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先週頼んだ仕事をまだやっていない…そんな部下の心拍数を上げずに業務を促す"あるフレーズ"

プレジデントオンライン / 2022年6月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

上司と部下のコミュニケーションは難しい。部下に期待通りに動いてもらうにはどうしたらいいのか。元官僚で現在は静岡県掛川市長の久保田崇さんは「部下は想像以上に上司に気を使っているものだ。話しかけるときにはコツがある」という――。

※本稿は、久保田崇『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■上司と部下の考えが一致していることの方が珍しい

部下を複数持ったときに初めて、部下の仕事の管理をするという問題に直面します。全て自分の目の届くところにあった部下1人のときと比べ、自分の目が届かない部分が増えてくるからです。

また、先に述べた「自分でやった方が早い」という問題は、部下を複数持ったときには自然消滅します。複数の部下の仕事を全部自分でやるということは、不可能だからです。

「先週頼んだあの案件、まだやってなかったの?」

こんな言葉を発してしまうのも、この頃だと思います。あなたからすれば、優先順位が高いから先週わざわざ指示しておいたのに、部下はそのように受け止めていなかった。あなたはここで思い至ります。部下の考えと、自分の考えがズレているのだと。

そうなのです。実は、上司と部下の考えが一致していることの方が珍しいと認識すべきなのです。だからこそ、普段からのコミュニケーションが重要になってくるわけですね。いやいや、自分は大丈夫だ、部下とばっちり意思疎通できている、そう思われる方は、

「今一番の課題は何か」と部下に尋ねてみてください。

■予想外の「課題」を抱えているかもしれない

もしかしたら、あなたの予想しなかった答えが返ってくるかもしれませんよ。例えば、以下のように。

・この仕事をするのが初めてなので、自信が持てない
・その仕事を実行したいが、具体的なやり方がわからない
・上司(あなた)が忙しそうなので、相談できなかった
・外部のステークホルダーの○○さんとうまく話すことができない
・家庭でトラブルを抱えており、仕事に集中できない

上記は私の実体験ですが、そのような答えを聞いて驚いたものです。したがって、普段から話しかけやすい(相談しやすい)雰囲気をつくっておくこと、コミュニケーションを取ることが大事です。

■「ちょっと教えて」と言えば部下は萎縮しない

部下は、想像以上に上司に気を使っているものです。あなたのちょっとした言動にビクビクしているかもしれません。それなのに、あなたが期待したとおりの報告がない場合についつい、

「なぜこうしないんだ?」
「どうしてできないんだ?」
「なんでこんな文章になるんだ?」

といったように質問してしまっていませんか? これは質問ではなく「詰問」です。このようなやり方をしても理路整然かつ淡々と答えてくる部下は豪胆だと思いますが、ほとんどの部下は言い訳をするか、恐れをなして何も言えなくなります。詰問を避けて部下の警戒心を解きほぐすマナー(作法)は以下の通りです。

「ちょっと教えてください」「ちょっと教えてくれる?」と部下を呼ぶ

「この文章はこういう意図でつくった文章ということでいいのかな?」
「この企画はこういうことをしたいということだよね?」
「どのようにしたら、できるようになるだろう?」
「○○のようにしてみることは可能ですか?」

まず呼びかけ方も、部下の心拍数を上げないように呼びかけることが大事です。「おい!」「○○(名前)、ちょっと来い」などは部下からすれば「また叱られるのかな」などと心拍数が上がる要因になります。「○○さん、ちょっと教えて」だと部下は萎縮せずに「上司の役に立てるかな」と気軽に応じることができます。

■「一言のお礼」で上司のモヤモヤは晴れる

部下に指導をした(時間と労力を割いて教えてあげた)のに一言もお礼がない、食事やお酒を奢ったにもかかわらず一言もお礼がない、こうした状況に腹を立てている人もいることでしょう。

