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「これが不倫の決定的な証拠になる」ラブホテル前で張り込む探偵が"最も気を抜けない瞬間"

プレジデントオンライン / 2022年6月15日 12時15分

ジモティーでの探偵募集はけっこう多い(写真=「ジモティー」公式サイトより)

浮気調査を行う探偵は、どうやって決定的証拠をつかんでいるのか。探偵のアルバイトに応募し、実際に働いた『裏モノJAPAN』編集部の野村竜二さんがリポートする――。

※本稿は、野村竜二『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(鉄人社)の一部を再編集したものです。

■未経験者でもできる「探偵のアルバイト」に潜入

何か珍しい仕事はないものかと、求人サイトを転々としていたら、ジモティー内のアルバイトの項目で左記のような求人を発見した。

『テレビでよく見る探偵。1度は憧れた方も多いのではないでしょうか?』

なんと探偵のアルバイトを募集していたのだ。トレンチコートにハットを被って調査をする、あの探偵である。

やっぱりアンパンと牛乳をほおばりながら張り込んだりするのだろうか。楽しそうだぞ。

さっそく記載された番号に電話をかけてみると、野太い声の男性が出た。

「もしもし、アルバイトの募集を見て電話したのですが……」
「はいはい。えーっと、キミは体力に自信ある?」

いきなり、ぶっきらぼうな質問をされた。なんか感じ悪いなあ。

「はい。それなりに」
「そっか、徹夜とか平気な人?」
「はい。大丈夫ですよ」
「了解。それなら来週の月曜の15時に事務所に来てくれる?」

特に持ち物もいらないようで、履歴書も必要ないとのこと。いきなり面接まで進めるあたり体力さえあれば誰でもいいようだ。

■「この仕事っていつ終わるかわからないから」

翌週の面接当日。新宿駅西口の雑居ビルを訪れた。他のテナントも日焼けサロンやら消費者金融やらといったいかがわしいものばかり。いかにも探偵の事務所がありそうだ。4階の探偵事務所のドアをノックして開ける。やっぱり、面接を受けるのは何度やっても緊張するなあ。

「失礼しまーす」

部屋の中は小ざっぱりとしていて清潔感がある。探偵の事務所といえば小汚いイメージがあったが、白を基調とした健全な内装。ちょっと拍子抜けだ。

「はい。どちら様ですかー?」

奥から日に焼けたスーツ姿のイカツイ男性が現れた。首には金のネックレスをつけていて、ヤクザみたいな風貌だ。こわ。

「あ、野村君だっけ? 待ってたよ。じゃあ、そこに座ってくれるかな?」

黒い革張りのソファに向かい合わせで座る。壁の棚には『探偵業届出証明書』と書かれた紙が置いてあるので、一応ちゃんとした会社であることは間違いないようだ。

「ども、ここの所長です。よろしくね。まず、シフトはどれくらい入れるのかな?」
「はい。いつでも大丈夫です」
「それは助かるよ。この仕事って、終わるまでどれくらい時間がかかるかわからないからさ」

ん? どういう意味だ?

「日によって働いてもらう時間が変わってくるから、余裕がある人の方がありがたいんだよ」

そんなに大変なのかよ。

■ラブホテルの前で18時間張り込むことも

「じゃあ、1日の勤務時間でどれくらいなんですか?」
「うーん、日によるかな。夕方から3時間くらいで終わることもあれば、朝まで待機することになる可能性もあるから……」

