62歳にはまったく見えない…順天堂大・小林教授が毎朝必ずやっている「4つの腸活習慣」
プレジデントオンライン / 2022年6月21日 11時15分
※本稿は、小林弘幸『お腹いっぱい食べても太らない医師が発案した たんぱく質ダイエット』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
■たんぱく質ダイエットには“腸活”が欠かせない
たんぱく質を摂ると、基礎代謝がアップして太りにくい体を手に入れることができます。じつはこの「たんぱく質ダイエット」には、腸活が欠かせません。
たんぱく質を意識して以前より摂取量を増やすと腸内環境が乱れるケースがあるためです。腸内環境の良し悪しは「やせやすさ」に大きく関わっていて、たんぱく質摂取と腸活をセットで行わないと、すべて無意味に終わってしまう可能性があるのです。
私たちの腸内には、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」という割合で腸内細菌がバランスを取りながら生態系を構築しています。たんぱく質の中でも動物性のものは消化される際に、悪玉菌のエサになる窒素を生み出して腸内の悪玉菌を活発にします。
動物性たんぱく質に偏った食生活が続くと悪玉菌が増加して、生態系全体のバランスが崩れ、様々な悪影響を及ぼしかねません。また、たんぱく質は、ほとんどが栄養分として吸収されてしまうため、食物繊維が不足すると便のカサが増えず、腸のぜんどう運動も起こりにくくなって、便秘を引き起こします。慢性的な便秘は、腸内環境の悪化を招くため注意が必要です。
私はこれまで、腸と自律神経の専門医として多くの患者さんを診察してきましたが、そこで辿り着いた結論は「腸をよくすれば自然とやせられる」ということ。なぜなら、腸の働きは食べ物の消化・吸収・排泄のほかに、血液の質にも大きな影響を与えているからです。
■発酵性のたんぱく質食材を食べれば一石二鳥
血液は、「肺から取り込んだ酸素」と「腸から取り込んだ栄養」をのせて全身の細胞に運んでいます。もし腸内細菌のバランスが乱れて腸の機能が低下すると、ドロドロとした質の悪い血液が作られてしまいます。細胞は敏感ですから、そういう質の悪い血液が運んできた栄養は拒否します。
すると栄養の受け渡しができず、細胞はエネルギー不足で元気に働けなくなり、体全体の代謝が低下します。しかも届けられずに余った栄養は、細胞の周りにある脂肪に溜め込まれ、肥満をも招いてしまうのです。
こうした理由から、私は様々な書籍や雑誌で「腸活ダイエット」や「便活ダイエット」をおすすめしてきました。腸活で善玉菌を増やして腸内環境を改善することで、血液の質がよくなり、エネルギー効率のよいやせやすい体が手に入るからです。たんぱく質を十分に摂りつつ、腸内環境を良好に保つには、積極的に食物繊維と発酵食品を摂ることが大切です。
食物繊維は善玉菌のエサになるため、たんぱく質で悪玉菌優勢になりがちな腸内環境を整えてくれます。また、腸を刺激してぜんどう運動を促してくれるので、便秘の予防や解消にも有効です。
ただし、摂り方を間違えると便秘を悪化させる場合もあるので、後述する摂り方のコツをしっかり理解してください。また腸内細菌の生態系には、できるだけ多くの細菌が活発であることが理想であり、多様性を保つことが重要です。発酵食品は、菌を元気にして腸内細菌の多様性を維持してくれる腸活に欠かせない食材です。
おすすめは、ヨーグルトや納豆、みそなど発酵性のたんぱく質食材。たんぱく質を摂りながら、腸活も同時にできるのでダイエッターにとって一石二鳥の優秀食材です。
■腸活の効果を最大限に高める「4ステップ」
地球上のほとんどの生物には、自然界の昼夜に適応した「生体リズム」が備わっています。
食事や運動、排泄、睡眠といった人間の営みにも、それぞれに適した時間帯があり、リズムに合わせて生活することが健康の秘訣(ひけつ)です。その中でも、腸活は「朝」が最適。そこで腸活の効果を最大限に高める朝の4ステップをご紹介します。
