実はダイエットに最適なのに…ほとんどの人が「食べたら太る」と勘違いしている意外な食材
プレジデントオンライン / 2022年6月20日 11時15分
※本稿は、小林弘幸『お腹いっぱい食べても太らない医師が発案した たんぱく質ダイエット』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
■良質なたんぱく質を摂取することで肌の老化を防ぐ
早いもので、私は今年61歳です。自分で言うのもなんですが、最近は初対面の人から「還暦を超えているようには見えない」と言われることが多くなりました。中年太りをしていないことが若く見られる理由のひとつだと思いますが、年齢の割に肌のシワやたるみが少ないことも、そう見せてくれる要因のようです。
60歳を過ぎても見た目の若さを維持できるのは、日頃から良質なたんぱく質をしっかり摂っているからと自負しています。女性のみなさんは、美肌を保つために高価な美容液を使っている人も多いですよね。最近では女性だけでなく、男性の美意識も高まり、毎日欠かさず化粧水や美容液を塗っているという人は珍しくありません。
しかし高価な基礎化粧品を買う前に、まずは食事におけるたんぱく質の補給が足りているかを確認してみてください。
私は、アミノ酸スコアの高い良質なたんぱく質をしっかり摂取することが、何よりの美肌の秘訣(ひけつ)と考えています。たんぱく質は筋肉や内臓、血液、ホルモン、酵素、免疫物質、皮膚、髪、爪など、全身のあらゆる場所に存在し、細胞の原材料となって組織を構築しています。そして全身の細胞は、場所によってサイクルは異なるものの、常に新陳代謝によって生まれ変わっています。
しかも、たんぱく質は生命維持に関わる部分から優先して補給されるため、肌や髪、爪への補給はあと回しになります。ですから十分な量が摂取されないと、肌へのたんぱく質補給は真っ先にストップしてターンオーバーが滞り、肌荒れや肌の乾燥などのダメージ、しわ、たるみなど肌の老化を引き起こしてしまうのです。
■肌はたんぱく質の摂取量の影響をもっとも受けやすい場所
間違ったダイエットなどでたんぱく質の摂取量を減らすことで、肌のツヤがなくなったり、シワっぽくなったりするのも、こうした体のシステムが関係しています。肌は、たんぱく質の摂取量の影響をもっとも受けやすい場所と言っても過言ではありませんから、美肌を保つために毎日、たんぱく質をこまめに摂取することが必要不可欠です。
またたんぱく質は、肌のハリやみずみずしさを保つコラーゲン産生にも欠かせません。肌の弾力を支える真皮(しんぴ)も、ほとんどがコラーゲンでできています。このコラーゲンを産生する線維芽(せんいが)細胞は、年齢とともに数が減少し、細胞の働きも衰えていきますから、年をとるほどたんぱく質をしっかり摂ることが大切になります。
コラーゲンを効率的に増やすコツは、たんぱく質と一緒にビタミンCと、鉄や亜鉛などのミネラルを摂ること。ドライフルーツなどにも含まれているので、ヨーグルトと一緒に食べてもいいでしょう。
コラーゲンは肌だけでなく、骨や粘膜、靭帯(じんたい)、血管の材料でもあり、全身の健康にも関わってきますので、増やしておいて損はありません。肌荒れや肌老化に悩む人は、「たんぱく質の1日の必要摂取量が足りているか」「時間に偏りなく3食こまめにたんぱく質を摂れているか」をチェックしてみましょう。もし、十分でない場合は、明日からでも実践してみてください。6週間もすれば肌の様子が変わってくることでしょう。高い美容液は、それから手に入れても遅くはありません。
■じゃがいもは非常に優秀なダイエット食材
巷に浸透している“ダイエットの常識”には、間違った情報が数多く存在しています。
「じゃがいもやかぼちゃなどの根菜類は糖質が多く、ダイエットに向かない」という情報もしかり。じゃがいもは非常に優秀な食材で、炭水化物食材の中でも圧倒的にカロリーが低く、栄養バランスも抜群です。
欧米では昔から主食として使われ、完全栄養食として愛されてきました。実際に白米と比べてみても、白米150gは230kcal、糖質含有量約55gなのに対し、じゃがいも150g(中くらい1個)は80kcal、糖質含有量は約12gほどしかありません。イメージよりもずっとヘルシーなことがわかりますよね。
じゃがいもの代表的な栄養素は、たんぱく質、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ミネラルなどで、筋肉の合成に必要な栄養素がすべて揃っています。そのバランスの良さから、脂肪をできる限り絞って、筋肉を増強するビルダーの人たちからも好まれるほどです。
食物繊維も豊富で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が両方含まれているため、便秘の解消にも効果的。さらにむくみ解消作用のあるカリウムも含まれているなど、ダイエッターの心強い味方になってくれます。
■たんぱく質食材と一緒に調理するのがおすすめ
ただし、じゃがいもは脂質と相性のいい食材なので、じゃがバターやコロッケなど、カロリーを増やす調理法も多く、食べ方には注意が必要です。ポテトチップスやフライドポテトなど、加工されている食品はカロリーオーバーになりやすいので、購入の際は成分表示表を見て、よく見極めてください。
