医療保険と学資保険は今すぐやめていい…節約上手な公認会計士が教える「いらない保険」の見分け方
プレジデントオンライン / 2022年6月13日 13時15分
※本稿は、金川顕教『公認会計士が教えるお金の増やし方大全』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
■発生率にかかわらず、損害が小さい場合は貯金で対応
ここでは保険の節約について考えていきます。実際、保険に入っている人は多いですが、多くの人がむだな保険に入りすぎていて、お金が貯まらなくなっています。では、どんなときに保険に入ればいいか。「発生確率と損害額」から考えることが大切です。
発生する確率が低く、損害が小さい場合、それから発生確率は高いが、損害が小さい場合、この場合は貯金でOKです。入るべき保険は「発生する確率が低く、損害が大きい場合」です。一方、発生確率が高く、損害が大きいものには近寄ってはいけません。
そもそも保険とは、みんなで少しずつお金を出し合って、運悪くトラブルに遭った少数の人にお金を渡す仕組です。ですから高確率で発生するリスクは、保険金をもらう人が多くなるため、保険としての仕組が成り立たないということです。そういう意味で、入らなくていい保険No.1は医療保険です。がん保険、学資保険、積立型生命保険・養老保険、外貨建て保険、ペット保険、これらも入る必要はありません。
■40歳男性が死亡すると1億5000万円超の損害に
そして入るべき保険は「生命保険」「火災保険」「自動車保険」の3つです。なぜなら発生する確率は低く、損害が大きいからです。
生命保険文化センターの調査によると、40歳男性の死亡率は0.093%ですが、亡くなると数千万円から数億円の損害が出ます。また自動車事故で人を死なせてしまう確率や、火災の発生確率はかなり低いのですが、人を死なせてしまったり、家が燃えてしまったりすると、数千万円から数億円の規模の損害があります。もちろん住宅価格や周囲の損害額で変わってきますが、低確率、損害大であることには違いありません。
入るべき3つの保険の1つである「生命保険」から説明していきます。生命保険とは、死亡あるいは高度障害状態になったときに保険金が受けとれる定期保険のことです。10年間、20年間と年満期か、60歳、70歳と歳満期で決めるケースがあります。
なぜ生命保険が必要か。繰り返すようですが、発生の確率は低く、発生すると損害が大だからです。たとえば40歳男性が亡くなる可能性は0.093%と低確率。しかし40歳で死亡すると、65歳までに25年間。dodaエージェントサービスの調査によると、2021年の40歳から65歳までの男性の平均年収は約614万円ですから、25年×614万円=1億5350万円に。
特に家族がいる場合は、これだけの収入がなくなると困ります。家族の人生が狂ってしまうこともあるので、生命保険に入ったほうがいい典型例といえるでしょう。
■生命保険で節約するなら選ぶべきは「掛け捨て」
では、どんな保険商品を選べばいいのか。基本は掛け捨ての死亡保険です。なぜなら掛け捨てなら保険料が安いからです。生命保険文化センターの「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯年間払込保険料は平均37万1000円。
たとえば、それを月々2280円のメットライフ生命「スーパー割引定期保険」(30歳男性・死亡保険金2000万円・保険期間20年)に変えると、年間2万7360円ですので、単純に比較できないとはいえ、かなり節約できることになります。
また保険料は、まとめて支払うほど安くなります。年齢や保険期間、保険金額で簡単にネット比較できるので、まずはシミュレーションして、現在加入中の保険と比べてみるとよいでしょう。
■自動車保険で明らかに不要なのは車両保険
2つ目に入るべき保険は「自動車保険」です。自動車事故で人を死亡させてしまう確率は低いですが、損害額としては数億円にのぼります。たとえば41歳医師の男性を死亡させてしまった実際の例では、約5億2000万円の賠償判決が出ています。
そもそも自動車保険の種類は2種類あります。1つは法令で契約が義務づけられている「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」、もう1つは自賠責をカバーするために任意で加入する「任意保険」です。
任意保険は大きく分けると「他人への賠償」と「自分への補償」。他人への賠償は、他人を死傷させた場合の「対人賠償責任保険」、他人のものを壊した場合の「対物賠償責任保険」。自分への補償は、自分や搭乗者が死傷した場合の「人身傷害保険」か「搭乗者傷害保険」、自分の車が壊れた場合の「車両保険」です。
万一、他人を死傷させてしまったら、自賠責保険では3000万円しか出ないので、対人賠償責任保険には必ず入りましょう。対人・対物は無制限が基本です。
