫瘍の数は、クルミを食べさせなかったマウスの半分以下だった(注3)。研究者たちはマウスの糞便サンプルを調べ、消化管内に生息する細菌を調べた。その結果、クルミを食べたマウスの腸内微生物叢は互いに似ており、結腸がんを防ぐ細菌群集を形成していることがわかった。つまり、クルミを食べたマウスの腸内細菌は増殖し、お返しに宿主の体を守っていたのである。
結腸がんだけではない。私が2年間研究員をしていたメリーランド州ベセスダの国立衛生研究所が行った別の研究では、ナッツ類を大量に食べている人は、あまり食べない人に比べて肺がんになる確率が26%低くなるという結果が出ている。
驚くべきことに、その効果は喫煙者にも及んだ。定期的に喫煙する人でナッツを大量に食べている人は、ナッツをほとんど食べない喫煙者に比べて、肺がんの発生率が39%も減少したのだ(注4)。これは、ナッツが喫煙者を喫煙の悪影響から守っていることを示している。
あるシステマティックレビューによると、ナッツ類の摂取は、がんだけでなくあらゆる原因による死亡のリスクを低下させることが示されている(注5)。それも、わずかな差ではない。ある研究では、ナッツを大量に食べていた女性は、あらゆる原因による死亡リスクが半減していた(注6)。
■クルミ、ピスタチオ…なぜ効果があるのか?
なぜ、ナッツ類はがん予防に効果があるのか? ナッツ類はメチオニンがきわめて少ない。メチオニンはアミノ酸の一種で、エネルギーの有無を察知する感覚器官mTORを活性化する。メチオニンが多いと、成長周期に入っていることを意味する。つまり、メチオニンの少ないナッツ類を食べると、退行期にあるという信号が送られ、これまで説明してきたあらゆる方法でがんと闘うことができるのだ。
さらに、酪酸を作り出す腸内細菌はナッツを好む。さらに、ミトコンドリアが酪酸を、ケトン体濃度を上昇させる脂質源として利用できることもわかっている。そのためナッツ類は、微生物叢とその姉妹であるミトコンドリアを強化しながら、がん細胞には栄養を与えずにいてくれる、まさにがん対策に最適な食品なのだ。
長寿パラドックスプログラムでは、ヘルシーでがん予防効果のある以下のようなナッツ類をたっぷりと食べる。
● マカダミアナッツ
● ピスタチオ
● 松の実
● ヘーゼルナッツ
● 栗
心臓病や肺線維症、難聴、がんなど、腸の健康は体全体の健康に影響を与える。さらに、これらの「老化」に伴う一般的な病気を引き起こす要因と同じものが、認知機能の低下、筋肉の衰え、関節痛、急激な皮膚の老化など、私たちが「普通」だと思っているその他の老化の症状を引き起こすのだ。
私は心臓外科医として、心臓病と関節炎には明確な関連性があることを実感している。
(出典)
1. Laura García-Prat, Marta Martinez-Vicente, Eusebio Perdiguero, et al., “Autophagy Maintains Stemness by Preventing Senescence”, Nature 549, no. 1 (January 2016): 37-57,
2. University of Southern California, “Fasting Triggers Stem Cell Regeneration of Damaged, Old Immune System”, ScienceDaily, June 5, 2014,
3. S. Melanie Lee, Gregory P. Donaldson, Zbigniew Mikulski, et al., “Bacterial Colonization Factors Control Specificity and Stability of the Gut Microbiota”, Nature 501, no. 7467 (September 19, 2013): 426-29,
4. Eugene Kang, Mitra Yousefi, and Samantha Gruenheid, “R-Spondins Are Expressed by the Intestinal Strama and Are Differently Regulated during Citrobacter rodentium-and DSS-Induced Colitis in Mice”, PLOS One 11, no. 4,(April 2016):
5. Karla A. Mark, Kathleen J. Dumas, Dipa Bhaumik, et al., “Vitamin D Promotes Protein Homeostasis and Longevity via the Stress Response Pathway Genes skn-1, ire-1, and xbp-1”, Cell Reports 17, no. 5 (October 2016): 1227–37,
6. Javeria Saleem, Rubeena Zakar, Muhammad Z. Zakar, et al., “High-Dose Vitamin D3 in the Treatment of Severe Acute Malnutrition: A Multicenter Double-Blind Randomized Controlled Trial”, American Journal of Clinical Nutrition 107, no. 5 (May 2018): 725-33,
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ヒト微生物叢と腸との関わりの世界的権威。。著者に『食のパラドックス』(翔泳社)、『死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。2000年カリフォルニア州に国際心肺研究所など——を設立し、研究と臨床を。同研究所では心臓病、糖尿病、自己免疫疾患、がん、関節炎、腎不全、認知症やアルツハイマー病などの神経疾患など、多くの病気を食事や栄養学によって改善するための研究と臨床により、患者の健康寿命を最大限に延ばすための高度な血液検査や血流測定などを行っている。
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(M.D.医学博士 スティーブン・R・ガンドリー)
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