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近くの川で缶コーヒーを飲むのもソロキャンプ…ひとりの時間を「惨め」ではなく「至高」に変えるコツ

プレジデントオンライン / 2022年6月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Black_Kira

お笑い芸人のヒロシさんは「ソロキャンプの達人」として知られている。ひとりの時間を楽しむには、どんなコツがあるのか。ヒロシさんは「周囲にグループ客が多いと、ひとりの時間が『至高』ではなく、『惨め』になってくる。キャンプ場を選ぶ際は、そもそも人があまり来ないようなところを選んだほうがいい」という――。

※本稿は、ヒロシ『大人のソロキャンプ入門』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■ソロキャンプの一歩目は近くの川で缶コーヒーを飲むことから

——まず、ソロキャンプは、どのように始めればいいのでしょうか?

とりあえず、キャンプ云々の前に、自然と触れ合うことから始めたらどうでしょうか。たとえば、近くの川に行って、缶コーヒーでも飲んでみればいいんじゃないですか。ふだんよりも少し長めの時間、川を眺めてみるつもりで。

僕はテレビに出なくなってからしばらく、神奈川県の田舎町に引っ越して、近くの多摩川に釣りをしによく通っていたんですよ。

だだっ広い原っぱを歩いていると、土手のあちら側とこちら側で、流れている時間の速さが違うように感じるんです。あくせく働いている人は、そういうところに身を置いてみることから、始めるのもいいかもしれませんね。

——そうすることで、ソロキャンプの魅力を感じられるんですか?

ヒロシ『大人のソロキャンプ入門』(SBクリエイティブ)
ヒロシ『大人のソロキャンプ入門』(SBクリエイティブ)

う~ん……、さすがにそれだけだと、ソロキャンプの魅力は感じられないかもしれません。でも、自然の中で飲み食いをするのは、キャンプの楽しさにもつながっています。

カップラーメンだって、四畳半の部屋で食べるより、外で芝生の上に座って、川を見ながら食べるほうが、美味しく感じますよね。子どものとき、駄菓子屋でお菓子を買って公園で食べたら、すごく美味しかったりしませんでした?

——たしかに、外で食べると、ピクニック気分で、美味しかったです。

ちょっと試しに行ってみて、感想を聞かせてください。

■大人は形から入りたい

——ということで、電車に乗って、多摩川の土手に行ってきました。土手を登ると、目の前でゴルフの練習に興じるおじさんたちや、ランニングする若い女性、芝生で駆けっこしている子どもがいて、それぞれ楽しんでいるように見えました。

憩いの場だったでしょ?

——はい。土手の向こう側ではゆったりとした時間が流れているのも実感しました。原っぱを眺めながら飲む缶コーヒーは、いつもより美味しい気がしました。

うんうん。

——でも、やっぱり、これがソロキャンプの楽しさにつながっているのかは、まだわかりませんでした。……なんといいますか、大人だから、もう少し形から入りたいかなと。

なるほど。つまり、キャンプ道具を揃えるとか、焚き火をするとか、そういうことから入りたいってことですね?

——おっしゃる通りです。

気持ちはわかります。近くの川に行って、缶コーヒーを飲むだけでも自然の中で過ごす良さは伝わると思ったんですけどね。いきなりキャンプ道具を揃えるのはハードルが高いとも思いましたし。でも、物足りなかったんですね?

——はい。

では、キャンプ場に行くことから始めましょう。

奥多摩の初夏の多摩川の風景
写真=iStock.com/Stossi mammot
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Stossi mammot

■窮屈な世の中だからこそ、自由をひとりで享受する

——そもそもソロキャンプって、どこですればいいのでしょうか? 東京に住んでいて、キャンプ場がどこにあるのか聞かれても、すぐには思いつきません。

僕はあまりこういうことをいわないけど、「ググレカス」ってことですよね。結論からいえば、自分の住んでいる「都道府県名」に「キャンプ場」とか「バーベキュー」と加えて、ネット検索をすることから始めるのがいいと思います。

グーグルで、たとえば「島根県」「キャンプ場」と検索すると、こうやって地図で出てくるんですね。

——なるほど。地図の左に評価も出ますね。この評価がいいところに行けばいいんですか?