おすすめの調理法は、ゆでる、蒸す、焼く。油で揚げると脂質が過剰になるため、できるだけ避けるべきでしょう。じゃがいも自体にもたんぱく質は含まれていますが、含有量はそこまで多くないので、たんぱく質食材と一緒に調理するのがおすすめです。
肉と一緒にオーブンで焼いてもいいですし、「肉じゃが」や「じゃがいもとひき肉のそぼろ煮」など、煮込み料理もヘルシーでダイエットメニューに最適です。肉だけでなく、サバやイワシ、サケなどの魚介類とも相性がいいので、レパートリーに加えておくと飽きずに楽しめます。
そのほか、じゃがいもを発酵食品と一緒に食べるメニューも大変おすすめです。みそやチーズをのせて焼いたり、みそ汁に入れたりするだけで、腸の善玉菌が増えて腸活にもつながります。個人的には、色々な鍋料理にじゃがいもを入れるのが好きで、よく食べています。煮込むと柔らかくふわふわになって、食べやすく、とてもおいしくなります。ぜひ、試してみてください。
また、かぼちゃもダイエットには効果的です。
じゃがいもと同様に、カロリーが低く、栄養面でも引けをとりません。たんぱく質、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、カリウム、ミネラル、食物繊維など、筋肉合成や腸活に最適な栄養素が揃っています。肉や魚などたんぱく源となる食材とも相性がいいので、料理での使いやすさも抜群。そのまま蒸したり、煮たりするだけでも、おいしく食べられます。
■エナジードリンクを飲むと一時的に元気になるが…
疲れると甘いものが無性に食べたくなること、ありませんか?
これは血糖値が下がって疲れを感じると、不足したエネルギーを手っ取り早く補うために体が糖質を欲するから。しかしこの欲求に従ってしまうと、かえって疲れが倍増する恐れがあります。
確かに糖質を摂取すると、効率的に生み出されたエネルギーがすみやかに脳や体に届けられ、一時的に疲れが軽くなって頭が冴えたような感覚になります。しかし、血糖値が下がった状態でいきなり糖質をたくさん摂取すると、血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」が起こり、膵臓(すいぞう)からインスリンが過剰に分泌されます。上がりすぎた血糖値をもとに戻すためです。すると今度は血糖値が急降下して下がりすぎを起こし、疲労感やだるさ、イライラなどを招いてしまうのです。
また過剰なインスリン分泌によって余った糖分は、脂肪細胞に蓄積されてしまうため、肥満の原因にもなります。こうして「血糖値スパイク」による血糖値の乱高下が繰り返されると、膵臓に負担がかかって糖尿病リスクも高めることに。
コンビニに売られている糖質たっぷりエナジードリンクなどは、集中力をいっとき高めるには効果がありますが、数時間経つと効き目が切れてどっと疲れが出たりしますよね。これはまさに血糖値スパイクが起こっている証拠で、体のことを考えると、頻繁な摂取はおすすめできません。
■良質なたんぱく質を摂取することで疲れにくい身体に
疲労回復に有効な栄養素は、糖質よりもたんぱく質です。糖質ほど急速ではありませんが、きちんとエネルギー源になってくれますし、たんぱく質には筋肉合成のスイッチとなる「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」が含まれているので、筋疲労の回復効果が期待できます。体の疲れを改善するには、たんぱく質がもっとも有効なのです。
さらにたんぱく質に含まれる必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」は、幸福ホルモンの「セロトニン」を増やします。セロトニンは、脳の活性化や集中力を高める効果があり、脳の疲労感も軽減してくれます。
また、メンタルを安定させる働きもあるので、ストレスを感じた時にも最適です。仕事の合間など休憩で間食する場合は、ヨーグルトやチーズ、小魚、ナッツ類、プロテイン入りのシリアルバーなどがおすすめ。コンビニなどで買う時はできるだけ、高たんぱく・低脂質な食品を選ぶのがポイントです。脂質が少なくヘルシーなサラダチキンを小分けにして食べるのも満足感が高く、いいでしょう。
ちなみに私は、とても疲れにくい体質なのですが、日頃の高たんぱくな食生活が関係していると思います。「たんぱく質の摂取が足りていないと、疲れを感じやすくなる」という研究結果も出ていますので、疲れた時だけでなく、日頃からたんぱく質をしっかり摂っておくことが毎日を元気に過ごすコツです。
疲れやすい体質の人や日々忙しく過ごしている人こそ、糖質に頼らず、たんぱく質をしっかり摂る食習慣を心がけてみてください。
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順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。
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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)
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