古今東西、上司はこのようなことに直面してきました。大日本帝国海軍で連合艦隊司令長官を務めた山本五十六は「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」と言いました。人望厚く部下から慕われていた山本ですら部下が思う通りにならなかったと思えば、少しは気が楽になります。

お礼の一言もないことに対し、その場で「指導」したくなるかとは思いますが、その場では抑え、別の場で個別に穏やかに話をしていきましょう。また、あなたが部下の立場であれば、一言でいいのできっちりお礼を言ってあげてください。それだけで、上司はモヤモヤが晴れて気持ちが良くなるものなのです。

男性に深々と頭を下げるビジネスウーマン
写真=iStock.com/Tony Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tony Studio

■部下が直言してきたら「大人の余裕」を示す

部下が上司であるあなたに正論を直言してきたらどうでしょうか。感情的に「そんなことを言うのは10年早い!」などと怒鳴りつけたい気持ちになる方もいるかもしれませんが、大人の余裕をまずは示したいものです。

具体的には、「さすが××に詳しいA君だね」と持ち上げた上で、(正論を否定できない場合)「でもまあ今回は、これで我慢してくれよ。今後の展開の際に参考にさせてもらうよ」などのように余裕を持って軽くいなす。このように一目置く態度を見せれば、大体の場合、不満は残らないものです。

本当に採用した方が良い提案であれば、翌日少し時間を置いて「良く考えてみたんだけど、やっぱり君の言う通りにしよう」とするのが良いと思います。本書の第3章では、上司に直言する場合は批判に聞こえないように注意深く言葉を選んで意見具申する作法を紹介しましたが、あなたの部下がこうした作法を心得ずに直言してきた場合であっても、批判されたと過剰反応せずに悪意なき改善提案だと落ち着いて受け止めましょう。

■「自分の方が人間的に上である」と思ってはいけない

部下の指導というのは難しいものですが、やってはいけないことは、「部下より自分の方が人間的に上である」と勘違いすることです。長年働いているとついついそう思ってしまうのが人間だとは思いますが、いうまでもなくこれは思い上がりで間違いです。実際あなたが定年などで退職すれば、その瞬間にかつての部下は部下ではなくなりますし、在任中でも例えば趣味の場では部下の方が囲碁が強いなど、立場が逆転することもあるかと思います。

ですから、あくまで仕事上の役割分担だと割り切って考えることが大事です。それでも上下関係を必要以上に意識してしまう人は、上の役職は「広い視野で」仕事を進める役割、下の役職は「狭い領域の個別の業務を着実に行う」役割などと考えてはいかがでしょう。

久保田崇『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)
久保田崇『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)

このように強調するのは、かつて私は部下の指導がうまくできなかった経験があるからです。1つ年下の部下に対し、ある業務をしてもらおうと当然のように指示をしたのですが、なだめてもすかしてもその業務を拒否され、サボタージュされました。今思うと、上から目線で指示を出していたかもしれません。

とはいえ、その業務を部下に担当させることについては、私の上司である課長ともよく相談した上でのことですので、その判断は誤っていなかったと思います。問題があるとしたら私の指導力と人間力、そして部下の勤務態度です。この件については、課長からも同様の指示を出してもらいましたが好転せず、結局異動してもらうことになりました。後味の悪いこの事例によって指導というものを深く考えさせられましたが、他方ではどうしてもその職場にフィットしない職員については、上司や人事当局と相談した上で異動させることもオプションとして持っておくことは大事なことだと思います。

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久保田 崇(くぼた・たかし)
静岡県掛川市長
1976年静岡県生まれ。京都大学総合人間学部卒業後、2001年内閣府入り。ニート対策を内容とする「子ども・若者育成支援推進法」の制定などに携わる。東日本大震災後のボランティア活動を契機として、11年より岩手県陸前高田市副市長を務める。16年立命館大学公務研究科教授、19 年より掛川市副市長に就任、21年より現職。主な著書に『官僚に学ぶ仕事術』『官僚に学ぶ勉強術』(共にマイナビ 新書)など。

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(静岡県掛川市長 久保田 崇)

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