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「塾の夏期講習は全部受けなくてもいい」中学受験のプロが教える"夏休み前"に必ず立てるべき1日のプラン

プレジデントオンライン / 2022年6月12日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/flyingv43

中学受験生は忙しい。塾の夏期講習はすべて受けるべきなのか。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「必ずしもすべて受ける必要はない。学年や塾の方針、子供の理解度によって選択することが大切だ」という――。

■4、5年生は塾の講習タイプによって取捨選択をする

夏休みは受験勉強に集中できる絶好の機会。各塾でも夏期講習が実施され、受験生としての自覚が芽生える時期でもある。だが、この講習、絶対に出席しなければいけないと思い込んでいないだろうか。結論を先に言うと、夏期講習はすべて受ける必要はない。では、どういうときに「受けない」選択をすべきか。

まず、4、5年生の場合、塾の講習のタイプによって選択肢が変わってくる。首都圏の大手進学塾では次のようになっている。

サピックス=予習型
四谷大塚・早稲田アカデミー=復習と予習の折衷型
日能研=復習型

サピックスは完全予習型の講習だ。夏期講習で学習した内容は2学期で触れることなく先に進むため、「受けない」という選択はまずない。ただ、通常の授業では1週間に1単元学習するのに対し、夏期講習では3単元分を学習するため、非常にハードになる。さらに宿題も多く出されるので、講習と宿題で追われてしまいがちだ。そのため授業を振り返る時間を確保できないまま、こなすだけの勉強に陥りやすい。夏期講習を意味のあるものにするには、振り返りの時間を設定しておく必要がある。

■夏休み前に「1日の過ごし方」を決めておく

四谷大塚と早稲田アカデミーは、1学期の復習と2学期の予習の両方がカリキュラムに組み込まれている。昨年までは、復習に比重を置きつつ予習単元も入っている状態だったが、今年からは予習が中心となる。しかも、夏期講習で予習した範囲は、2学期に振り返るカリキュラムになっていないことに注意が必要だ。予習単元で力を入れておきたいのは、4年生なら「少数・分数」、5年生なら「比」だ。この単元の習熟度が2学期の学習に大きく影響する。しかも、受験算数で最も重要な単元だからだ。

日能研は1学期に習った単元の復習を行う。一通りの単元を振り返られる点は丁寧とも言えるが、すでに理解できている子には必要ない。苦手な単元は受講し、得意な単元は「受けない」という選択ができる唯一の塾だ。だが、塾側はもちろん「受けなくてもいいですよ」とは言ってくれない。黙っていれば、このまま受講料は引き落とされてしまうだろう。「受ける」「受けない」の判断は、まさに今、しなければならない。

いずれにしても、夏休みを迎える前に、1日をどのように過ごすかきちんと予定を立てておくことをすすめる。4、5年生の場合、通常午前中に講習があり、午後からは自由だ。日中はまだ遊んでいてもいい。むしろ、この時期から受験一色にせず、いろいろな体験をさせてほしい。だが、夜は2〜3時間の勉強時間を作っておこう。ここで子供任せにしてしまうと、やりたいものだけやったり、気分任せになってしまったりするので、「この日はこの単元の勉強をする」など具体的に何をやるか決めておくこと。4、5年生の夏のポイントは「正しい取捨選択」と「計画」の2つだ。

■6年生の夏期講習は「強い気持ちと集中力」を鍛える場

6年生になると、どの塾でも内容は同じになり、1学期に学んだ知識を使って、入試本番を意識した実践演習を行う。授業の流れとしては、制限時間内に何問かの問題を解かせ、その後に解説をする。出される問題は、どの塾でも難しめだ。例えば開成クラスの子に灘中の問題を解かせたりする。難しい問題を出すことで、受験生の危機感を煽る狙いがある。だが、ほとんどの子は解けず、自信をなくしてしまう。または「後で解説を聞けばいいや」と投げやりになる。