そんな話をしている最中に所長の電話が鳴った。

「ちょっと、ゴメンね」

ソファを離れて電話を取る氏。

『もしもし、どうしたの?』

口調から察するに部下からの連絡があったようだ。

『うん。じゃああと半日くらい待機して、出てこなかったら帰っていいわ。それじゃ』

電話を切って戻ってきた。

「いまの電話はどなたからだったんですか?」
「ははは、野村くんの先輩のバイトくんだよ」

なんでも、浮気調査の張り込みで、今日の早朝からラブホテルの前でずーっと待機しているそうな。さらに今から半日も待つってことは計18時間とか? ぶっ倒れるぞ。

「探偵はずーっと待つのが仕事だから、それだけ覚えておいてね」

なるほど、やっぱり張り込みが基本のようだ。

「じゃあ、日程が決まったら連絡するから、待っておいて」
「はい。わかりました」

いったいどんな依頼が待ち受けているのか、気が重いなあ。

■土曜日の夕方、川崎駅に呼び出されると…

数日後、面接を担当した所長から電話がかかってきた。

『もしもし、野村君? 明日(土曜日)に川崎駅に来れるかな?』
『はい、大丈夫ですよ』
『じゃあ、16時にJRの改札の外で待っていてくれるかな?』

探偵の仕事は客の要望に合わせて動くので、いきなり仕事が入ることがあるらしい。今回も突然の依頼が舞い込んできたんだと。

「特に何も持ってくる必要はないし、洋服も普段着でいいから」

ふーん、探偵といえばバレないようにサングラスやマスクで変装するものかと思っていたが、ちょっと残念だ。

言われたとおり、翌日の夕方に川崎駅に赴いた。休日ということもあって駅の構内はかなり混雑している。

待ち合わせ場所の時計台に所長が立っていた。おーい。

「お待たせしました」
「いやいや、時間どおりだから大丈夫だよ。対象者が来るまで時間があるから待っていよう」

改札でターゲットを待つ(提供=鉄人社)
改札でターゲットを待つ(提供=鉄人社)

対象者ってのが、今日尾行する男のことのようだ。今のうちに仕事の内容を聞いておくか。

「今日はなにをするんですか?」
「浮気調査だよ。あと1時間くらいで、その男がこの駅に来る予定なんだけど、その人を尾行するわけ」

なるほど。てか、なんでこの駅に来ることを知ってるんだろ。

「ああ、それは依頼主にあらかじめ聞いてるんだよ。それに念のため藤原っていうベテランの調査員が自宅から尾行してるから」

依頼の内容はこのようなものだ。

■「決定的な証拠は探偵に依頼することが多い」

依頼主は40代前半の女性。旦那の浮気を疑って探偵に依頼したらしい。

ここ数カ月は定期的に学生時代の友人と飲みに行くという理由で家を空けることが多くなってきたとのこと。話を聞く限り、確かに浮気をしてそうだ。にしてもそれだけじゃ、川崎駅に来るとはわからないのに。

「一度ここまで依頼主が尾行してみたことがあったらしいよ。そこで女の人と待ち合わせをしてるところを見たけど、それ以上は調べなかったんだって」
「そのまま尾行しちゃえばお金もかからないじゃないですか」
「ははは。たしかにね。でも、決定的な証拠は探偵に依頼することが多いんだよ」

まあ、旦那が女とホテルに入るところは見たくないよな。

「それに自分でそこまで調べておいてくれれば、値段もそんなにかからないからね」

ふーん。そういえば探偵を雇う金額ってどれくらいなんだろう。

「今回の依頼だと20万かな。もしかしたらもっと安くなるかも」
「マジすか。結構しますね」
「いやいや、ウチはかなり安い方だよ。大手だったら最低でも50万はかかるよ」

たっか! どっちも高額だよ。つーか、なんでそんなに金額が変わるんだ?

「調査費用は人数によって決まるからさー」

調査費は必要な人数と日数をもとに計算するようで、簡単な依頼であれば安くなるし、尾行に人数がかかる場合なんかは高額になってしまう。

■バレないようにやりとりはラインで

「なんで大手はそんなに高いんですかね?」
「探偵業界って客の足元を見るんだよ。本当は3人で充分に調査できるのに、6人の調査員が必要ですってウソついたりね」

なるほど、俺みたいなバイトを使えば安くあげることができるもんな。

そんな話をしていたら、他の調査員がやってきた。

「キタキタキタ。撮れ、撮れ、撮れ!」

やってきたのは若い金髪の男性だ。いかにもチャラい雰囲気で、ホストだと言われても不思議じゃない。

「はじめまして、今日から入りました野村です。よろしくお願いします」
「うっすー、タナカです。よろしくねー」

なんかアホっぽい風貌だけど、幼い顔を見るかぎり、もしかして俺よりも年下なんじゃないのか?