それはどうかな……。評価がいいところは、人気キャンプ場です。一般的には、ほぼハズレはないです。ただし、「ヒロシ流」のソロキャンプは、そういった人気キャンプ場を選びません。人気キャンプ場は、人が多いですから。

——なるほど! 人気キャンプ場を避けるために、ネット検索を使うんですね。

そういうことです。でも、今はキャンプ場を探すのも一苦労かもしれませんね。

僕は九州の田舎町で育ちましたが、子どもの頃はどこでも勝手にキャンプをやっていました。海で拾った貝を焚き火で焼いて食べたり、野山に食材と鍋を持ち込んで、子どもたちだけでご飯を作ったりしていました。

近所の庭や空き地でも、落ち葉で焚き火して焼き芋を作る、みたいなことを皆がやっていましたから。

今、都会の河原や公園で勝手にテントを張ったら、怒られるんですよね。自分の土地でも、庭で落ち葉を集めて焚き火をしたら、近所から「煙が流れてきて困るんですけど……」とか「火事になるのでは?」といったクレームを入れられるかもしれない。

——今は焚き火すら、自由にできなくなっていると思います。

僕が子どもの頃よりも、ルールはちゃんとしているけど、ちょっと息苦しい状況ですよね。昔は自由にやれたけど、今は決まったところでやらないといけない。ルールに則(のっと)ってやるしかないんだから。

——ちょっと窮屈な世の中だからこそ、ソロキャンプをやりたい気もします。

ええ。キャンプ場で許される自由を、ひとりで享受すればいいんですよね。

■ソロキャンプの敵はホットパンツのいい女

どんなキャンプ場を選ぶかという話で、付け加えておくことがあるんです。朝早く行って、キャンプ場内の川の近くにテントを張るとします。自然をいい感じで見られる特等席を確保して、焚き火でひとりの時間を楽しみたいと。

でも、お昼頃になると、5メートル先で大学生のグループが、どでかいテントを立ててキャンプを始めたりもするわけです。キャピキャピした楽しそうな声がうるさく感じる。

しかも、ホットパンツを穿はいたいい女がグループにいたりすると、そっちが気になって仕方がなくなる。ひとりの時間が「至高」ではなく、「惨め」になってくる。

この「惨めな気持ち」って、ソロキャンプを嫌いになるきっかけになるんです。メンタルの強い人は構いません。それとか、ソロのキャンプに慣れてしまえば、人がたくさんいても、堂々と楽しめる人はいると思います。でも、僕はそういうのが無理なんです。

若い女性は日の出に岩のビーチで瞑想
写真=iStock.com/AscentXmedia
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AscentXmedia

——初めてとなると、テントを設営する時間もかかりそうです。あたふたしてかっこ悪い姿を人前でさらすことになるのは、ちょっとキツイですね。

本当はそんなことをキツイと感じる必要はないんです。ただ、その気持ちはすごくわかります。せっかく始めようとしているソロキャンプを嫌いになる可能性大ですね。

だから、僕はキャンプ場を選ぶ際は、そもそも人があまり来ないようなところを勧めているんですよ。先ほどのグーグルの評価でいえば、評価が低いというよりも、そもそも評価数が少ないところを選びます。

評価数が少ないということは、要は、訪れる人がそこまで多くないと予想されますから。人がいないと周りのことを気にせずにいられますからね。

■最初は帰りやすい近場にしたほうがいい

——それは候補が絞れそうですね。

ただ、評価数が少ないキャンプ場って、交通の便が悪かったり、トイレが汚かったりと、「難あり」であることも多いんですよ。そういったところで、初めてキャンプをするのは、慣れないと怖いですよね。

とくに女性であれば、トイレの綺麗・汚いは気になるでしょうし、近くに誰かいることが安心感につながります。人があまり来ないキャンプ場には、そういった意味での安心感はありませんね。

——たしかに周りに誰もいないと、最初は不安になりそうです。あと、いきなり遠くに行って一泊できるかも不安です。

それならば、一泊しなければいいじゃないですか? 日帰りだってできるし、不安だったら、途中で帰ればいいんですから。いきなり遠くに行くのは勧めないですよね。最初は帰りやすい近場にしたほうがいいと思います。

話を戻すと、人がまったくいないところに気が引ける初心者ソロキャンパーは、近場にあるキャンプ場に、平日の人がいないタイミングで行くのもいいかもしれません。

どうせ皆さん、消化しきれない有休がいっぱいあるんですから。人気のキャンプ場でも、平日ならそこまで人がいないケースもあります。

■薪や電源、駐車場の台数を最初は電話で聞く

——恥を人様に見せないで済むので、それだと敷居は低くなります!