6年生の夏期講習で最も重要なのは、目の前の一問に対して挑戦する気持ちが持てるかどうかだ。たとえ自分の手に負えないような問題であっても、「絶対にこの1問を解いてみせるぞ!」という意気込みで、まずは問題をしっかり読み、今分かっていることは何か、何を問われているのかを判断した上で、手を動かして考えてみる。これをくり返すことで実践力を鍛えていくのだ。

ところが多くの子は、「短い時間で解かなければ!」と慌ててしまい、問題を読み飛ばしたり、計算ミスをしたりしてしまう。中学受験では満点で合格する子はほとんどいない。だが、1点の差で合否が決まる。だからこそ、「この問題だけは絶対に解く!」という強い気持ちと集中力を鍛えることが重要なのだ。そのための訓練の場として、夏期講習がある。それを知らずに、ただ夏の時間を塾で過ごしているだけでは、力はつかない。

算数の教科書の問題を解く児童の手元
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

■基礎力がまったくない子は「受けない」選択肢もある

だが、まだそれらの問題を解くだけの力が身についていない子も多い。そういう場合、夏期講習に参加しても、さっぱり分からない状況になってしまう。そうならないためには、夏休みが始まる前の今の時期に基礎力をつけておく必要がある。

6年生の夏期講習は基本的には「受けざるを得ない」。だが、基礎がまったくできていない子は、正直なところ講習を受けても意味がない。そういう子は塾から一度離れて、基礎力をつけるための勉強をしたほうが懸命だ。だが、それを誰が教えるかという問題がある。単元の指導であれば個別指導塾でもできるが、そもそも基礎が理解できていないという場合は、中学受験に精通した家庭教師をつけるなどの対策が必要になる。

■オプション講座の時間で「夏期講習の復習」をする手もある

夏休みには通常の夏期講習の他にオプションでお盆特訓や単科講座が用意されている。ほとんどの塾では、オプションと言いつつも何も申請がなければ受講するものと見なし、受講料が引き落とされる。だが、私はこのオプション講座は必ずしも受ける必要はないと考えている。すでに学力が十分ある子であれば、さらに理解を深められるが、そうでない子にとってはあまり受ける意味がない。塾の言われるままに受講するより、その時間を夏期講習の復習に充てたほうが結果は出せる。

夏期講習中は毎日がハードで、頭の中に入れなければいけない知識やテクニックが山のようにある。まわりもみんな頑張るので、何とか授業についていけるように必死に食らいつくが、ついて行くだけで精一杯で、講習で学んだことを頭の中にまとめる時間がない。こうした状況のまま、夏休み明けにテストを受けると、成績が上がらないどころかガクッと落ちてしまうことがある。夏休み中にあんなにも頑張って勉強をしたのに、成果が表れないという残念な結果になってしまうのだ。

勉強する小学生の手元
写真=iStock.com/Marilyn Nieves
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Marilyn Nieves

■復習は「◯△×学習法」でやるといい

夏期講習で余裕だった子は、オプション講座を受けて次のステップに進めばいい。でも、夏期講習で苦しかった子は、お金は無駄になるが、その期間をこの夏の振り返りの時間に充てた方がいいだろう。頭に詰め込んだ知識を整理することで、活用できるようになる。だが、「振り返りましょう!」と言ったところで何を振り返って良いのか分からず、とりあえず全部やろうとするのはNGだ。そもそもそこまでの時間はない。

やるべきことは、おおよその理解はできているけれど、まだ完璧とまでは言えない問題をできようにすること。そのための方法としておすすめしているのが、○△×学習法だ。授業中、「これはもう理解できている」というものには○を、完全には理解できていないが、あと少し頑張ればできるようになりそうなものには△を、現時点ではまったく理解できないものには×をつけておく。振り返り期間にやるべきなのは、△の問題だ。これをクリアするだけで、得点力が大きく変わってくる。

夏休みまではあと1カ月半ある。まだ先のことのように感じられるかもしれないが、講習を受けるか受けないかの選択や、夏休み中にいつ何を勉強するかといった学習スケジュール、誰に何を頼むかといった戦略は、今まさにやらなければいけないことなのだ。この夏をぜひ有意義な時間にしてほしい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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