「タナカさんはおいくつなんですか?」
「23だよ。野村くんは?」
「24ですね」
「やっぱ年上かー。ま、色々教えてあげるからさ」

けっ、年下の先輩かよ。なんか絡みづらいな。

「じゃあ、野村くんとりあえずラインを交換させてくれる?」

ライン? 何に使うんだ?

「一度に全員で移動したら不審がられるでしょ? だから常にライン通話で会話しながら場所はバラバラに尾行するんだよ」

なるほど、理にかなっている。交換を済ませて今日の調査員たちが入っているグループに参加した。

■一見、浮気者には見えないけどなあ…

もう1人のメンバーは、今まさに依頼主の自宅から尾行を開始している藤原だ。

「これで常に通話できるようにしておいてね」
「はい。わかりました」

所長が言う。

「おっ、もうすぐ対象者が来る。準備して。野村君はあっちの西側の改札。タナカは東側な」
「わかりました」
「これ、写真だから男の顔を覚えておいて。忘れないようにね」

対象者の写真を何枚か見せてくれた。夫婦が写っている記念写真だ。笑顔が眩しくて真面目そうな男性だ。一見、浮気者には見えないけどなあ……。

ライン電話をつないで各々が場所を移動する。いよいよだ。スマホから所長の声が聞こえた。

『対象者、もうすぐ来る。タナカの方に来るわ』

おそらく自宅から尾行している藤原から連絡がきているのだろう。所長が電話口で語気を荒げて言った。

『キタキタキタ。おいタナカ。撮れ、撮れ、撮れ!』

タナカ側の改札に現れたようだ。

彼は鞄からハンディカムを取り出して、男の方にカメラを向けた。レンズは覗かずに男の方に向けているだけだ。バレないように注意しているのだろう。

改札をスーツ姿の男性が通りぬけてきた。遠目ではあるが、俺自身でも確認できた。写真よりもいくらか太っているが、本人に間違いない。なんだか事件の犯人を見つけた気分だ。めっちゃ興奮してきた。

『○○ホテルに入ったよ。出入り口確認して』

所長が一番前、その後ろにタナカ、そして最後尾に俺と藤原が縦に並ぶ形で尾行することになった。尾行がバレている可能性は低いが、念のため順番を変えるのだそうな。

■「女に話しかけてる、あっ合流した」

藤原とは初対面なので、挨拶をする。彼はパーカー姿で30代半ばくらいだ。

「はじめまして。今日から入りました野村です」
「ああ、どうも」

テンションが低くて話かけづらい。根暗っぽい感じだな。なんとなく尾行は上手そうな雰囲気だ。

「ここからホテルに行くんですかね?」
「うーん。どう動くのかは正直わかりませんね。一人で入るかもしれませんし、本当は別の件でただ川崎に来ているだけって可能性もあるから」

たしかに、そうなったら面倒だな。

「何が起こるかわかりませんよ。絶対に気を抜かないように」
「はい。わかりました」

無駄口を叩くなと言われてしまった。集中せねば。

混雑している駅の構内を出て、繁華街の方向に進んでいく。イヤホンから先頭を行く所長の声が聞こえてくる。

『東口方面、ホテル街の方に進んでるね。あっ、対象者、セブンイレブンの前で止まった。女に話しかけてる、あっ合流した』

俺の目からは見えないが、どうやら不倫相手と待ち合わせをしていたらしい。そのままホテル街の方向に進んでいく。その途中でまたもイヤホンから指令が。

『ああ、コンビニに入るわ。ファミマね。近くまで来たら待機しといて』

二人はファミマに入った
提供=鉄人社
二人はファミマに入った - 提供=鉄人社

調査員たちは集合することはせずに、互いに距離を取ってモノ陰に隠れた。数分後、酒の入ったビニール袋を手にした二人がコンビニから出てきた。

■警戒もせず豪華なホテルに入っていった

そこで初めて女の顔を拝見。男よりも10才ほど若くて、美人系だ。仲良さげに話をする様子は、普通のカップルにしか見えない。思いっきり手をつないでるし。当然、尾行にまったく気づいてない。