それと、かかる料金も調べておいたほうがいいです。想像以上に高いところがありますからね。総額6000円、7000円とか取るところがあるから、気をつけないと。

僕が大人になってからキャンプ場に行ってびっくりしたのは、入場料とテント張り料が、別々で取られることです。あと車で行くと、駐車場代も別でかかります。

キャンプ場によって、事前予約が必要なのかどうかも、あらかじめ確認しておいたほうがいいです。

平日と土日にどれくらいお客さんが来ているか、駐車場は何台分あるか、キャンプ場の近くに食材を買えるスーパーがあるのか、なども最初は電話で聞いたほうが安心できると思います。

あとはどんなキャンプをしたいか次第で、キャンプ場で薪が売られているか、キャンプサイトに電源があるか、とかも必要に応じて聞いておきましょう。ちなみに、デイキャンプ(日帰りキャンプ)の割安料金があるところもありますよ。

あと、ネットの口コミも参考になります。「便所が汚い」と書いてあったら、本当に汚かったりしますから。そうやってネットで調べることも楽しんじゃいましょう。

■鍋、フライパン、包丁…必要なものは誰もが持っている

——行く場所を決めた後は、持っていく道具ですかね。まず、何を買えばいいのでしょうか?

そもそも、その発想がちょっとずれている気がします。キャンプって、生活を外に持っていくだけ、なんです。だから、「必要なものを買わなきゃ」と、構える必要はないです。

鍋やフライパンって、どんなにお金のない人でも、たいてい持っているじゃないですか。箸、スプーン、フォークも持っていますし、ナイフはなくても、包丁なら持っていますよね。ちょっと気の利いた人ならばヤカンもあるでしょ?

荒野で調理する女性キャンプの火
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

寝袋がなくても、毛布やタオルケットは持っていますし、オイルランタン(灯油などの燃料で灯りをともす、手に引っ下げることのできるランプのこと)を持っていなくても、懐中電灯はある。着る服だって、もちろん持っています。

あとは、たとえば……こういう椅子! これ、たしかニトリかイケアかで、安く買ったんですよ。

こういう椅子も、なぜか家にあったりしますよね? あと小さい折りたたみの椅子とかも持っていたりしません?

——たしかに、なんのために買ったか思い出せない小さい折りたたみ椅子が、ベッドの下のペースに放置してあります。

道具を揃えるのは、ソロキャンプの楽しみの一つではあるんだけど、僕は無駄金を使わせたくないんですよ。だから、最初は家で使っているものをそのまま持っていけばいいんじゃないかと思いますね。

食材だって、半額セールのときに買い込んだ肉が冷凍庫にあったりしますよね。別にキャンプだからって奮発しなくても、それを持っていけばいいんです。ひとりだから、半額シールが貼ってあっても恥ずかしがることはありません。

どうも昨今のキャンプブームもあって、「家にあるものでソロキャンプをやっていたら、恥ずかしいんじゃないか?」という考えがはびこっている気がするんです。

「ソロキャンパーなのだから、大手キャンプメーカーで道具を揃えていないといけないんじゃないか?」と考えている人が多い気がします。

■「ブルーシートのみで一泊」は一番かっこいい

——たしかに、「家のフライパンを使うのは恥ずかしい」とは思っていました。

僕が子どもの頃、自分の父親がやっていたキャンプって、特別なものは買わずに、全部家にあるものだけで済ませていました。

極端にいうと、テントも、ブルーシートで代用できるんです。僕が父親とキャンプに行ったのは二回しかないですけど、一回目は海で、そのときはどこからか借りてきたテントを使いました。