不要なのは車両保険。なぜなら事故で保険を使うと、等級が下がり、保険料が上がるからです。軽い事故なら、その上がった保険料が修理費以上になって、保険を使わないほうがお得になってしまいます。
また全損の場合に支払われる保険料は、事故時点の車の価値と同じなので、車の時価総額が毎年20%ずつ下がることを考えると、新車分は絶対に出ないということ。「車両新価特約」をつければ回避できますが、そうすると保険料がまた上がってしまいます。
どう考えても車両保険は不要です。入るべき任意保険は「対人・対物無制限、車両保険なし」なのです。
■不動産業者がすすめる火災保険は要注意
火災保険は「発生する確率は低いけれど、起こったら損害額が大」という事態のための保険ですから、保険のセオリーからも入ったほうがいい保険になります。
火災保険は価格の安いものから高いものまでありますが、その差は何でしょうか。そもそも火災保険は火災だけでなく、風災や雪災、水漏れ、盗難など、その補償範囲は幅広いのです。その補償範囲は自分で選べるため、補償を多くつければ保険料は高く、最低限なら安いということです。また地震保険は単体で加入できず、火災保険とセットで入ることになります。
しかし問題は賃貸の場合です。賃貸の人は、家を借りるときに不動産業者にすすめられるままに保険に入っている人が多いのではないでしょうか。業者指定の火災保険は、不動産業者のマージンが上乗せされて価格が高くなっているものが少なくありません。また本当に必要な補償がついていないケースもあります。
■賃貸契約後に保険を切りかえることも可能
本来は賃貸契約時に「自分で選びます」といえるのがベストですが、あとから切りかえることも不可能ではありません。その場合は、契約書の火災保険の記載を確認して不動産業者に相談しましょう。改めて自分で火災保険を選ぶときは、災害のときに補償がつくかどうか、賃貸でどこまで必要か、自宅の立地条件を考慮して判断しましょう。
近年の災害リスクの増加を受けて、2021年に火災保険料の参考となる火災保険参考純率が改定されて、大幅に値上げになる地域もあります。今加入している火災保険を見直して、割安でも必要十分なものに入るようにしましょう。
繰り返すようですが、入るべき保険は「起こる確率は低いけれど、起こると損害が大」な事態に対するものです。そう考えると不要なのは、図表3の6つになります。
■子どもの学費はほぼ確実に発生し、損害が小さい
まず「医療保険」からお話ししましょう。病院にかかる医療費は、そもそも自己負担3割の公的保険が使えて、高額療養費もありますから、わざわざ民間の医療保険に入る必要はありません。
また保険の大原則からいっても高確率で損害小。がんは発症すると損害は少ないですが、確率は高いです。ですから「がん保険」も不要。貯金から捻出しましょう。同様にペットの病気も高確率で損害小ですから「ペット保険」も不要です。
「学資保険」は学費を貯めるのによく使われますが、全く不要です。子どもの学費はほぼ確実に発生し、損失は小さい出来事ですから、入る必要はありません。しかも利回りが低すぎる、保障が少なすぎる、インフレに対応していない、途中解約で元本割れのリスクがあるなど、デメリットも多いのです。学費はしっかりとした資金計画を立てて、貯蓄と投資で対応しましょう。
老後も高確率で起こることなので、「積立型生命保険・養老保険」「外貨建て保険」といった保険で備えるより、貯蓄や投資で対応しましょう。そもそも保険と貯金は別々に考えるべきです。
特に「外貨建て保険」は流行っていますが、手数料が高く、利回りは低いのが現実です。そのうえ為替変動による元本割れのリスクもあります。くれぐれも販売員の「お金が増やせます」という言葉をうのみにしないようにしましょう。お金を増やせるのは、あなたではなく販売員です。外貨建て保険は全く不要です。
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公認会計士
1986年三重県生まれ。立命館大学卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。有限責任監査法人トーマツを経て独立。不動産、保険代理店、広告代理店、教育事業など、様々なビジネスのプロデュースに携わり、300社を起業、300人の「稼ぐ経営者」を育て上げる。「YouTube図書館」の運営や執筆活動も行なう。著書に『仕事と人生を激変させるなら99.9%アウトプットを先にしなさい』(SBクリエイティブ)、『人もお金も動かす超スゴイ!文章術』(すばる舎)など多数。近著に『公認会計士が教えるお金の増やし方大全』(ポプラ社)
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(公認会計士 金川 顕教)
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