その姿を見てなんともやるせない気持ちになる。なんだか男が可哀想だ。ま、自業自得なのは間違いないが。

そのまま歩みを進めてラブホ街に到着。特に周りを見回すことなく、豪華なホテルに入っていった。まさか、探偵に尾行されてるなんて夢にも思ってないんだろうな。

そしてやはりラブホへ
提供=鉄人社
そしてやはりラブホへ - 提供=鉄人社

『はい。○○ホテルに入ったよ。出入り口確認して』

満室の場合はホテルを出てきてしまうので、鉢合わせしないように気を付けながら、他の出入り口に先回りする。

入ってきた場所から出てくるとは限らないので、全ての出入り口を押さえておく必要があるのだ。

『はい。こっちは正面OK、裏口のタナカは?』
『OKです』
『西側の藤原と野村くんは?』
『大丈夫です』

このホテルは計3カ所の出入り口があるので、人数は十分だ。これだけ見張られていては、いくらバレないように出ていっても無駄だろう。すぐに出てくる気配がないので、どうやら入室したらしい。同行していた藤原が話し始めた。

「これで折り返し地点だね」

尾行している最中は一切口を開いてはくれなかったので、ようやく会話ができた。

「出てくるまでは、どれくらいかかるんでしょうか」
「うーん、今回みたいなのは、2時間か3時間くらいじゃない?」

■浮気調査で「一番大事な瞬間」とは

こうやって話をしている最中も藤原は出入り口から目をそらすことはない。ずーっとビデオカメラを片手に注目している。

「まあ、本当に何が起こるかわからないよ。30分くらいで出てくる可能性だってあるし、もしかしたら明日の朝までいるかもしれないんだから」

うげぇ、先のことを考えるとつらくなってきた。

隠れながら待機できる場所を探すと、ちょうどいい場所に駐車場があったので、その看板の裏で待つことになった。回りからは死角になっているが、ホテルの出入り口を確認できる絶妙なスポットだ。

「ここからが一番大事なところだから気を抜いちゃダメだよ」

ベテラン藤原によると、ラブホテルに入る瞬間はもちろんだが、二人で一緒に出てきたところの方が大事らしい。そりゃまたどうして?

「ほら、この写真って離婚するときの裁判の材料になるから。ラブホから出てきたってのは不貞行為の一番有力な証拠になるの」

ふーん。そういうもんか。

「これが鮮明に残せれば、裁判を優位に戦えるし慰謝料の額も桁違いだよ」

なるほど、だからバカ高い金を払ってでも探偵に依頼するんだな。嫁さんの気持ちがわかってきた。

■同じ場所を常に見続けていると、眠気が…

何も動きはない。それなのに、ずーっと出入り口を眺めていなければならないこの状況。もう、しんどくなってきたよ。

正面入り口を張り込む所長が、ホテルに入る別の客の情報を電話口で繰り返している。

『あ、新規の客入ります。はい、次、一組出てきた』
『了解です』

滅多にないとのことだが、まれに他の客と同じタイミングで出てきてしまい、洋服が似ていたりして見失うこともあるので、常に客の入店情報を共有するのだそうだ。

それにしても同じ場所を常に見続けるのは苦痛だ。たまに視線を少しでも外そうものなら、一緒にいる藤原から檄が飛ぶ。

「おい、野村君、ちゃんと見て」

何度も注意されるが、あまりにヒマなので少しづつ眠くなってくる。こんな調子でいいのだろうか。

それから10分ほど経ち、あまりに眠そうなのを見かねて、買い出しを任されることになった。俺がいなくても出入口は確認できているので、パシリを任されたわけだ。

ライン電話で注文を取り、さっき二人が買い物をしていたファミマに入る。ああ、今ごろあの二人はセックスしてんのかな。なんで人のセックスが終わるのを待たなくちゃいけないんだよ。