ブルーシート
写真=iStock.com/Gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gyro

でも、二回目は川沿いで、ブルーシートでテントらしきものを作ったんです。もう一組、デイキャンプをしている家族がいたから、子どもだった僕は「あっちのテント、いいなぁ」と思っていました。

でも、今思えば、ブルーシートのみで一泊するなんて、いちばんかっこいいキャンプスタイルですからね。天候が雨とか、季節が冬とかじゃなければ、ブルーシートテントでも、なんとかなるんです。

参考にならないかもしれないけど、僕の父親がやっていたブルーシートテントの張り方を教えておくと、まず現地で調達した竹を適当な長さにのこぎりで切って、立方体のやぐらを組んで骨組みにしました。

使う紐は古新聞を縛るビニール紐。それで、長方形のブルーシートを二枚使って、設営していましたね。こんな感じです。

■「無駄金をかけたくない」から手持ちの道具でやる

——一面だけ開けておいて、そこが出入り口になっているんですね。

そう。これだと入り口から虫が入るでしょ? だから、蚊帳(かや)を中に吊るしていました。

僕、一応ソロキャンパーとしては、何年もコツコツ活動してきたから、日本ではある程度知られた存在になったと思うんですけど、そんな僕からすれば、家にあるものだけでソロキャンプをやっていたら、かっこいい。

「無駄金をかけたくない」といって、手持ちの道具だけでやるのって、粋じゃないですか。家で10年くらい使っている、近所の金物屋で買ったどこのメーカーかもわからないフライパンを見かけたら、「その年季の入りまくっているフライパン、どこのですか?」って聞きたくなりますもん。

ソロキャンプを長くやってきて、いろんな道具を使ってきましたけど、今は一周回って、昔やった貧乏キャンプに憧れているんです。現地で調達した竹とブルーシートだけでテントを作って、家にある汚い鍋とかでやるキャンプスタイルです。

でも、それって、初めてキャンプする人には、逆にハードルが高かったりもしますよね。家のフライパンを使うのも、僕にとってはかっこいいことだけど、初めからそれを求めるのは酷かもしれません。

■カセットコンロがあれば、最高のソロキャンプができる

——家にあって、キャンプ道具としていちばん使えるものはなんですかね?

カセットコンロですね。キャンプ用のガスストーブ(キャンプ用語では暖房器具だけではなく、調理用コンロもストーブという)はなくても、家で鍋をするときに使うカセットコンロは、あったりしますよね。

これがあったら、なんでも調理できるから、最高のソロキャンプができますよ。使い勝手でいえば、キャンプ用のガスストーブの比じゃないです。それに家族でキャンプに来ている人がわりかし利用しているので、ひとりで使っていても恥ずかしくはないと思います。

——わかりました。ソロキャンプを始めるうえでは、キャンプギア(ギアとはキャンプ用語で道具のこと)は極力買わないでいこうと思います。

はい。極力、最初は買わないでいきましょう。テント代わりにするブルーシートにしても、今はカーキ色のシートも売っています。ブルーシートの色だと周りの目が気になるなら、カーキ色のシートにすればいいと思います。

——ブルーシートでテントっぽく張るやり方を教えてほしいのですけど。

それは、各自ネットで調べてください。僕、張り方とかあまり詳しくないんです。ネットで「ブルーシート」「テント」「張り方」「タープ(日よけ、雨よけなどで使う布状の屋根のこと)」などと検索すれば、いっぱい出てきます。こういうのを検索することも、ソロキャンプの楽しみですよ。

僕からアドバイスできるのは、キャンプ場は場所の関係でスマホの電波がつながらないこともあるから、調べたことは、事前にスクリーンショットしたりダウンロードしたりしたほうがいいよ、ってことです。

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ヒロシ(ひろし)
芸人兼ソロキャンプYouTuber
1972年、熊本県生まれ。九州産業大学卒。ピン芸人として「ヒロシです……」のフレーズではじまる自虐ネタで大ブレーク。お笑いライブなどの傍ら2015年3月よりYouTuberとして「ヒロシちゃんねる」を配信。自ら撮影・編集したソロキャンプ動画をアップして人気を集める。18年末、新著『働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける』(講談社)を刊行。

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(芸人兼ソロキャンプYouTuber ヒロシ)

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