ひとつ目は、起床後にコップ1杯の水を飲むこと。胃に送られた水分の重みで、寝ている間にお休みしていた腸が刺激され、ぜんどう運動が促されて便通が起こります。
ふたつ目は、決まった時間に朝食を食べること。朝食は、生体リズムを調整する「体内時計」のズレをリセットし、腸の働きに深く関わる自律神経のバランスを整えます。
私がいつもおすすめしている朝食メニューのひとつに、たんぱく質と一緒に食物繊維が摂れる「大根おろし&ヨーグルト」があります。たんぱく源で発酵食品であるヨーグルトと一緒に、便通に最適な水溶性食物繊維が豊富な大根おろしを食べれば、最高の腸活になります。味付けに蜂蜜をかけると、善玉菌のエサになるオリゴ糖も摂れるのでより効果的。味もさっぱりとしていて食べやすいので、ぜひ試してみてください。
TBS系列のテレビ番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」で、腸活ダイエットメニューとして紹介した際も評判になりました。
■腸活ストレッチでスムーズな便通を促す
3つ目は、スプーン1杯のアマニ油を飲むこと。スムーズな排便には、滑りをよくする適度な油分が必要です。油は太るイメージがありますが、適量であればむしろ腸の動きを促してダイエットをサポートしてくれます。またアマニ油は、オメガ3脂肪酸を含む良質な油で血液をサラサラにします。オメガ3脂肪酸は熱に弱いので、あくまで生で摂ることがポイントです。
4つ目が、腸活ストレッチを行うこと。腸に適度な刺激を与えることで、ぜんどう運動をより活発にし、便通を促すことができます。
忙しい朝は、バタバタと過ごしてしまいがちですが、30分早めに起きて腸のために4ステップを実践してみてください。また、便通は朝がベストタイムですから、ゆっくりトイレに入る時間を作ることもおすすめします。
■ダイエットや健康効果を最大限に引き出す「長生きみそ汁」
私は、数年前から様々なところでみそ汁の健康効果をお伝えしてきました。2018年に出版した書籍『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)は、80万部の大ヒットを記録するほどの評判となりました。栄養豊富なみそ汁には、善玉菌の代表である「乳酸菌」が豊富に含まれており、腸内環境を整えて血液の質を高め、代謝のいい体に導いてくれます。
さらに、発酵性の水溶性食物繊維も同時に摂れるので、ダイエッターに最適です。そこでおすすめしたいのが、私が考案した「長生きみそ汁」。ダイエットや健康効果を最大限に享受できる最高のレシピです。
まず、ボウルに玉ねぎ1個分をすりおろし、赤みそ80g、白みそ80g、りんご酢大さじ1を入れてよく混ぜ合わせます。これを製氷皿に移して冷凍庫で2~3時間凍らせると、およそ10杯分の「長生きみそ汁」のもとの「みそ玉」が出来上がります。冷凍庫で2週間程度保存が可能なので、お湯に溶かすだけで毎日手軽に飲むことができます。
図表2を参考にたんぱく質たっぷりの「食べるみそ汁」にすると満足感も高く、主菜としても十分な一品になるでしょう。
1日のうちいつ飲んでも効果がありますが、とくに食前が効果的。みそは糖の吸収を緩やかにする働きがあり、血糖値スパイクを予防してくれます。赤みそ、白みそはもちろん、玉ねぎにも血液をサラサラにする効果がありますし、善玉菌のエサになって乳酸菌を増やすオリゴ糖も豊富。りんご酢に含まれる酢酸は、悪玉菌を抑制します。
こうして腸内環境が整うと、副交感神経が優位になって自律神経のバランスが整ってきます。
腸は副交感神経が優位な時に活発に働くため、より腸が元気になって代謝のいいやせやすい体を手に入れる好循環を生むことができます。また、みそには抗酸化作用による生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)予防やアンチエイジング効果が期待できます。さらに精神の安定をサポートする幸福ホルモン「セロトニン」の分泌を促したり、慢性疲労を回復したりと、非常に多くの健康効果をもたらしてくれることもわかっています。
ダイエットだけでなく、心身の健康もサポートしてくれる「長生きみそ汁」をぜひ習慣にしてみてください。
