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「だいぶ」「かなり」「できるだけ早く」周囲から“仕事ができない”と思われている人が使いがちなビッグワード

プレジデントオンライン / 2022年6月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Viacheslav Peretiatko

ビジネスで有用なスキルとはどんなものか。プロジェクトマネージャーの木部智之さんは「だいぶ、かなり、できるだけ早く、といったビッグワードは仕事で使わないほうがいい。抽象的な表現に逃げず、具体的な表現に言い換えられるように、ビジネス上のさまざまな数字を把握することを心がけるべきだ」という――。

※本稿は、木部智之『入社1年目のビジネススキル大全』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「結論→理由・根拠」の順番でテンポよく話す

ビジネスにおけるコミュニケーションでは、映画や小説のように導入から徐々に盛り上げて、最後の最後にクライマックス(結論)を話す必要はありません。

基本は、「結論ファースト」です。すなわち、最初に結論を伝えて、その後に理由と根拠を話すようにするのです。

例えば、こんな感じです。

「A、B、C3つの案を検討しましたが、今回はB案を採用しようと思います。理由は、導入効果が高かったからです。A案とC案は、効果がじゅうぶんでなく、コストがかかりすぎるというデメリットがあります」

このように、最初に結論を言ったほうが、話の方向性が見えるので、聞き手は安心してその後の話に集中することができます。

ビジネスコミュニケーションにおける聞き手は、たいていの場合「せっかち」だと思っておくといいでしょう。せっかちだから、結論から先に聞きたいのです。

この傾向は、役職が上がるほど強くなります。役職が上がると、短い時間で多くのことを判断しなければいけなくなるので、先に結論を聞きたい、と思うようになるのです。また、数々の経験を積むと、結論を聞けばだいたいの理由と根拠が推測できるようになるという側面もあります。

「結論は○○○です」
「その背景と理由は△△△です」

と、テンポよく説明しましょう。

■30秒で話す「エレベーター・ピッチ・トレーニング」

「結論ファースト」の話し方を習得するために、いいトレーニングがあります。それが、「エレベーター・ピッチ・トレーニング」です。

「エレベーター・ピッチ」とは、エレベーターに乗っている15秒や30秒といった短い時間で自分の意見を的確に伝えるプレゼン手法で、米国のシリコンバレーが発祥の地といわれています。

シリコンバレーには、多くの起業家や投資家が集まっています。

そのような激しい競争の地で、起業家が投資を得るには、長々と話しても相手にしてもらえません。そこで、わずかな時間で相手の関心を引く手法としてこのエレベーター・ピッチが注目されたのです。

このスキルは、練習をすればすぐに向上します。おすすめは、実際にエレベーターに乗ったときに、イメージトレーニングをすることです。

エレベーターに乗る前に、「昨日の状況を報告する」「今日の予定を説明する」などと自分でテーマを決めて、目的階に着くまでの短い時間を使って、頭の中で説明してみるのです。

このトレーニングを繰り返すと、驚くほど説明スキルが上達します。さらには、メールも端的にわかりやすく書けるようになります。

【図表1】「エレベーター・ピッチ・トレーニング」は頭の中でも実践できる
出典=『入社1年目のビジネススキル大全』

■説明には「マジックナンバー3の法則」を使う

人間は「3」という数字に対し、安定していて丁度いい、という感覚を持つといわれています。モノが物理的に安定する最小数値も3です。例えば、カメラの三脚などがそうです。

また、マーケティング心理学では、奇数を使用したほうが高い効果があることが実証されています。人間の脳は偶数よりも奇数のほうが自然で心地よく感じる傾向がある、という調査結果もあります。

これを踏まえたのが「マジックナンバー3の法則」です。理由や根拠を説明する際に3つ挙げると、説得力が増すのです。

ビジネスシーンで「3」という数字は大きな役割を持ちます。今日から、説明するときにはとにかく「3つです」と言いましょう。

・課題は3つです。
・対策は3つです。
・理由は3つです。
・効果は3つです。

という具合です。

「課題は2つです」と言われると、聞き手は何となく落ち着かない印象を受けてしまいます。私は、説明するときに、2つ頭に浮かんでも、何とか工夫して3つ目を洗い出そうとします。それが、説明に安心感と説得力を持たせられるからです。

また、4つ頭に浮かんだときは3つにまとめるか、5つに増やそうとします。4という「偶数」よりは、5という「奇数」の心地よさを優先させます。しかし、5つも要素があると、説明されても頭にすんなり入ってこないですし、記憶にも残りにくくなります。

できるだけ「3」。できないときは、「4」ではなく「5」にするようにしましょう。

【図表2】「マジックナンバー3の法則」を使うと、説得力が増す!
出典=『入社1年目のビジネススキル大全』

先ほどエレベーター・ピッチを紹介しましたが、そのトレーニングにも、ぜひこの「3」を取り入れてみてください。

「3つの対応方針を検討しましたが、今回は、A案を採用しようと考えています。その理由は3つです」といった具合です。

あるいは、ふだんの生活でもトレーニングできます。同僚とランチに行くときに、「今日のランチの候補は3つだな」とか、「今日はラーメンがいいな。理由は3つだ」と言ってみるのです。