それぞれの調査員がいる待機場所に飲み物と菓子パンを届けて任務は完了。藤原がいる駐車場に戻ってきた。

■職務質問は「半年に1度くらいかな」

にしてもラブホテルの前でコーヒーなんか飲んでたら、かなり怪しまれそうだ。警察に職質されたりしないのだろうか。

「まあ、時々あるよ。半年に1度くらいかな」

そんなペースで職質受けてたら大変だ。俺がイメージしていたマスクとサングラスなんかしてたらもっと危険だったのかも。

「そのときは、警察にはどうやって言い訳するんですか?」
「言い訳っていうか探偵ですって言うだけだよ」

え? それだけで解放してくれるの?

「名刺を見せて仕事中ですって言うだけ。相手もそれ以上は何も言ってこないよ」

探偵業は認可制で警察に許可をもらっているので、張り込みは全く問題はないのだそうな。ただし、その対応をしている間に対象者を見失ってしまったことがあるらしい。

「まだ、この仕事を初めて1カ月くらいのときだけど、メチャクチャ焦ったよ。会社に帰ったら所長にブチ切れられたし」

こわー。あのヤクザみたいな人に説教を受けるのは最悪だな。

その後も特に動きがあるわけでなく、ただただ、ひたすら出てくるのを待ち続ける。常に見張っていなくちゃいけないので、スマホを見ることは当然できない。時間を確認したくても、視線は出入り口を見ながらでないと時計を見ることすら許されない。これが絶対的なルールだ。

いくら待つだけといえども、落ち着くタイミングがゼロなので、これがまあシンドイ。精神的な疲労が蓄積される。

■入室から2時間後…『バッチリ! バッチリ!』

張り込みを開始して、ようやく1時間が経過した。眠くて眠くて仕方がない。特に変化は起きず、同じ場所で待ち続けるだけだ。

もうすぐ入室から2時間というところで藤原さんが言った。

「ラブホってショートと休憩があるだろ? だから入室してから2時間と3時間のタイミングは特に注目しておいてな」
「はい。わかりました」

野村竜二『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(鉄人社)
野村竜二『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(鉄人社)

生返事をしてボケーっと出入り口を眺めていたら、イヤホンから所長の大声が聞こえてきた。

『キタキタキタ。バッチリ! バッチリ!』

どうやら、彼がいた正面入り口から堂々と出てきたらしい。想像していたよりもあっけないラストだった。さんざん眠気を我慢していたのだから、せっかくなら俺が見てたとこから出てきてほしかった。なんか損した気分だ。

「おし、張り込みは終了。もう一回尾行するから、最後まで気を抜くなよ」
「はい。わかりました」

駅から来た道をそのまま戻っていく二人。ホテルに入ったときと同じように全く警戒心はなく恋人つなぎでラブラブだ。というか警戒してても探偵が相手じゃ無駄だろうけど。

■「たぶん300万くらいとられるよ。高給取りだから」

川崎駅の前で二人は別れて、女の方は別の方向に歩いて行った。

『タナカは女を追いかけて』
『はい。わかりました』

浮気相手を尾行するタナカさん。相手の家まで一応アタリを付けておいて、依頼主からこれ以上の依頼があったときに調べるようだ。どこまでも逃げ場はないんだな。

対象者の男はJR京浜東北線に乗って帰宅の路に着いた。調査はここまでで終了だ。

「野村君これで一通りは終わり。今日は研修みたいなもんだったけど、どうだった?」
「いやあ、疲れました。あの男性はどうなるんですかね?」
「まあ、間違いないく離婚だろうね。たぶん300万くらいとられるよ。彼は結構な高給取りだから」

うげえ、なんだか人の不幸で金をもらうって気分が悪いな。この仕事を続けるのは難しそうだ。適当な理由をつけて辞めることにしよう。

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野村 竜二(のむら・りゅうじ)
編集者
1994年生まれ。月刊『裏モノJAPAN』(鉄人社)編集部員。全国各地の怪しいスポットに身一つで突撃する潜入取材が得意。

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(編集者 野村 竜二)

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