■食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類がある
便秘はダイエットや美肌の天敵です。便秘に悩む患者さんの中に「野菜を一生懸命食べているのに、便秘が改善しない」という人がいますが、そういった方々にぜひ知っていただきたいことがあるのです。
じつは食物繊維の摂り方にはコツがあり、闇雲(やみくも)に取り入れればいいわけではありません。厚生労働省によると、食物繊維の定義は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」とされています。胃や小腸で消化されない唯一の栄養素であり、大腸まで届くことで便通をサポートしてくれる貴重な存在です。
この食物繊維には種類があり、水に溶ける「水溶性」と水に溶けない「不溶性」の2つに分けることができます。それぞれに特徴や働きが異なるため、腸活ではその違いをふまえて摂ることが大切です。
■便秘で悩んでいる人は不溶性の食物繊維の摂りすぎに注意
水溶性食物繊維は、水を含んでネバネバしたゲル状になり、便に水分を与えて柔らかくする働きを持っています。さらに小腸では糖質や脂質の過剰な吸収を抑えてくれる、ありがたい存在。一方、不溶性食物繊維は、水分や腸内細菌、剝がれた腸粘膜を吸収し、便のカサを増す働きがあります。そして腸内をゆっくりと移動しながら、腸を刺激してぜんどう運動を促します。
どちらも腸の働きや便通に必要ですが、便秘で悩む人にはとくに便を柔らかくする水溶性食物繊維が必要になります。基本的に食物繊維を含む食べ物には、水溶性と不溶性の両方が含まれていますが、じつはほとんどが不溶性メインなので、何も考えずに食べていると、つい不溶性に偏ってしまいがちです。
しかし不溶性ばかりだと、便の水分が吸収されて、便はかえって硬くなる一方。便秘はさらに悪化してしまいます。前述の「野菜を一生懸命食べても便秘が改善しない」と悩んでいた患者さんも、無意識に不溶性食物繊維を多く含む食材ばかり摂っていた可能性があります。
水溶性食物繊維を多く含む食材は、昆布やわかめなど海藻類、なめこなどのきのこ類、麦類や豆類、りんごやキウイ、柑橘類などの果物、大根やごぼうなどの根菜類です。またインゲン豆、アボカド、納豆、オクラ、にんじん、プルーンなどもおすすめ。便秘解消のためには、これらの食材を意識的に摂るようにしましょう。
■水溶性の食物繊維には腸内細菌を活発化させる働きも
そして水溶性食物繊維は、もうひとつ素晴らしい働きを持っています。腸内細菌のエサになって善玉菌など有用な細菌を元気にする働きがあるのです。
しかも一部の食物繊維は、腸内細菌の働きで発酵し、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる酸(乳酸、酪酸、酢酸など)を生み出します。短鎖脂肪酸は、脂肪の吸収を抑える働きがあり、「やせ体質」になるために欠かせない物質です。
腸内細菌に短鎖脂肪酸をたくさん作ってもらうには、植物性たんぱく質を摂ること。納豆やみそ、甘酒などの発酵した植物性たんぱく質は、腸内細菌をダブルで喜ばせることができ、おすすめです。
こうした食物繊維の特徴や働きを把握して食材を選ぶことができれば、便秘を予防するだけでなく、善玉菌を増やして腸内環境を整え、さらにやせ体質に近づくことも可能になります。さあ、今日から食物繊維マスターを目指しましょう!
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順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。
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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)
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