ただ、口に出してしまうと「こいつは理屈っぽいヤツだ」と敬遠されるかもしれません。頭の中で練習する程度にしておきましょう。

■「最適」「迅速」曖昧な“ビッグワード”は使わない

ビッグワードとは、解釈の範囲が広すぎて、受け取る人によって理解が変わってしまうような曖昧な言葉、抽象的な言葉のことです。

あなたが先輩から、「その問題について、最適な解決策を検討し、迅速に対応してください」と言われたらどうでしょうか。具体的に何をしていいかわからないと思います。また、聞いた人によって解釈が変わってくる可能性もあります。「最適って何?」「迅速ってどれくらい?」と思ってしまう言葉がビッグワードです。

「最適な解決策」「迅速な対応」などの言葉は、耳当たりはいいのですが、実は具体的なことは何も伝えていない言葉の典型です。

「最適」とは何をもって最適と判断するのか、「迅速」とはどれくらいの速さなのか、などを明確に発信することが必要です。

そのほかのビッグワードとしては、

・早めに、前向きに、できるだけ、かなり、もう少し
・頑張る、意識する、注意する、貢献する

などがあります。

職場で注意して聞いていると、「かなり」使われている言葉だと思います。今、私が「かなり」と使ったように、ビッグワードは便利な言葉です。便利で楽だからこそ、つい使ってしまうのです。

情報の受け取り手によって解釈に幅が出るということは、期待する結果にならない可能性が高い、ということを意味します。コミュニケーションの目的は、「自分が求める結果を得ること」でしたね。

求める結果が得られないコミュニケーションは失敗です。「何も言ってないのと同じ」と心得ましょう。

■数字を意識して「具体的」な表現に言い換える

では、ビッグワードを使わないようにするには、どうすればいいのでしょうか。それは、抽象的な表現に逃げることなく、具体的な表現に言い換えるということです。

「早めに調査結果を提出します」ではなく、「水曜日までに調査結果を提出します」と言うのです。

【図表3】「ビッグワード」は具体的な言葉に言い換える
出典=『入社1年目のビジネススキル大全』

このように、誰が読んでも同じ解釈にたどり着く言葉に置き換えていくことで、確実なコミュニケーションにつながります。

さて、あなたが、部下の報告を聞く立場だったと仮定しましょう。

次のどちらの報告を聞きたいですか。

A「今年は、去年より売上がだいぶ落ちています。その中でも九州エリアは少し伸びていますが、関東エリアがかなり落ち込んでいます。できるだけ早く、原因を分析して対策を打ちたいと思います」
B「今年は、去年よりも売上が15%落ちています。その中でも九州エリアは5%伸びていますが、関東エリアは18%も落ち込んでいます。4月末までに原因を分析して、5月から対策を打つように進めます」

Aは「だいぶ」「かなり」「できるだけ早く」といったビッグワードが多用されているのに対し、Bは「15%」「4月末まで」などの具体的な数字で語られています。明らかにBの報告のほうに聞きたいと思わせる内容があり、説明もわかりやすいでしょう。

オフィスでレポートのグラフを分析するビジネスマン
写真=iStock.com/ArLawKa AungTun
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArLawKa AungTun

■数字は「総数」「絶対数」「相対数」を使い分ける

ビッグワードを使わないようにするなかで、特に重要なのがこの「数字で語る」ということです。ビジネスにおけるコミュニケーションでは、とにかく数字が大切です。

木部智之『入社1年目のビジネススキル大全』(三笠書房)
木部智之『入社1年目のビジネススキル大全』(三笠書房)

数字は明確で、誤解を生む余地がありません。100と言ったら100で、誰が見ても同じ事実です。ここに曖昧さはありません。

ただし、この数字にも、使う上での重要なポイントが3つあります。それは、「総数」「絶対数」「相対数」です。

「総数」とは、今考えるべき範囲の総量を示しています。「売上向上の課題抽出の対象エリアは10エリア」など、総量で仕事の範囲を語らなければいけません。逆に、総量を押さえていないということは、仕事の範囲が明確になっていない、ともいえます。

そして、「絶対数」と「相対数」です。

例えば「売上が10億落ち込んだ」という場合の「10億」は絶対数です。10億という数そのものを指します。ただしこの落ち込みが、20億から10億になったのか、1000億から990億になったのかで、インパクトは大きく異なります。

相対数はこの相対比較した数字のことをいい、この場合、20億から10億落ち込んだ「50%」、1000億から10億落ち込んだ「1%」が相対数です。

【図表4】「絶対数」と「相対数」はペアで語ることに意味がある
出典=『入社1年目のビジネススキル大全』

絶対数と相対数は、どちらが重要ということはありません。どちらの数字も重要です。むしろ、絶対数と相対数をペアで語ることが意味のある数字になります。

また、役職者は、数字で語ることが身に染みついています。そのような人にとっては数字のない報告は意味をなしません。

ビジネスの世界では、とにかく数字が重要です。あなたも、ふだんから数字で語れるように練習しておきましょう。

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木部 智之(きべ・ともゆき)
パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー カンパニー役員
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年、日本IBMにSEとして入社。数々の炎上プロジェクトをサービスインに導くいわゆる「火消し屋」として活躍し、エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーとなる。2018年、パナソニック システムソリューションズ ジャパンに入社し、難易度の高い重要プロジェクトをリードする。2020年4月より現職。アウトオブザボックス代表。近著に『入社1年目のビジネススキル大全』(三笠書房)がある。

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(パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー カンパニー役員 木部 智之)

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